項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 107-13-1 |
名称 | アクリロニトリル |
物質ID | m-nite-107-13-1_v1 |
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項目 | 情報 |
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
6 | 引火性液体 | 区分2 |
危険 |
H225 | P303+P361+P353 P370+P378 P403+P235 P210 P233 P240 P241 P242 P243 P280 P501 |
引火点-1℃ (closed cup)、沸点77℃ (ICSC (2001)) に基づいて区分2とした。 なお、UNRTDG分類はUN.1093 (安定剤入りのもの)、クラス 3、副次危険6.1、PGⅠである。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 自己反応性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 化学構造に不飽和結合 (オレフィン) を含むが、データがなく分類できない。なお、安定剤入りのものはUNRTDGでUN1093 クラス3 (6.1)に分類されているので、上位の危険物自己反応性化学品には該当しないためタイプGである。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 発火点が481℃ (ICSC (2001)) であり、常温で発火しないと考えられる。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
17 | 鈍性化爆発物 | - |
- |
- | - | - | - | - |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分3 |
危険 |
H301 | P301+P310 P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
ラットのLD50値として、72 mg/kg (EHC 28 (1983))、78 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003)、EHC 28 (1983)、IARC 19 (1979)、JECFA FAS 19、JMPR (1965))、82 mg/kg (雄)、86 mg/kg (雌)、84 mg/kg (EHC 28 (1983))、93 mg/kg (ATSDR (1990)、EHC 28 (1983)、IARC 19 (1979)、JMPR (1965))、101 mg/kg、128 mg/kg、186 mg/kg (EHC 28 (1983))、72~186 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000))、78~150 mg/kg (NTP TR506 (2001)) との報告に基づき、区分3とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分2 |
危険 |
H310 | P302+P352 P361+P364 P262 P264 P270 P280 P310 P321 P405 P501 |
ラットのLD50値として、148 mg/kg (JECFA FAS 19)、148 mg/kg、282 mg/kg (EHC 28 (1983))、148~282 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000)) との4件の報告がある。 2件が区分2に、1件が区分3に、1件は分類できないので、最も多くのデータが該当する区分2がラットの区分となる。ウサギのLD50値として、43 mg/kg (IARC 19 (1979))、226 mg/kg (EU-RAR (2004))、<200~226 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))、226~250 mg/kg (ATSDR (1990)) との4件の報告がある。2件が区分3に、1件が区分1に、1件が分類できないので、最も多くのデータが該当する区分3がウサギの区分となる。ラットの区分とウサギの区分とを比較し、安全側の区分2とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分2 |
危険 |
H330 | P304+P340 P403+P233 P260 P271 P284 P310 P320 P405 P501 |
ラットのLC50値 (4時間) として、470 mg/m3 (216 ppm) (EU-RAR (2004)、EHC 28 (1983))、333 ppm (環境省リスク評価第2巻 (2003))、1,030 mg/m3 (474 ppm)、1,210 mg/m3 (557 ppm) (EU-RAR (2004))、138~558 ppm (NITE初期リスク評価書 (2005)、NICNAS (2000)) との5件の報告がある。3件が区分2に該当し、1件は区分を特定できないので、最も多くのデータが該当する区分2とした。残りの1件は複数データをまとめた値であるため、該当数に含めずに分類した。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (1,085,883 ppm) より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 |
警告 |
H315 | P302+P352 P332+P313 P362+P364 P264 P280 P321 |
