項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 107-06-2 |
名称 | 1,2-ジクロロエタン |
物質ID | m-nite-107-06-2_v1 |
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項目 | 情報 |
---|---|
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
6 | 引火性液体 | 区分2 |
危険 |
H225 | P303+P361+P353 P370+P378 P403+P235 P210 P233 P240 P241 P242 P243 P280 P501 |
引火点13℃ (closed cup)、沸点83.5℃ (ICSC (2013)) に基づいて区分2とした。 なお、UNRTDG分類はUN. 1184、クラス3、副次危険6.1、PGⅡである。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 発火点が440℃ (ICSC (2013)) であり、常温で発火しないと考えられる。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。なお、「高温で水との接触がある場合には、鉄および他の金属を腐食する」 (HSDB (Acess on August 2015)) との記載がある。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
17 | 鈍性化爆発物 | - |
- |
- | - | - | - | - |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分4 |
警告 |
H302 | P301+P312 P264 P270 P330 P501 |
ラットのLD50値として、670 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003))、680 mg/kg (ATSDR (2001)、EHC 176 (1995)、EHC 62 (1987)、IARC 20 (1979)、JMPR (1965)、JECFA FAS 30)、770 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2004)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 176 (1995)、JMPR (1965))、794 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))、850 mg/kg (EHC 176 (1995)、EHC 62 (1987)、JECFA FAS 30 (Access on October 2015))、967 mg/kg (SIDS (2004)) との報告に基づき、区分4とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分に該当しない |
- |
- | - | ウサギのLD50値として、2,800 mg/kg (EHC 176 (1995))、4,890 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、SIDS (2004))、2,800~4,900 mg/kg (EHC 176 (1995)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分3 |
危険 |
H331 | P304+P340 P403+P233 P261 P271 P311 P321 P405 P501 |
ラットのLC50値 (4時間) として、1,000 ppm (IARC 20 (1979))、約1,900 ppm (SIDS (2004)) との報告に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (103,816 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | ウサギを用いたドレイズ試験において、本物質0.5 mLを4時間適用した結果、軽度の刺激性がみられたとの報告がある (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。SIDS (2004) では、本物質は皮膚に対して軽度の刺激性をもつと結論されている (SIDS (2004))。以上より、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B |
警告 |
H320 | P305+P351+P338 P337+P313 P264 |
ウサギを用いたドレイズ試験において本物質0.1 mLを適応した結果、軽度の眼刺激性を有したとの報告や刺激性はみられなかったとの報告がある (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。以上より、区分2Bとした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - | In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスのスポットテストで陽性、マウス骨髄細胞、末梢血赤血球の小核試験で陰性、トランスジェニック齧歯類突然変異試験で陰性、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性、ラットの肝臓、マウスの肝臓、腎臓、胃、前胃、肺、膀胱、脳、骨髄を用いたコメットアッセイで陽性、ラット、マウスの肝臓、腎臓、胃、前胃、肺のDNA結合試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省健康リスク評価第3巻 (2004)、CICAD 1 (1998)、IARC 71 (1997)、JECFA FAS 30 (Access on October 2015)、ATSDR (2001)、SIDS (2004)、EHC 176 (1995)、NTP DB (Access on October 2015)、OECD, Detailed review paper on transgenic rodent mutation assays, ENV/JM/MONO (2009))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、ヒトリンパ球の小核試験でいずれも陽性である(NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省健康リスク評価第3巻 (2004)、CICAD 1 (1998)、IARC 71 (1997)、JECFA FAS 30 (Access on October 2015)、ATSDR (2001)、SIDS (2004)、NTP DB (Access on October 2015))。以上より、陽性としているマウススポット試験はEHCにおいて弱陽性、IARCにおいてはinconclusiveとしており、決定的な知見とはいえない。また、その他のin vivo陽性知見は姉妹染色分体交換試験、コメットアッセイ及びDNA結合試験であり、直接的な知見ではない。また、トランスジェニック齧歯類突然変異試験での陰性知見から、区分2を支持する明確な陽性は認められず、ガイダンスに従い、分類できない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
