NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 108-95-2
名称 フェノール
物質ID m-nite-108-95-2_v2
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。なお、低融点の物質であり、引火点82℃(closed cup)との情報(GESTIS (Accessed July 2021))がある。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。引火点82℃(closed cup)との情報(GESTIS (Accessed July 2021))がある。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点は595℃(GESTIS(Accessed July 2021))であり常温で発火しないと考えられる。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が55℃以下の固体であるが、データがなく分類できない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
【分類根拠】
(1)~(7)より、区分4とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:414 mg/kg(MOE 初期評価 (2002))
(2)ラットのLD50:340~650 mg/kgの間(NITE 初期リスク評価書 (2008))
(3)ラットのLD50:400 mg/kg(EPA Pesticides RED (2009))
(4)ラットのLD50:650 mg/kg(EPA Pesticides RED (2009))
(5)ラットのLD50:1,030 mg/kg(EPA Pesticides RED (2009))
(6)ラットのLD50:340~530 mg/kgの間(EFSA (2013)、AICIS IMAP (2014))
(7)ラットのLD50:530 mg/kg(ACGIH (2001))
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(経皮) 区分3


危険
H311 P302+P352
P361+P364
P280
P312
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(8)より、区分3とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:669 mg/kg(MOE 初期評価 (2002))
(2)ラットのLD50:525~714 mg/kgの間(NITE 初期リスク評価書 (2008))
(3)ラットのLD50(非閉塞):0.68 mL/kg(密度1.071 g/cm3による換算値:728 mg/kg)(EPA Pesticides RED (2009))
(4)ラットのLD50(閉塞):0.50 mL/kg(密度1.071 g/cm3による換算値:536 mg/kg)(EPA Pesticides RED (2009))
(5)ラットのLD50:669.4 mg/kg(EPA Pesticides RED (2009))
(6)ウサギのLD50:850 mg/kg(MOE 初期評価 (2002))
(7)ウサギのLD50:630 mg/kg(EPA Pesticides RED (2009))
(8)ウサギのLD50:850~1,400 mg/kgの間(NITE 初期リスク評価書 (2008))
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、区分1には該当しないが、区分を特定できず、分類できない。なおばく露濃度は飽和蒸気圧濃度の90%(414 ppm)より低いため、蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(8時間):> 900 mg/m3(4時間換算:1,800 mg/m3(330.7 ppm))(EPA Pesticides RED (2009) 、CERI 有害性評価書 (2008)、AICIS IMAP (2014))
(2)本物質の蒸気圧は、0. 35 mmHg(25℃)である(HSDB (Accessed July 2021))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より区分1とした。

【根拠データ】
(1)本物質を含有する皮膚局所薬剤投与で刺激性皮膚炎の発生がみられ、皮膚への局所ばく露では、その部位に漂白作用又は紅疹が発生し、腐食や壊死に到る場合がある(CERI 有害性評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2002))。
(2)本物質はヒトが経口及び経皮ばく露すると、皮膚、眼及び粘膜に対して強い刺激性を示す(CERI 有害性評価書 (2008))。
(3)本物質はウサギの皮膚に腐食性を示した(EPA Pesticides RED (2009))。
(4)ウサギ、ラット、マウス、ブタの眼又は皮膚に本物質を適用した結果、発赤、炎症、変色、発疹、潰瘍、壊死、腐食性を認めたとする報告がみられ、眼や皮膚に対する強い刺激性ないし腐食性を示すと考える(CERI 有害性評価書 (2008)、CEPA PSAR (2000)、EHC (1994))。
(5)In vitro 皮膚腐食性試験(OECD TG 431)において、皮膚腐食性がみられたとの報告がある(AICIS IMAP (2014))。

【参考データ等】
(6)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「フェノール(別名石炭酸)」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害)が、業務上の疾病として定められている。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)~(5)より区分1とした。

【根拠データ】
(1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。
(2)フェノールはヒトが経口及び経皮ばく露すると、皮膚、眼及び粘膜に対して強い刺激性を示す(CERI 有害性評価書 (2008))。
(3)本物質の15%溶液はウサギの角膜に重度の損傷、5%でそれより弱い角膜損傷を生じた(EPA Pesticides RED (2009))。
(4)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG 405相当、14日観察)において、重度の結膜炎、虹彩炎、角膜混濁及び潰瘍がみられ、14日後にも回復しなかったとの報告がある(EPA Pesticides RED (2009)、CERI 有害性評価書(2008)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))。
(5)ウサギ、ラット、マウス、ブタの眼又は皮膚にフェノールを適用した結果、発赤、炎症、変色、発疹、潰瘍、壊死、腐食性を認めたとする報告がみられ、眼や皮膚に対する強い刺激性ないし腐食性を示すと考える(CERI 有害性評価書 (2008))。

