政府によるGHS分類結果

English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 111-30-8
名称 グルタルアルデヒド
物質ID R03-B-008-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2009年度(平成21年度)   2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4
-
警告
H227 P370+P378
P210
P280
P403
P501
引火点71℃(GESTIS (Accessed July 2021))に基づいて区分4とした。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点は395℃(REACH登録情報(Accessed July 2021))であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分3とした。

【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLD50:123 mg/kg(OECD TG 401、GLP)(CLH Report (2013)、SIAR (2001)、AICIS 評価書(1994))
(2)ラット(雌)のLD50:77 mg/kg(OECD TG 401、GLP)(CLH Report (2013)、SIAR (2001)、AICIS 評価書(1994))
(3)ラット(雄)のLD50:158 mg/kg(CLH Report (2013)、SIAR (2001))
(4)ラット(雌)のLD50:143 mg/kg(CLH Report (2013)、SIAR (2001))
(5)ラットのLD50:134~140 mg/kgの間(厚労省 リスク評価書 (2015))

1 急性毒性(経皮) 区分3


危険
H311 P302+P352
P361+P364
P280
P312
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分3とした。新たな情報源の追加により区分を変更した。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:403 mg/kg(MOE 初期評価 (2017)、厚労省 リスク評価書 (2015))
(2)ウサギ(雄)のLD50:875 mg/kg(CLH Report (2013))
(3)ウサギのLD50:640~2,000 mg/kgの間(AICIS 評価書 (1994)、SIAR (2001))
(4)ウサギ(雄)のLD50:900 mg/kg(AICIS 評価書 (1994))
(5)ウサギ(雄)のLD50:1,430 mg/kg(AICIS 評価書 (1994))

【参考データ等】
(6)ウサギのLD50:> 1,000 mg/kg(CLH Report (2013)、EPA Pesticides (2007))
(7)ラットのLD50:> 1,000 mg/kg(CLH Report (2013)、DFG MAK (1997))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度の90%(19,541ppm)より低いため、蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。

【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLC50(4時間):23.5 ppm(OECD TG 403、GLP)(AICIS 評価書 (1994))
(2)ラット(雌)のLC50(4時間):40.1 ppm(OECD TG 403、GLP)(AICIS 評価書 (1994))
(3)ラットのLC50(4時間):> 24.4 ppm( >0.11mg/L)(OECD TG 403、GLP)(CLH Report (2013))
(4)ラットのLC50(4時間):23.5~44.4 ppmの間(NITE初期リスク評価書 (2008))

【参考データ等】
(5)ラット(雌)のLC50(4時間):68.4 ppm(0.28mg/L)(CLH Report (2013))
(6)ラット(雄)のLC50(4時間):85.5 ppm(0.35mg/L)(CLH Report (2013))
(7)ラット(雄)のLC50(4時間):126 ppm(0.52mg/L)(CLH Report (2013))
(8)ラット(雌)のLC50(4時間):110 ppm(0.45mg/L)(CLH Report (2013))
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1B


