政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 121-75-5
名称 ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル (別名:マラチオン)
物質ID R02-B-057-MHLW, MOE
分類実施年度 令和2年度(2020年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2006年度(平成18年度)   2016年度(平成28年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 引火点163℃ (closed cup) (ICSC (2019)) より、区分に該当しない。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。
9 自然発火性液体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験法が確立していないため、分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 半金属 (P) を含むが、水溶解度が143 mg/L (20℃) (HSDB (Access on May 2020)) というデータが得られており、水と急激な反応をしないと考えられるため、区分に該当しない。
13 酸化性液体 分類できない
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (P) と結合しているが、データがなく分類できない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、鉄その他の金属を侵すとの情報 (HSDB (Access on May 2020)) があるが。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(5) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 8,000 mg/kg (純度: 98.2%) (Canada Pesticides (2010))
(2) ラットのLD50: 8,200 mg/kg (純度: 99.1%) (Canada Pesticides (2010))
(3) ラットのLD50: 8,227 mg/kg (純度: 99.1%) (JMPR (2016))
(4) ラットのLD50: 9,500 mg/kg (純度: 99.3%) (ATSDR (2003)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(5) ラットのLD50: 10,700 mg/kg (再結晶) (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))

【参考データ等】
(6) ラットのLD50: 2,100 mg/kg (IPCS PIM G001 (1989))
(7) ラットのLD50: 2,800 mg/kg (EHC 63 (1986)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(8) ラットのLD50: 2,830 mg/kg (ACGIH (7th, 2003))
1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(6) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (JMPR (2016)、EPA Pesticides RED (2009)、Canada Pesticides (2010))
(2) ラットのLD50: > 4,444 mg/kg (ATSDR (2003))
(3) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2014)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(4) ウサギのLD50: 4,100 mg/kg (EHC 63 (1986)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))
(5) ウサギのLD50: 8,790 mg/kg (JMPR (2016))
(6) ウサギのLD50: 8,900 mg/kg (Canada Pesticides (2010))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (7.1E-004 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): > 5.2 mg/L (JMPR (2016)、Canada Pesticides (2010)、US AEGL (2009)、Patty (6th, 2012))
(2) 本物質の蒸気圧: 4.0E-005 mmHg (30℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 7.1E-004 mg/L)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(5) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度刺激性あるいは非刺激物と報告されている (JMPR (2016))。
(2) ウサギを用いた皮膚刺激性試験においてごく軽度の刺激性が認められ (食安委 農薬評価書 (2014))。
(3) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (EPA Pesticides (2009))。
(4) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性が認められた (ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。
(5) 本物質及び本物質の製剤の皮膚刺激性は低い (GESTIS (Access on May 2020))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
-
警告
H320 P305+P351+P338
P337+P313
P264
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分2Bとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた眼刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (JMPR (2016))。
(2) ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2014)、ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。
(3) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の結膜刺激性が観察され、7日以内に消失したと報告されている (EPA Pesticides RED (2009))。
(4) 16人のボランティアによる本物質のエアロゾルによるばく露実験で結膜の刺激性がみられたという報告がある (ATSDR (2003))。
(5) ウサギにおいて本物質のばく露により、即時に刺激を示し、結膜炎及び眼瞼の浮腫を示す (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 87名のボランティアによる実験で本物質 (10%) は約半数に感作性反応を誘発した (ATSDR (2003))。
(2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において陽性と報告されている (食安委 農薬評価書 (2014))。
(3) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験において、ビューラー法 では陰性、マキシマイゼーション法 では陽性と報告されている。また、マウス局所リンパ節試験 (LLNA) では陰性と報告されている (JMPR (2016))。
(4) 本物質は高濃度においてモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において、13/24例 (陽性率 54%) に感作性反応を誘発した (GESTIS (Access on May 2020))。

