政府によるGHS分類結果

English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 60207-90-1
名称 (2RS,4RS;2RS,4SR)‐1‐[2‐(2,4‐ジクロロフェニル)‐4‐プロピル‐1,3‐ジオキソラン‐2‐イルメチル]‐1H‐1,2,4‐トリアゾール(別名:プロピコナゾール)
物質ID R03-B-026-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2008年度(平成20年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 引火点は>150℃[方式不明](GESTIS(Accessed Aug. 2021))との情報が得られており、所定の密閉式測定法において93℃を超えると推定されるため、区分に該当しない。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素を含まず、塩素及び酸素を含む有機化合物であるが、この塩素、酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 金属に対して非腐食性(HSDB in PubChem (Accessed Aug. 2021))との情報により、区分に該当しない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
【分類根拠】
(1)~(6)より、区分4とした。

【根拠データ】
(1)ラット(雌)のLD50:550 mg/kg(OECD TG 425、GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(2)ラット(雄)のLD50:783 mg/kg(GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017))
(3)ラット(雌)のLD50:509 mg/kg(GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017))
(4)ラット(雄)のLD50:1,520 mg/kg(食安委 農薬・添加物評価書 (2017))
(5)ラット(雌)のLD50:1,520 mg/kg(食安委 農薬・添加物評価書 (2017))
(6)ラットのLD50:1,517 mg/kg(EPA Pesticides RED (2006))

1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(9)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLD50:> 5,000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(2)ラット(雌)のLD50:> 5,000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(3)ラット(雄)のLD50:> 2,000 mg/kg(GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017))
(4)ラット(雌)のLD50:> 2,000 mg/kg(GLP)(食安委 農薬・添加物評価書 (2017))
(5)ラット(雄)のLD50:> 4,000 mg/kg(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(6)ラット(雌)のLD50:> 4,000 mg/kg(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(7)ウサギ(雄)のLD50:> 6,000 mg/kg(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(8)ウサギ(雌)のLD50:> 6,000 mg/kg(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、CLH Report (2015))
(9)ウサギのLD50:> 4,000 mg/kg(EPA Pesticides RED (2006))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLC50(エアロゾル、4時間):> 5.84 mg/L(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、EPA Pesticides RED (2006))
(2)ラット(雌)のLC50(エアロゾル、4時間):> 5.84 mg/L(食安委 農薬・添加物評価書 (2017)、EPA Pesticides RED (2006))
(3)ラットのLC50(エアロゾル、4時間):> 5.8 mg/L(OECD TG 403、GLP)(CLH Report (2015))

2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG404、GLP、半閉塞、4時間適用、21日観察)において、パッチ除去1時間後、全例で軽度の紅斑が認められ、1週間後まで持続したが、3週間後には消失した。また、除去1時間後に、2匹で軽度の浮腫が認められ、うち1匹で48時間後まで持続した。皮膚一次刺激指数(PII)は1.22であった(紅斑・痂皮スコア:1/1/1、浮腫スコア:0/0/0.7)との報告がある(農薬抄録 (2015)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
(2)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、7日観察)において、適用1日後から軽度の紅斑及び浮腫が認められたが、4日後には消失した(紅斑・痂皮スコア:1/0.7/1/0.7/1.7/1.3、浮腫スコア:0.3/0.7/1/0.3/1.3/1)との報告がある(農薬抄録 (2015))。
(3)本物質は皮膚刺激性物質ではない(EFSA (2017))。

【参考データ等】
(4)本物質はウサギの皮膚に対して刺激性を有する(JMPR (2004))。
(5)2系統のウサギを用いた皮膚刺激性試験で、軽度の刺激性がみられた(食安委 農薬評価書 (2017))。
(6)本物質は皮膚刺激性物質ではない(HSDB (Accessed Sep. 2021))。

3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(5)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ウサギ(n=3)を用いた眼刺激性試験(OECD TG 405、GLP、7日観察)において、適用1時間後に全例に結膜の発赤、浮腫及び分泌物が認められたが、72時間後には1例に軽度の発赤だけがみられるまで回復し、7日後には完全回復した(角膜混濁スコア:0/0/0、虹彩炎スコア:0/0/0、結膜発赤スコア:1.3/1/1、結膜浮腫スコア:0/0.3/0.3)との報告がある(農薬抄録 (2015)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
(2)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(7日観察)において、角膜に軽度の混濁が認められたが、適用72時間後までに消失した。また、結膜に軽度の発赤が認められたが、適用48時間後までに消失した(角膜混濁スコア:0/0.5/1、虹彩炎スコア:0/0/0、結膜発赤スコア:0/0/0.3、結膜浮腫スコア:0/0/0.3)との報告がある(農薬抄録 (2015))。
(3)2系統のウサギを用いた眼刺激性試験で、眼に対する軽微な刺激性がみられた(食安委 農薬評価書 (2017))。
(4)本物質はウサギの眼に対し刺激性を示さない(JMPR (2004))。
(5)本物質は眼刺激性物質ではない(EFSA (2017))。