【参考データ等】
(6)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「フェノール(別名石炭酸)」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害)が、業務上の疾病として定められている。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)2名のボランティアを 2%のフェノール溶液で皮膚感作し、1%溶液で誘発したが、感作性はみられなかったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(2)24名のボランティアにフェノールの2%溶液で感作後に1%溶液で惹起したMaximisation試験では、感作性反応はみられなかったとの報告がある(AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))。
(3)モルモット(n=10)を用いたの改変Buehler試験(OECD TG 406相当、局所投与:10%溶液)において、パッチ除去24時間後の陽性率は0%(0/9例)であったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、CEPA PSAR (2000)、AICIS IMAP (2014)、EHC (1994)、SIAP (2004)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(6)より、経口経路での小核誘発の生物学的妥当性は低いが、他経路による接触部位への影響が考慮されていることから、区分2とした。なお、旧分類区分1Bの根拠とした生殖細胞を用いた染色体異常試験の陽性知見は不十分と考え、採用しなかった。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスを用いた繁殖試験の一部として実施された精原細胞/一次精母細胞を用いた染色体異常試験(経口(飲水)投与)で陽性、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験(経口及び腹腔内投与)で陰性、同骨髄細胞を用いた小核試験(経口又は腹腔内投与)で陽性又は陰性、妊娠マウスを用いた小核試験(経口投与)で母動物骨髄及び胎児肝臓でともに陽性の結果であった。この他、ラットの精巣細胞、マウスの骨髄細胞を標的としたDNA一本鎖切断試験、ラットの諸臓器を対象としたDNA付加体形成試験はすべて陰性であった(CERI 有害性評価書 (2008))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験は全体として陰性、ほ乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験では陽性の報告が多いが、多くは細胞毒性が生じる高濃度での弱陽性である。また、ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、小核試験等では染色体レベルでの変異検出試験では主に細胞毒性発現濃度で陽性の結果が得られている(REACH登録情報 (Accessed July 2021))。
(3)(1)のIn vivoデータのうち、冒頭のマウスの生殖細胞を用いた染色体異常試験の陽性結果はEUの評価には採用されていない。EHC 161 (1994)によれば、原著は1977年の報告で5世代試験の一部として実施された非定型的試験(unconventional study)結果で、記述も不十分な報告である。また、EHCに収載されているほ乳類を用いたもう一つの生殖細胞変異原性試験として、ラットの精巣を用いたDNA鎖切断試験(5日間腹腔内投与)では陰性であった(EHC 161 (1994))。EUはフェノールの生殖細胞変異原性については十分な試験データがないとして評価を回避し、体細胞変異原性物質としての評価を行った(EU REACH CoRAP (2015)、EU RAR (2006)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))。
(4)EUはフェノールの体細胞変異原性についても懐疑的である。In vivoの小核試験結果は陽性と陰性の相反する結果が混在しているが、陽性結果は高用量でのみみられ、かつ多染性赤血球中の小核出現率の増加率が2~2.5倍とぎりぎり陽性と判定される結果であった。しかも、高用量での小核誘発性はフェノールにより誘発される低体温の結果、染色体分離がうまくいかず細胞分裂が阻害される可能性が指摘されており、体温制御操作を施し体温低下を防止すると小核誘発を抑制する効果が得られている(REACH登録情報 (Accessed July 2021)、EU RAR (2006)、EFSA (2013))。
(5)EFSAの専門家パネルは、経口的に投与されるフェノールはin vivoで遺伝毒性を有するとの生物学的妥当性はないと結論付けた(EFSA (2013))。EUは、フェノールのMuta. Category 2の分類に関して、経口経路ではin vivo遺伝毒性物質としての妥当性を欠くが、他経路での変異原性の可能性はまだ残っており、フェノールの生殖細胞変異原性物質としての位置づけに変更はないとコメントしている(EU REACH CoRAP (2015))。
(6)ATSDRは、フェノールの遺伝毒性については多くのin vivo及びin vitro試験結果があるが、これらの結果は曖昧であるとしている。フェノールは代謝物の作用により結果が異なる可能性があるが、フェノール自体が潜在的な遺伝毒性物質と考えられ、追加試験の必要はないとしている(ATSDR (2008))。

