NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 1314-41-6
名称 四酸化三鉛
物質ID m-nite-1314-41-6_v2
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 可燃性固体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性である(GESTIS(Accessed June 2021))。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性である(GESTIS(Accessed June 2021))。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 自己発熱性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性である(GESTIS(Accessed June 2021))。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 金属(Pb)を含むが、水に不溶(GESTIS(Accessed June 2021))との情報があり、水と急激な反応をしないと考えられる。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - 酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 無機化合物である。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(AICIS IMAP (2013))
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。なお、新たな情報に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(AICIS IMAP (2013))
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404)において、皮膚刺激性影響はみられなかったとの報告がある(AICIS IMAP (2013))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG 405)において、眼刺激性影響はみられなかったとの報告がある(AICIS IMAP (2013))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)モルモットを用いた皮膚感作性試験(OECD TG 406)において、結果は陰性であったとの報告がある(AICIS IMAP (2013))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
本物質自体のデータはなく、本項は無機鉛化合物の分類とする。(1)~(3)より、鉛化合物が吸収され、血中鉛濃度が一定値を超えると遺伝毒性が発現すると考えられていることから、区分2とした。新たな情報源を追加し、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)成人(一般人及び労働者)と子供において、鉛ばく露に関連した遺伝毒性影響を調査した多くの疫学研究(その多くは小規模な職業ばく露研究)において、血中Pb濃度(PbB) ≧10 microg/dLの研究報告の多くで、鉛ばく露と遺伝毒性評価項目(遺伝子変異、DNA損傷、SCE、小核形成及びDNAメチル化)との間に相関性ありと報告されている(一部は逆相関の報告もある)(ATSDR (2020))。
(2)ヒトにおいて、PbB > 10 microg/dLでは以下の報告がある、(ア)遺伝子損傷:多くの研究報告で確証されている、(イ)テロメア長の減少、(ウ)染色体異常:主に陽性の結果として多くの研究で評価されている、(エ)姉妹染色分体交換:主に陽性の結果として多くの研究で評価されている、(オ)小核形成:主に陽性の結果として多くの研究で評価されている、(カ)DNAメチル化(ATSDR (2020))。
(3)In vivoでは、鉛、又は酢酸鉛をラット、マウスに投与(吸入ばく露、経口投与、腹腔内・静脈内投与:単回又は反復ばく露)後の骨髄細胞、白血球、精子を用いたコメット試験で陽性、硝酸鉛を肝毒性発現用量経口投与した肝臓細胞を用いたコメット試験では陰性、鉛化合物をラット又はマウスに単回又は反復投与(腹腔内、強制経口、混餌投与)後の骨髄及び精母細胞を用いた染色体異常試験で陽性、鉛化合物をラット、マウスに静脈内投与後の骨髄細胞を用いたSCE(姉妹染色分体交換)試験で陽性、鉛化合物をラット、マウスに反復投与(腹腔内、強制経口、飲水投与)後の骨髄細胞を用いた小核試験で陽性の報告がある。なお、染色体損傷の増加では、明確な用量依存性は示されていない(ATSDR (2020))。

【参考データ等】
(4)職業性ばく露の際には,無機鉛は経気道及び経口・消化管により吸収されるが、特に呼吸器からの吸入が重視される。空気中鉛の濃度が低い場合は、消化管から吸収は無視できない。空気中鉛の成人肺内沈着率は30~50%であり、肺胞に達した鉛粒子の40~50%が吸収される。酸化鉛の沈着率は粒径 0.04 μmで45%、0.09 μmで30%とされる(産衛学会 許容濃度の提案理由書 (2016))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
本物質自体のデータはなく、本項は無機鉛化合物のデータを基に分類するものとする。鉛の発がん性については、(2)よりヒトでの発がん性の証拠がかなり集積してきたこと、並びに(1)と(3) のIARC分類を踏まえて、無機鉛化合物である本物質について、区分1Bとした。新たな情報源を追加精査し、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)国内外の評価機関による既存分類結果では、無機鉛としてIARCでグループ2Aに(IARC 87 (2006))、鉛及び無機化合物としてACGIHでA3に(ACGIH (7th, 2001):1995年分類)、鉛及び鉛化合物として日本産業衛生学会で第2群Bに(産衛学会 許容濃度の提案理由書 (2016):1991年分類)、EPAでB2に(IRIS (2004):1988年分類)、NTPでRに(NTP RoC (14th, 2016):2004年分類)、DFGでCategory 2に(DFG MAK Addendum (2019):2006年分類)それぞれ分類されている。
(2)鉛ばく露と発がんの関連性を評価した研究は多数ある。ヒトにおける鉛の発がん性の証拠は限られるが、結果に一貫性はなく、いくつかの陰性の結果も交絡要因(喫煙、家族のがん履歴、他の発がん物質との共ばく露等)により結果の解釈には制限があるはずである。ATSDRはIARCの2006年評価以降の新しい疫学データ(2006~2019年)を追加収集して解析し、血中Pb濃度 ≦ 10 microg/mLでは、すべてのがん及び肺がんのりスクが上昇する。また、血中Pb濃度 > 10 microg/mLの場合は、全がん、呼吸器がん、胃がん、腸がん、喉頭がん及び神経膠腫のリスク上昇がみられると総括している(ATSDR (2020))。
(3)IARCは無機鉛化合物の発がん性に関して、ヒトの証拠は限定的であり、実験動物での証拠は十分あるとして、グループ2Aとした(IARC 87 (2006))。

