政府によるGHS分類結果

English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 71-55-6
名称 1,1,1-トリクロロエタン
物質ID R03-B-029-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2018年度(平成30年度)   2014年度(平成26年度)   2008年度(平成20年度)   2006年度(平成18年度)  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性(GESTIS(Accessed Aug. 2021))である。なお、密閉空間で蒸気になっている場合は、火花または高エネルギーの火炎によって引火する可能性がある(GESTIS(Accessed Aug. 2021))。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性(GESTIS(Accessed Aug. 2021))である。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性(GESTIS(Accessed Aug. 2021))である。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 区分1


警告
H290 P234
P390
P406
アルミニウムに対して非常に腐食性があり、乾燥した1,1,1-トリクロロエタンは鉄と亜鉛を適度に腐食する(HSDB in PubChem (Accessed Aug. 2021))との情報がある。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(5)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(OECD TG 401)(SIAR (2009))
(2)ラット(雄)のLD50:12,300 mg/kg(SIAR (2009)、ATSDR (2006))
(3)ラット(雌)のLD50:10,300 mg/kg(SIAR (2009)、ATSDR (2006))
(4)ラット(雄)のLD50:17,148 mg/kg(SIAR (2009)、ATSDR (2006))
(5)ラット(雌)のLD50:12,996 mg/kg(SIAR (2009)、ATSDR (2006))
1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(OECD TG 402)(SIAR (2009))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(7)より、区分4とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気濃度(16,528 ppm)の90%(146,805 ppm)より低いため、ミストを含まない蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(3時間): 18,000 ppm (4時間換算値:15,588 ppm)(SIAR (2009)、US AEGL (2000)、EHC 136 (1990))
(2)ラットのLC50(7時間): 14,250 ppm (4時間換算値:18,851 ppm)(SIAR (2009)、ATSDR (2006)、US AEGL (2000)、EHC 136 (1990))
(3)ラット(雄)のLC50(6時間): 10,305 ppm (4時間換算値:12,621 ppm)(SIAR (2009)、ATSDR (2006)、US AEGL (2000)、EHC 136 (1990))
(4)ラット(雄)のLC50(4時間): 18,425~21,033 ppmの間(US AEGL (2000))
(5)ラット(雌)のLC50(4時間): 18,000 ppm(US AEGL (2000))
(6)ラットのLC50(4時間): 18,400 ppm(US AEGL (2000)、EHC 136 (1990))
(7)ラットのLC50(4時間): 13,338 ppm (雄:13,268 ppm、雌:13,426 ppm)(US AEGL (2000))
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)本物質への経皮ばく露による局所影響は、ばく露時間の増加とともに軽度刺激から化学火傷まで増加するが、刺激性影響には回復性がみられる(SIAR (2006))。
(2)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、半閉塞、4時間適用)の結果、皮膚刺激性であったとの報告がある(SIAR (2009)、EHC 136 (1990))。
(3)ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、半閉塞、4時間適用、16日観察)において、16日後まで紅斑は回復せず(16日後の紅斑スコアの平均:0.3)、一次刺激指数(PII)は5.2であった(紅斑スコア:1.7/4/4、浮腫スコア:2/2/1.3)との報告がある(REACH登録情報 (Accessed August 2021))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
-
警告
H320 P305+P351+P338
P337+P313
P264
【分類根拠】
(1)~(4)より、ガイダンスに従い、区分2Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ボランティアによる実験の結果、450 ppm以上の濃度の4時間ばく露で、わずかな眼刺激がみられたとの報告がある(US AEGL (2000)、SCOEL (1995))。
(2)1,000 ppmを超える濃度の本物質蒸気に20~73分間ばく露されたボランティアは軽度の眼刺激を訴えた。眼刺激は約500 ppmの蒸気濃度に186分間ばく露した他のボランティアでは示されなかったとの報告がある(ATSDR (2006) p. 87/371)。
(3)ウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の刺激性がみられたとの報告がある(ATSDR (2006)、EHC 136 (1990))。
(4)ウサギを用いた眼刺激性試験(100 mg)において、軽度~中程度の痛みと軽度の結膜刺激を生じたが角膜損傷はなく、すべて数日以内に消失したとの報告がある(SIAR (2009)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、感作率は30%に満たず、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:10%溶液)において、惹起24、48時間後の陽性率は10%(2/20例)、15%(3/20例)であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスの末梢血を用いた小核試験(90日間混餌投与)で不確定(雄)及び陰性(雌)、マウスの骨髄細胞を用いた3つの小核試験(単回吸入ばく露1試験、2日間腹腔内投与2試験)、及びマウスを用いた優性致死試験(飲水投与)で、陰性の結果が得られた(SIAR (2009)、ATSDR (2006))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験では陰性(開放系)、及び陽性(閉鎖系)、マウスリンフォーマ試験で陰性、CHO細胞又はCHL細胞を用いた染色体異常試験で陽性(S9-)又は不確定の結果が得られている(SIAR (2009)、安衛法変異原性試験 (Accessed August 2021))。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1Bとした。(1)及び(2)において、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められた。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間吸入ばく露による発がん性試験では、雄に腹膜の中皮腫の発生増加が認められた(厚生労働省 委託がん原性試験結果 (1998))。試験に用いた本物質ロットには既知発がん物質(GHS分類 (NITE統合版):区分1B)の1,4-ジオキサン(CAS番号123-91-1)が安定剤として3.34~3.50%含まれていた(厚生労働省 委託がん原性試験結果 (1998))。
(2)マウスを用いた2年間吸入ばく露による発がん性試験では、雄にハーダー腺の腺腫と脾臓由来の悪性リンパ腫及び細気管支-肺胞上皮がん、 雌に肝細胞腺腫と細気管支-肺胞上皮腺腫の発生増加が認められた(厚生労働省 委託がん原性試験結果 (1998))。試験に用いた本物質ロットの情報は(1)と同様である。
(3)国内外の分類機関による既存分類では、IARCがグループ3(IARC 71(1999))、EPAがGroupD(IRIS(2007))、ACGIHがA4(ACGIH (7th, 2001))にそれぞれ分類している。なお、OECDのSIDS評価も含めて、これらの評価には(1)及び(2)の結果は含まれていない。
(4)本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である(平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23号)。

