政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 13463-39-3
名称 ニッケルカルボニル
物質ID R03-B-015-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2


危険
H225 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点<-20℃(closed cup)、沸点43℃(GESTIS(Accessed June 2021)に基づいて区分2とした。なお、UNRTDG分類はUN.1259、クラス・区分6.1、副次危険クラス3、PGⅠである。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - UNRTDGにおいて、UN 1259 Class 6.1(3) PG I に分類されており、優先評価項目である自然発火性液体には該当しないと考えられるため、区分に該当しない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 金属(Ni)を含むが、水溶解度は0.02 g/L(GESTIS(Accessed June 2021))との測定データが得られており、水と急激な反応をしないと考えられる。
13 酸化性液体 分類できない
-
-
- - 酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 無機化合物である。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1とした。試験濃度は飽和蒸気圧の90%(380,067 ppm)より低いため、蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(0.5時間):240 mg/m3(4時間換算:84.9 mg/m3 = 12.2 ppm)(CEPA PSAR (1994)、EHC 108 (1991))
(2)ラットのLC50(0.5時間):56 ppm(4時間換算:19.8 ppm)(US AEGL (2007))
(3)ラットのLC50(0.5時間):33.6 ppm(4時間換算:11.9 ppm)(US AEGL (2007))
(4)ラットのLC50(0.5時間):35 ppm(4時間換算:12.4 ppm)(ACGIH (2014))
(5)ヒトのLC50(0.5時間、推定):3 ppm(4時間換算:1.06 ppm)(US AEGL (2007))
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、旧分類で用いた知見は塩化ニッケルが対象のものであったため本分類では用いず、分類結果を変更した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、旧分類が分類根拠としたHSDBは現在は入手できなかったため、分類結果を変更した。
4 呼吸器感作性 区分1A


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
【分類根拠】
(1)より、ガイダンスに従い、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)日本産業衛生学会ではニッケル自体ないしその化合物として気道感作性物質第2群に分類されている。

【参考データ等】
(2)低レベルのニッケルカルボニルに長期間ばく露を受けた化学技術者が喘息とレフレル症候群を発症したとの報告がある(EHC 108 (1991))。
4 皮膚感作性 区分1A


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)より、ガイダンスに従い、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)日本産業衛生学会ではニッケル自体ないしその化合物として皮膚感作性物質第1群に分類されている。

5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)In vivoでは、ラットを用いた優性致死試験において、吸入ばく露では陰性、静脈内投与では陽性との報告がある(EHC 108 (1991))。
(2)本物質に10年以上ばく露された作業者64人では末梢血リンパ球の染色体異常の発生頻度が非ばく露群と比べて有意な増加を示し、喀痰検査でも本物質ばく露群では非ばく露作業者群と比べて核異性細胞の有意な増加が認められたとの報告、本物質に職業ばく露された作業者から採取した末梢血リンパ球では染色体異常の発生頻度の増加はみられなかったが、本物質が喫煙と協調的に作用して末梢血リンパ球の姉妹染色分体交換の発生頻度を増加させる可能性が考えられたとの報告がある(US AEGL (2007))。
(3)ニッケル化合物は細菌に対して変異原性を示さず、ほ乳類培養細胞を用いた標準的な試験法でも弱い変異原性しか示さないが、in vitro及びin vivoでDNA損傷、染色体異常及び小核形成を誘発する。また、DNA修復障害、エピジェネティックな影響(DNAメチル化パターンの変化等)への関与も仮説として提唱されている(IARC 100C (2012))。
6 発がん性 区分1A


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1)国内外の評価機関による既存分類結果として、本物質を含むニッケル及びニッケル化合物について、IARCではグループ1に(IARC 100C (2012))、本物質についてEPAでB2に(IRIS (1987))、ACGIHでA3に(ACGIH (7th, 2014))、EUでCarc. 2に(CLP分類結果 (Accessed July 2021))それぞれ分類されている。
(2)硫化ニッケル鉱石の精錬及びニッケルマット、ニッケル-銅マットの高温処理、電解精錬、モンドプロセス精錬などニッケルの精製工程に関連した作業者の間で肺がんと鼻腔がんのリスク上昇がみられた。このばく露には、金属ニッケル、酸化ニッケル、亜硫化ニッケル、水溶性ニッケル化合物とニッケルカルボニルが含まれた(IARC 110C (2012))。
(3)ニッケルカルボニル精錬工場の労働者を対象としたイギリスの疫学調査において、雇用後20年以上経過した労働者の集団に肺がんのリスク上昇がみられた(IARC 110C (2012))。
(4)ニッケル化合物と金属ニッケルを含む混合物の発がん性について、ヒトでは十分な証拠がある。これらの物質は肺、鼻腔と副鼻腔にがんを生じる(IARC 110C (2012))。
(5)試験法としては今日の規準を満たすものではないが、本物質を用いたラットの吸入ばく露試験で肺腫瘍を生じたとの報告がある(IRIS (1987)、ACGIH (7th, 2014))。IARCは本物質の実験動物での発がん性について、限定的な証拠があるとしている。また、ニッケル化合物全体の発がん性試験結果を俯瞰すれば、ニッケル化合物が実験動物に発がん性を生じる証拠は十分にあると結論した(IARC 110C (2012))。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1Bとした。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠7~9日のいずれか1日、15分間、22.4ppm)において、いずれの投与群でも同腹児数の減少がみられ、また、妊娠7及び8日の投与群では眼に奇形を有する胎児数の増加(7日:9/14、8日:9/13)がみられたとの報告がある。なお、妊娠8日目の投与群では親動物に死亡(2/15例)がみられている(US AEGL (2007)、ACGIH (7th, 2014))。