【参考データ等】
(5) 本物質はモルモットに対して感作性を示さない (ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。
(6) EPA OPPTS 870.2600に準拠した モルモットを用いた皮膚感作性試験 において陰性と報告されている (EPA Pesticides RED (2009))。
(7) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317)に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(4) より、専門家判断に基づき、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスを用いた優性致死試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、ラット肝UDS試験で陰性の報告がある(IARC 112 (2017)、JMPR (2016)、ATSDR (2003)、食安委 農薬評価書 (2014))。
(2) in vitroでは、ヒトの末梢血リンパ球あるいはほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、遺伝子突然変異試験において陽性、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (同上)。
(3) 本物質の製剤あるいは原体を用いた多くの試験が実施され、陽性結果も多数認められているが、不純物の少ない原体を用い、テストガイドラインに従いGLPで実施されたin vivo試験では陰性知見が得られている(JMPR (2016)、Canada pesticide (2010), EPA Pesticides RED (2009), ATSDR (2003)、食安委 農薬評価書 (2014))。
(4) 食安委、JMPR、Canada、EPAではマラチオンに生体において問題となる遺伝毒性は認められないとしている(JMPR (2016)、Canada pesticide (2010), EPA Pesticides RED (2009)、食安委 農薬評価書 (2014))。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(2)~(4) の結果及び (1) のIARCの分類に基づき区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 112 (2017))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2003))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity, but not Sufficient to Assess Human Carcinogenic Potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on July 2020):2000年分類) に分類されている。
(2) IARCはヒトにおいて本物質へのばく露と非ホジキンリンパ腫及び前立腺がんとの間で正の相関がみられ、ヒトで発がん性の限定的な証拠 (limited evidence) があるとしている (IARC 112 (2017))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を混餌投与した2つの発がん性試験において、肝細胞腺腫、及び肝細胞の腺腫とがんの合計頻度の増加 (1件は雄のみ、他1件は雌雄で増加) が認められた (IARC 112 (2017))。
(4) 雌雄のラットに本物質を混餌投与した2つの発がん性試験において、雌で肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫、及び肝細胞腺腫と肝細胞癌の合計)、乳腺の線維腺腫及び子宮ポリープの発生頻度の有意な増加が認められた。また雄では鼻咽頭腔に2つの非常に稀な腫瘍が確認された (IARC 112 (2017))。
7 生殖毒性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親世代に影響はなく、F1、F2児動物で軽微な影響 (離乳時の体重低値) のみであった (食安委 農薬評価書 (2014))。
(2) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、P、F1及びF2親動物に交配時の低体重、P親動物に呼吸困難、死亡 (雄: 3/16例、雌: 1/16例) 、F3親動物の雌に呼吸困難、死亡 (1/16) がみられ、P親動物で受胎率低下、出産率低下、F1及びF3児動物に離乳時の低体重、F3児動物で哺育率低下がみられた。なお、受胎率低下、出産率低下、哺育率低下は母動物の毒性に起因するものであり、繁殖能に対する検体の直接的な影響とは考えられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。
(3) 妊娠ラット、妊娠ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、母動物毒性がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。

【参考データ等】
(4) ラットを用いた発達神経毒性試験 (母動物に妊娠 6 日~出産後 10日、及び児動物には生後 11~21日に強制経口投与) において、母動物毒性はみられず、児動物では生後11~21日に振戦及び活動性低下が、生後11日に平面立ち直り反応の遅れが認められたが、これらは検体投与の直接的な影響であり、発達神経毒性影響を示すものではないと考えられている (食安委 農薬評価書 (2014))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系、呼吸器、心血管系)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5) より、ヒトにおいて神経系、心血管系、呼吸器への影響、(6) より、実験動物においても区分1の用量で神経系への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系、呼吸器、心血管系) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 一般的な徴候や症状として、副交感神経の自律神経刺激で典型的にみられる腹部痙攣、下痢、吐き気、嘔吐、縮瞳、かすみ目、流涎、流涙、呼吸困難、筋痙攣があり、赤血球及び血漿中コリンエステラーゼ (ChE) 活性の阻害がみられたとの報告もある (ATSDR (2003))。
(2) 本物質の中毒による死亡例では、心膜血管の拡張と周囲の組織の顕著な出血、間質性浮腫、炎症性細胞、ヘモジデリン含有マクロファージ及び心筋の脂肪浸潤と心筋への損傷がみられたとの報告がある。高用量での急性中毒では、低用量での反復ばく露と同様に脳波図 (EEG) の変化もみられ、この症状はわずかな追加ばく露で悪化するとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。
(3) 本物質の中毒症例のほぼ全て (推定投与量: 214~2,117 mg/kg) で、迷走神経刺激による徐脈や低血圧、ばく露後数日以内に出現する房室伝導障害などの心血管系への影響がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
(4) 複数の本物質による中毒症例 (ばく露量は推定可能例で214~1,071 mg/kg) では呼吸困難が報告されている。低用量ばく露と推定される例でも、呼吸困難及び気管支炎が一般的にみられ、多くの患者で人工呼吸器の補助を必要とした。2例では、中毒事故の2週間後に肺線維症の発症もみられた (ATSDR (2003))。本物質の投与に関連した呼吸器影響としては、吸入後の鼻腔及び喉頭の病理組織学的病変の報告もある (EPA Pesticides RED (2009))。
(5) 4人/群の男性被験者を濃度0、5.3、21または85 mg/m3の本物質のエアロゾルに1日につき1時間を2回、42日間ばく露したところ、85 mg/m3群で各ばく露の開始後5~10分間における鼻刺激性の訴えがあった (ATSDR (2003))。
(6) 純度95%の本物質を用いたラットの経口投与試験では、12 mg/kg (区分1の範囲) 以上で赤血球ChE阻害作用、純度不明の本物質を用いた別の試験では約411 mg/kg (区分2の範囲) で重度の呼吸困難がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。

