NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 115-29-7
名称 6,7,8,9,10,10-ヘキサクロロ-1,5,5a,6,9,9a-ヘキサヒドロ-6,9-メタノ-2,4,3-ベンゾジオキサチエピン=3-オキシド  (別名:エンドスルファン)
物質ID m-nite-115-29-7_v2
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 可燃性固体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性 (ICSC (1998)) との情報より、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性 (ICSC (1998)) との情報より、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 自己発熱性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性 (ICSC (1998)) との情報より、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - フッ素を含まず、酸素及び塩素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (S) と結合しているが、データがなく分類できない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分2


危険
H300 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(7) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雌: 10 mg/kg (JMPR (1999))
(2) ラットのLD50: 雌: 10~23 mg/kg、雄: 40~120 mg/kg (ACGIH (7th, 2009))
(3) ラットのLD50: 雌: 10~240 mg/kg、雄: 40~1,740 mg/kg (ATSDR (2015))
(4) ラットのLD50: 雌: 18 mg/kg、雄: 43~121 mg/kg (EHC 40 (1984))
(5) ラットのLD50: 雌: 30 mg/kg、雄: 82 mg/kg (EPA Pesticides RED (2002))
(6) ラットのLD50: 40~355 mg/kg (EHC 40 (1984))
(7) ラットのLD50: 80 mg/kg (IPCS PIM 576 (2000))
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(経皮) 区分2


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(7) より、区分2とした。
なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雌: 74 mg/kg (EHC 40 (1984))
(2) ラットのLD50: 雌: 78 mg/kg、雄: 130 mg/kg (ACGIH (7th, 2009))
(3) ラットのLD50: 130~681 mg/kg (EHC 40 (1984))
(4) ラットのLD50: 雌: 500 mg/kg (JMPR (1999))
(5) ウサギのLD50: 147~359 mg/kg (EHC 40 (1984))
(6) ウサギのLD50: 290 mg/kg (IPCS PIM 576 (2000))
(7) ウサギのLD50: 2,000 mg/kg (EPA Pesticides RED (2002))
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(6) より、区分1とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (3.8E-006 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): 雌: 0.0126 mg/L、雄: 0.0345 mg/L (ACGIH (7th, 2009)、ATSDR (2015)、IPCS PIM 576 (2000))
(2) ラットのLC50 (4時間): 雌: 0.013 mg/L (JMPR (1999))
(3) ラットのLC50 (4時間): 0.013~0.035 mg/L (GESTIS (Access on May 2020))
(4) ラットのLC50 (4時間): 0.08 mg/L (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))
(5) ラットのLC50 (4時間): 0.16~0.5 mg/L (EPA Pesticides RED (2002))
(6) ラットのLC50 (4時間): 0.35 mg/L (EHC 40 (1984))
(7) 本物質の蒸気圧: 1.73E-007 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 3.8E-006 mg/L)
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質のウサギを用いた皮膚刺激性試験において刺激性を示さない (JMPR (1999)、GESTIS (Access on May 2020))。

【参考データ等】
(2) EPA OPPTS 870.2500に準拠した本物質の製剤 (有功濃度 50 %) のウサギを用いた皮膚刺激性試験で刺激性を示さない (EPA Pesticides RED (2002))。
(3) ラットの皮膚に本物質を6h/日、5日間の適用で、雌では62.5 mg/kg/day、雄では250 mg/kg/dayにおいて、軽度から中等度の紅斑、軽度の浮腫、乾燥及び落屑がみられたが、雌で48 mg/kg/day及び雄で 192 mg/kg/dayまでの適用量では刺激性はみられなかった。また、モルモットに本物質を 587 mg/kg/dayの用量で6h/日、3日/週、3週間適用した実験で紅斑及び浮腫はみられていない (ATSDR (2015))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で刺激性を示さない (JMPR (1999))。
(2) 本物質の20%水懸濁液のウサギの眼への適用は刺激性を示さない (ATSDR (2015))。

【参考データ等】
(3) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の刺激性を示す (GESTIS (Access on May 2020))。
(4) EPA OPPTS 870.2400に準拠した本物質の製剤 (有功濃度 50 %) のウサギを用いた眼刺激性試験で刺激性を示し、角膜混濁は適用13日まで認められた (EPA Pesticides RED (2002))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験において感作性を示さない (JMPR (1999)、GESTIS (Access on May 2020))。
(2) 本物質の職業性皮膚炎を有する農夫14人に対するパッチテストで感作性は認められていない (ATSDR (2015))
(3) モルモットに本物質を 587 mg/kg/dayの用量で6h/日、3日/週、3週間適用した実験で感作性は認められなかった (ATSDR (2015))。

