政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 110-86-1
名称 ピリジン
物質ID R02-B-035-MHLW, MOE
分類実施年度 令和2年度(2020年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2017年度(平成29年度)   2014年度(平成26年度)   2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分2


危険
H225 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点20℃ (closed cup)、沸点115℃ (NFPA (14th, 2010)) に基づいて区分2とした。なお、UNRTDGにおいてUN 1282、クラス3、PGIIに分類されている。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点が482℃ (NFPA (14th, 2010)) との情報より、常温で発火しないと考えられるため、区分に該当しない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験法が確立していないため、分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素、塩素及び酸素を含まない有機化合物であり、区分に該当しない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 891 mg/kg (MOE初期評価第3巻 (2004)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012)、GESTIS (Access on May 2020))
(2) ラットのLD50: 891~1,580 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、NTP TR470 (2000)、厚労省リスク評価書 (2018))
(3) ラットのLD50: 1,580 mg/kg (ATSDR (1992)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
(4) ラットのLD50: 0.8~1.6 g/kg (800~1,600 mg/kg) (HSDB (Access on May 2020))
1 急性毒性(経皮) 区分4


警告
H312 P302+P352
P362+P364
P280
P312
P321
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 1,120 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、GESTIS (Access on May 2020))
(2) ウサギのLD50: 1,121 mg/kg (MOE初期評価第3巻 (2004)、厚労省リスク評価書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012))
(3) ウサギのLD50: 1,000 mg/kg~2,000 mg/kg (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(9) より、区分4とした。
ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (27,371 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
 
【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): 15 mg/L~18 mg/L (4,637 ppm~5,564 ppm) (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
(2) ラットのLC50 (1時間): 8,000~9,000 ppm (4時間換算値: 4,000~4,500 ppm) (NTP TR470 (2000)、厚労省リスク評価書 (2018)、SCOEL (2004))
(3) ラットのLC50 (1時間): 8,000~9,020 ppm (4時間換算値: 4,000~4,510 ppm) (CERI有害性評価書 (2006))
(4) ラットのLC50 (1時間): 8,800 ppm (4時間換算値: 4,400 ppm) (ACGIH (7th, 2004))
(5) ラットのLC50 (1時間): 9,000 ppm (4時間換算値: 4,500 ppm) (ACGIH (7th, 2004)、Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))
(6) ラットのLC50 (1時間): 雄: 9,010 ppm (4時間換算値: 4,505 ppm) (ATSDR (1992))
(7) ラットのLC50 (1時間): 雌: 9,020 ppm (4時間換算値: 4,510 ppm) (ATSDR (1992))
(8) ラットのLC50 (4時間): > 4,000 ppm (CERI有害性評価書 (2006)、HSDB (Access on May 2020))
(9) ラットのLC50 (4時間): 4,900 ppm (厚労省リスク評価書 (2018)、Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))
(10) 本物質の蒸気圧: 20.8 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 27,371 ppm)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギの皮膚に腐食性を有するが、少量 (10 mg) の適用は軽度の刺激性を示す (ACGIH (7th, 2004))。
(2) ウサギの皮膚に本物質 (0.5 mL) を4時間適用した皮膚刺激性試験において、皮膚に対する非可逆的傷害を認め、本物質は腐食性物質と結論されている。また、別の皮膚刺激性試験でも壊死を伴う軽度から重度の紅斑が観察され、皮膚刺激性インデックスは4.8 (最大8) と報告されている (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
(3) 本物質は労規則35条において、皮膚障害、前眼部障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(4) 本物は動物試験において開放適用では軽度の皮膚刺激性を示すが、閉塞適用では強い刺激性を示す (GESTIS (Access on May 2020))。
(5) ウサギの皮膚に500 mgを適用した試験で、弱い刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(6) ヒトでの有害性影響としては、皮膚、眼、上部気道に対して刺激性がみられる (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(7) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性 (スコア3 (最大スコア10)) を示す (ATSDR (1992))。
(8) 本物質はウサギに対して軽度の皮膚刺激物であり、眼に対しては重度の刺激性を有すると報告されている (Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)~(7) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質を点眼すると重度の傷害を与える (ACGIH (7th, 2004))。
(2) 本物質 (0.1 mL) を適用した ウサギを用いた眼刺激性試験において、重度の刺激性が確認されている (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
(3) 本物質 (90%) のウサギへの適用は角膜の混濁や結膜の瘢痕化などの重度の反応を引き起こし、永続的な間質の軽度乳白化及び血管新生を生じる (Patty (6th, 2012))。
(4) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で2/3例で角膜の適用24/48/72時間後における平均スコアは3を示した (ECETOC 48 (1998))。
(5) ウサギを用いた眼刺激性試験において、中等度刺激性から腐食性の影響がみられ、最大眼刺激性指数は40~86 (最大110) であった。また、いくつかの影響 (浮腫や角膜への細胞浸潤) は21日間以上持続した (GESTIS (Access on May 2020))。
(6) 本物質は皮膚腐食性 (区分1) に区分されている。
(7) 本物質は労規則35条において、皮膚障害、前眼部障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(8) ウサギの眼に0.1 mLを適用した試験で、刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(9) 本物質の蒸気は眼や鼻の粘膜を刺激する (MOE初期評価第3巻 (2004))。
(10) 本物質はウサギを用いた眼刺激性試験において中等度の刺激性 (スコア7 (最大スコア10)) を示す (ATSDR (1992)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(5) のデータはあるが、陽性及び陰性のデータが混在しており、分類できないとした。

