政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 89-32-7
名称 1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物
物質ID R03-B-001-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2008年度(平成20年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、可燃性との情報(GESTIS(accessed May 2021))がある。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点は630℃ (GESTIS (Accessed May 2021))であり常温で発火しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラット(雌)のLD50:> 2,000 mg/kg(OECD TG 420、GLP)(REACH登録情報 (Accessed May 2021))
(2)ラットのLD50:> 2,250 mg/kg(NIOSH in PubChem (Accessed May 2021))

1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(REACH登録情報 (Accessed May 2021))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
【分類根拠】
(1)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)本物質は皮膚に刺激性を示す(Haz-Map, Information on Hazardous Chemicals and Occupational Diseases in PubChem (Accessed May 2021))。

【参考データ等】
(2)In vitro 皮膚腐食性試験(OECD TG 431相当、GLP)において、ばく露4時間及び24時間後の細胞生存率はそれぞれ108.1%及び96.7%であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG 405相当、21日観察)において、重度の眼刺激性影響がみられたとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。

【参考データ等】
(2)CLP分類ではEye Dam. 1に分類されている。
4 呼吸器感作性 区分1


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)主に本物質や無水フタル酸、無水マレイン酸及び無水トリメリット酸にばく露された92名の作業員を対象とした横断調査において、ばく露期間が1年以内の作業員の内、56名が職業性症状を示した。18名が呼吸困難を示し、8名が気管支閉塞を示した。特異的IgE抗体が15名の作業員で検出され、この内12名が症状を示したとの報告がある(CICAD (2009))。
(2)ラット(n=10/性/群)を用いた試験(感作ばく露:500μg/m3を吸入、6時間/日、5日/週、惹起ばく露:500μg/m3、6時間/日)において、対照群と比べて肺相対重量、肺の病巣数およびPMDA特異的血清IgG抗体の有意な増加がみられた。光顕による肺病変(間質性炎症、細気管支のリンパ球浸潤)は対照群でも軽微~軽度にみられたが、試験群では対照群より強く(軽度~顕著)、かつ軽度~顕著な肺胞出血、血管周囲の急性及び慢性炎症もみられた。試験群で肺病変及びPMDA特異的血清IgG抗体の有意な増加がみられたことから、本物質が呼吸器感作性を誘導することが示唆された(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。

【参考データ等】
(3)ラット(n=10/性/群)を用いた試験(感作ばく露:50μg/m3を吸入、6時間/日、5日/週、惹起ばく露:50μg/m3を吸入、6時間/日)において、惹起ばく露終了18時間後に剖検し、肺重量測定及び肺病巣の計数、さらに血清IgG抗体を測定した結果、肺重量、肺病巣数ともに有意な変化はみられなかったが、ばく露群の雄で肺病巣数が多かった3例では血清IgG抗体レベルが高かったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
(4)CLP分類ではResp. Sens. 1に分類されている。
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)マウス(n=4)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は9.12(5%)、8.62(10%)、9(25%)、との報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。

【参考データ等】
(2)CLP分類ではSkin Sens. 1に分類されている。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
In vivoのデータはないが(1)~(4)より、異なる3つの指標で全て陰性であることから、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1)細菌復帰突然変異試験(OECD TG471、GLP)において、陰性の結果が得られている(厚生労働省 既存点検結果(2016))。
(2)ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験(OECD TG473、GLP)において、陰性の結果が得られている(REACH登録情報(Accessed May 2021))。
(3)ほ乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験(OECD TG473、GLP)において、陰性の結果が得られている(厚生労働省 既存点検結果(2016))。
(4)ほ乳類培養細胞(CHL)を用いた遺伝子突然変異試験(OECD TG476、GLP)において、陰性の結果が得られている(REACH登録情報(Accessed May 2021))。

【参考データ等】
(5)本物質製造に従事した作業者42人と35人のドナーから採取した末梢血リンパ球の染色体異常試験で、本物質ばく露群では対照群(2.29%)と比較して異常なメタフェーズの発生頻度の増加(4.47%)を認めたとする報告がある(HSDB (Accessed May 2021))。
6 発がん性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、動物2種で発がん性試験が陰性であることから区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間(105週間)混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験において、雌雄とも15,000 ppm(1,000 mg/kg/day)まで、投与に関連した腫瘍の発生増加は認められなかった(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
(2)マウスを用いた2年間(104週間)混餌投与による発がん性試験において、雄では16,346 ppm (約2,340 mg/kg/day)、雌では12,019 ppm (約1,717 mg/kg/day)まで投与に関連した腫瘍の発生増加は認められなかった(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1Bとした。親動物に重篤な一般毒性影響がみられない用量で、繁殖能への影響(黄体数・着床痕数の低値、着床前死亡率の増加、出産児数及び出生児数の低値)がみられた。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた強制経口投与による反復投与/生殖発生毒性スクリーニング併合試験(OECD TG 422、GLP、交配14日前から交配期間を経て計42日間(雄)、交配14日前から交配・妊娠期間を経て授乳4日までの計41~46日間(雌))において、1,000 mg/kg/dayで親動物に一般毒性影響(境界縁扁平上皮の過形成及び腺胃粘膜下織の細胞浸潤(雌雄)など)、黄体数・着床痕数の低値、着床前死亡率の増加、出産児数及び出生児数の低値がみられたとの報告がある(厚生労働省 既存点検結果 (2017))。