【参考データ等】
(2)ハムスターを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠4~8日のいずれか1日、15分間、8.4 ppm)において妊娠4日又は妊娠5日にばく露した母体の胎児に奇形発生頻度増加(5.5~5.8%、対照群0%)、奇形児を有する妊娠腹数の増加(24~33%、対照群0%)及び漿膜腔内出血頻度増加(18~25%、対照群0%)がみられたとの報告がある(US AEGL (2007))。
(3)ハムスターを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠5日、15分間、8.4 ppm)において、親動物に顕著な一般毒性影響(死亡(5/14例))、児動物に生後4日までの死亡率の増加と胎児に漿膜腔出血(腹膜、胸膜、心嚢膜、硬膜下腔)発生例増加が認められた(US AEGL (2007))。
(4)EU CLPではRepr. 1Bに分類されている(CLP分類結果(Accessed July 2021))。

8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、呼吸器、消化管、肝臓、腎臓)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1(中枢神経系、呼吸器、消化管、肝臓、腎臓)とした。なお、(2)でみられる心血管系影響及び(4)は影響の詳細が不明なため、分類に用いなかった。なお、旧分類における副腎、脾臓への重大な影響は(1)~(3)ではみられないことから、標的臓器として採用しなかった。

【根拠データ】
(1)石油精製工場で100人以上が本物質へのばく露を受けた事例において、31人で急性毒性症状(頭痛、胸部と上腹部痛、悪心、嘔吐、胸部締付け感、息切れ、ひどい咳、虚弱、疲労)がみられ、その内2人が死亡したとの報告がある。なお、肺炎、呼吸困難(咳、息切れ、胸部拘束感)、神経症状(痙攣、錯乱)は、重度や致死性の中毒患者に認められた(US AEGL (2007))。
(2)本物質による非致死性職業ばく露179症例において、呼吸器系、神経系、消化管、心血管系影響がみられたとの報告がある。なお、中毒反応の解析の結果、即時期では神経障害、気道刺激が特徴的で、遅延期では胸痛、咳、呼吸困難、動悸、発熱、白血球増多、X線画像異常(不規則な直線状陰影、肺門部の拡大・濃さ増強、散在性の不規則性の結節斑・斑状陰影)が特徴的であった(US AEGL (2007)、EHC 108 (1991))。
(3)名古屋の工場で本物質へのばく露を受けた156人の男性作業者の事例において、137人で肝機能異常、腎不全、皮膚傷害、肺X線画像上の異常な濃さ、脳症の徴候がみられたとの報告がある。なお死亡例はなかったが、これはアンタブスとジチオカルブで治療したことによる効果だと考えられる(US AEGL (2007))。

【参考データ等】
(4)ヒトにおける本物質中毒の事例では、肺の病変以外に、肝臓、腎臓、副腎、脾臓に変性がみられた。また、死亡男性の例では脳の浮腫及び点状出血が認められた(EHC 108 (1991))。

9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
本物質の反復ばく露影響の標的臓器として、(1)より中枢神経系、(2)より呼吸器を採用し、区分1(中枢神経系、呼吸器)とした。新たな情報源を用いて分類した。

【根拠データ】
(1)本物質を長期間取扱った男女作業者を対象に神経伝達物質モノアミンの代謝分解酵素である血清モノアミンオキシダーゼ(SMAO)と脳波を評価した疫学研究において、長期間ばく露群において、SMAO活性の有意な減少と異常脳波の発生頻度の有意な増加がみられたとの報告がある(US AEGL (2007))。
(2)本物質に2~20年間職業的にばく露された作業者の肺機能への影響に関する疫学研究において、14年以上ばく露された男性と10年以上ばく露された女性で、複数の肺機能パラメータ測定値に有意な変化が認められ、本物質への長期ばく露により呼吸機能に非致死性の影響を及ぼす可能性が示唆された。なお、短期ばく露群では殆どのパラメータに変化はなかった。長期ばく露群は平均18.6年(男性)、16.6年(女性)、短期ばく露群は平均2.5年(男性)、3.8年(女性)ばく露された作業者で構成され、作業エリアのニッケルカルボニルの平均濃度は0.007~0.52 mg/m3 (0.00098~0.072 ppm)であった。非ばく露の作業者を対照群とした(US AEGL (2007)、ACGIH (2014))。

10 誤えん有害性 分類できない
-
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 分類できない
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- - データがなく分類できない。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 分類できない
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- - データがなく分類できない。
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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