【参考データ等】
(4) EPA OPPTS 870.2600に準拠した本物質の製剤 (有効濃度 50 %) のモルモットを用いた皮膚感作性試験で感作性を示さない (EPA Pesticides RED (2002))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1), (2) より専門家判断に基づき区分2とした。生殖細胞における染色体異常誘発性は相反しており、明確な証拠とは判断されなかった。新たな情報の追加により、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット5日間吸入ばく露の精原細胞及び骨髄細胞による染色体異常試験で陰性 (ATSDR (2015)、IPCS PIM 576 (2000)、EHC 40 (1984)、HSDB (Access on May 2020))、マウス5日間経口投与の精原細胞による染色体異常試験で60日後に陽性 (ATSDR (2015)、ACGIH (7th, 2009))。マウスまたはハムスターの骨髄細胞による染色体異常試験でそれぞれ陽性 、マウス経口投与の骨髄細胞による小核試験で陰性、ラット経口投与の骨髄細胞による小核試験、マウス腹腔内投与の骨髄細胞による小核試験でそれぞれ陽性の報告がある (ATSDR (2015))。マウス優性致死試験で陰性の報告がある (IPCS PIM 576 (2000)、EHC 40 (1984))。ラットまたはマウスの骨髄細胞で異常な分裂中期像の有意な変化の報告がある (ATSDR (2015))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性 (ATSDR (2015)、HSDB (Access on May 2020)、CEBS (Access on May 2020))、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性 (CEBS (Access on May 2020))、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性 (ATSDR (2015)、ACGIH (7th, 2009)、CEBS (Access on May 2020))、小核試験で陽性の報告がある (ATSDR (2015))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 発がん性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2009))、EPAでNL (Not Likely to be Carcinogenic to Humans) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on August 2020):2000年分類) に分類されている。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 生殖毒性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、分類根拠とする影響はみられていないことから、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌による2世代生殖毒性試験において、親動物に体重増加抑制がみられたが、生殖影響はみられていない (IRIS (1994)、ACGIH (7th, 2009))。
(2) 雌ウサギの妊娠6~28日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡、呼吸雑音、呼吸促拍、活動亢進等) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (IRIS (1994))。

【参考データ等】
(3) 雌ラットの妊娠6~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡、洗顔、活動亢進、被毛粗剛、体重減少等) がみられる用量で、胎児に胎児重量減少、頭臀長減少、胸骨骨化遅延、過剰肋骨がみられている (IRIS (1994))。なお、本試験は投与過誤による母動物死亡のため途中から試験動物を追加したことにより、結果の解釈が難しく、データの利用には制限があると注記されている (IRIS (1994)、ATSDR (2015))。ACGIH (7th, 2009) では、母動物毒性 (死亡等) がみられたが、発生影響の証拠はみられていないとしている。
(4) 雄ラットの70日間経口投与試験では、精子数の減少及び精巣酵素活性の変化、精巣内精子数、精子産生量の減少、異常精子の発生率増加がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2009))。
(5) ATSDR (2015) には、「入手可能な生殖試験に関する情報は、本物質が動物の生殖能に有害影響を及ぼさないことを示している。しかし、雄の生殖エンドポイント (精子パラメータ、精巣の病理組織学的変化、性ホルモン濃度) に対する有害影響がラット、マウス、ウサギ、モルモットで認められている。雄の生殖能を調べた試験で影響がみられなかったのは、少なくともラットでは、正常な受精能及び同腹児数に必要な精子数の10倍以上の精子が生産及び射出されたためと考えられる」と記載されている。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、ヒトにおいて、神経系への影響と随伴症状として胃腸症状、呼吸機能障害、心血管系障害がみられ、(3)~(4) より、実験動物では経口及び吸入経路とも区分1の範囲で神経系への影響が認められている。したがって、区分1 (神経系) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質の摂取による急性致死性中毒の5例の報告において、初期臨床症状として、吐き気、嘔吐、下痢、興奮、もがくような動作、意識消失、チアノーゼ、呼吸困難、口の中での泡立ち、呼吸音の雑音などがあった。3例の剖検では、脳及び肺の浮腫、腎髄質の出血、急性肺気腫及びニューロンの虎斑融解 (chromatolysis) が認められた (ACGIH (7th, 2009))。
(2) 神経系への障害は重要な症候群 (めまい、錯乱、易刺激性、霧視および強直間代痙攣への筋攣縮) であった。随伴症状は、胃腸症状 (悪心、嘔吐、腹痛、下痢)、呼吸機能障害 (呼吸困難、呼吸数増加)、心血管系障害 (頻脈または徐脈) であった。発作や意識障害の場合、脳波の変化、見当識障害、興奮が数日間持続することがある。1例では、情緒及び認知障害 (部分健忘、協調障害、複雑な活動ができないこと)が2年後にも臨床的に診断された (GESTIS (Access on May 2020))。
(3) 実験動物の経口LD 50は雄マウスで8.4 mg/kg、雄ラットで40~120 mg/kg、雌ラットで10~23 mg/kg、雄イヌで76.7 mg/kg でいずれも区分1の範囲であり、急性致死性の中毒徴候として、興奮性亢進、呼吸困難、呼吸数減少、振戦、強直性間代性痙攣がみられる (ACGIH (7th, 2009))。
(4) ラットを用いた急性吸入ばく露後に、不規則呼吸が雌雄ラットの両方で観察された。3.6 mg/m 3群の雌と12.3 mg/m 3群の雄で、呼吸困難、振戦、運動失調がみられた (いずれも区分1の範囲)。さらに高濃度では (濃度記載なし)、振戦、強直性間代性痙攣、反射の低下 (角膜反射、瞳孔反射、踏み直り反射、ショック反射、痛覚反射及び皮膚反射) が認められた (ACGIH (7th, 2009))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、血液系、腎臓、生殖器 (男性))、区分2 (肝臓)