【参考データ等】
(1) 本物質はモルモットに感作性を示さない (ACGIH (7th, 2004)、厚労省リスク評価書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))。
(2) マウス局所リンパ節試験 (LLNA) で陽性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(3) 24人の成人ボランティアにおいて、誘導に50%、惹起に10%のピリジン (純度不明) /ワセリンを用いたマキシミゼーション試験で、1例に弱い陽性がみられた (厚労省リスク評価書 (2018))。
(4) 化学の研究室に実験補助員として半年間勤務した女性で、両手の指先や指の間に湿疹がみられた。種々の薬剤によるパッチテストで、カールフィッシャー試薬 (ピリジン、ヨウ素、二酸化硫黄を含む) のみ陽性であった (厚労省リスク評価書 (2018))。
(5) 本物質は光感作性があり、液を直接浴びると薬傷を起こす (MOE初期評価第3巻 (2004))。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験及び染色体異常試験で陰性、マウスの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性の結果が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1992)、Patty (6th, 2012)、IARC 119 (2019)、MOE初期評価第3巻 (2004)、CEBS (Access on May 2020))。
(2) in vitroでは、ほ乳類の培養細胞を用いたマウスリンフォーマ試験、遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性の報告、姉妹染色分体交換試験で陽性及び陰性の報告がある。また細菌の復帰突然変異試験において陰性の報告がある (同上)。
6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
ヒトでの本物質へのばく露と発がん性に関する明確なデータはない。(1)~(3) に基づき区分2とした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 119 (2019))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2004))、MAK (DFG) で3B (DFG List of MAK and BAT values (2019)) に分類されている。
(2) 雌雄のF344/Nラット及び雄のWistarラットに本物質を2年間飲水投与した発がん性試験において、F344/Nラットの雄で尿細管腺腫の発生率、尿細管腺腫及びがんの合計の発生率に有意な増加がみられ、同雌では単核細胞白血病の発生率の有意な増加がみられた。Wistarラット (雄) では精巣間細胞腺腫の発生率の有意な増加がみられた (NTP TR470 (2000)、IARC 119 (2019)、ACGIH (7th, 2004))。これらより、本物質の発がん性に関して、F344/N雄ラットにはある程度の証拠 (some evidence) が、F344/N雌ラット及びWistar雄ラットには曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論された (NTP TR470 (2000))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を2年間飲水投与した発がん性試験において、雌雄ともに肝細胞腺腫、肝細胞がん及び肝芽腫の発生率の有意な増加が認められた (NTP TR470 (2000)、IARC 119 (2019)、ACGIH (7th, 2004))。これより、本物質の発がん性に関して、雌雄とも明らかな証拠 (clear evidence) があると結論された (NTP TR470 (2000))。

【参考データ等】
(4) 本物質を出発原料として使用している製造工場の作業者に肺がん死亡のわずかな過剰がみられたが、有意差はなく、本物質など特定の化学物質ばく露との関連性はないと考えられた (IARC 119 (2019))。
7 生殖毒性 区分2


警告
H361 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1) より、区分2とした。なお、新たなデータが得られたため旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた経口投与による簡易生殖毒性試験 (OECD TG 421) において、親動物毒性 (肝臓重量増加) 用量において、授乳1~4日の生存同腹児数の減少がみられたとの報告がある (REACH登録情報 (Access on June 2020))。

【参考データ等】
(2) ラット又はマウスに13週間飲水投与した試験において、ラットでは高用量 (1,000 ppm: 90 mg/kg/day相当) で雌に性周期の延長、マウスでは250 ppm (50 mg/kg/day相当) 以上で精子運動能の低下がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、NTP TR470 (2000))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用)



