NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 505-60-2
名称 ビス(2‐クロロエチル)スルフィド (別名:マスタードガス)
物質ID m-nite-505-60-2_v1
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項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
6 引火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 引火点(105℃(Sax(8th、1992)))が>93℃である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性および自己反応性に関連する原子団を含まない。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
9 自然発火性液体 分類できない
-
-
- - データなし。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 酸素及びフッ素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。

平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - データなし。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
17 鈍性化爆発物 -
-
-
- - - - -

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分2


危険
H300 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
ラットLD50値:17 mg/kg(ATSDR, 2003)に基づき、区分2とした。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
1 急性毒性(経皮) 区分1


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
ウサギLD50値:100 mg/kg(DFGOT vol.4, 1992)、ラットLD50値:18 mg/kg(DFGOT vol.4, 1992)および9 mg/kg(DFGOT vol.4, 1992)より、危険性の高い方のラットのデータに基づき区分1とした。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
ラットLC50 = 100mg/m3/10min.(15ppm/10min.)、280mg/m3/10min.(43ppm/10min.)(HSDB(2008))のデータは、10min.暴露であるが、区分1の基準値(飽和蒸気圧濃度0.94 mg/Lよりガスの基準値100ppm)以下で致死性を示していることから区分1とした。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - データなし。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
ヒトの皮膚へのばく露が紅斑と水疱形成、または熱傷と水疱形成を起こす(ATSDR(2003))こと、病理組織学的には化学熱傷と同一である(HSDB(2008))と述べられている。実際に第一次大戦中に志願して皮膚へのばく露を受けた兵士達に紅斑と熱傷が報告されている(ATSDR(2003))。ばく露後4~6日で壊死が現れ、16~20日までに壊死組織の脱落と上皮再生、治癒には3~8週間かかると(HSDB(2008))の記述により、区分1とした。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
ヒトでのばく露により、結膜炎、眼瞼角結膜炎、灼熱感、光恐怖、眼瞼浮腫、角膜浮腫と剥離、霧視、一時的盲が報告され(DFGOT vol.4(1992)、ATSDR(2003))、さらに当該物質がばく露時に液体の場合は蒸気に比べ強い傷害を起こし、角膜穿孔のリスクが増し、永続的視力喪失に至る(HSDB(2008))との記述に基づき、区分1とした。なお、ウサギ眼に液体をばく露した場合の組織学的変化として、6~9時間後に角膜上皮基底細胞の核濃縮、壊死、極性消失、24時間後に下層の基底膜からの剥離を伴う角膜上皮細胞の変性が認められている(HSDB(2008))。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - データなし。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - データなし。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
5 生殖細胞変異原性 区分1B


危険
H340 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
ラットを用い吸入または経口投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)において、いずれも陽性の結果(DFGOT vol.4(1992)、ATSDR(2003))が得られていることから、区分1Bとした。なお、モルモットを用いたDNA付加体形成試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)は陽性(HSDB(2008))であり、またin vitro試験については、エームス試験(ATSDR(2003))、マウスのリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験および染色体異常試験(ATSDR(2003)、DEFGOT vol.4(1992))、ラットのリンパ肉腫細胞を用いた染色体異常試験(IARC 9(1975))は、いずれも陽性である。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
6 発がん性 区分1A


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
IARCによりグループ1(IARC Suppl.7(1987))、日本産業衛生学会により第1群(産衛学会勧告 2005)、NTPではK(NTP ROC No.11(2005))に分類されていることから、区分1Aとした。なお、第一次および第二次大戦中に戦場あるいは生産工場でマスタードガスのばく露を受けたヒトを対象として、複数の疫学調査が国内外で実施されている(IARC vol.9(1987))。それらの報告によれば、マスタードガスのばく露と呼吸器がんとの間には関連があり、ばく露による呼吸器がんのリスクの増加を示唆、あるいは明示する結果が得られている。一方、動物試験のデータは少ないが、マウスに吸入ばく露により、対照群に比べ肺腫瘍の有意な発生増加が見られたとの報告がある(IARC Suppl.7(1987))。
平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
イランイラク戦争でマスタードガスを含む化学兵器攻撃を受けたイラン人生存者の子孫で胎児死亡率の増加、先天異常の発生頻度の増加、精巣生検で無精子症または重度の精子過少と診断されたヒトが多かったことが報告されている(ATSDR(2003)、HSDB(2008))。これらのヒトのばく露例ではマスタードガス以外の物質のばく露の可能性もあるとされているので(ATSDR(2003)、ヒトに対し生殖毒性が既知とは言えないが、少なくとも生殖・発生毒性があると推定されるので区分1Bとした。なお、ラットを用いた優性致死試験において、経口ばく露の雄と非ばく露の雌の交配により、平均早期吸収数の有意な増加、着床後胚損失率の有意な増加、異常精子率の有意な増加を示し、雄で優性致死作用が認められた(ATSDR(2003))。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
第一次大戦とイランイラク戦争でマスタードガスのばく露を受けたヒト(主に兵士)に関する症例があり、また、疫学調査の結果が多数報告されている(DFGOT vol.4(1992)、ATSDR(2003)、HSDB(2008))。それらの報告における重大な毒性症状として、眩暈、角膜反射の消失、不安、激越、求心性神経の持続的障害、呼吸困難、慢性気管支炎、肺炎、呼吸不全、循環器障害、チアノーゼ、赤血球破壊、ヘモジデリン沈着、白血球増加と減少、骨髄不全、出血性腎炎、乏尿、腎不全、下痢、臓器出血(脳、・胃・膵臓・心内膜および外膜幕など)、角膜炎、皮膚傷害などが記され、器官別にも神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系、皮膚、眼と多岐にわたる。以上の報告により区分1(神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系)とした。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
戦前に主にマスタードガスを製造していた毒ガス工場でばく露された多くの作業者が咳や痰を生じ(DFGOT vol.4(1992))、さらに製造工場でばく露を受けた作業者において、慢性気管支炎、重度の慢性咳、気道閉塞、肺炎など呼吸器疾患の有意な増加が報告されている(DFGOT vol.4(1992)、ATSDR(2003)、HSDB(2008))ことから、区分1(呼吸器)とした。なお、ラットに0.3~0.003 mg/kg/dayを13週間経口投与した試験では、呼吸器系への影響は示されていない(ATSDR(2003))。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - データなし。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 分類できない
-
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- - データがなく分類できない。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 平成21年度(2009年度) ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

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