項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 1071-83-6 |
名称 | N-(ホスホノメチル)グリシン (別名:グリホサート) |
物質ID | m-nite-1071-83-6_v2 |
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項目 | 情報 |
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 可燃性固体 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。なお、可燃性との情報 (GESTIS (Accessed July 2022))がある。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | <234℃で分解(ICSC (2005))との情報により、常温で発火しないと考えられるため、区分に該当しない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 半金属(P)を含むが、水溶解度は11.6 g/L(GESTIS (Accessed July 2022))との測定データが得られており、水と急激な反応をしないと考えられる。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
14 | 酸化性固体 | 分類できない |
- |
- | - | 酸素を含み、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合している有機化合物であるが、データがなく分類できない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
17 | 鈍性化爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(6)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:4,320 mg/kg(ATSDR (2022)) (2)ラットのLD50:5,600 mg/kg(JMPR (2016)) (3)ラット(雄)のLD50:11,300 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2016)) (4)ラット(雌)のLD50:10,500 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2016)) (5)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(CLH Report (2017)) (6)ラットのLD50:> 5,000 mg/kg(産衛学会許容濃度の勧告等 (2022)、EHC 159 (1994)) |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2016)、産衛学会許容濃度の勧告等 (2022)、CLH Report (2017)、EHC 159 (1994)) (2)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(CLH Report (2017) 、EHC 159 (1994)) (3)ラットのLD50:> 5,000 mg/kg(産衛学会許容濃度の勧告等 (2022)) |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間、グリホサート酸及びその塩):> 5 mg/L(EFSA (2015)) (2)ラットのLC50(4時間、粉じん、鼻部ばく露):> 5.04 mg/L(CLH Report (2017)) (3)ラットのLC50(4時間、粉じん):> 5.48 mg/L(CLH Report (2017)) 【参考データ等】 (4)ラットのLC50(4時間):> 4.43 mg/L(産衛学会許容濃度の勧告等 (2022)) |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 3または6)を用いた皮膚刺激性試験の11試験中の9試験において刺激性変化はみられなかった。その他の2試験(OECD TG404)においては、各1/3例で軽度の紅斑がみられたが、24~48時間以内に回復したとの報告がある(EU CLP CLH (2017))。 (2)本物質はウサギの皮膚に刺激性を示さなかった(JMPR (2016))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
危険 |
H318 | P305+P351+P338 P280 P310 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=2)を用いた眼刺激性試験(21日観察)において、角膜混濁、虹彩炎、結膜の充血、浮腫及び分泌物など重大な傷害がみられ、1例の影響は21日以内に回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017)、CLH Report (2016))。 (2)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(21日観察)において、角膜混濁(平均スコア1~2.7)、結膜発赤及び浮腫が6/6例に認められた。3/5例(1例偶発的死亡)でみられた影響は21日以内に回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017)、CLH Report (2016))。 (3)ウサギ(n=1)を用いた眼刺激性試験(24時間観察)において、1例で重度の眼の損傷が24時間後にみられ、試験は24時間で終了した。みられた所見は角膜混濁とびらん、結膜の発赤、浮腫、分泌物、黒点は少ないが眼瞼の浮腫と24時間後のフルオレセイン染色陽性であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017)、CLH Report (2016))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 皮膚感作性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)モルモット(n= 20)を用いたMaximisation試験(GLP、皮内投与:10%溶液)において、惹起終了24、48時間後の陽性率は0%(0/20例)であったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、農薬抄録 (2016))。 (2)マウスを用いたLLNA法による2試験及びモルモットを用いたMaximisation法による12試験の全ての試験結果で陰性であった(EU CLP CLH (2017))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(4)より、in vivoで一部陽性知見がみられた試験は試験方法に問題があること、in vitroの試験ではすべて陰性であること、(5)~(7)において遺伝毒性に関する十分な証拠が得られていないと結論されていることから、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)In vivoでは、マウスを用いた優性致死試験(単回経口投与、200~2,000 mg/kg)及びラットを用いた優性致死試験(単回経口投与、5,000 mg/kg)及びラットの骨髄細胞を用いた小核試験(単回腹腔内投与、1,000 mg/kg)において、陰性の報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、農薬抄録 (2016))。 (2)In vivoでは、げっ歯類(マウス6試験、ラット1試験)の骨髄細胞を用いた経口投与(最大2,000又は5,000 mg/kg)による小核試験(OECD TG474、GLP)の結果は、マウス、ラットの6試験で陰性の報告がある。マウス1試験では最高用量群の雌で小核を有する多染性赤血球の比率の増加(雄は有意差なし)がみられ、弱陽性と判定された。また、マウスの骨髄細胞を用いた腹腔内投与(15.6~563 mg/kg)による小核試験7試験のうち、5試験で結果は陰性の報告がある。他2試験は陽性と判断されたが、方法論的に問題があり(記述不十分、例数が少ない、観察細胞数が少ない等)、結果の解釈には注意が必要と指摘されている(EU CLP CLH (2017))。 (3)グリホート含有製品は300 mg/kg(グリホサート換算用量)を腹腔内投与したマウスの肝臓と腎臓で一本鎖DNA切断を、腎臓の細胞で酸化的DNA損傷を誘導した。しかし、この用量では肝臓と腎臓に高度の毒性を生じることから、肝臓と腎臓におけるDNA鎖切断は臓器毒性を介した二次的影響の可能性を否定できない。一方、グリホサート含有製品を腹腔内投与後のマウスの肝臓と腎臓でDNA付加体形成を生じることが報告された。分析用グレードのグリホサートを270 mg/kgで同様に腹腔内投与したマウスではDNA付加体形成がみられなかったことから、DNA付加体形成はグリホサート製品中の他成分に関連した影響の可能性が考えられた(ATSDR (2020))。 (4)In vitroは、細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子変異試験結果は全て陰性の報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、EU CLP CLH (2017)、IARC 112 (2017))。 (5)グリホート含有製品による実験において、変異原性・遺伝毒性を有する可能性を示唆する結果がみられるが、グリホサート原体でのその証拠は不十分である(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (6)EPAは、グリホサート原体について、経口経路を介して引き起こされる体内での遺伝子突然変異の誘発について説得力のある証拠がないと結論付けている。グリホサート誘発性炎症の可能性について高用量ばく露によって引き起こされる毒性に続発する遺伝毒性効果 (すなわち、グリホサート誘発性炎症、酸化ストレス、8-OH-dG、および姉妹染色分体交換または SCE) に関連している(EPA Proposed Interim Decision (2019))。 (7)ECHAは、グリホサートについて、特定標的臓器毒性、発がん性、変異原性、生殖毒性の項目で利用可能な科学的証拠がなく分類する基準を満たしていないとしている(ECHA RAC Opinion (2017))。 【参考データ等】 (8)IARCはグリホサートの発がん性分類をグループ2Aに引き上げた根拠の一つとして、グリホサート原体が遺伝毒性物質である強い証拠があると結論している(IARC 112 (2017))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 発がん性 | 区分2 |
警告 |
H351 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)のヒトでの調査での発がん性の限られた証拠をもとに区分2とした。新たな情報源を利用し分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)本物質の使用履歴と非ホジキンリンパ腫(NHL)との関連についての疫学研究について、14の症例対照研究のうち4つで統計的に有意な関連が観察されたものの、質の高いコホート研究である農業従事者を対象とした米国の大規模コホート研究(Agricultural Health Study、AHS)では有意な関連は観察されなかった。一方、AHSと5つの症例対照研究を含むメタ解析では有意な観察されたものの、AHSと2つのコホート研究を含むメタ解析では本物質の使用履歴とNHLで有意な関連は観察されず、関連性の一致性がみられなかったことから、日本産業衛生学会はグリホサートの発がん性に関する疫学的証拠は限定的であると結論している(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (2)動物を用いた発がん性試験については、ラットとマウスを用いた多くの試験があるが、その結果はがん発生の有無やその部位の一貫性に欠けること、OECDのテストガイドライン上で大量ばく露とされる投与量における試験結果が含まれることから、日本産業衛生学会は証拠が十分でないと結論している(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (3)日本産業衛生学会で第2群B(区分2相当)に分類され(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))、、IARCはヒト疫学、動物試験データ及び作用機序の評価結果に基づき、以前の分類区分(2B)からグループ2A(区分1B相当)に分類した(IARC 112 (2017))。 【参考データ等】 (4)EUの評価では、ラットでみられた良性の腫瘍性病変(膵島腺腫と肝細胞腺腫)は雄のみ、7試験中5試験でみられなかったことから、グリホサート誘発性の腫瘍の確たる証拠はないと結論された。