項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 119-36-8 |
名称 | メチル=2-ヒドロキシベンゾアート(別名:サリチル酸メチル) |
物質ID | m-nite-119-36-8_v1 |
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項目 | 情報 |
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 引火点が96℃ (Closed cup)(ICSC(Accessed Sep. 2020))である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 発火点は450℃(GESTIS(Accessed Sep. 2020))であり常温で発火しないと考えられる。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
17 | 鈍性化爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分4 |
警告 |
H302 | P301+P312 P264 P270 P330 P501 |
【分類根拠】 (1)~(5)より、区分4とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:887 mg/kg(CLH Report (2017)、EPA Pesticides RED (2005)) (2)ラットのLD50:2,820 mg/kg (雄:3,050 mg/kg、雌:2,640 mg/kg) (CLH Report (2017)) (3)ラットのLD50:1,250 mg/kg(CLH Report (2017)、EPA Pesticides RED (2005)) (4)ラット(雄)のLD50:1,220 mg/kg(CLH Report (2017)) (5)ラット(雌)のLD50:1,060 mg/kg(CLH Report (2017)) |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:> 2,500 mg/kg(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) (2)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(EPA Pesticides RED (2005)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、(1)、(2)は、ばく露時間が不明であり分類に利用できない。 【参考データ】 (1)ラットのLC50:> 400 mg/m3(> 64.4 ppm)(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) (2)ラットのLC50:> 100 mg/m3(> 16.1 ppm)(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=4)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、半閉塞、4時間適用、14日観察)において、1%溶液、5%溶液、10%溶液、25%溶液、100%溶液を適用したところ、10%以下の濃度で反応はみられなかった。25%溶液を適用した場合の紅斑の平均スコアは0.2、浮腫の平均スコアは0であり、100%溶液を適用した場合の紅斑の平均スコアは1.3、浮腫の平均スコアは0.6であった。すべての反応は14日以内に完全に回復したとの報告がある(ECHA RAC Background Document (2019)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
危険 |
H318 | P305+P351+P338 P280 P310 |
【分類根拠】 (1)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)In vitro 眼刺激性試験(OECD TG 491、GLP)において、5%濃度の細胞生存率は25.5%、26.8%、31.0%であり、0.05%濃度の細胞生存率は11.6%、3.9%、19.9%であったとの報告がある(REACH登録情報情報 (Accessed Oct. 2020))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 皮膚感作性 | 区分1B |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
【分類根拠】 (1)~(5)より、区分1Bとした。 【根拠データ】 (1)湿疹患者585名に対するパッチテスト(本物質2%剤)において、1978~1979年の調査で陽性率は1%、1979~1980年の調査で陽性率は2%であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018))。 (2)1,825名に対するパッチテスト(多施設調査、本物質2%剤)において、陽性率は0.4%(7/1,825名)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018))。 (3)本物質は(1)(2)を含む複数の診断研究から、非選別の患者では1%未満、選別した患者では2%以下の頻度で皮膚感作性を生じる物質であると結論した(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018))。 (4)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429相当、溶媒:DMF)において、刺激指数(SI値)は1.5(12.5%)、1.7(25%)、5.9(50%)、7.1(100%)、EC3値は33%と算出されたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 (5)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429相当、溶媒:MEK)において、刺激指数(SI値)は2.0(12.5%)、2.4(25%)、7.6(50%)、9.4(100%)、EC3値は28%と算出されたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)細菌を用いた復帰突然変異試験(OECD TG 471相当)において、陰性の報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)、RIFM Expert Panel Report (2007)、Patty (6th, 2012))。 (2)ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG 473相当)において、陰性の報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)、RIFM Expert Panel Report (2007)、Patty (6th, 2012))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 発がん性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【根拠データ】 (1)ラットの混餌投与による2年間慢性毒性試験結果からは発がん性の証拠はみられなかった(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)、RIFM Expert Panel Report (2007))。しかし、これは古い慢性毒性試験であって、例数的にも少なく、発がん性試験の規準を満たさない。標準的な発がん性試験結果は、18種のサリチル酸(塩・エステル)のいずれについてもない(RIFM Expert Panel Report (2007))。 (2)肺腫瘍発生に敏感なA系マウスを用いたスクリーニング試験において、本物質は試験条件下(最大500 mg/kgを3回/週、8週間腹腔内投与)で肺腫瘍の発生増加を生じなかった(RIFM Expert Panel Report (2007))。 (3)本物質の加水分解物であるサリチル酸の発がん性ポテンシャル検討のためのスクリーニング試験として、ラットにサリチル酸ナトリウムを混餌または注射により投与した結果、いずれの臓器にも腫瘍発生を示した動物はみられなかった(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 (4)ラット2年間慢性毒性試験及びA系マウスを用いた試験では、本物質の発がん性はみられなかった。遺伝毒性試験結果、サリチル酸及びその関連物質のよく知られている代謝機構を考慮すると、本物質が発がん性を有するとは考えにくい(RIFM Expert Panel Report (2007))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
危険 |
H360 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(2)より、区分1Bとした。なお、(1)では軽度な母体毒性がみられる用量で、児動物に奇形や内臓異常がみられ、(2)では出生率減少等の影響がみられている。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた皮下投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6~17日)において、200 mg/kg/dayで親動物に体重増加抑制、摂餌量減少、児動物に体重の低値、外表奇形(頭蓋脊椎破裂・腹壁破裂)及び内臓異常(心室中隔欠損・尿管拡張・頸部における胸腺の残滓)の発生頻度がみられたとの報告がある(CLH Report (2018))。 (2)ラットを用いた皮下投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6~哺育21日)において、200 mg/kg/dayで親動物に一般毒性影響(死亡(2/20例)、体重減少、摂餌量減少)、児動物に出生率減少、包皮分離遅延、切歯萌出の遅延、骨格変異及び異常(頸椎骨の癒合・胸椎分節欠損)の増加がみられたとの報告がある。(CLH Report (2018))。 【参考データ等】 (3)ウサギを用いた皮下投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6~18日)において、発生毒性はみられなかったとの報告がある。(CLH Report (2018))。 (4)本物質のヒトへの影響に関するデータはないが、類似物質のアセチルサリチル酸(ASA)では多くの報告がある。ASAも本物質も体内では急速にサリチル酸に分解する。多くの報告は低濃度のASAがヒトの妊娠への有害影響はないとしているが、母体の出血、妊娠期間及び分娩への影響を示唆する報告もある。ただし、詳細な情報が不明なため、ヒトのデータからは結論を導けないと考えられる。(CLH Report (2018))。 (5)ASAについて、米国で実施された大規模コホート研究の結果、妊娠期に服用した妊婦と服用しなかった妊婦の間で、奇形児出産頻度は統計的に差異がなく催奇形性を有しないと考えられた。なお、ASAは子癇前症に予防効果が認められ、そのリスクがあると判断される妊婦には低用量のアスピリンを予防的に常用することが今日では推奨されるようになっており、ASAの類薬である本物質も実験動物でみられるような催奇形性はヒトでは生じないと考えられる(ECHA RAC Opinion (2019))。 (6)ラットの発生毒性試験では、母動物毒性が軽度な状況において、胎児に外表奇形、内臓異常が認められたことや、ハムスターでも本物質大量投与で奇形がみられた(Patty (2012))などから、生殖毒性の分類はRepr. 1Bが妥当であるとCLH Reportでは結論された。なお、RACはヒトではASAの事例からヒトでは催奇形性は生じないと判断し、証拠の重み付け評価として、実験動物での陽性の結果とヒトの陰性の結果に基づき、Repr. 2に分類すべきと結論している(ECHA RAC Opinion (2019))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(中枢神経系、消化管)、区分3(麻酔作用) |