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質0.5 mLを24時間適用した結果、紅斑及び浮腫がみられ皮膚刺激スコア (最大値4) は 3.6であったとの報告がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ヒトにおいても急性ばく露による皮膚刺激性が複数報告されている (CICAD 39 (2002))。以上より、区分2とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
危険 |
H318 | P305+P351+P338 P280 P310 |
ウサギを用いた眼刺激性試験の報告が複数あり、本物質0.1 mLを1時間適用した結果、中等度の角膜混濁、中等度の虹彩炎、強度の結膜刺激性がみられ、適用21日後においても血管新生を伴う角膜混濁がみられたとの報告や (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))、本物質0.02 mLを適用した結果 (適用時間不明)、角膜に強度の火傷がみられたとの報告がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。以上の結果から区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Eye Dam. 1 H318」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験 (OECD TG準拠) において、本物質 (0.5%又は1%) の適用により感作性がみられた (感作陽性率95%) との報告がある (EU-RAR (2004)、CICAD 39 (2002)、NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol.24 (2007))。また、ヒト対するパッチテストにおいて、対照群8人に反応はみられなかったが、本物質を適用した5人全員に陽性反応がみられたとの報告があり (EU-RAR (2004)、DFGOT vol.24 (2007))、DFGOTは本物質を感作性物質と結論している (DFGOT vol.24 (2007))。以上より、区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - | In vivoでは、経口投与によるラットの優性致死試験、腹腔内投与並びに吸入ばく露によるマウスの優性致死試験で陰性、経口、腹腔内投与又は吸入ばく露によるラット、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、染色体異常試験でいずれも陰性、飲水投与によるラット脾臓 T 細胞のhprt遺伝子突然変異試験で陽性、腹腔内投与によるマウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陰性、経口投与によるラット脳、精母細胞の不定期DNA合成試験で陰性、経口投与によるラット肝臓の不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005) ,環境省_化学物質の健康リスク初期評価第3巻 (2004)、CICAD 39 (2002)、IARC 71 (1999)、EU-RAR (2004)、ACGIH (7th, 2001)) が、体細胞を用いた遺伝子突然変異試験の陽性報告は妥当性が低いと報告されている (EU-RAR (2004))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である(NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省_化学物質の健康リスク初期評価第3巻 (2004)、CICAD 39 (2002)、IARC 71 (1999)、EU-RAR (2004)、ACGIH (7th, 2001))。以上より、妥当なin vivo試験の陽性知見はなく、ガイダンスに従い、分類できないとした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
6 | 発がん性 | 区分1B |
危険 |
H350 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
国際機関による発がん性分類は、IARCが2B (IARC vol. 71 (1999))、ACGIHがA3 (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会が2A (1988年: (産衛学会勧告 (2015))、米国EPAがB1 (1999年: (IRIS Summary (Access on July 2015))、NTPがR (1991年: (NTP RoC (13th, 2014))、EUが1B (ECHA CL Inventory (Access on July 2015)) と分類ガイダンス上ではIARCとACGIHが区分2に、NTPが区分1Bから2に、日本産業衛生学会以降が区分1Bに該当する。 ヒトの疫学データに関して、1997年の国際会議で、「古い研究」と「新しい研究」とに分割して、解析することが合意され、IARCは疫学データの評価に加えた「新しい研究データ」の4件全てが発がん性を欠く結果であったことから、ヒトでの発がん性は不十分な証拠しかない、として「グループ2B」とした。一方、EUは1998年までの公表文献について、「新しい研究」を中心に検証し、「新しいデータ」3件で、膀胱がんの過剰リスクが示唆されたが、芳香族アミンへの過剰なばく露によるもので、アクリロニトリルばく露による影響ではないと考えられたこと、また、肺がんの過剰リスクについてもアクリロニトリルばく露との関連性は低いとしたが、比較的希少な腫瘍である脳腫瘍と前立腺がんの場合、利用可能な研究データ間の一貫性を評価しやすく、これらの腫瘍について、検討した結果、アクリロニトリル作業者ではアクリロニトリルをこれらの発がんの原因として完全に否定することはできず、実験動物のデータと併せ評価すると、「区分1B (旧DSD分類で「カテゴリー2」)」が妥当であるとした (EU-RAR (2004))。