また、マウスでは一部の試験でみられた腎尿細管腫瘍、血管肉腫及び悪性リンパ腫の3つの腫瘍のうち、5試験中4試験の高用量群の雄マウスにみられた悪性リンパ腫が注目されたが、腫瘍発生率は試験間でのばらつきが大きく、多くは利用可能な対照群の発生頻度の範囲内で、これより高い腫瘍発生率の試験ではリンパ節の非腫瘍性病変に並行的な増加がみられず投与に関連した腫瘍発生かどうか疑わしく、雌雄間での不一致性、ラットの試験結果からマウスにおける発がん性の確たる証拠はないと結論された(EU CLP CLH (2017))。 (5)IARCは、いくつかの症例対照研究において、グリホサートへのばく露と関連した非ホジキンリンパ腫(NHL)のリスクの増加の報告があるが、大規模なAHS(US Agricultural Health Study)のコホート研究ではNHLの過剰を示すことができず、ヒトでの発がん性の証拠は限られると結論した(IARC 112 (2017))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 生殖毒性 | 区分2 |
警告 |
H361 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 実験動物を用いた標準的な生殖発生毒性試験結果からは、本物質の生殖発生影響について否定的な報告もあるが、(1)~(4)の新たな知見に基づき、女性の性機能への有害影響を否定できないことから区分2とした。なお、新たな情報源を利用し分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)アメリカのインディアナポリスで実施された妊婦(n= 71、平均年齢29歳)を対象とした前向きコホート研究では、尿中グリホサート濃度(妊娠11~38週)を曝露指標とし、出生児の成長指標との関連はなかったが、妊娠期間の短縮との関連がみられたとの報告がある(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (2)グリホサートの0.5%水溶液とグリホサート含有製品の0.5%水溶液を妊娠ラットに飲水投与(妊娠0~18日)し妊娠18日に剖検した。対照群との比較において、両投与群とも体重増加抑制と卵巣重量の減少がみられた。成熟卵胞数は対照群(平均値10.67)と比べてグリホサート0.5%水溶液投与群(同2.33)及び市販製品0.5%水溶液投与群(同6.00)では減少した。一方、閉鎖卵胞数は対照群(1.67)と比べてグリホサート投与群(14.00)及び市販製品投与群(6,33)と増加した。また、両投与群では卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)mRNAの発現低下がみられた(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (3)ウサギを用いた7つの強制経口投与による発生毒性試験結果について、EUは顕著な母動物毒性(死亡、下痢等)がみられる用量で、着床後胚損失率の低下、胚/胎児死亡の増加、低頻度の奇形発生(心血管奇形、骨格奇形)が認められた。頭蓋顔面の明瞭な骨格奇形が1つの試験で報告されたが、他の6試験でも同様の奇形発生例が500 mg/kg/day以上の用量でみられたことを付記した(EU CLP CLH (2017))。 (4)(3)のウサギを用いた7つの強制経口投与による発生毒性試験結果について、日本産業衛生学会では、ウサギの胎児でみられた発生影響は母動物の下痢や体重増加抑制等による二次的な影響の可能性を否定できないが、母動物毒性のみで発生影響をすべて説明することは困難である旨の見解を示している(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (5)日本産業衛生学会で生殖毒性分類第3群に分類された(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 【参考データ等】 (6)マウスを用いた飲水投与試験(胎生10.5日~離乳(生後20日)、0.5~50 mg/kg/day)において、雄出生児を生後5、20、35日及び8ヵ月齢で剖検した結果、生後20日の雄児の精巣に形態異常がみられ、生後35日の雄児では血清テストステロン値の有意な低下が認められた。これらの影響は0.5 mg/kg/day群でも認められたが、用量依存性は明確でなかった。8ヵ月齢の雄動物では、精子数、精巣重量等に用量依存的な影響はみられなかった(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (7)ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験(1,000~10,000 ppm)において、親動物では最高用量のF1雄に体重増加抑制及び摂餌量低下が認められたが、雌では毒性所見は認められなかった。児動物では最高用量群のF1雌雄で体重増加抑制がみられた。最高用量の10,000 ppmまで親動物の生殖能への影響は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2016)、EU CLP CLH (2017))。本試験を含めてグリホサートのラットを用いた6つの二世代生殖毒性試験では、親動物の受胎能への有害影響は認められなかった(EU CLP CLH (2017))。 (8)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)では、限度量の1,000 mg/kg/dayまでの用量で母動物、胎児に影響は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2016)、EU CLP CLH (2017))。本試験を含めてグリホサートのラットを用いた6つの発生毒性試験から、顕著な母動物毒性(死亡、体重増加抑制、症状等)が生じる用量で、胎児に骨化遅延、骨格奇形(低頻度)がみられたが、二次的影響の可能性もあり、本物質投与による発生毒性の十分な証拠は得られなかった(EU CLP CLH (2017))。 (9)グリホサートばく露がヒトの生殖能に及ぼす影響について検討された7つの疫学研究報告を精査した結果、多産能、流産、早産、妊娠糖尿病、出生時体重、先天性奇形、神経管障害、子供における注意欠陥障害/注意欠陥多動性障害(ADD/ADHD)の発生には、グリホサートばく露とは統計的に有意な正の関連はないと考えられた(EU CLP CLH (2017))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(5)より、区分に該当しないとした。経口、経皮及び吸入経路において、本物質に特異的な標的臓器毒性はないと考えられた。