【参考データ等】
(4)酸化鉛については、雄ラットを用いた1年間吸入ばく露試験(平均5.3 mg/m3:原著者によれば酢酸鉛の経口投与で腎腫瘍を10%の動物に生じる用量に相当という)で、肺腫瘍の発生増加はみられなかった(腎腫瘍が1例にみられたのみ)とする1報告がある(IARC 87 (2006))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 生殖毒性 区分1A


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1Aとした。本物質のデータはなく、本項は無機鉛化合物のデータをもとに分類するものとする。(1)~(4)より、鉛及び鉛化合物がヒトで生殖発生毒性を示す物質と考えられる。

【根拠データ】
(1)鉛の男性の生殖系への健康影響は、精子障害(精子の数・濃度・運動性・生存率の減少、未成熟精子濃度及び形態異常精子比率の増加)、生殖ホルモン(テストステロン・エストラジオール・LH・FSH)の血清レベルの変化、授精率の減少及び精巣の組織変化であり、これら影響の重篤度はPbB(血中鉛濃度)の上昇とともに増加する。PbB > 10 μg/dLほど結果に一貫性はないが、PbB ≦ 10 μg/dLの集団でも精子障害の証拠が得られている。高PbBレベル(> 10 μg/mL)の集団では、授精能の減少、精巣の組織傷害などより重篤な影響の証拠もあるが、報告件数は少ない(ATSDR (2020)、産衛学会 生殖毒性物質の提案理由書 (2013))。
(2)鉛の女性の生殖系への影響に関する疫学研究報告は、男性に比べて少なく、大部分が平均PbB ≦ 10 μg/mLの集団についての研究である。その結果、血清生殖ホルモン(エストラジオール・LH・FSH)レベルの変化、受胎能低下、自然流産の増加、早産の増加、閉経期の早期化に関して、幾つかの証拠が示された。しかしながら、PbBと女性の生殖影響に関しては、研究間で結果に一貫性はない(ATSDR (2020)、産衛学会 生殖毒性物質の提案理由書 (2013))。
(3)鉛の発生影響については数多くの疫学研究があり、その多くは母体血及び/又は臍帯血のPbB ≦10 μg/dLの集団について実施されたものである。いくつかの研究から、妊娠時にばく露を受けた母親の産児では、出生時サイズの減少(体重、身長、頭囲、体幹長、足の長さ、腕の長さ、BMI)、男児、女児ともに性成熟開始の遅延の証拠が得られている。PbB ≦ 10 μg/dLの範囲内でのPbBで発生影響の用量相関性の評価は困難であるが、出生時体重では用量相関的な減少がみられている(ATSDR (2020)、産衛学会 生殖毒性物質の提案理由書 (2013))。
(4)日本産業衛生学会は米国NTPのレビューを基に、鉛はヒトにおいて生殖毒性を有すると判断して、鉛及びその化合物を生殖毒性物質第1群に分類した(産衛学会 生殖毒性物質の提案理由書 (2013))。