6 | 発がん性 | 区分1B |
危険 |
H350 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトでは、IARC が本物質とエチレンオキシド、クロロヒドリンなど他の物質への同時ばく露を受けた作業者でがん死亡が明らかな集団を対象とした複数のコホート研究、症例対照研究を総括し、3件のコホート研究でリンパ造血系腫瘍による過剰リスク、膵臓がんと胃がんの過剰リスクが各1件の疫学研究で示されたが、他のコホート研究、コホート内症例対照研究ではがんによる過剰リスクは示されなかったこと、全例が複数の化合物への複合ばく露であることを指摘し、本物質に限定したばく露とヒト発がんとの関連性を評価する上で、利用可能なデータは既存の疫学研究報告では不十分と結論した (IARC 71 (1999)、NTP RoC (13th, 2014))。 一方、実験動物ではラット、又はマウスを用いた経口経路での発がん性試験において、ラットでは血管肉腫 (雌雄)、前胃扁平上皮がん (雄)、乳腺の腺がん (雌) が、マウスでは悪性リンパ腫及び細気管支/肺胞腺腫 (雌雄)、肝細胞がん (雄)、乳腺の腺がん、子宮内膜の腫瘍 (雌) が、それぞれ認められており、実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、IARCはグループ2Bに分類した (IARC 71 (1999))。さらに、吸入経路によるラット及びマウスを用いた発がん性試験でも、ラットで乳腺の線維腺腫 (雌雄)、腺腫及び腺がん (雌)、皮下組織の線維腫 (雌雄)、腹膜の中皮腫 (雄)、マウスでは肝臓の血管肉腫 (雄)と肝細胞腺腫(雌)、細気管支/肺胞腺腫とがん (雌) など複数の部位で腫瘍発生が認められ、本物質は吸入経路でも実験動物で発がん性を示すことが証明されている (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on August 2015))。 IARC以外の評価機関による分類結果としては、NTPが1981年に「R」に (NTP RoC (13th, 2014))、EPAが1991年に「B2 (probable human carcinogen) 」 に (IRIS Summary (Access on August 2015))、日本産業衛生学会が「2B」に (産衛学会許容濃度の勧告 (2015))、EUが「Carc. 1B」 に (ECHA SVHC Support Document (2011)) それぞれ分類しており、EUはこの分類結果を根拠に本物質を高懸念物質 (SVHC) に指定した。 以上、ヒトでの発がんの証拠はないが、実験動物ではラット、マウスの2種ともに吸入、経口の両経路で多臓器に腫瘍発生を示すことから、EUと同様に本項は区分1Bとした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
7 | 生殖毒性 | 分類できない |
- |
- | - | ヒトの生殖影響に関して、職業ばく露による流産、早産の報告があるが、女性作業者は本物質以外にガソリン、ジクロロメタンなどとの複合ばく露を受けた (DFGOT vol. 3 (1992)、NITE初期リスク評価書 (2005)) と記述されており、本物質ばく露との関連性が明らかな報告はない。 実験動物では、マウスを用いた経口経路での2世代生殖毒性試験、及びラットを用いた吸入経路での1世代生殖毒性試験では、前者で50 mg/kg/dayまでの用量、後者では 150 ppm (617 mg/m3) までの用量で、いずれもF0、F1世代の親動物に一般毒性影響及び生殖能への影響、児動物の成長、生存率などに有害影響はみられなかった (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。一方、発生毒性試験としては、経口経路では妊娠ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した試験で、母動物に体重増加抑制、死産児産出が生じる用量 (200 mg/kg/day以上) で胎児死亡、吸収胚の増加がみられた (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)) が、吸入経路では妊娠ラットに妊娠6~15日、又は妊娠6~20日に吸入ばく露した2試験、及び妊娠ウサギに妊娠6~18日に吸入ばく露した試験で、いずれも母動物毒性 (体重増加抑制、死亡例発現) が明らかな濃度までばく露されたが、胎児に異常はみられなかった (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 以上より、SIDSでは経口、及び吸入経路でのマウス又はラットを用いた生殖毒性試験で親動物の生殖能、児動物の出生前後の生存率、生後の成長発達に有害影響は示されず、また、経口、及び吸入経路での妊娠ラット又は妊娠ウサギを用いた発生毒性試験で、母動物に毒性が発現する用量まで胚/胎児への毒性はみられず、全体として本物質は生殖発生毒性物質とは考えがたいと結論した (SIDS (2004))。これに従えば、「区分外」に該当すると考えられる。しかしながら、妊娠ラットの経口経路での発生毒性試験では、母動物毒性が発現する用量で、胎児死亡の増加がみられていること (区分2相当の可能性あり)、経口及び吸入経路でのマウス又はラットを用いた生殖毒性試験では親動物に明確な一般毒性影響が発現する用量まで投与されておらず、生殖発生毒性がないと結論する上で、親動物への投与量が適切であったか検証が必要と思われる。すなわち、「区分外」とするには試験内容に疑問が残り、分類区分を付すに足る決定的証拠もなく、本項は分類できないとした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管)、区分3 (麻酔作用) |
危険 警告 |
H370 H336 |
P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 |
