政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 -
名称 ダイオキシン類
物質ID R03-B-019-MHLW
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 厚生労働省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク)  
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。(2,3,7,8-TCDD)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。(2,3,7,8-TCDD)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。(2,3,7,8-TCDD)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。(2,3,7,8-TCDD)
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。(2,3,7,8-TCDD)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - UNRTDGにおいて、2,3,7,8-TCDDがUN 2811、Class 6.1、PG Ⅰに分類されており、優先評価項目の自然発火性固体には該当しないと考えられるため、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。(2,3,7,8-TCDD)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素を含まず、塩素及び酸素を含む有機化合物であるが、この塩素、酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分1


危険
H300 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
本項は2,3,7,8-TCDDの毒性情報に基づき分類した。(1)~(8)より、区分1とした。なお他のダイオキシン類では区分が異なる場合がある。

【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLD50:0.022 mg/kg(EHC 88 (1989))
(2)ラット(雌)のLD50:0.045 mg/kg(EHC 88 (1989))
(3)ラット(雄)のLD50:0.026 mg/kg(NTP TR521 (2006))
(4)ラット(雌)のLD50:0.022 mg/kg(NTP TR521 (2006))
(5)ラット(雄)のLD50:0.165 mg/kg(NTP TR209 (1982))
(6)ラット(雌)のLD50:0.125 mg/kg(NTP TR209 (1982))
(7)ラット(雄)のLD50:0.164~0.34 mg/kg(EHC 88 (1989))
(8)ラット(雄)のLD50:0.297 mg/kg(EHC 88 (1989))
1 急性毒性(経皮) 区分1


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
【分類根拠】
本項は2,3,7,8-TCDDの毒性情報に基づき分類した。(1)より、区分1とした。なお他のダイオキシン類では区分が異なる場合がある。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:0.275 mg/kg(EHC 88 (1989)、HSDB (Accessed Oct. 2021))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
本項は2,3,7,8-TCDDの情報に基づき分類した。GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。なお他のダイオキシン類では性状が異なる場合がある。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ダイオキシン類の遺伝毒性については、2,3,7,8-TCDDを経口ばく露した動物試験ではほとんど陰性の結果が示されていることから、遺伝毒性はないものと総合的に判断されている(食安委ファクトシート (2020))。
(2)ダイオキシン類(PCDDs(ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン)、PCDFs(ポリ塩化ジベンゾフラン)及びDL-PCBs(ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル)は標準的な試験法では直接的な遺伝毒性を示さないという多くの証拠がある(EFSA (2018))。
(3)多くの遺伝毒性エンドポイント(異数性、染色体異常、DNA損傷、優性致死変異、遺伝子突然変異、小核誘発、遺伝子変換、姉妹染色分体交換など)に対するin vitro及びin vivoの試験結果に基づき、TCDDの直接的な遺伝毒性の証拠は陰性又は不明瞭である(EFSA (2018))。

【参考データ等】
(4)最近の報告で、PCDDs及びPCDFsの遺伝毒性が陽性を示した報告はない。In vitroでは、TCDDの5試験機関での施設間比較として、ヒト末梢血を用いた小核試験は陰性であつた。In vivoでは、トランスジェニックマウスを用いたTCDDの小核試験(2回/週、6週間投与)で陰性の結果であった(EFSA (2018))。
(5)高用量のTCDDの急性ばく露により、酸化ストレスに関連したDNA損傷の誘発を示した研究報告がある。TCDDを介したAhR(アリルヒドロカーボン受容体)の持続的活性化が酸化ストレス及びそれに関連した間接的な遺伝毒性を誘発する原因であるとの仮説が提唱されている(EFSA (2018))。
6 発がん性 区分1A


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、2,3,7,8-TCDDに加え、PCDF(ポリクロロジベンゾフラン)及びコプラナーPCBの各同族体から選ばれた各1物質について、IARCの発がん性分類がグループ1であることから、本項はダイオキシン類として区分1Aとした。新たな情報源を利用し分類した。