NTP RoC (13th, 2014) はIARC (1999) 以降の公表文献 (2004~2008年) を追加収載し、肺がんの国際的な大規模症例対照研究で、喫煙補正後の肺がんのリスクがアクリロニトリルばく露の増加とともに有意に増加したとの報告、メタ解析で肺がんのリスクがばく露レベルの増加と相関したとの報告、オランダのコホートの追跡調査研究では、脳腫瘍の過剰リスクが一部の集団でみられたとの報告など、発がん性を示唆する報告と同時に、否定的な知見として、米国の繊維産業従業員のコホートを対象とした50年間追跡研究で、アクリルニトリルばく露と発がんとの相関は腫瘍の部位に関わらずみられなかったとの報告を記述している (NTP RoC (13th, 2014))。 実験動物では経口 (飲水) 又は吸入経路で、ラットに中枢神経系 (膠細胞腫、小膠細胞腫)、ジンバル腺、及び前胃に腫瘍発生の増加、マウスに肺、ハーダー腺に腫瘍発生の増加を示すなどから、いずれの国際機関による発がん性評価でも実験動物では発がん性の確実な証拠があるとされている (IARC 71 (1999)、EU-RAR (2004)、NTP RoC (13th, 2014))。 以上、実験動物で十分な証拠があること、疫学研究からもヒト発がん性の可能性を依然として否定できないことから、本項は「区分1B」とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
危険 |
H360 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトでの生殖毒性に関する情報はない。実験動物ではラットを用いた経口経路 (飲水) での3世代生殖毒性試験において、F1~F3の各世代の児動物には100 ppm以上で生存率の低下、体重の低値がみられたものの、F0~F2の各世代の親動物には生殖能への影響はなく、NOAEL (受胎能) = 522 ppm (約 35 mg/kg/day) と報告されている (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。発生毒性に関しては、妊娠ラットに強制経口投与 (妊娠6~20日) した試験では、母動物毒性 (体重増加抑制、流涎、腺胃の肥厚) が顕著である用量 (65 mg/kg/day) で、胎児に胎児重量の減少、頭尾長の減少、奇形 (短尾、脊椎欠損、短胴体、鎖肛、二分胸骨分節など) の頻度増加がみられた (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 24 (2007)) との記述、妊娠ラットに吸入ばく露 (妊娠6~15日、6時間/日) した試験では母動物に体重増加抑制がみられる用量 (40 ppm) で、胎児に有害影響はなく、80 ppm で骨化遅延がみられたのみ (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、DFGOT vol. 24 (2007)) で、同様に妊娠ラットを用いた吸入ばく露試験 (妊娠6~20日、6時間/日) では 25 ppm以上の用量で母動物に体重増加抑制がみられたが、最高濃度の 100 ppm まで、胎児毒性及び奇形誘発はみられなかった (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 24 (2007)) との記述がある。この他、妊娠ハムスターに妊娠8日に単回腹腔内投与し、妊娠14日に屠殺した結果、母動物に呼吸困難、筋協調性低下、痙攣、低体温など重篤な症状が発現した用量 (80 mg/kg/day以上) で、胎児に外脳症、肋骨の癒合・分岐など奇形発生頻度の増加がみられている (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 24 (2007))。 以上、受胎能への有害性影響はこれまで報告されていないが、妊娠ラットを用いた経口経路での発生毒性試験で、母動物毒性が発現する用量で胎児毒性、及び催奇形性が示された。催奇形性の内容として、脊椎欠損、鎖肛など重篤な奇形が発生しており、母動物毒性の程度と比べて、胎児への毒性影響の程度がより重度とみられることから、催奇形性は母動物毒性による二次的影響とは考えがたい。よって、本項は区分1Bとした。なお、EU CLP分類では、本物質を生殖毒性物質として分類していない (ECHA CL Inventory (Access on July 2015))。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (神経系、肝臓、腎臓、血液系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) |
危険 警告 |
H370 H335 H336 |
P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 |
本物質のヒト並びに実験動物に関する多くの情報がある。 ヒト及び実験動物への影響は、本物質及びその代謝物であるシアン化物による影響が主なものである (EU-RAR (2004)、CEPA (2000)、CICAD 39 (2002)、ATSDR (1990)、NICNAS (2000))。 ヒトの中毒事例では、吸入ばく露により気道刺激性、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈、手足の倦怠感、肝臓肥大、黄疸、貧血、白血球増加、腎臓の傷害、重篤なケースでは、振戦、痙攣、チアノーゼ、頻拍、意識喪失、呼吸不全、死亡、経皮ばく露で眩暈、吐き気、嘔吐、幻覚、痙攣の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1988)、EU-RAR (2004)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、CICAD 39 (2002)、NICNAS (2000)、IARC 71 (1999)、PATTY (6th, 2012) vol. 2、DFGOT vol. 24 (2007))。 実験動物では、本物質投与直後の興奮相に始まり、流涎、流涙、排尿、排便などコリン作動性症状を呈した後、間代性痙攣を経て、麻痺から死亡に至るという症状経過が報告されている (EU-RAR (2004))。