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1)本物質は実験動物の皮膚に対して25%以上の水溶液で刺激性を示す。ヒトの皮膚に付着すると、発赤、水疱を生じるほか、のどや鼻粘膜への刺激症状がみられる。皮膚炎等の防止策として厚生労働省は作業環境気中濃度の最大値の目安を0.05 ppm に設定している(厚労省 リスク評価書 (2015))。
(2)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、4時間適用、10日観察)において、適用後24/48/72h後の紅斑スコアの平均は2.8、浮腫スコアの平均は2.6であり、10日後の観察でも壊死と剥離が認められ回復性はみられなかった。並行して実施した1時間ばく露群ではばく露後に生存した5例のうち2例で壊死、4例で皮膚剥離がみられ、3分ばく露群では1例で軽度の紅斑がみられたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(3)ウサギ(n=4)を用いた皮膚刺激性試験(4時間適用、8日観察)において、50%水溶液を適用した場合、8日後に壊死、紅斑及び浮腫が認められ、非可逆的な影響であった。また、ウサギ(n=2)を用いた皮膚刺激性試験(50%水溶液を1時間適用、8日観察)では8日後に紅斑及び浮腫を伴う重度の痂皮脱落が認められ、回復性はみられず、ウサギを用いた皮膚刺激性試験(50%水溶液を3分間適用、8日観察)では浮腫はみられず、8日後に痂皮がみられたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(4)ウサギ(n=5)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、半閉塞)において、24%溶液適用群1例について、3分間適用し24時間観察したところ腐食性はみられなかったが、1時間または4時間適用し24時間観察したところ腐食性がみられた。15%溶液適用群1例について、3分間または1時間適用し72時間観察したところ腐食性はみられなかったが、4時間適用し72時間観察したところ腐食性がみられた。4%溶液適用群3例について、4時間適用し14日間観察したところ重度の浮腫がみられた(紅斑・痂皮スコア:3.3/2.7/2.7、浮腫スコア:4/2/3)との報告がある(REACH登録情報 (Accessed July 2021))。

【参考データ等】
(5)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「グルタルアルデヒド」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(皮膚障害、前眼部障害又は気道障害)が、業務上の疾病として定められている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)皮膚腐食性/刺激性で区分1Bである。
(2)本物質は実験動物の眼に対して濃度依存的な刺激性が認められ、5%以上の水溶液では重度の角膜損傷がみられる。ヒトの眼粘膜に接触すると発赤、痛みを生じ、高濃度では角膜炎や結膜炎を発症する場合があるとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015))。
(3)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(GLP、45%溶液、21日観察)において、24/48/72h後の角膜混濁スコアの平均は4、結膜発赤スコアの平均は1.7、結膜浮腫スコアの平均は3.9であり、角膜混濁と結膜腫脹が非常に強く、角膜と虹彩の所見の完全なスコア判定は困難であった。影響は21日間には回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(4)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(50%溶液、8日観察)において、角膜混濁は24時間後の限局的から強さを増して8日後には75~100%の領域に広がった。結膜発赤と浮腫も進行し、8日後までに眼瞼が半分閉鎖した(角膜混濁スコア:2/2/2/2/2/2.3、虹彩炎スコア:1/1/1/1/1/1、結膜発赤スコア:2/2/2.3/2/2.3/2.3、結膜浮腫スコア:2/2.6/2.3/2.3/2.3/2.3)との報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))。

【参考データ等】
(5)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「グルタルアルデヒド」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(皮膚障害、前眼部障害又は気道障害)が、業務上の疾病として定められている。
4 呼吸器感作性 区分1A


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1)ヒトにおいて、殺菌消毒剤等に使用されるグルタルアルデヒドに反復ばく露されることにより、鼻炎、息切れ、喘鳴、喘息等の呼吸器への感作を起こすことがある(厚労省 リスク評価書 (2015))。
(2)職業的に高濃度の本物質にばく露された労働者に呼吸器感作性がみられたとする複数の報告があり、ばく露濃度が20~30 ppb以上で感作性が生じる可能性がある。また、作業者ばく露による喘息の発症と本物質ばく露との関連性を指摘する報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(3)マウス(n=6/群)を用いたIgE試験において、本物質の0%、2.5%、5%及び12.5%溶液50μLを塗布した7日後に25μL塗布し、その14日後に血清IgEを測定したところ、血清IgEが用量依存的に増加した(血清IgE:0.304±0.024μg/mL(0%)、0.516±0.038μg/mL(2.5%)、0.640±0.195μg/mL(5%)、1.280±0.193μg/mL(12.5%))との報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(4)日本産業衛生学会では気道感作性物質第1群に分類されている。
(5)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「グルタルアルデヒド」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(皮膚障害、前眼部障害又は気道障害)が、業務上の疾病として定められている。
4 皮膚感作性 区分1A