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
本物質のヒトでの反復ばく露に関する報告はない。実験動物では、(1)~(10) より区分1の用量で神経系、血液系、腎臓、生殖器 (男性) 、区分2の用量で肝臓への影響がみられていることから、区分1 (神経系、血液系、腎臓、生殖器 (男性))、区分2 (肝臓) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットの3ヵ月間混餌投与試験では、60 ppm (雄/雌: 3.8/4.6 mg/kg/day相当、いずれも区分1の範囲) 以上で近位尿細管細胞の色素沈着、さらに雌では脳アセチルコリンエステラーゼ活性の増加がみられ、360 ppm (雄/雌: 23/27 mg/kg/day相当、いずれも区分2の範囲) の雄では尿量及び尿蛋白濃度の増加、尿細管細胞質内の好酸性滴状物を伴う黄色の蛋白質凝集、雌では血漿及び赤血球コリンエステラーゼ (ChE) 活性の低下がみられたとの報告がある (JMPR (1998))。
(2) ラットの13週間経口投与試験では、0.8 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上でヘモグロビン濃度の低下、1.9 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で平均赤血球ヘモグロビン濃度の低下、さらに雄では赤血球数の低下、平均赤血球容積の増加がみられたとの報告がある (ATSDR (2015))。
(3) マウスの3ヵ月間混餌投与試験では、54 ppm (雄/雌: 7.3/7.5 mg/kg/day、いずれも区分1の範囲) で痙攣や流涎がみられたとの報告がある (JMPR (1998))。
(4) マウスの12ヵ月間混餌投与試験では、300 ppm (42 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓において巨細胞浸潤、褐色色素で満たされた巨大組織球性細胞、リンパ節において巨細胞浸潤及び細網内皮細胞増殖がみられたとの報告がある (JMPR (1998))。
(5) ラットの30日間経皮ばく露試験では、雄では致死量の190 mg/kg/day (90日換算値: 44.3 mg/kg/day、区分2の範囲) で振戦、強直性間代性痙攣、流涎、血清、赤血球及び脳ChE活性の低下、雌では48 mg/kg/day (90日換算値: 11.2 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で血清ChE活性の低下がみられたとの報告がある (JMPR (1998))。
(6) ラットの30日間経皮ばく露試験では、雄の致死量である9 mg/kg/day (90日換算値: 2.1 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で肝辺縁の肝実質細胞肥大、細胞質の好塩基性の喪失、血清及び脳内ChE活性の低下がみられたとの報告がある (JMPR (1998))。
(7) 雄ラットの70日間経口投与試験では、2.5 mg/kg/day (90日換算値: 1.4 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で精子数の減少及び精巣酵素活性の変化、5 mg/kg/day (90日換算値: 2.8 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で精巣内精子数、精子産生量の減少、異常精子の発生率増加がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2009))。
(8) ラットの78週間混餌投与試験では、雌では影響がみられなかったが、220 ppm (ガイダンス換算値: 11 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雄で中毒性腎症(混濁腫脹、脂肪変性及び尿細管上皮の壊死を伴う近位尿細管の変性、硝子円柱、尿細管上皮の再生像)、胃、腎臓、精巣、大動脈、腸間膜動脈の石灰沈着、上皮小体過形成、精細管における生殖細胞の変性・壊死及び多核細胞に特徴付けられる精巣萎縮とそれに伴う精子形成の欠如がみられたとの報告がある (JMPR (1998)、NTP TR62 (1978))。
(9) 雄ラットの78週間経口投与試験では、20 mg/kg/day (区分2の範囲) で精巣の萎縮、精細管を覆う生殖細胞の変性・壊死がみられたとの報告がある (JMPR (1998))。
(10) マウスの3週間経口投与試験では、0.8 mg/kg/day (区分1の範囲) で精子の数及び運動性の減少、精子異常の頻度増加がみられたとの報告がある (ATSDR (2015))。

【参考データ等】
(11) ATSDR (2015) では、ラット、マウス、ウサギ、モルモットで雄の生殖エンドポイント (精子パラメータ、精巣の病理組織学的変化、性ホルモン濃度) に対する有害影響が認められており、この影響について、種間ではマウスの感受性が高く、また、若齢動物は老齢動物よりも感受性が高い可能性が指摘されている。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
魚類(Mystus vittatus)96時間LC50 = 0.00006 mg/L(EHC 40, 1984)であることから、区分1とした。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、魚類(シープスヘッドミノー)の28日間NOEC = 0.00027 mg/L(ECOTOX, 2020、EPA OPP Pesticide Ecotoxicity Database, 2020)から、区分1となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、甲殻類(エビジャコ属)の96時間LC50 = 0.0002 mg/L(EHC 40, 1984)から、区分1となる。
以上の結果から、区分1とした。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)


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  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
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