【根拠データ】
(1)国内外の評価機関における既存分類結果として、IARCでは2,3,7,8-TCDD、2,3,4,7,8-Pentachlorodibenzofuran (2,3,4,7,8-PeCDF)及び3,3’,4,4’,5-Pentachlorobiphenyl(3,3’,4,4’,5-PCB)の各々について、グループ1に分類した(IARC 100F (2012))。また、2,3,7,8-TCDDについては、日本産業衛生学会では第1群に(産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2000))、NTPではKに(NTP RoC 14th (2016))、DFGではCategory 4に(List of MAK and BAT values 2020 (Accessed Oct. 2021))それぞれ分類している。
(2)IARCは2,3,7,8,-TCDDはヒトの疫学調査の結果、全部位のがんを対象とした評価において、ヒトで発がん性を有すると結論できる十分な証拠があるとし、さらに2,3,7,8,-TCDDへのばく露と軟部組織肉腫、非ホジキンリンパ腫及び肺がんとの間に正の相関がみられると特定部位への発がんの可能性も示唆した。一方、2,3,4,7,8-PeCDF及び3,3’,4,4’,5-PCBについてはヒトの疫学的な証拠はないことが確認された(IARC 100F (2012))。
(3)実験動物での発がん性については、2,3,7,8-TCDD、2,3,4,7,8-PeCDF及び3,3’,4,4’,5-PCBのいずれも十分な証拠があるとした。発がん性の機序について、2,3,7,8-TCDDはアリルヒドロカーボン受容体介在性の機序(細胞の複製とアポトーシスの修飾を介した腫瘍発生の促進)と酸化ストレスを介したものとし、この機序は種を超えて保存されヒトでも作動するとした。同様の機序による発がん機構は2,3,4,7,8-PeCDF及び3,3’,4,4’,5-PCBにも存在し、共通の発がん作用機序を有するとした。以上、疫学研究結果のない2物質も実験動物での証拠と作用機序の証拠の強さから、2,3,7,8-TCDDと同じグループ1に分類された(IARC 100F (2012))。

【参考データ等】
(4)EFSAのパネルは、IARCの報告において、全部位のがんを組合わせた腫瘍発生率とTCDDばく露が正の相関を示したとされるいくつかの研究を調べた結果、いずれか特定の部位への明確な発がんの関連性はなく、直接的な遺伝毒性の証拠もない。明らかな用量相関性はなく、複数物質への共ばく露の結果であることから、これらの研究報告がリスク評価に適切であるとは考えられない。また、いくつかの研究では高度にばく露された群の追跡期間は特定の腫瘍の発生頻度の増加を示すには短すぎるということを指摘し、疫学研究結果の解釈に疑問を投げかけIARC分類に対し反論している(EFSA (2018))。
7 生殖毒性 区分1A、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、ヒトでの生殖影響(ばく露された母親から生まれた男子の精液の質の低下、ばく露された父親から生まれた子供の性比の低値(男児が少なく女児が多い))がみられたことから区分1Aとした。また、(1)、(4)より、授乳影響を追加した。