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)~(8)より、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1)グルタルアルデヒドの殺菌消毒に携わる作業者では、手、腕、顔、頸にそう痒性皮膚炎や湿疹、アレルギー性接触性皮膚炎を発症することが報告されているとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015))。
(2)59ヶ所の内視鏡検査部門の看護師348人を対象としたイギリスの調査では、対象者の91.4%が主に本物質にばく露されており、本物質にばく露した対象者の44%に職業性の接触皮膚炎がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2017))。
(3)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406相当、GLP、皮内投与:0.1%)において、惹起後の感作率は68%(13/19例)であり、再惹起後の感作率は32%(6/19例)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(4)モルモットを用いたMaximisation試験において、感作性を示すとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE 初期リスク評価書 (2008))。
(5)マウスを用いた局所リンパ節試験(LLNA)において、アセトン/オリーブ油を溶媒とした場合のEC3値は0.07%、プロピレングリコ-ルを溶媒とした場合のEC3値は1.5%と算出されたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(6)マウスを用いた局所リンパ節試験(LLNA)において、刺激指数(SI値)は15.5(2.5%)、23.4(5%)、38.7(12.5%)及び34.9(25%)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2014)、CLH Report (2013))。
(7)日本産業衛生学会では皮膚感作性物質第1群に分類されている。
(8)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「グルタルアルデヒド」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(皮膚障害、前眼部障害又は気道障害)が、業務上の疾病として定められている。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(4)より、区分に該当しない。(3)では追加試験の必要はないと判断されていることから、本物質について区分2とする根拠はないことから区分に該当しないと判断した。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスの骨髄赤芽球を用いた染色体異常試験(単回腹腔内投与)で、唯一陽性の結果であったが、ラットの骨髄赤芽球を用いた染色体異常試験、マウスの末梢血赤芽球をもちいた小核試験(単回強制経口投与、13週間吸入ばく露)、マウス骨髄赤芽球をもちいた小核試験(3日間腹腔内投与)、マウスを用いた優性致死試験、及びラットの肝細胞を用いたUDS試験では全て陰性の結果であった(NITE 初期リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2017)、厚労省 リスク評価書 (2019))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験では多くが陽性、ほ乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験及び染色体異常試験では陽性又は陰性の結果であった(NITE 初期リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2017)、厚労省 リスク評価書 (2019))。
(3)EUでは、本物質の遺伝毒性はin vitroでは強力な証拠が得られているが、in vivoでは1試験を除き全て陰性である。本物質が接触部位では変異原性を示す可能性は残されているものの、発がん性試験及び生殖毒性試験の結果が陰性であることから、追加試験の必要はないと結論している。(CLH Report (2013))。
(4)厚労省も本物質の変異原性については判断できないとしている(厚労省 リスク評価書 (2019))。なお、本物質は変異原性試験結果で陽性であったため、安衛法の健康障害防止指針(変異原性)の対象物質とされている(厚労省 リスク評価書 (2019))。
6 発がん性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)国内外の分類機関による既存分類結果では、ACGIHでA4(ACGIH (7th, 2015))、EPAでNL(Not Likely to be Carcinogenic to Humans)(EPA OPP Annual Cancer Report 2020(Accessed July 2021): 2006年分類)、DFGでカテゴリー4(DFG MAK (2006))に分類されている。
(2)ラットを用いた2年間飲水投与による発がん性試験で、雌に大顆粒リンパ球白血病の発生率の増加がみられたが、ラットでは加齢性自然発生性の腫瘍であり用量依存性がないことから、毒性学的意義は明確でない(厚労省 リスク評価書 (2019)、MOE 初期評価 (2017)、NITE 初期リスク評価書 (2008))。
(3)マウスを用いた78週間吸入ばく露及びマウス又はラットを用いた104週間吸入ばく露による3つの発がん性試験のいずれにおいても、ばく露に関連した腫瘍発生率の増加はみられなかった(同上、NTP TR490 (1999))。