令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 発がん性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)国内外の評価機関における既存分類結果として、IARCでグループ3(IARC 71 (1999))、ACGIHでA4(ACGIH (7th, 2001))、EPAでグループD(IRIS (2002))に分類されている。
(2)ラット及びマウスを用いた2年間飲水投与による発がん性試験において、マウスの試験では雌雄とも5,000 ppmまでの用量で投与による腫瘍の発生増加は認められなかった。ラットの試験では、2,500 ppm以上の投与群の雄に副腎髄質褐色細胞腫、甲状腺C細胞がん、精巣間細胞に腫瘍精巣間細胞腫瘍の発生率の増加がみられたが、腫瘍の発生に用量依存性は認められず、2,500 ppm 群の雄でみられた白血病、リンパ腫は対照群でも認められた。従って、本試験では投与による用量依存性のある腫瘍の発生はみられなかった。フェノールは雌雄ラット、雌雄マウスのいずれに対しても発がん性を示さなかった(MOE 初期評価 (2002)、CERI 有害性評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、EPA Pesticides RED(2007)、EFSA (2013)、AICIS IMAP (2014))。

【参考データ等】
(3)フェノールは、DMBAやベンゾピレンをイニシエーターとして 用いた二段階発がん性試験で、マウスの皮膚又は経口での反復投与によりプロモーション作用を示したとする報告がある(CERI有害性評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2002) 、ACGIH (7th, 2001))
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1Bとした。(1)では親動物に重篤な一般毒性影響がみられない用量で児動物に生存産児数の減少などがみられた。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた飲水経口投与による二世代生殖毒性試験(OECD TG416、GLP、交尾前10週間から約16週)において、5,000 ppmでF0及びF1親動物に体重減少又は体重増加抑制、摂餌量及び摂水量の減少、児動物に生存産児数の減少(F1及びF2)、膣開口日、包皮腺分離日遅延(F1)がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、US AEGL (2009)、EFSA (2013)、REACH登録情報 (Accessed June 2021)、Ryan et al. (2001))。
(2)ラットを用いた強制経口投与による2つの発生毒性試験(妊娠6~15日)において、発生毒性はみられなかったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2002)、US AEGL (2009)、EFSA (2013))。
(3)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、360 mg/kg/dayで親動物に体重減少、体重増加抑制、摂餌量の減少、流涎、頻呼吸、死亡(1例)、児動物に体重の減少、中足骨の化骨遅延がみられたが、奇形は発生しなかったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EFSA (2013)、AICIS IMAP (2014))。

【参考データ等】
(4)本物質は日本産業衛生学会で生殖毒性物質第3群に分類された(産衛学会 生殖毒性物質の提案理由書 (2014))。
(5)マウスを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、で親動物に顕著な一般毒性影響(死亡(4/36例))、振戦、運動失調など)がみられる用量で、胎児に体重減少、生存胎児数の減少、口蓋裂(ストレスによる)がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、US AEGL (2009)、REACH登録情報 (Accessed June 2021)、AICIS IMAP (2014))。
(6)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~19日)において、親動物に40 mg/kg/day以上で産児数の減少、53 mg/kg/dayで体重増加抑制、児動物に出生時死亡の増加、曲尾の増加がみられた(CERI 有害性評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2002)、US AEGL (2009) 、EFSA (2013))。ただし、産児数の減少もしくは児動物に曲尾の増加がみられた母動物では呼吸器症候群がみられており、母動物への重篤な影響によるものと考えられたため発生毒性の評価には利用できないとされた(EFSA (2013))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、呼吸器、心血管系、腎臓)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1(神経系、呼吸器、心血管系、腎臓)とした。

【根拠データ】
(1)経口摂取 (57g/人) により胃などの消化管に対する重度の刺激がみられ、心臓、血管及び呼吸器に対する影響がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EHC (1994))。
(2)吸入ばく露によるフェノールの急性中毒として、食欲不振、体重減少、頭痛、眩暈、流涎、暗色尿の症状が知られているが、死亡例はないとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2002)、EHC (1994))。
(3)フェノールを大量に経皮吸収した結果、中毒症状は急速に発現し、呼吸数過多、呼吸困難、 心臓律動不整、心血管性ショック、重度の代謝性アシドーシス、メトヘモグロビン血症、急性腎不全、腎臓障害、暗色尿、けいれんなどの神経系への影響、昏睡、死亡等がみられるとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2002)、EHC (1994))。
(4)フェノールの動物実験でみられた急性症状は、中枢神経系の抑制、れん縮及び神経系・筋肉系の過剰興奮、不規則な心拍数増加とその後の減少、 血圧増加とその後の低下、流涎、呼吸困難,体温低下等が投与経路に拘わらずみられ、経口摂取で、咽喉及び食道粘膜の出血を伴う腫脹、腐食、壊死、肝臓、腎臓、副腎及び胸腺に対する毒性がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(5)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「フェノール(別名石炭酸)」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害)が、業務上の疾病として定められている。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、心血管系、血液系、肝臓、腎臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)のヒトへの影響より、心血管系が標的臓器と考えられ、(2)~(7)より、区分1の用量範囲で中枢神経系、血液系、腎臓、肝臓への影響がみられた。よって、区分1(中枢神経系、心血管系、血液系、肝臓、腎臓)とした。なお旧分類が標的臓器として採用した標的臓器のうち、脾臓および胸腺は症状の詳細が不明であり信頼性が低いものと判断し、消化管は刺激性による所見であると判断し、分類に採用しなかった。