【参考データ等】
(6)本物質は眼刺激性物質ではない(HSDB (Accessed Sep. 2021))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1B


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:5.0%溶液)において、24、48時間後の陽性率は、30%(6/20例)、50%(10/20例)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2016) 、食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
(2)モルモットを用いたMaximisation試験において、本物質は皮膚感作性物質であるとの報告がある(JMPR (2004))。
(3)本物質は皮膚感作性物質である(EFSA (2017))。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスを用いた優性致死試験(単回経口投与)、マウスの精原細胞及び精母細胞を用いた染色体異常試験(5日間反復経口投与)、マウス及びハムスターの骨髄細胞を用いた小核試験(単回経口投与)及びハムスターの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換(SCE)試験(単回経口投与)の結果はすべて陰性であった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015))。
(2)In vitroでは、細菌を用いた複数の復帰突然変異試験、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験、及びヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験で、全て陰性の結果であった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015))。

6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分2とした。新たな情報源を用いて分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)国内外の評価機関による既存分類結果として、EPAでグループC(Possible Human Carcinogen:区分2相当)に分類されている(EPA OPP Annual Cancer Report 2020 (Accessed August 2021):1992年分類)。
(2)ラットを用いた2年間混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験では、2,500 ppm(雄/雌:96.5/131 mg/kg/day)までの用量で、発がん性の証拠は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015)、EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(3)マウスを用いた2年間混餌投与による発がん性試験では、2,500 ppm投与群の雄で肝細胞腺腫(多発性)及び肝細胞がん(多発性)の発生頻度の有意な増加認められた。一方、同群の雌では、対照群との間に有意差は認められず、雌では発がん性は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015)、EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(4)雄マウスを用いた18ヵ月間混餌投与による発がん性試験では、最高用量の850 ppm投与群で、肝細胞腺腫(10/50例)の有意な増加が認められた(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015)、EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(5)(4)の試験の肝細胞腺腫の発生頻度は試験実施施設の背景データ(3/50~9/50例)を上回る発生率であった。同群の肝細胞がん発生頻度(2/50例)は背景データ(4/50~8/50 例)の範囲内であった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015))。

【参考データ等】
(6)肝臓の腫瘍発生に関するメカニズム試験の結果、雄マウスで観察された肝腫瘍は肝薬物代謝酵素の誘導及び細胞増殖能の亢進に関連していることが示唆された。(食安委 農薬評価書 (2017))。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1Bとした。なお、(1)では親動物に一般毒性がみられる用量で児動物に出産児数及び生存児数の減少など、(2)、(3)及び(5)ではラット及びウサギに口蓋裂の発生、さらに(4)ではウサギの胚/胎児死亡増加、流産又は早産がみられており、胚/胎児毒性や分娩異常を示唆する所見もみられている。これらの重篤な影響を考慮して分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験において、2,500 ppmでP及びF1雌雄親動物に体重増加抑制、摂餌量減少及び肝臓影響(肝細胞肥大・肝細胞明細胞性変化:一部は中用量から発現)、F1及びF2児動物に体重増加抑制及び肝細胞肥大、F2児動物には加えて出産児数及び生存児数の減少、生存率低下(哺育4、7及び21日)、矮小児の増加がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015)、EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(2)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、親動物では中用量(90 mg/kg/day)以上の投与群に体重増加抑制及び摂餌量減少、高用量(360/300 mg/kg/day)投与群では加えて臨床症状(運動失調、嗜眠、流涎)がみられ、児動物には中用量以上で口蓋裂(中用量群で1/302例(0.33%)、高用量群で2/285例(0.70%))及び胸骨未骨化、高用量では加えて内臓異常(腎乳頭短小、腎乳頭欠損、尿管拡張)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015))。
(3)口蓋裂の発生を確認するためにラットに本物質300 mg/kg/dayを投与した発生毒性試験(妊娠6~15日)では、投与群の母動物には死亡(2/189例)、体重増加抑制及び摂餌量減少、症状(運動失調、惰眠、活動性低下など)等顕著な毒性がみられた。胎児には低体重、生存胎児数減少がみられ、口蓋裂の発生率は0.1%で、同一系統のラットの背景データの範囲(0%~0.35%)内とされた(食安委 農薬評価書 (2017))。本試験結果に関するEPAの評価では、投与群及び対照群の口蓋裂の発生率は各々、胎児2/2064例及び胎児0/1222例にみられた。試験実施施設の口蓋裂の発生率の背景データでは0/5431例とされ、先行試験結果における口蓋裂の発生が確認されたと報告されている(EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(4)ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠7~19日)では、400 mg/kg/dayで親動物に一般毒性影響(体重増加抑制、摂餌量減少など)、流産ないし早産及び総死胚数増加、児動物に骨格変異(第13肋骨完全形成)がみられた。催奇形性は認められなかったとの報告がある(農薬抄録 (2015)、CLH Report (2015)、EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(5)ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~18日)では、180 mg/kg/dayで親動物に鎮静、児動物に口蓋裂が1例みられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。