【参考データ等】
(4)米国の本物質製造工場に勤務していた男性従業員186人を対象としたコホート研究では、死亡率は14/186人 (SMR = 0.55、p = 0.15)、がん死亡率は4/186人 (SMR = 0.65、p = 0.59) であり、本物質へのばく露によるがんの過剰発生はみられなかった。多少作業員を入れ換えた本コホート188人を対照群(非ばく露部門作業者)3,173人と比較調査した結果、がんによる死亡は100 ppb/年超ばく露群においても期待値より低く、ばく露の増加に伴って増加傾向を示す特定の腫瘍はなく、白血病、鼻腔や上咽頭のがんによる死亡者もみられなかったと報告された(厚労省 リスク評価書 (2019)、MOE 初期評価 (2017)、NITE 初期リスク評価書 (2008))。
(5)DFGは遺伝毒性の証拠がin vitro ではあること、及び13週間吸入ばく露後に鼻腔上皮組織に細胞増殖の発生頻度増加がみられることから、本物質の気道組織への発がん性影響の可能性は排除できない(ただし、気道刺激を生じない濃度では細胞増殖も起こさず、遺伝毒性影響もわずかしか働かない)として、Category 4とした(DFG MAK (2006))。
7 生殖毒性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(4)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)フィンランドの病院で殺菌消毒に従事していた全看護師を対象としたコホート研究において、妊娠期間中に殺菌消毒に従事した看護師 (545例) における自然流産発生率は15.1 %であり、対照群 (1,179例) の発生率10.5%に比べ有意に高かった。ばく露された消毒剤と自然流産との関連を調べたところ、グルタルアルデヒドについては、妊娠前、妊娠中のいずれのばく露においても自然流産との関連はみられなかった。(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(2)フィンランドで自然流産及び奇形児を出産した看護師217人及び46人を対象とした症例対照研究において、自然流産及び奇形児出産のグルタルアルデヒドばく露に対するオッズ比はそれぞれ1.1 、0.8であり、グルタルアルデヒドのばく露によるこれらのリスクの増加は認められなかったとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))
(3)ラットを用いた経口投与による二世代生殖毒性試験において、生殖毒性はみられなかったとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017)、ACGIH (7th, 2015))。
(4)妊娠動物(マウス、ラット、ウサギ)を用いた経口(強制経口又は飲水)投与による4つの発生毒性試験において、発生毒性はみられなかったとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017)、ACGIH (7th, 2015))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、ヒトでは主に鼻、咽喉などに対する刺激性の症状がみられた。また、(5)~(10)より、動物試験において、中枢神経と鼻、肺などへの影響がみられた。しかし、中枢神経への影響は全身影響に伴うものであると考えられる。以上のことから、ヒトと動物試験の影響を総合的に考慮し、区分1(呼吸器)とした。