ラット、マウスなど経口投与、吸入ばく露による症状は、前胃の出血性胃炎、興奮、呼吸促迫、呼吸抑制、流涎、流涙、縮瞳、排尿、排便障害等コリン作動性神経系影響、痙攣、四肢麻痺、昏睡等である (NITE初期リスク評価書 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1988)、EU-RAR (2004))。これらの症状は、区分1に相当する用量で認められた。また、単回投与による本物質の主な標的器官は、神経系 (中枢、末梢) であり、この他、肺、肝臓、腎臓、副腎、胃、十二指腸、脾臓、血液への影響の報告がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1988)) が、肺、副腎、脾臓、十二指腸への影響の詳細は不明であった。 以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用のほか、神経系、肝臓、腎臓、血液系に影響を示し、区分1 (神経系、肝臓、腎臓、血液系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。 新たな情報を追加し旧分類を見直した。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓、腎臓、精巣) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトについては、本物質単独ではなく他の物質との混合ばく露であるが、眼、鼻、喉、気道の痛み、眩暈、手足の倦怠感、わずかな肝臓肥大及び黄疸(NITE初期リスク評価書 (2005))、ヘモグロビン濃度・赤血球数・白血球数減少、免疫抑制 (EU-RAR (2004)) 等の記述があった。 実験動物については、吸入経路では、ラットを用いた2年間吸入毒性試験において80 ppm (0.18 mg/L) で化膿性の鼻炎、鼻甲介の呼吸上皮の過形成、呼吸上皮粘膜の限局性びらん及び扁平上皮化生・化生様増殖、肝臓及び脾臓の髄外造血、肝臓の限局性壊死、脳の限局性グリオーシス及び血管周囲の細胞浸潤がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。ラットを用いた24週間吸入毒性試験において、110 mg/m3 (0.11 mg/L) で濃度と時間に依存した運動神経伝導速度及び知覚神経伝導速度、知覚活動電位の低下を認め、部分的に可逆性の影響がみられている (環境省リスク評価 第2巻 (2003)、CICAD 39 (2002))。ラットを用いた8週間吸入毒性試験において100 ppm (ガイダンス値換算:0.067 mg/m3) で軽度の嗜眠、脾臓にヘモジデリンの増加、腎集合管の硝子円柱、亜急性の気管支肺炎がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。 経口経路では、ラットを用いた2年間飲水投与毒性試験において、100 ppm (雄:8.36 mg/kg/day、雌:10.9 mg/kg/day) の雌でヘモグロビン・ヘマトクリット・赤血球の減少がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。マウスを用いた60日間強制経口投与毒性試験において、10 mg/kg/day (ガイダンス値換算:6.7 mg/kg/day) で精巣の精細管萎縮・核濃縮・多核巨細胞を伴う精子細胞の変性・間質の水腫がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005)、CICAD 39 (2002))。 以上から、神経系、呼吸器、血液系、肝臓、腎臓、精巣が標的臓器と考えられ、実験動物に対する影響は、区分1に相当するガイダンス値の範囲でみられた。なお、脾臓における所見は貧血に関連した二次的所見と考えられる。 したがって、区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓、腎臓、精巣) とした。 |
平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on August 2015) に収載された数値データより、動粘性率は0.424 mm2/sec (粘性率: 0.83 mPa・s (25 ℃)、密度 (比重) : 0.8004 (25 ℃)) と算出される。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
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11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分2 |
- |
H401 | P273 P501 |
魚類(ソウギョ)96時間LC50 = 1.18 mg/L(CEPA, 2000、CICAD 39, 2002)であることから、区分2とした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分2 |
- |
H411 | P273 P391 P501 |
急速分解性がなく(揮発式試験装置逆転法14日でのBOD(NO2)分解度=74,67,41%(通産省公報, 1988)、OECD TG 301Dに従って実施した試験のBODが0%、OECD TG 301Cに従って実施した試験のBODが14.7%(いずれもEU-RAR, 2004))、魚類(ファットヘッドミノー)の35日間NOEC (20% reduction in wet weight) = 0.34 mg/L(CEPA, 2000、CICAD 39, 2002)であることから、区分2とした。 | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし | 平成27年度(2015年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
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