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)EUでの調査では、グリホサート単独ばく露によるヒトの中毒情報はないが、グリホサート含有製品(除草剤)を経口摂取または吸入して急性中毒を生じた事故例の報告は多数ある。ヒトでの気道刺激を報告した1症例も本物質含有製品へのばく露によるもので活性成分のグリホサート単独によるものでなく、製品に含まれる非イオン性界面活性剤による影響とみられている(ECHA RAC Opinion (2017))。 (2)24件のラットおよび4件のマウスを用いた単回経口投与試験では、すべて2,000 mg/kg(区分2の範囲)以上の高用量で実施されており、最も多くみられた症状は呼吸困難、下痢、活動性低下、運動失調、立毛、痙攣及び円背姿勢であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017))。 (3)20件のラットおよび1件のウサギを用いた単回経皮投与試験では、すべて2,000 mg/kg(区分2の範囲)以上の高用量で実施されており、最も多くみられた症状は体重低下、下痢及び軽度の局所影響であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017))。 (4)13件のラットを用いた単回吸入ばく露試験において、8試験が5.0 mg/L(区分2の範囲)でばく露され、残りの5試験は試験最高濃度の2.0 mg/L~4.43 mg/L超(区分2の範囲)でばく露された。最も多くみられた症状は、上気道の刺激、活動亢進、呼吸数の増加/減少、立毛、脱毛、被毛湿潤、軽度体重減少、軽度振戦及び軽度運動失調であり、これらの症状は試験間で一致して報告されたものではなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017))。 (5)ラットを用いた経口投与による急性神経毒性試験において、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で雌3/10例で活動性低下、行動抑制、うずくまり姿勢又は体温低下、下痢、削痩、つま先歩行、異常発声がみられ、1 例がその後死亡した。これらの所見は検体投与に関連したものであるが、神経毒性に特異的なものではなく、グリホサートの高用量投与に関連した一般毒性を反映したものと考えられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、ECHA RAC Opinion (2017))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、経口経路では区分に該当しない。ただし、他経路での毒性情報がなくデータ不足のため分類できない。 【根拠データ】 (1)2件のラットを用いた混餌投与による90日間反復経口投与試験、マウスを用いた混餌投与による90日間反復経口投与試験、イヌを用いたカプセル投与による1年間慢性毒性試験において、検体投与に関連した毒性所見はみられなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016))。 (2)ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、20,000 ppm(940 mg/kg/day(雄)、1,180 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で雄に白内障様変化又は水晶体線維変性及び水晶体混濁(眼科的検査)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016))。 【参考データ等】 (3)疫学的なデータは全て本物質を含む農薬製剤にばく露された人を含む報告で、活性物質である原体のみにばく露されたわけではなく、しかも他の農薬にもばく露されている可能性があるため、本物質のヒトへの反復ばく露影響として利用可能な報告はない(CLH Report (2016))。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
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- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
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11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分3 |
- |
H402 | P273 P501 |
藻類(珪藻)72時間ErC50 = 18 mg/L(EU CLP CLH, 2016)であることから、区分3とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分3 |
- |
H412 | P273 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する十分なデータが得られておらず、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 12.5 mg/L(EU CLP CLH, 2016 )、魚類(ニジマス)21日間NOEC = 52 mg/L(EHC, 1994)から、区分に該当しないとなる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階(藻類)に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する十分なデータが得られておらず、藻類(珪藻)72時間ErC50 = 18 mg/L(EU CLP CLH, 2016)から、区分3となる。 以上の結果を比較し、区分3とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 |
令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
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- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 | 令和4年度(2022年度) | ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
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