本物質は多くのヒトデータ及び実験動物データが報告されている。本物質は気道刺激性がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ACGIH (7th, 2001))。ヒトの中毒事例では、吸入または経口摂取により、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈、麻酔作用、中枢神経抑制、振戦、眼振、自律神経症状、瞳孔散大、脳神経細胞萎縮 (小脳プルキンエ細胞層の核濃縮を伴う萎縮)、腹部疝痛、胃腸管障害、下痢、心臓血管系への影響 (心不整脈、心窩部痛、心臓の狭窄感、心血管不全、心臓の表層点状出血、心筋変性)、血液凝固因子低下、血小板減少、白血球増加、呼吸不全、肺うっ血、肝臓傷害、肝細胞壊死、腎臓傷害、腎尿細管壊死、尿タンパク、チアノーゼ、死亡例の剖検では主要器官の充血や出血、肺水腫の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.3 (1992)、PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1984)、CICAD 1 (1998)、EHC 176 (1995)、IARC 20 (1979)、IARC 71 (1997)、ATSDR (2001))。 実験動物では、ラットの吸入ばく露 (区分1相当の用量) で、中枢神経系抑制、体温低下、昏睡、無呼吸、肺水腫、心筋変性、肝臓傷害、腎臓傷害、チアノーゼ、生存例の剖検所見から、肝臓及び腎臓重量増加、プロトロンビン時間延長、ホスファターゼ減少、肝臓の脂質増加、うっ血、実質の出血性壊死、脂肪変性、腎臓のうっ血、出血、皮質変性、ラットの経口投与 (区分2相当の用量) で、自発運動低下、歩行失調、肝臓傷害(脂肪変性、出血性壊死)、腸血管のうっ血など、腎臓傷害(腎臓うっ血、出血、壊死、間質性浮腫、尿細管拡張、尿細管上皮脂肪変性、尿細管細胞肥大)、肺傷害 (肺うっ血、出血、肺水腫、胸水の貯留の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.3 (1992)、PATTY (6th, 2012)、SIDS (2004)、ATSDR (2001))。 以上より、本物質は麻酔作用の他、中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管への影響があり、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管)、区分3 (麻酔作用) とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (神経系、肝臓、心血管系、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓) |
危険 警告 |
H372 H373 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトでは本物質を扱う飛行機工場で本物質にばく露された作業者に肝臓及び胆管の疾患、神経症状、自律神経失調、甲状腺機能亢進症などの発生率が高いことが米国NIOSHにより報告されたとの記述 (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003))、及び0.5~5年間にわたり、最高20 mg/m3で本物質にばく露された作業者に自律神経失調、神経筋の障害、徐脈、発汗、疲労、被刺激性、不眠症などの増加が報告されたとの記述 (環境省リスク評価第2巻 (2003)) より、ヒトにおける本物質反復ばく露による標的臓器としては、神経系、肝臓、心血管系、甲状腺が考えられる。 実験動物では、SDラットに13週間強制経口投与した試験では、区分2相当の75 mg/kg/dayで、肝臓及び腎臓相対重量の増加、血液影響 (ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の低下) が、F344ラットに13週間強制経口投与した試験では、区分2相当の18~30 mg/kg/day以上で肝臓、腎臓重量の増加、区分2を超える用量範囲では振戦、流涎、呼吸器困難などの神経症状、呼吸器症状がみられ、240~200 mg/kg/dayの用量で90~100%死亡、小脳の壊死、前胃粘膜の炎症、過形成、及び胸腺の壊死がみられている (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。これに対し、F344ラットに13週間飲水投与した試験では、強制経口投与時と比べて毒性発現は軽減したが、区分2相当の1,000 ppm (86~102 mg/kg/day) で、 腎尿細管上皮の再生がみられた (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述がある。一方、吸入経路では12ヶ月齢のラットに対し、本物質を12ヶ月間吸入ばく露した試験において、50 ppm (ガイダンス値換算濃度: 0.17 mg/L/6 hr/day (区分1相当)) 以上で、血清ALT、尿酸、尿素窒素の上昇がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述がある。以上の実験動物による試験結果からは、ヒトの標的臓器候補のうち、神経系と肝臓への影響が確認され、その他、腎臓、血液系への影響が区分2の用量範囲でみられた。 以上より、本項は区分1 (神経系、肝臓、心血管系、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓) とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 本物質は炭化水素でないが、ヒトの急性ばく露事例として、本物質を経口摂取したヒトで肺水腫が生じたとの症例報告5件のうち1件は本物質の吸引による化学性肺炎による可能性がある (ATSDR (2001)) との記述がある 。また、HSDBに収載された数値データ (粘性率: 0.84 mPa・s (20℃)、密度 (比重) : 1.2351 (20℃)) より、動粘性率計算値は0.68 mm2/sec (20℃) である。以上からは「区分1」相当と考えられるが、ATSDR以降の評価書では多量に飲み込んだ場合、又は吸入した場合に肺水腫を起こすことがある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述に留まり、最新のICSCでも吸入すると肺水腫を起こすことがあると記述されている (ICSC (2013)) のみで、吸引による肺傷害を支持する知見が見当たらない。さらに、EU CLP分類にも、本項に該当する有害性警句 (H304) の追加はない (ECHA SVHC Draft Support Document (Access on August 2015))。以上より、本項はデータ不足のため分類できないとした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分3 |
- |
H402 | P273 P501 |
甲殻類(ブラインシュリンプ)48時間LC50 = 12.8 mg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003)であることから、区分3とした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 急速分解性がなく(2週間でのBOD分解度=0%、TOC分解度=1.6%、GC分解度=1.1%(通産省公報, 1978))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC (r) = 55 mg/L(環境庁生態影響試験, 1995)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC (繁殖) = 1.02 mg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003、NITE初期リスク評価書, 2005)、魚類(ファットヘッドミノー)の28日間NOEC (GRO, 孵化後) = 29 mg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003)から、区分外とした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
|