【根拠データ】
(1)ゴム製造作業者を対象にフェノールばく露による心血管系疾患の死亡率を15年間追跡調査した結果、フェノールへのばく露の可能性がある作業者にはばく露期間に依存した心血管系疾患に起因する死亡率の増加がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EHC (1994))。
(2)ラットを用いた2週間反復経口投与試験において、12 mg/kg/day以上(90日換算:1.85 mg/kg/day、区分1の範囲)で1匹に脾臓および胸腺の萎縮・壊死 (詳細不明) が、40 mg/kg/day以上(90日換算:6.2 mg/kg/day、区分1の範囲)で行動変化(自発運動減少、立上り行動増加)、腎臓影響(尿細管壊死、乳頭部出血、尿細管タンパク円柱)、2匹に脾臓および胸腺の萎縮・壊死(詳細不明)がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(3)別のラットを用いた2週間反復経口投与試験において、4~120 mg/kg/day以下(90日換算:0.62~18.7 mg/kg/day、区分1~区分2の範囲)で振戦、腎臓影響(尿細管のタンパク円柱及び壊死、乳頭の出血)がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(4)マウスを用いた飲水投与による4週間反復経口投与試験において、4.7 ppm以上(90日換算:0.55 mg/kg/day、区分1の範囲)で赤血球数の有意な減少が用量依存的にみられ、脳の視床下部、中脳線状体等でドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質とその代謝物の濃度が減少したとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(5)モルモットを用いた3.5ヵ月反復経口投与試験において、0.5 mg/kg/day(区分1の範囲)で血小板減少症, 軽度の好酸球増多及び網状赤血球増多症の発現、骨髄赤芽球成熟度指数の減少がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(6)ラットを用いた15日間反復吸入(蒸気)ばく露試験において、100 mg/m3以上(0.1 mg/L、区分1の範囲)で中枢神経影響(傾斜板試験)及び肝臓影響(AST・ALT上昇、肝臓障害等)がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。
(7)ラットを用いた61日間反復吸入(蒸気)ばく露試験において、0.012 mg/m3以上(0.000012 mg/L、区分1の範囲)で神経影響(伸筋時値の短縮)、血中コリンエステラーゼ活性上昇がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。

【参考データ等】
(8)職業ばく露についての1900年以前の報告として、医師等医療関係者にフェノール消耗症(carbol marasmus) とよばれる吸入による慢性中毒例があり、また、沸騰フェノール溶液を扱った研究室の作業者に食欲不振、体重減少、頭痛、眩暈、流涎、暗色尿等を伴う消耗症が発生したとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EHC (1994))。
(9)フェノールの流出事故 (米国ウィスコンシン州、1974年) による汚染地下水を飲料水として用いた住民約 100人 (推定摂取量: 10~240 mg/人) が健康状態の悪化 (下痢、口内の痛み、暗色尿、口内炎) を訴えたが、事故 6ヵ月後の問診及び臨床生化学的検査では異常はみられなかったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EHC (1994))。
(10)石油精製工場で作業中にフェノールに単独ばく露された男性作業者20人の集団(グループI:平均ばく露期間 13.2±6.6年間、時間加重平均ばく露濃度 5.4 ppm)とフェノール(4.7 ppm)、ベンゼン(0.7 ppm)、トルエン(220 ppm)及びメチルエチルケトン(90 ppm)の混合物にばく露された同32人の集団(グループII:平均ばく露期間: 14.3±6.1年)とフェノールばく露地点から距離的に遠く離れた事務部門の被験者集団(グループIII:n= 30)とを比較した結果、ばく露群(グループI及びII)では血清ALT、AST活性の有意上昇、血液凝固時間の延長及び血清クレアチニンの低値が認められたとの報告がある(US AEGL (2009))。
(11)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「フェノール(別名石炭酸)」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害)が、業務上の疾病として定められている。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分2
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H401 P273
P501
甲殻類(ニセネコゼミジンコ)48時間LC50 = 3.1 mg/L(EU RAR, 2006、SIAP, 2004、EHC, 1994、NITE初期リスク評価書, 2007、MOE初期評価, 2002)であることから、区分2とした。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
急速分解性があり(BODによる分解度:85%(METI既存点検結果, 1979))、魚類(Cirrhina mrigala)の60日間NOEC = 0.077 mg/L(SIAP, 2004)から、区分2とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果を変更した。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)


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