【参考データ等】
(7) ヒトでは、殺虫剤用途で製造された市販品に含まれる複数の不純物により本物質の正常な代謝が阻害され、毒性が増強されるとの報告がある。これは不純物のカルボキシルエステラーゼ阻害作用によると考えられている。本物質の製剤に含まれるイソマラチオン (CAS番号 3344-12-5) が毒性の増強に影響するとの報告があるが、他の不純物の影響も示唆されている (EHC 63 (1986))。
(8) 本物質は、哺乳類や昆虫で代謝によりマラオクソン (CAS番号 1634-78-2) に変換される。マラオクソンは本物質よりも強力なChE阻害作用を示すことが知られている (EPA Pesticides RED (2006))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系)、区分2 (呼吸器)


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、ヒトにおいて死亡例を含む神経系への影響がみられるとの情報があり、(4)、(5) より、実験動物においては区分2の用量で神経系及び呼吸器への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系)、区分2 (呼吸器) とした。新たな情報を加えて検討を行い、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質の水溶性製剤を使用した蚊の防除プログラムに参加した噴霧作業従事者5,350人、混合作業従事者1,070人及び監督者1,070人で大規模な職業中毒が発生し、少なくとも5人が死亡した。ばく露経路は主に経皮で、ばく露濃度は1~200 μg/cm3と推定された。コリンエステラーゼ (ChE) の抑制作用は労働期間とともに進行し、症状はかすみ目、めまい、吐き気、嘔吐、腹部痙攣等で有機リン酸塩中毒と一致していた。イソマラチオン (CAS番号 3344-12-5) やその他の不純物を高濃度に含む製剤で最も重篤な症状がみられ、イソマラチオンを2~3%含有する製剤を使用した作業者では作業終了時に赤血球ChE活性が11~20%、39~47%減少したが、イソマラチオンを含まない製剤を使用した作業者では0.8~3.0%の減少にとどまった (ACGIH (7th, 2001)、ACGIH (7th, 2003)、EHC 63 (1986))。
(2) 生後18ヵ月の子供が庭のスプレーで本物質に6週間毎日経皮・吸入ばく露された結果、コリン作動性中毒症状に至り、数日間にわたる広範な弛緩性麻痺を含む長期間の脱力状態が続いた。この症状はアトロピン投与と安静により4週間以内に回復した (ATSDR (2003))。
(3) 5人の男性被験者に純度不明の本物質約0.11 mg/kg/dayを32日間、続いて約0.23 mg/kg/dayを47日間カプセル投与したところ、血漿及び赤血球ChE活性の低下はみとめられず、臨床症状も誘発されなかった。別の5人の被験者に約0.34 mg/kg/dayを56日間投与したところ、臨床症状はみられなかったが、投与終了から約3週間後の血漿中ChE活性が最大25%低下し、その後赤血球ChE活性の低下もみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
(4) ラットの90日間経口投与試験では、75 mg/kg (区分2の範囲) で脳波 (EEG)、筋電図 (EMG) において興奮性亢進を示す変化がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
(5) ラットの13週間エアロゾル吸入ばく露試験では、0.1 mg/L (90日換算値: 0.0722 mg/L、区分2の範囲) 以上で赤血球のChE活性阻害、鼻腔及び喉頭の病理組織学的病変、2.01 mg/L (90日換算値: 1.45 mg/L、区分2超の範囲) で流涎がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2003))。

【参考データ等】
(6) ヒトでは、殺虫剤用途で製造された市販品に含まれる複数の不純物により本物質の正常な代謝が阻害され、毒性が増強されたとの報告がある。これは不純物のカルボキシルエステラーゼ阻害作用によると考えられている。本物質の製剤に含まれるイソマラチオンが毒性の増強に影響するとの報告があるが、他の不純物の影響も示唆されている (EHC 63 (1986))。
(7) 本物質は、哺乳類や昆虫で代謝によりマラオクソン (CAS番号 1634-78-2) に変換される。マラオクソンは本物質よりも強力なChE阻害作用を示すことが知られている (EPA Pesticides RED (2006))。
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 0.00070 mg/L(水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準の設定に関する資料, 2018)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
急速分解性がなく(BODによる4週間分解度:22%(METI既存点検結果, 2002))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.00006 mg/L(EPA RED, 2006, 2009)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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