【根拠データ】
(1)病院で週 1 回以上グルタルアルデヒドを使用する従業者 44 名のうち、64 %が眼と鼻の刺激症状、41 %がのどの刺激症状、16 %がのどの痛みを訴えたとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(2)職業ばく露による気道刺激の証拠としては、くしゃみ、鼻汁、咳、咽頭刺激、喉のヒリヒリ感等の鼻と気道の症状があるとの報告がある(CLH Report (2013))。
(3)気道刺激以外の本物質関連性の全身影響には頭痛、めまい、吐き気、腹痛、手足の無力感、心臓影響(心動悸、頻脈)であるとの報告がある(EPA Pesticides (2007))。
(4)ヒトへの偶発的な事故例として、手術中に誤ってグルタルアルデヒド(Cidex)100 mLを顔面に浴びた小児に発熱、嘔吐、頻呼吸、頻脈などの症状がばく露 6 時間後から見られたが、最終的には後遺症なく回復しているとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、産衛学会 許容濃度等の勧告 (2006))。
(5)ラットを用いた単回経口投与試験において、うずくまり姿勢、自発運動低下、歩行異常、浅速呼吸、立毛、腹部膨満、眼瞼下垂、紅涙、鼻粘膜の出血、下痢、肺の充血及び腺胃のびらんがみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008))。
(6)ラットを用いた単回経皮投与試験において、200~1000 mg/kg(区分1の範囲)で、呼吸困難、無関心、興奮、よろめき、アトニー、震え、全身状態の悪化がみられたとの報告がある(CLH Report(2013))。
(7)ラットを用いた吸入ばく露試験において、 自発運動低下、身づくろい及び洗顔動作の増加、呼吸数減少、流涙、眼瞼下垂及び鼻出血、肺にうっ血及び気腫がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2009))。
(8)ラットを用いた単回吸入ばく露試験において、0.11mg/L(区分1の範囲)で、剖検の結果、鼻炎と鼻腔の杯細胞過形成がみられたとの報告がある(CLH Report (2013))。
(9)ラットを用いた単回吸入ばく露試験において、呼吸困難が多くみられたほか、0.094 mg/L(区分1の範囲)及び0.17 mg/L(区分1の範囲)で肺の色の変化がみられ、死因は肺の損傷にあるとの見解がなされている報告がある(AICIS 評価書(1994))。
(10)ウサギを用いた経皮投与試験において、身づくろい及び洗顔動作の増加、ラッセル音及び被毛の黄変がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2010))。

【参考データ等】
(11)ラット、マウス、モルモットを用いた急性毒性試験で、中枢神経抑制、痙攣、呼吸困難などの症状がみられたとの報告がある(GESTIS (Accessed July 2021))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、ヒトでは主に鼻や咽喉といった呼吸器に症状がみられた。また、動物試験において、(4)~(8)より、吸入経路では区分1の範囲で鼻、肺などに症状がみられた。以上のことから、区分1(呼吸器)とした。

【根拠データ】
(1)半年間に 2 %グルタルアルデヒド溶液による殺菌消毒に月 1 回以上従事したスウェーデンの病院スタッフ 39 人を対象とした横断研究で、手の湿疹および発疹、鼻炎・鼻閉症状、咽頭痛、頭痛、吐き気の発症頻度がばく露群で有意に高く、ばく露頻度とも関連がみられた(平均ばく露濃度 0.01ppm、範囲<0.002~0.14 ppm)との報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(2)1~2 %グルタルアルデヒドによる殺菌消毒に 1 年以上従事したオーストラリアの看護師 135 人を対象とした横断研究で、過去 1 年間に皮膚炎、眼刺激症状、頭痛、倦怠感を発症した頻度はばく露群で有意に高かった(平均ばく露濃度 0.032 ppm、範囲0.003~0.25 ppm)との報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015))。
(3)国内の病院内視鏡室での調査では、適切な換気をしていない室内のグルタルアルデヒド濃度は 0.1~0.8 ppm であり、従事者にみられた症状は、頭痛、眼・鼻・喉の刺激、乾燥・紅斑などの皮膚症状であったとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015))。
(4)ラットを用いた4週間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.000409 mg/L(90日換算:0.000292 mg/L、区分1の範囲)で肺相対重量の増加、細気管支上皮細胞の空胞化、細気管支クララ細胞及び肺胞毛細血管内皮細胞の脂肪変性がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015))。
(5)ラットを用いた13週間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.000512 mg/L(0.000366 mg/L、区分1の範囲)で鼻腔上皮の病変(鼻前庭の扁平上皮化生、呼吸上皮の炎症、過形成など)が、0.00102 mg/L(0.000731 mg/L、区分1の範囲)で体重増加抑制(雌)が、0.00205 mg/L(0.00146 mg/L、区分1の範囲)で削痩、呼吸困難及び被毛粗剛、体重増加抑制(雄)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(6)ラットを用いた104週間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.00102 mg/L(0.000731 mg/L、区分1の範囲)で扁平上皮の過形成及び炎症、体重の低値(雄)が、0.00205 mg/L(0.00146 mg/L、区分1の範囲)で呼吸上皮の過形成、炎症及び扁平上皮化生、生存率低下(雌)、体重の低値及び嗅上皮の硝子滴変性(雌)が、0.00307 mg/L(0.00219 mg/L、区分1の範囲)で呼吸上皮杯細胞の過形成、嗅上皮の硝子滴変性(雄)、削痩(雌)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(7)マウスを用いた13週間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.000256 mg/L(0.000183 mg/L、区分1の範囲)で用量依存性の体重増加抑制(雄)、鼻前庭の炎症(雌)が、0.000512 mg/L(0.000366 mg/L、区分1の範囲)で呼吸上皮の扁平上皮化成生、炎症及びびらん、体重増加抑制(雌)が、0.00102 mg/L(0.000731 mg/L、区分1の範囲)で呼吸困難が、0.00205 mg/L(0.00146 mg/L、区分1の範囲)で自発運動の低下、頻呼吸、被毛粗剛、腹臥位、喉頭呼吸粘膜の扁平上皮化生及び壊死がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(8)マウスを用いた104週間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.000256 mg/L(0.000183 mg/L、区分1の範囲)で鼻腔の呼吸上皮の硝子滴変性(雌)が、0.000512 mg/L(0.000366 mg/L、区分1の範囲)で鼻腔の呼吸上皮の扁平上皮化生(雄)、体重の低値(雌)、鼻腔の炎症(雌)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。