【参考データ等】
(6)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)では、親動物に顕著な一般毒性影響(死亡(3/25例))がみられた用量で、児動物に骨化遅延(指節骨及び踵骨)がみられたのみであり、催奇形性は認められなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(7)ECHA RACの意見書では、口蓋裂は臨界的な用量とばく露時期が条件的に整った場合に生じる重篤な毒性で、母動物毒性の結果として生じる可能性も示唆されている。ラットの試験でみられた口蓋裂は低頻度で生じたが、独立した2つの試験(1)、(2)でみられ、異なる腹からの胎児にみられること、及び2試験とも重篤な母動物毒性発現用量でみられるが、母動物毒性が強くない用量(90 mg/kg/day)からみられ、かつ用量反応関係(90及び300 mg/kg/dayで0.33及び0.70%)がみられることに留意すべきである。また、他のトリアゾール系農薬原体でも口蓋裂の発生頻度増加がみられることからも、ラットでみられた口蓋裂は本物質投与の影響と判断される。この他、ウサギの発生毒性試験(3)の母動物でみられた胚/胎児吸収、流産ないし早産も重要な所見として、本物質の生殖毒性カテゴリーとして1Bを提案した(ECHA RAC Opinion (2016))。
(8)EU CLPではRepr. 1Bに分類されている(CLP分類結果 (Accessed August 2021))。

8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(全身毒性)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)より区分1の範囲で死亡動物がみられており、(2)~(6)においても毒性影響がみられるため、区分1(全身毒性)とした。神経症状とみられる所見は、致死量付近の投与による非特異的な所見と思われるため、神経系は採用しなかった。なお、新たな情報源を用いて分類した。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた急性経口神経毒性試験(GLP)において、100 mg/kg(区分1の範囲)で雄で立毛、雌で下痢・爪先歩行が、300 mg/kg(区分1の範囲)で雌雄で活動性低下、呼吸数の増加・不整、雄で歩行異常・円背位・下痢・爪先歩行、雌で低体温、蒼白、立毛、鼻周囲の汚れ、尿による汚れと湿潤・鎮静化・掉尾反射延長、切迫と殺がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017)、EPA OPP Human Health Risk Assessment (2013))。
(2)ラットを用いた単回経口投与試験(OECD TG 425、GLP)において、550 mg/kg(区分2の範囲)で活動低下、腹臥位、協調運動性失調、横臥位、立毛、低体温及び円背位、死亡が、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で異常な呼吸音(投与6時間後)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017)、CLH Report (2015))。
(3)ラットを用いた単回経口投与試験(GLP)において、417 mg/kg(区分2の範囲)で自発運動低下、下痢、歩行異常・はいずり・鎮静・横臥位・衰弱(雌)、死亡(雌)が、500 mg/kg(区分2の範囲)ではいずり・鎮静(雄)が、600 mg/kg(区分2の範囲)で歩行異常・横臥位(雄)が、720 mg/kg(区分2の範囲)で流涙(雄)、死亡(雄)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(4)ラットを用いた単回経口投与試験において、500 mg/kg(区分2の範囲)で鎮静化、呼吸困難、粗毛、円背位が、1,000 mg/kg(区分2の範囲)で横臥位、腹臥位、死亡がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(5)マウスを用いた単回経口投与試験(GLP)において、289 mg/kg(区分1の範囲)で自発運動低下、よろめき歩行、はいずり・下痢(雄)が、347 mg/kg(区分2の範囲)で横臥位、腹臥位(雄)、はいずり(雌)が、417 mg/kg(区分2の範囲)で死亡、腹臥位(雌)が、500 mg/kg(区分2の範囲)で鎮静(雌)が、600 mg/kg(区分2の範囲)で鎮静(雄)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(6)マウスを用いた単回経口投与試験において、800 mg/kg(区分2の範囲)で鎮静、呼吸困難、粗毛、横臥位、円背位、死亡(雌)が、1,500 mg/kg(区分2の範囲)で死亡(雄)が、2,500 mg/kg(区分に該当しない範囲)で腹臥位がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017)、CLH Report (2015))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(肝臓)