危険 警告 |
H370 H336 |
P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 |
【分類根拠】 (1)~(4)より、中枢神経系及び消化管が主標的臓器と考えられ、区分1(中枢神経系、消化管)に分類できる。また嗜眠、昏睡がみられていることから区分3(麻酔作用)を追加し、区分1(中枢神経系、消化管)、区分3(麻酔作用)とした。 【根拠データ】 (1)本物質の大量使用による副作用として、頭痛、悪心・嘔吐、食欲不振、頻脈等が生じるとの報告がある(JAPIC (2019))。 (2)本物質は経口経路ではよく吸収される。本物質は迅速かつ大半が加水分解され、サリチル酸とメタノールになる。本物質はヒトの場合、経口投与後に80%が90分以内に加水分解されるとの報告がある(CLH Report (2018))。 (3)サリチル酸の急性中毒は、アセチルサリチル酸(アスピリン)の過剰量、局所薬の過剰適用、サリチル酸軟膏の摂取等多くの症例報告がある。2004年だけでもサリチル酸のヒトばく露が米国のpoison control centerに40,405件報告されている。これらのうち、本物質の関与が12,500件(30%)含まれる。サリチル酸中毒の典型的な症状は吐血、頻呼吸、過呼吸、呼吸困難、耳鳴り、難聴、嗜眠、発作、錯乱等であるとの報告がある(CLH Report (2018))。 (4)経口摂取後のサリチル酸中毒の主症状は悪心・嘔吐、上腹部痛であり、時には吐血がみられる。また、軽度~中程度のサリチル酸中毒の共通的な臨床症状には過呼吸、発汗、紅潮、発熱、被刺激性亢進、耳鳴り、難聴が含まれる。重篤な中毒症例では、呼吸困難、卒倒、幻覚、痙攣、乳頭浮腫及び昏睡が特に小児に発生するおそれがある。代謝性アシドーシス、非心原性肺水腫、肝毒性及び心リズム障害をきたすおそれもあるとの報告がある(IPCS PIM 642 (Accessed Oct. 2020)。 【参考データ等】 (5)ラットの単回経口投与試験において、投与後すぐに鎮静(depression)がみられ、死亡例は4~18時間後に生じた。LD50値(887 mg/kg)と報告されている(CLH Report (2018)、REACH登録情報情報 (Accessed Oct. 2020))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(中枢神経系) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1(中枢神経系)とした。なお(3)、(4)より、実験動物では区分2までの用量範囲内で標的臓器毒性はみられなかった。 【根拠データ】 (1)本物質は経口経路ではよく吸収される。本物質は迅速かつ大半が加水分解され、サリチル酸とメタノールになる。本物質はヒトの場合、経口投与後に80%が90分以内に加水分解されるとの報告がある(CLH Report (2018))。 (2)慢性サリチル酸中毒の徴候として、代謝性アシドーシス、低血糖、嗜眠、昏睡及び痙攣などである。との報告がある(IPCS PIM 642 (Accessed Oct. 2020))。 (3)ラットを用いた混餌投与による2年間経口投与試験において、50 mg/kg/day(区分2の範囲)で影響がみられず、250 mg/kg/day(区分該当しない範囲)で毒性所見がみられるが、標的臓器は明確ではないとの報告がある(RIFM Expert Panel Report (2007)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 (4)イヌを用いた強制経口による2年間経口投与試験において、50 mg/kg/day(区分2の範囲)で影響がみられず、150 mg/kg/day(区分該当しない範囲)で肝臓影響(相対重量増加、肥大、肝細胞肥大)がみられたとの報告がある(RIFM Expert Panel Report (2007)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分2 |
- |
H401 | P273 P501 |
藻類(デスモデスムス属)72時間ErC50 = 1.6 mg/L(EU CLP CLH, 2018)であることから、区分2とした。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分2 |
- |
H411 | P273 P391 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する十分なデータが得られていない。藻類(デスモデスムス属)の72時間NOErC = 0.79 mg/L(EU CLP CLH, 2018)から、区分2となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する十分なデータが得られていない。魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 19.8 mg/L(EU CLP CLH, 2018)から、区分3となる。 以上の結果を比較し、区分2とした。 |
令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 | 令和2年度(2020年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
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