【根拠データ】
(1)イタリアのセベソの事故後の追跡調査では、生殖機能の障害等の事例が報告されている。事故の時点で1~9歳の男児は、約20年後に精液の質の低下がみられた。また、同事故の間に妊娠中で血清中のTCDDが19 pg/g 脂肪であった母親の母乳で育った男児は、後年(平均年齢 22.5 歳)に精液の質の低下がみられた。これらの結果から、出生後に感受性の高い期間が存在し、この期間は思春期まで続く可能性があることが示唆されている(食安委ファクトシート (2020)、EFSA (2018))。
(2)ロシアのダイオキシン類等の汚染地域に在住の8~9歳の男児を対象とした追跡調査では、思春期前後における血清中のTCDDは2.9 pg/g 脂肪、PCDD 毒性等量(TEQ)は 8.7 pg TEQ/g 脂肪であった。思春期前後の血清中のTCDDとPCDD TEQの濃度は精子の質の低下と関連すると報告されている(食安委ファクトシート (2020)、EFSA (2018))。
(3)イタリア及びロシアの追跡調査では、男児の時にTCDDの高いばく露を受けた父親から生まれた子供の性比の低値(女児に比べて男児の数が少ない)が報告されている(食安委ファクトシート (2020)、EFSA (2018))。
(4)ダイオキシン類は胎児に移行するが、胎児の体内濃度が母体より高くなることはない。また、ダイオキシン類は母乳中に分泌されるので、乳汁を介して新生児に移行する。生後3 カ月以内の乳児の48 時間観察の調査では、乳児は母乳摂取でダイオキシン類を60%以上吸収することが報告されている(食安委ファクトシート (2020)、EFSA (2018)、ATSDR addendum (2012))。
(5)雌ラットの妊娠15日にTCDDを単回強制経口投与した発生毒性試験において、200 ng/kg以上で同腹児数の減少、出生児の低体重、1,000 ng/kgで雄出生児の性成熟(包皮分離)の遅延、精巣重量の減少(生後70及び120日)がみられたが、受胎能への有害影響はみられなかった(EFSA (2018))。
(6)雌ラットにTCDDを交配前12週間、交配及び妊娠期間混餌投与した発生毒性試験(分娩後の母動物には基礎飼料を給餌)において、2.4 ng/kg/day以上で雄児動物に包皮分離遅延、8 ng/kg/day以上で同腹児(胎児期)死亡の増加、最高用量の40ng/kg/dayでは精巣重量の僅かな減少と異常精子の頻度の増加(生後70日)がみられたとの報告がある(EFSA (2018))。
(7)雌マウスの妊娠1~8日にTCDDを強制経口投与した妊娠初期投与試験において、最高用量の100 ng/kg/day投与群で胚死亡(主に着床前死亡)の増加がみられたとの報告がある(EFSA (2018))。
(8)母動物に500 ng/kg/day以上の2,3,7,8-TCDDを投与すると、ラットに腎形成異常、マウスに口蓋裂や水腎症がみられたとの報告、妊娠15日に母ラットに200 ng/kg以上の 2,3,7,8-TCDDを単回経口投与後に、雌児動物の生殖器の形態異常がみられたとの報告、雌アカゲザルの2,3,7,8-TCDDの4 年間経口投与で、投与開始後10年において、子宮内膜症の発生率と重篤度が有意に増加したとの報告、アカゲザルの試験において母動物に投与(妊娠7ヶ月前から離乳期まで、0.15 ng/kg/日)した場合、児動物に学習行動テストの成績の低下が観察されたとの報告がある(食安委ファクトシート (2020)、ATSDR addendum (2012))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(皮膚、免疫系、肝臓、生殖器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、ヒトにおいて皮膚、肝臓影響がみられ、(2)~(7)より、動物試験において区分1の用量範囲で皮膚、免疫系、肝臓、生殖器への影響がみられた。よって、区分1(皮膚、免疫系、肝臓、生殖器)とした。なお、新たな情報に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)高レベルのダイオキシンに短期間ばく露されたヒトでは、塩素ざ瘡・皮膚の斑状暗色化等の皮膚障害と肝機能の変化を生じるおそれがある(WHO (2016))。
(2)TCDDを被験物質としたラットを用いた単回経口ばく露試験において、LD50は数10 micro g/kg~数100 micro g/kg(区分1の範囲)であり、TCDDばく露に関連した特徴的な影響が見られた臓器は皮膚(クロルアクネ:塩素ざ瘡)、胸腺(萎縮)、肝臓(肝毒性、血清中肝由来酵素の増加、高脂血症、重量増加、肝ビタミンA枯渇)等であったとの報告がある(NTP TR521 (2006))。
(3)TCDDを被験物質としたラット(雌)を用いた単回経口投与試験において、10 micro g/kg(区分1の範囲)で卵巣重量、排卵率及び放出卵数の減少がみられたとの報告がある(ATSDR addendum (2012))。
(4)TCDDを被験物質としたカニクイザルを用いた単回経口投与試験において、4 micro g/kg(区分1の範囲)で投与1~2年後に血清プロゲステロンレベルの低下(血清エストラジオールは変化なし)を伴う無排卵と月経周期の欠如がみられたとの報告がある(ATSDR addendum (2012))。
(5)TCDDを全身毒性を生じるのに十分量を投与した場合、マウス、ラット、モルモットに精子形成の低下によって特徴づけられる精巣の萎縮と変性を生じさせ、さらにTCDD投与7日後に用量依存的な雄性生殖器(精嚢、前立腺腹葉、精巣、精巣上体尾部)重量の減少が生じ、この影響のEC50は15 mg/kgであったとの報告がある(EHC 88 (1989))。
(6)TCDDの各動物種への致死量投与において、剖検時に肉眼的に重度の胸腺萎縮、病理組織学的検査により胸腺皮質、脾臓及びリンパ節にリンパ球の枯渇像がみられたとの報告がある(EHC 88 (1989)、ATSDR addendum (2012))。
(7)TCDDの急性ばく露影響として、マウスの試験で液性免疫の抑制(抗原特異的なIgM及びIgG1の産生を抑制、ヒツジ赤血球に対する抗体産生抑制)がみられたとの報告がある(ATSDR addendum (2012))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(皮膚、神経系、免疫系、内分泌系、肝臓、生殖器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、ヒトにおいて皮膚、神経系、免疫系、内分泌系、肝臓、生殖器への影響がみられることから、区分1(皮膚、神経系、免疫系、内分泌系、肝臓、生殖器)とした。なお、新たな情報に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)高レベルのダイオキシンに短期間ばく露されたヒトでは、塩素ざ瘡・皮膚の斑状暗色化等の皮膚障害と肝機能の変化を生じるおそれがある。長期ばく露では、免疫系、発達中の神経系、内分泌系及び生殖機能の障害に関連した影響を生じるおそれがある(WHO (2016))。
(2)肝臓への影響としては、30年以上TCDDを含む化学物質にばく露されたチェコ共和国の作業者におけるTCDDの体負荷量増加とβ-リポタンパク、コレステロール及びトリグリセリド値の増加に関連していたとの報告があり、また、1つの職業ばく露コホートで、慢性肝疾患の病歴の増加と化学物質高ばく露作業者(塩素ざ瘡既往症例)とに相関がみられ、ばく露群では対照群と比べて、血清γ-GGT、GOT(AST)及びGPT(ALT)活性の有意な増加がみられたとの報告がある(ATSDR addendum (2012))。
(3)内分泌系への影響としては、環境中高レベルのダイオキシン及びダイオキシン類似物質へのばく露と糖尿病(9症例)に関連性がみられたとする報告があり、有害性廃棄物施設の近隣居住民を対象とした研究において、糖負荷後の血漿中インスリン濃度と血中TCDD高レベルとに相関がみられ、影響を受けた住民はインスリン抵抗性の疑いのあることを示唆する報告がある(ATSDR addendum (2012))。
(4)免疫系への影響としては、2つの化学工場で数年間フェノキシ系除草剤にばく露された作業者の群において、活性化T細胞数が低い作業者のオッズ比の増加とTCDDばく露とに相関がみられたとの報告がある(ATSDR addendum (2012))。
(5)神経系への影響としては、チェコスロバキアで除草剤の製造中に事故によりTCDDにばく露された約350人の作業者を10年後に追跡調査した結果、ポリニューロパチーと脳症が数名の作業者にみられ、検査対象者は少数(13例)であったが、筋電図、心電図、視覚誘発電位の異常が高率(23~54%)にみられたとの報告があり、長期間持続的な塩素ざ瘡を有症状に持つ12人の元作業者のほとんどが疲労、頭痛、睡眠及び記憶障害を経験したとの報告がある。さらに、TCDD等へのばく露30年後の追跡調査で、15人の元作業者のうち9人に多発性ニューロパチーの臨床症状(接触・疼痛感覚の低下、振動感覚低下、足首・膝反射の低下/消失)がみられ、うち3人に神経伝導速度の低下、8人に神経衰弱症候群(頭痛、疲労、情緒不安定、記憶障害)、心電図の異常や視覚誘発電位の異常がみられたとの報告がある(ATSDR addendum (2012))。