危険
警告
H370
H335
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(7) より、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質の主なばく露経路は吸入であり、中枢神経系への軽度の影響による症状はおよそ32 mg/m3 で生じる。400 mg/m3 に1日4時間、1~2週間ばく露された労働者で、頭痛、めまい、不眠症、吐き気、食欲不振の症状が報告されている (MOE初期評価第3巻 (2004))。
(2) 健常人の症例報告では、ピリジン蒸気のばく露 (ばく露濃度、時間不明) 後に発生した症状には、一過性の頭痛、めまい、嗜眠、頻脈、呼吸促迫がみられた (ATSDR (1992)、NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(3) こぼれたピリジンを 15~20分間にわたって清掃除去した女性で、10 時間後から 3日後まで発話障害とび漫性皮質障害がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(4) 急性吸入ばく露は中枢神経系に影響を与える (NITE初期リスク評価書 (2007)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
(5) 本物質は労規則35条において、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害又は気道障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(6) ラットに過剰量を経口投与した場合、活動性低下、筋肉脆弱、呼吸困難、鎮静、被毛粗剛、死亡を生じた (ACGIH (7th, 2004))。
(7) ラットに過剰量を吸入ばく露した場合、流涙、鼻炎、不活発、過呼吸、鎮静、呼吸困難、死亡を生じた (ACGIH (7th, 2004))。

【参考データ等】
(8) ヒトへの本物質1.85~2.46 mL の経口投与で軽度の食欲不振、吐き気、倦怠感、鬱症状を引き起こした。また、多量投与では激しい嘔吐、下痢、せん妄、高熱を引き起こし、うち一人は本物質の摂取後40時間で肝不全及び腎不全により死亡した。この死亡例では、肺水腫と気管支炎も確認されたが、気管支炎については嘔吐物を吸入して起こった二次的なものと考えられた。(MOE初期評価第3巻 (2004)、厚労省リスク評価書 (2018))
(9) コップ半分(約125 mL)の本物質を誤飲した29才の男性の事例では43時間後に死亡しており、喉頭蓋、気管、気管支、肺、食道、胃にうっ血が認められた。(NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第3巻 (2004)、ATSDR (1992)、NTP TR470 (2000)、厚労省リスク評価書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、ヒトで肝臓、腎臓、中枢神経系、 (3)~(5)より、実験動物で区分1の範囲で血液系、肝臓、区分2の範囲で腎臓に影響がみられている。したがって、区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質をてんかん治療薬として使用した例で、1日あたり1.85~2.46 mLの用量で約1ヵ月に亘って経口投与した5人のてんかん患者で、投薬期間中に食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛及び腹部膨満感、頭痛、昏迷、倦怠感、抑うつ状態がみられた。また、その中の2例では血清総蛋白の減少や窒素血症、アルブミン尿症などが認められ、肝臓ならびに腎臓の障害が示されたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(2) 職業ばく露の例では約125 ppm (405 mg/m3) の濃度のピリジン蒸気を1日4時間、1~2週間に亘って吸入した労働者で悪心、めまい、頭痛、不眠、神経過敏、頻尿を伴った腰部や腹部の不快感、食欲不振がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(3) ラットを用いた13週間飲水投与試験において、50 ppm (5 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上でヘモグロビン・赤血球数・ヘマトクリット値の減少、100 ppm (10 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で肝臓重量増加、250 ppm (25 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で肝臓の色素沈着、500 ppm (55 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で胆汁酸の増加、肝臓の慢性炎症・色素沈着、小葉中心性肝細胞の肥大・変性、1,000 ppm (90 mg/kg/day、区分2の範囲) で死亡、ALT・SDH の増加、性周期の延長がみられた。なお、雄では、500 ppm以上で腎臓の蛋白円柱・慢性炎症・鉱質沈着・再生尿細管、1,000 ppmで腎臓の顆粒円柱・硝子変性がみられている(全例で腎臓のα2uグロブリン陽性) (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(4) ラットを用いた103~104週間飲水投与毒性試験において、100 ppm (7 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で肝臓の胆管過形成、肝臓の色素沈着、200 ppm (14 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で体重増加抑制、慢性腎症の増悪、肝臓の小葉中心性肝細胞の巨大細胞化、肝細胞の空胞化、400 ppm (33 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓の小葉中心性肝細胞の変性及び壊死、腎臓の尿細管上皮過形成がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(5) ラットを用いた103週間飲水投与毒性試験において、100 ppm (8 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で体重増加抑制、肝臓の小葉中心性肝細胞の変性、色素沈着、200 ppm (17 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で生存率低下、肝臓の線維化、小葉周辺性線維化、精巣の間細胞過形成、400 ppm (34 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓の小葉中心性肝細胞の壊死がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
10 誤えん有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)数オンス (1オンス=28.35 g) の経口摂取後に重度の嘔吐、下痢、高体温、せん妄をきたし、死亡した症例を剖検した結果、誤嚥によると考えられる呼吸器傷害 (肺浮腫及び気管・気管支炎) がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、HSDB (Access on August 2017))。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(ムレミカヅキモ)72時間ErC50 = 0.10 mg/L(MOE既存点検結果, 1995)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
急速分解性があり(BODによる4週間分解度:92%, 94%, 0%(平均62%)(METI既存点検結果, 1998))、藻類(ムレミカヅキモ)の72時間NOEC = 0.010 mg/L(MOE既存点検結果, 1995、MOE初期評価第2巻, 2003、MOE初期評価第3巻, 2004)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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