政府によるGHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 56-75-7
名称 2,2-ジクロロ-N-[2-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)-2-(4-ニトロフェニル)エチル]アセトアミド  (別名:クロラムフェニコール)
物質ID R02-B-069-MHLW, MOE
分類実施年度 令和2年度(2020年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2006年度(平成18年度)  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含み、酸素収支の計算値は-114と判定基準の-200より高いが、データがなく分類できない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、可燃性 (GESTIS (Access on May 2020)) という情報がある。
8 自己反応性化学品 分類できない
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
10 自然発火性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (N) と結合しているが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
17 鈍性化爆発物 分類できない
-
-
- - 爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含むが、データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 2,500 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020))
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分2とした。情報源の精査により、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性 (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))、マウスの染色体異常試験で陽性 (食安委 動物用医薬品評価書 (2014)、EU EMEA (1996)、JECFA TRS 925 (2004))、ラット及びマウスの小核試験で陰性の報告がある (食安委 動物用医薬品評価書 (2014)、EU EMEA (1996)、JECFA TRS 925 (2004))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、陽性の報告 (食安委 動物用医薬品評価書 (2014)、MAK (DFG) vol.9 (1998))、大腸菌を用いたDNA修復試験で陰性、陽性の報告 (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))、哺乳類培養細胞を用いたDNA断片化検出試験で陽性 (食安委 動物用医薬品評価書 (2014)、EU EMEA (1996))、姉妹染色分体交換試験で陰性、陽性の報告、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験で陽性の報告がある (食安委 動物用医薬品評価書 (2014)、EU EMEA (1996)、JECFA TRS 925 (2004))。
(3) クロラムフェニコールはin vivo の体細胞に対し遺伝毒性を有するとの報告がある (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3) に基づき、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 50 (1990))、NTPでR (NTP Roc (14th, 2016)) に分類されている。
(2) 要約のみの報告であるが、マウスに本物質を飲水投与した発がん性試験では、2系統のマウスでリンパ腫の発生率の増加、1系統のマウスで肝細胞がんの発生率の増加がみられた (食安委 動物用医薬品評価書 (2014)、EU EMEA (1996))。
(3) 本物質は再生不良性貧血を誘発し、白血病の発生に関連している (IARC 50 (1990))。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5) より、発生毒性試験において胚及び胎児の死亡率の増加がみられた。母動物毒性の有無については明確ではないが (4) より、最高用量で体重低値のみがみられたとの記載から、明確な母動物毒性がみられない用量で胚・胎児死亡率の増加がみられたと判断し、区分1Bとした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 妊娠マウスに強制経口投与した発生毒性試験において、胚/胎児死亡率増加がみられている。胚・胎児死亡率は、1,000 及び2,000 mg/kg/dayにおいてそれぞれ71及び100%であり、500 mg/kg/dayでは31%、対照群では24%であった (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(2) 妊娠ラットに強制経口投与した発生毒性試験において、胚/胎児死亡率増加がみられている。胚・胎児死亡率は、妊娠5~15日に投与した500 mg/kg/dayで63% (背景対照: 23%)であった。また、臍ヘルニアが2,000 mg/kg/dayを妊娠6~8日に経口投与した群で36%、妊娠8日に単回投与した群で11%にみられている (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(3) 妊娠ウサギに強制経口投与した発生毒性試験において、胚/胎児死亡率増加がみられている。 