【参考データ等】
(5)ラット及びマウスを用いた2年間吸入ばく露による発がん性試験(150~1,500 ppm)では、雌マウスでハーダー腺の良性腫瘍の頻度増加傾向がみられたが、試験実施施設の背景データの範囲内であった。雌雄ラット及び雄マウスには腫瘍発生頻度の有意な増加は認められなかった(IARC 71(1999)、IRIS (2007)、Patty (6th, 2012))。なお、試験に用いた被験物質の純度は94%で、安定化剤5%中には発がん性が疑われる物質(令和3年度GHS分類結果:区分2)である1,2-ブチレンオキシド(CAS 106-88-7)が含まれている(組成比不明)(IARC 71 (1999))。
(6)本物質の職業ばく露とがんの相関を調べた研究の多くは相関を認めなかったが、フィンランドの作業者を対象とした研究では、本物質のばく露を受けた男女作業者では標準化罹患比の統計的に有意な増加が神経系の腫瘍と多発性骨髄腫でみられたとの報告、ユタ州の航空機整備工場で本物質のばく露を受けた作業者でも多発性骨髄腫のリスク増加がみられたとの報告がある。しかしながら、いずれの研究も症例数が少なく、しかも作業者は複数の溶媒にばく露されており、結果の解釈は難しいとされた(SIAR (2009))。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1Bとした。なお、(1)のマウスの試験では親動物に一般毒性がみられない用量で同腹児数が減少したほか、(2)及び(3)では一般毒性がみられる用量で出生時死亡率増加、生後の発達遅延、行動異常などがみられた。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)マウスを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠12~17日、17時間/日)において、2,000 ppmで児動物に同腹児数の減少、生後の体重増加抑制、明白な発達遅延(耳介展開、切歯萌出、開眼)及び行動検査の成績低下がみられたとの報告がある(ATSDR (2006))。
(2)マウスを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠12~17日、3回/日、60分間)において、8,000 ppmで親動物に症状(麻酔状態、軽度振戦、歩行異常)、児動物に生後の体重増加抑制、明白な発達遅延(耳介展開、切歯萌出、開眼)及び行動検査の成績低下(正向反射、前肢握力、背地走性、哺乳反射)がみられたとの報告がある(ATSDR (2006))。
(3)ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠13~19日、3回/日、60分間)において、7,000 ppmで親動物に体重増加抑制、症状(流涎、流涙、歩行異常)、全胚吸収(2/9腹)、妊娠期間の延長、児動物に出生時死亡率増加、同腹児重量の減少、協調運動性・筋力・自発運動量の減少がみられたとの報告がある(ATSDR (2006)、SIAR (2009))。

【参考データ等】
(4)ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6~15日、6時間/日)において、6,000 ppmで親動物に体重増加抑制、摂餌量減少、活動性低下、妊娠子宮重量の減少がみられたが、児動物には軽微な発生影響(低体重(雌)、骨化遅延(頸椎骨))のみがみられたとの報告がある(SIAR (2009))。
(5)ウサギを用いた吸入ばく露による発生毒性試験において、6,000 ppmで親動物に体重増加抑制がみられたが、児動物には過剰肋骨のみがみられたとの報告がある(ATSDR (2006))。
(6)マウスを用いた経口飲水投与による二世代生殖毒性試験では、1,000 mg/kg/dayまで親動物の一般毒性影響、繁殖能及び児動物への影響はみられなかったとの報告がある(SIAR (2009))。
(7)ラットを用いた強制経口投与による神経発達毒性試験(妊娠6日~哺育10日まで)において、最高用量の750 mg/kg/dayまで出生児の神経発達指標(自発運動量、FOB観察、神経行動学的・神経病理学的検査、脳計測値等)に影響はみられなかったとの報告がある(ATSDR (2006)、SIAR (2009))。
(8)本物質を含む溶媒への母親のばく露と有害な妊娠影響(自然流産及び/又は先天性奇形)との関係を調査したいくつかの症例対照研究報告において、本物質自体と有害な妊娠影響の結果との関連性についての明らかな証拠はない(ATSDR (2006))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(心血管系)、区分3(麻酔作用、)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)より、麻酔作用、(2)より、心血管系を採用し、区分1(心血管系)、区分3(麻酔作用)とした。なお、旧分類では(3)より気道刺激性を採用しているが、原著では気道刺激性を示す知見を確認できなかったため、分類に採用しなかった。