【参考データ等】
(6)WHOは実験動物を用いた試験結果に基づく知見からTDI(tolerable daily intake:耐容1日摂取量)を設定するにあたり、重要な影響として、①アカゲザルでみられた神経行動毒性(学習能低下、LOAEL:~0.16 ng/kg/day、体内負荷量:42 ng/kg)、②アカゲザルでみられた子宮内膜症(LOAEL及び体内負荷量:①と同値)、③ラットでみられた子孫の精子数減少(LOAEL:64 ng/kg/day、体内負荷量:28 ng/kg/day)、④ラットでみられた子孫の生殖器奇形発生の増加(LOAEL:200 ng/kg/day、体内負荷量:37 ng/kg/day)及び⑤ラットでみられた子孫の免疫抑制(LOAEL:100 ng/kg/day、体内負荷量:25 ng/kg/day)を挙げている(WHO (1998)、EFSA (2018))。
(7)ラットを用いた4週間~2年間反復経口投与試験において、数ng/kg/週~数micro g/kg/週(区分1の用量範囲)で全ての報告で肝臓傷害がみられ、その他、胸腺萎縮に加え、免疫毒性を調べた試験(ラットを用いた4週間強制経口投与試験、100 ng/kg以上)において、液性免疫調節の異常(LPS刺激に対するIgM+細胞比率の著減等)がみられたとの報告がある。なお、少数の報告では肺、膵臓、胸腺、甲状腺、副腎、心臓、陰核腺等に組織変化がみられたとの記述がある(EFSA (2018)、NTP TR 521 (2006))。
10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) -
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11 水生環境有害性 長期(慢性) -
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12 オゾン層への有害性 -
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分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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