【参考データ等】
(9)ラットを用いた飲水投与による90日間経口投与試験において、250 ppm(25 mg/kg/day(雄)、35 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で腎臓相対重量の増加、尿量の減少、摂水量の減少(雄)、血中尿素窒素の増加(雌)が、1,000 ppm(100 mg/kg/day(雄)、120 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で摂餌量の減少及び体重増加抑制、摂水量の減少(雌)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(10)ラットを用いた飲水投与による104週間経口投与試験において、50 ppm(4 mg/kg/day(雄)、6 mg/kg/day(雌)、区分1の範囲)で骨髄の過形成(雌)が、250 ppm(17 mg/kg/day(雄)、25 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で摂餌量及び摂水量の減少、体重増加抑制、腎臓絶対重量の抑制傾向、尿量の減少及び尿浸透圧の増加、尿細管色素沈着(雌)が、1,000 ppm(64 mg/kg/day(雄)、86 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で前胃の胃炎、水腫及び扁平上皮の過形成、骨髄の過形成及び尿細管色素沈着(雄)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2017))。
(11)ラットを用いた4週間経皮投与試験(6時間/日、5日/週)において、50 mg/kg/day(90日換算:35.7 mg/kg/day、区分2の範囲)で投与局所の紅斑、尿素窒素の用量依存性の増加(雄)、摂水量の減少(雌)、血小板及び赤血球数の増加(雌)が、100 mg/kg/day(90日換算:71.4 mg/kg/day、区分2の範囲)で体重増加抑制(雄)が、150 mg/kg/day(90日換算:107 mg/kg/day、区分2の範囲)で投与局所の浮腫(雄)、副腎相対重量の増加(雌)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2008))。
10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
甲殻類(Acartia tonsa)48時間LC50 = 0.07 mg/L(EU CLP CLH, 2013)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
急速分解性があり(28日間のBODによる分解度:59%、TOC分解度:86%、GC分解度:100%(METI既存点検結果, 1995))、藻類(デスモデスムス属)の72時間NOErC = 0.025 mg/L(EU CLP CLH, 2013)から、区分2とした。慢性毒性の分類方法の変更及び新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


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