【根拠データ】
(1)ヒトの急性吸入ばく露影響で最も重要な所見は中枢神経影響である。急性吸入ばく露中毒による中枢神経系抑制作用の重篤度はばく露期間とばく露レベルの増加に伴い増大する。中程度の濃度(175 ppm以上)のばく露を受けたヒトでは心理学的検査成績の低下がみられた。高濃度ばく露(500 ppm以上)では、めまい、立ちくらみ、協調性の喪失が生じ、さらに高濃度(10,000 ppm以上)では全身麻酔作用を生じる(ATSDR (2006)、Patty (6th, 2012))。
(2)極めて高濃度の本物質を短期間吸入後に重度の心不整脈と死亡を生じることがある。不整脈はエピネフリンに対する心感作性が本物質によっても間接的に生じるものと考えられている(ATSDR (2006))。

【参考データ等】
(3)健常人ボランティアに本物質蒸気を1.09 mg/Lの濃度で4時間ばく露した後に鼻の分泌液中の前炎症性サイトカイン濃度の増加とn-ブタノールに対する嗅覚閾値の上昇がみられたことから、本物質は軽度の気道刺激性を有する可能性がある(SIAR (2009)、ATSDR (2006))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分1(中枢神経系)とした。動物試験結果からは標的臓器を特定可能な所見は得られなかった。新たな情報源を用いて分類結果を変更した。(6)より、旧分類が採用した心臓(慢性心不整脈)はハロタン麻酔後の2症例のみで急性影響としての(交差)心感作性とみられる特異的な症例であり、また肝臓はヒトの1症例のみの報告であることから、標的臓器から除外した。

【根拠データ】
(1)シンガポールの工場で本物質による単独ばく露を受けた作業者では他の工場の非ばく露作業者と比較して、疲労感、集中力低下、記憶障害など神経系影響がみられたとの疫学研究報告がある(SIAR (2009))。
(2)換気の不良な作業エリアで本物質濃縮液に中程度から高度にばく露された作業者28人(平均雇用期間:17.6年間)の集団についての研究では、作業者はふらつき、めまい、吐き気と疲労感を訴え、何人かの作業者は意識を喪失した。協調運動の測定ではバランスと移動に失敗する例が数人にみられ、記憶力、リズムとスピードの有意な低下が一貫してみられた(SIAR (2009)、ATSDR (2006))。作業者は本物質以外にアスベスト、シリカ及び/又はアルカリ性濃縮洗浄液にばく露されていた(SIAR (2009))。

【参考データ等】
(3)ラット及びマウスを用いた13週間吸入ばく露試験(蒸気、6時間/日、5日/週)及び2年間吸入ばく露試験(蒸気、6時間/日、5日/週)において、区分2までの用量範囲でみられた影響はラットの2年間吸入ばく露試験の200 ppm(1.09 mg/L、区分2の範囲)以上で鼻腔の嗅上皮のエオジン好性変化のみであり、同様の所見はマウスではみられていない(がん原性予備試験 (1998)、がん原性試験 (1998))。
(4)ラット及びマウスを用いた13週間経口投与試験において、影響がみられる最小用量は2,820~4,800 mg/kg/dayの高用量である(SIAR (2009))。
(5)(1)、(2)と異なり、作業者を対象とした疫学研究で神経影響はみられなかったとする報告もある(SIAR (2009))。
(6)過去に本物質の長期ばく露を受けた被験者が通常のハロタン麻酔後に慢性心不全をきたした症例が2例報告された(SIAR (2009))。また、肝機能への影響として、本物質600 mg/kgを摂取したヒトで血清ビリルビン値の上昇(トランスアミナーゼ活性は正常範囲内)がみられたとの1症例の報告がある(ATSDR (2006))。
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(クラミドモナス)72時間EbC50 = 0.536 mg/L(AICIS IMAP, 2013、SIAR, 2009)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(METI既存点検結果, 1979))、甲殻類(オオミジンコ)の17日間NOEC = 1.3 mg/L(AICIS IMAP, 2013、環境省リスク評価第2巻, 2003、SIAR, 2009)から、区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階(藻類、魚類)に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、藻類(クラミドモナス)72時間EbC50 = 0.536 mg/L(AICIS IMAP, 2013、SIAR, 2009)であることから、区分1となる。
以上の結果を比較し、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 区分1


警告
H420 P502 モントリオール議定書の附属書に列記された物質であるため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

GHS関連情報トップページに戻る