500 mg/kg/dayでは死亡胎児数の増加はみられなかったが、1,000 及び2,000 mg/kg/dayでは、胎児死亡率がそれぞれ25 及び58%であった(背景対照: 10%)。骨化遅延が投与群で顕著であったが、奇形の発現率は低かった (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(4) ラット及びマウスでは500~2,000 mg/kg/day、ウサギでは500及び1,000 mg/kg/dayを経口投与した発生毒性試験で、3つすべての種で胚及び胎児の死亡と胎児発育遅延の発生率の増加がみられた。ラットでは 催奇形性は主に臍ヘルニアでラットでのみに観察された。 妊娠した動物は最高用量での体重低値以外に毒性の兆候を示さなかった (IARC 50 (1990)、HSDB (Access on May 2020))。これは、(1)~(3) と同じデータ。
(5) ラット及びウサギの催奇形性試験において、催奇形性効果を示さなかったが、試験された最低用量レベルでさえ胎児死亡の高い発生率を引き起こした (EU EMEA (1996))。

【参考データ等】
(6) 食安委 動物用医薬品評価書 (2014) では、「生殖発生毒性を評価するには十分なデータはないと判断されたが、生殖発生毒性を有することが推察されたことから、ヒトに対する影響が懸念される。」としている。
(7) ラットの妊娠9~11日目の投与で胎児に水頭症と口蓋裂を含む奇形がみられたとの報告がある (IARC 10 (1976)、HSDB (Access on May 2020))。なお、このデータはIARC 50 (1990) には引用されていない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (造血系、神経系、循環器系、消化器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(7) より、区分1 (造血系、神経系、循環器系、消化器) とした。新たな情報源の情報を加えて検討を行い、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質は、医療用医薬品として使用される抗生物質である。重大な副作用として、再生不良性貧血、Gray syndrome、視神経炎又は末梢神経炎、その他の副作用として血液への影響 (顆粒球減少、血小板減少症)、消化器への影響 (胃部圧迫感、悪心、嘔吐、軟便、下痢、腸炎)、過敏症状、菌交代症、ビタミン欠乏症が挙げられている (JAPIC医療用医薬品集2017 (2016))。
(2) ヒトにおいて本物質の血液毒性が確認されている。一つは、通常発現する用量相関的で可逆的な骨髄抑制であり、投与中はこの影響が亢進するが、休薬後は回復する。もう一つは、重篤な再生不良性貧血であり、用量相関性がなくしばしば不可逆的である (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(3) ヒトでは本物質の投与量が4 g/日を超える場合、用量相関的な骨髄抑制がより多く生じることが明らかである。投与が持続的なものでない場合や、用量が減少した場合、毒性は可逆的である (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(4) 本物質は、グレイ症候群 (“Grey Baby Syndrome”、”Grey Syndrome”) の発症に関与することが知られている。グレイ症候群は、通常、本物質の投与開始2~9日後に始まる心血管虚脱状態である。その特徴は、食事ができない、嘔吐、腹部膨満、チアノーゼ、無気力、ショック状態、体温の低下等である。発症例の60%が死亡するとも言われ、通常、本物質の投与量が25 mg/kg 体重/日を超えると発現するとされている (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(5) 治療用量の本物質を長期にわたり経口投与すると、出血が誘発される。これは、骨髄抑制又はビタミンK を生成する腸内細菌叢の弱体化から起こるビタミンK の合成阻害によるものである (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(6) 長期にわたる本物質投与による眼毒性について数例が報告された。この眼毒性は、しばしば暗点及び視力低下を伴う視神経炎で球後視神経炎が観察される場合もある。球後視神経炎は嚢胞性線維症の症例でみられたが、嚢胞性線維症患者の特異的な感受性であるというよりむしろ嚢胞性線維症における治療に本物質を選択したことを反映している可能性がある。総用量はしばしば80~250 gの範囲で数ヵ月にわたり投与された。ある患者は、本物質を6週間にわたり投与 (6 g/日; 総用量約250 g) され、後両側性視神経炎を発症した。末梢神経炎が眼に対する影響を伴う可能性がある (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
(7) 本物質の投与後に難聴がみられることがある。ある事例では、2.5歳の男児に本物質を26日間投与 (125 mg/kg/日) し、男児は難聴となり、休薬しても難聴の状態が持続した。他の薬剤は投与されなかった (食安委 動物用医薬品評価書 (2014))。
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(デスモデスムス属)72時間EC50 = 0.78 mg/L(HSDB, 2020)であることから、区分1とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(BIOWIN)、急性毒性は区分1であることから、区分1とした。急性毒性の分類結果変更及び慢性毒性の分類方法の変更により、旧分類から分類結果が変更となった。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

GHS関連情報トップページに戻る