警告
H373 P260
P314
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、肝細胞脂質沈着や肝細胞空胞化、変異肝細胞巣がみられることから、区分2(肝臓)とした。なお、(7)、(8)でみられる胃や腸への影響は重大な毒性影響ではない上に、(1)~(5)でみられないため、採用していない。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/発がん性併合試験(OECD TG453、GLP)において、500 ppm(18.1 mg/kg/day(雄)、23.3 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で肝細胞脂質沈着(雄)、Glu 減少(雌)が、2,500 ppm(96.5 mg/kg/day(雄)、131 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で摂餌量減少、肝臓影響(比重量増加、肝細胞肥大、肝細胞空胞化(雄))、TP増加・Glu減少(雄)、BUN 増加(雌)、膵外分泌部萎縮(雌)・子宮内腔拡張(雌)、肺泡沫状マクロファージ(雌)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(2)マウスを用いた混餌投与による2年間発がん性試験(OECD TG451、GLP)において、500 ppm(49.4 mg/kg/day(雄)、55.6 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で雄で尿pH低下、肝臓影響(比重量増加、肝細胞肥大、変異肝細胞巣(好酸性))が、2,500 ppm(344 mg/kg/day(雄)、340 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で雌雄で肝臓影響(肝細胞空胞化、肝細胞脂肪沈着・類洞の拡張/うっ血、肝細胞壊死、慢性炎症細胞浸潤、クッパー細胞色素沈着)、雄でHb・MCHC減少、AST・ALT・ALP 増加、雌で尿pH低下、Ht減少がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。

【参考データ等】
(3)マウスを用いた混餌投与による90日間経口投与試験(GLP)において、500 ppm(71 mg/kg/day、区分2の範囲)でChol減少、肝臓影響(絶対比重量増加、肝細胞肥大)が、850 ppm(121 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)でSDH増加、肝細胞壊死が、1,450 ppm(199 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)でALT増加、肝細胞空胞化(脂肪化)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(4)マウスを用いた混餌投与による17週間経口投与試験(GLP)において、500 ppm(65 mg/kg/day(雄)、85 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で肝臓影響(肝絶対比重量増加、肝細胞肥大)(雄)が、850 ppm(112 mg/kg/day(雄)、区分に該当しない範囲)でChol減少(雄)が、1,450 ppm(194 mg/kg/day(雄)、区分に該当しないの範囲)で肝細胞壊死(雄)が、2,500 ppm(352 mg/kg/day(雄)、434 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)でALT・AST増加(雌)、肝臓影響(肝細胞空胞化(脂肪化)(雄)、絶対比重量増加(雌)、肝細胞肥大及び壊死(雌))がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(5)マウスを用いた混餌投与による18ヵ月発がん性試験(OECD TG451、GLP)において、500 ppm(59 mg/kg/day、区分2の範囲)で肝細胞肥大が、850 ppm(108 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)でChol減少、SDH増加、肝臓影響(絶対比重量増加、変異肝細胞巣、肝細胞壊死及びクッパー細胞色素沈着)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(6)ラットを用いた混餌投与による90日間亜急性神経毒性試験において、3,500 ppm(雄)(222 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)及び1,500 ppm(雌)(111 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で神経毒性はみられなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2015))。
(7)ウサギを用いた21日間経皮投与試験(6 時間/日、5 日/週)において、1,000 mg/kg/day(90日換算:233 mg/kg/day、区分該当しない範囲)で鎮静化、粗毛、振戦、呼吸困難、下痢がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(8)イヌを用いた混餌投与による90日間経口投与試験において、1,250 ppm(35.3 mg/kg/day(雄)、35.7 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で胃幽門部の粘膜面リンパろ胞増加がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。
(9)イヌを用いた混餌投与による1年間経口投与試験(GLP)において、250 ppm(8.4 mg/kg/day(雄)、8.9 mg/kg/day(雌)、区分1の範囲)で雄で胃粘膜うっ血、十二指腸粘膜うっ血、空腸粘膜うっ血、回腸粘膜うっ血、雌で十二指腸粘膜うっ血・出血がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2017))。

10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間LC50 = 0.51 mg/L(EU CLP CLH, 2015、EPA Pesticides RED, 2006、OPP Pesticide Ecotoxicity Database)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
急速分解性がなく(BIOWIN)、魚類(シープスヘッドミノー)の100日間 NOEC = 0.068 mg/L(EU CLP CLH, 2015)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


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  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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