【参考データ等】
(5)EU CLPでは、本物質はRepr. 1Aに分類されている。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、血液系、消化管、腎臓)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
本物質については、無機鉛化合物のデータを基に分類するものとする。(1)~(3)より、血液系、神経系、消化管、腎臓を標的臓器と判断し、区分1(神経系、血液系、消化管、腎臓)とした。なお、新たな情報に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ヒトの急性鉛中毒の発症は速く、ばく露の1~5日以内に生じる。主な標的臓器は消化器、血液及び神経系である。症状・疾病は血中鉛濃度(PbB)の増加につれて重篤度が軽度から重度まで増悪する。消化器障害は腹痛/疝痛、悪心、嘔吐、便秘である。血液影響にはヘモグロビン合成の減少、貧血、急性溶血性障害(貧血及びヘモグロビン尿で特徴づけられる)が含まれる。急性鉛毒性と関連した神経症状として、頭痛、過敏症、活動性低下、知覚異常、筋肉痛、脆弱性、失調性歩行、意識喪失、脳浮腫、これらが進行すると発作、昏睡、脳症ひいては死亡をきたす。その他の症状として、口の渋み、口内の金属様味覚及び口渇が報告されている(ATSDR (2020))。
(2)子供は摂取した鉛の吸収割合が成人よりも高いために大人よりも鉛中毒に感受性が高く、発達中の中枢神経系は完成した中枢神経系よりも毒性に対して脆弱である。また、子供の急性毒性影響は長く続く可能性がある。例えば、急性脳症からの回復過程で認知能力の長期低下、注意不足及び行動障害を生じるおそれがある(ATSDR (2020))。
(3)ヒトの鉛ばく露には、鉛を取り扱う産業現場で鉛粒子を肺から吸収する場合と鉛含有物を経口的に消化管から吸収する場合がある。いずれの場合でも、鉛ばく露量が多くなると、造血系(ヘム合成系デルタアミノレブリン酸脱水酵素抑制、貧血等)、神経系(末梢神経障害、脳症等)、消化器系(疝痛等)、腎臓(腎症等)の障害が起こる(産衛学会 許容濃度の提案理由書 (2016))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、血液系、腎臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
本物質については、無機鉛化合物のデータを基に分類するものとする。(1)~(4)より、血液系、神経系、腎臓を標的臓器と判断し、区分1(神経系、血液系、腎臓)とした。

【根拠データ】
(1)子供における前向き大規模横断研究の結果、鉛ばく露の神経系影響として認知機能(学習及び記憶)の低下、行動及び気分(注意、興奮、衝動性、過敏性、拒否)の変化、神経運動性及び神経知覚機能(視覚-運動統合能、器用さ、姿勢の傾き、聴覚・視覚閾値の変化)の変化等、神経学的機能の低下において一貫した証拠が得られた。この影響は血中鉛濃度(PbB) =<5 microg/dL以下でも多くの報告がある。大人でも同様の神経系への影響はみられるが、子供より高濃度ばく露で生じる。さらに、高レベルのPbB (>30 microg/dL) ばく露を受けた大人の症例では、末梢神経症、精神疾患(抑うつ、パニック障害、不安、錯乱、統合失調症等)発症の報告がある(ATSDR (2020))。
(2)鉛の腎臓毒性影響は多くの疫学研究で確立している。PbBが10 microg/dL以上では一貫して腎傷害及び腎機能低下の証拠が得られており、PbB =<5 microg/dLでも腎臓影響がみられたとする研究報告もある。腎機能障害は酵素尿、タンパク尿、有機陰イオンと糖の輸送障害、糸球体ろ過率(GFR)の低下であり、高レベルのPbB (>30 microg/dL) ばく露症例では近位尿細管腎症、糸球体硬化症、間質性線維症、及び尿細管壊死で特徴づけられるPb誘発性腎障害が生じる(ATSDR (2020))。
(3)鉛の血液系への毒性は成人と子供の多くの研究で確立している。鉛へのばく露はδ-アミノレブリン酸脱水素酵素 (δ-ALAD)の阻害を通してヘム合成の用量依存的な減少を生じ、血中ヘモグロビンの減少及び赤血球膜の脆弱性増加により貧血が進展する(ATSDR (2020))。
(4)ヒトの鉛ばく露には、鉛を取り扱う産業現場で鉛粒子を肺から吸収する場合と鉛含有物を経口的に消化管から吸収する場合がある。いずれの場合でも、鉛ばく露量が多くなると、造血系(ヘム合成系デルタアミノレブリン酸脱水酵素抑制、貧血等)、神経系(末梢神経障害、脳症等)、消化器系(疝痛等)、腎臓(腎症等)の障害が起こる。この他、高血圧を含む心血管系の影響も報告されている(産衛学会 許容濃度の提案理由書 (2016))。

【参考データ等】
(5)成人での多くの疫学研究において、PbBと関連した心血管系影響として、収縮期及び拡張期血圧の上昇を示す結果が数多く得られている。数少ないが子供と妊婦でも血圧上昇がみられたとする報告もある。その他、鉛ばく露による影響として高血圧と心疾患のリスク増加、動脈硬化、心伝導の変化、心血管疾患による死亡増加などの報告や、低レベルの環境中鉛ばく露が心血管系疾患死亡の重要なリスク要因であると結論される報告がある(ATSDR (2020))。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 令和3年度(2021年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)


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