【参考データ等】
(2)ラットを用いた強制経口投与による生殖/発生毒性スクリーニング試験(OECD TG 421、GLP、交配前から計42日間(雄)、哺育4日まで(雌))において、生殖毒性はみられなかったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性)


警告
H335 P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
P405
P501
【分類根拠】
(1)より区分3(気道刺激性)とした。

【根拠データ】
(1)ヒトへの複数のばく露事例より、本物質は眼刺激性、皮膚刺激性、気道刺激性を引き起こすと報告されている(EU REGULATION (EC) No 1272/2008 in PubChem (Accessed May 2021))。

【参考データ等】
(2)エポキシ樹脂製造中に本物質にばく露された17歳男性が、貧血を伴う急性出血性肺胞炎と臨床診断された。血清学的分析により、患者血清の免疫ブロッティングにより、正常な血清タンパク質の自己抗体が示されたとの報告がある(HSDB in PubChem (Accessed May 2021) )。
(3)ヒトへの複数のばく露事例より、一般的に本物質のばく露により非心臓性肺水腫、免疫感作、粘膜・皮膚刺激性がみられる。ただし肺水腫、肺出血、化学性肺炎の報告のいくつかは、免疫感作を表している可能性があると報告されている(HSDB in PubChem (Accessed May 2021) )。
(4)ラットを用いた単回経口投与試験(OECD TG 420、GLP)において、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で影響がみられなかったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
(5)ラットを用いた単回経皮投与試験(OECD TG 402、GLP)において、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で影響がみられなかったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1(呼吸器)とした。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた吸入ばく露試験(粉塵、14日間(内、投与10日間))において、0.021 mg/L(90日換算:0.015 mg/L、区分1の範囲)で体重増加抑制、軽度呼吸困難及び鼻刺激、軽度肺病変(巣状・多巣状間質性肺炎、気管支腔内泡沫状マクロファージの集簇、肺胞巨細胞(異物性)の出現を伴うⅡ型肺胞細胞の肥大及び過形成)が、0.035 mg/L(90日換算:0.004 mg/L、区分2の範囲)で努力呼吸が、0.091 mg/L(90日換算:0.01 mg/L、区分2の範囲)で鼻孔の赤色分泌物、呼吸困難・喘ぎ呼吸、好中球増加がみられたとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。
(2)ラットを用いた強制経口による経口投与試験(OECD TG422、GLP、雄:42日間、雌:41~46日間)において、100 mg/kg/day(90日換算:46.7 mg/kg/day(雄)、45.6~51.1 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で雌雄に境界縁扁平上皮の過形成、腺胃粘膜下織の細胞浸潤が、1,000 mg/kg/day(90日換算:467 mg/kg/day(雄)、456~511 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で雄に体重の低値傾向又は低値、摂餌量の高値、尿中ナトリウム・カリウムの1日排泄量の低値、無機リンの低値、雌にフィブリノゲンの高値、無機リンの低値、ALT の高値、自発運動量の低値傾向又は低値がみられたとの報告がある。(厚生労働省 既存点検結果 (2017))。
(3)ラットを用いた混餌投与による105週間経口投与試験において、7,500 ppm(500 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で影響がみられず、15,000 ppm(1,000 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で体重低値がみられたとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed May 2021))。

10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分2
-
-
H401 P273
P501
本物質は無水物であり、水中で速やかに加水分解されピロメリット酸(CAS番号 89-05-4)を生じるため、ピロメリット酸のデータを分類根拠として採用した。藻類(デスモデスムス)72時間ErC50 = 8.1 mg/L(REACH登録情報, 2021)であることから、区分2とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分に該当しない
-
-
- - 分類に利用できる慢性毒性データは得られていない。
急性毒性区分2であるが、急速分解性があり、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=2.14(KOWWIN v1.68 (EPI Suite))ことから、区分に該当しない。
新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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