NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 52-68-6
名称 ジメチル=2,2,2-トリクロロ-1-ヒドロキシエチルホスホナート(別名トリクロルホン又はDEP)
物質ID m-nite-52-68-6_v1
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、可燃性であるとの記載がある (ICSC (1997))。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
8 自己反応性化学品 分類できない
-
-
- - 化学構造にP-O (亜リン酸塩類) を含むが、データがなく分類できない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 実質的に不燃性である (HSDB (Access on June 2015))。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 水溶解度が測定されており、水と激しく反応しないと推定される。水溶解度:154 g/L (GESTIS (Access on June 2015))。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - フッ素を含まず酸素と塩素を含む有機化合物であり、この元素 (O) が炭素、水素以外の元素 (P) と化学結合しているがデータがなく分類できない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
17 鈍性化爆発物 -
-
-
- - - - -

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
ラットのLD50値として、136-866 mg/kgの範囲内で14件の報告 (PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010)、The Pesticide Manual (Fifteenth Edition, 2009)、The WHO recommended classification of pesticides by hazard and guidelines to classification (2009)、EPA Pesticide (2006)、ACGIH (7th, 2003)、EPA Pesticide (2001)、JECFA (2000)、EHC 132 (1992)、IARC vol. 30 (1983)、IPCS, PIM G001 (Access on June 2015)) がある。そのうちの1件が区分3に該当し、8件が区分4に該当するので、最も多くのデータが該当する区分4とした。なお、5件は複数データをまとめた値であるため、該当数に含めなかった。旧分類根拠の農薬登録申請資料 (1998) の情報 (ラットのLD50値として、253 mg/kg) に代えて、今回の調査で新たに入手した優先度の高いPATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010)、EPA Pesticide (2006)、ACGIH (7th, 2003)、EPA Pesticide (2001)、EHC 132 (1992)、IARC vol. 30 (1983)、IPCS, PIM G001 (Access on June 2015)、WHO recomended classification of pesticide及びPesticide manuaの情報を追加し、区分を見直した。WHO recomended classification of pesticide及びPesticide manualでは、ラットの経口LD50値として、250mg/kgを掲載し、区分3としているが、複数データの代表値であり、他データと重複するために、該当数に含めなかった。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2003)、EHC 132 (1992)、IARC vol. 30 (1983))、2,800 mg/kg (ACGIH (7th, 2003)、EHC 132 (1992)、IARC vol. 30 (1983))、> 5,000 mg/kg (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010)) との3件の報告がある。1件は区分を特定できないが、2件が区分外 (うち、1件は国連分類基準の区分5) に該当する。ウサギのLD50値として、5,000 mg/kg (EHC 132 (1992)) との報告があり、区分外に該当する。以上の結果から、区分外とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分3


危険
H331 P304+P340
P403+P233
P261
P271
P311
P321
P405
P501
ラットのLC50値 (4時間) として、0.533 mg/L (EPA Pesticide (2006)、ACGIH (7th, 2003)、EHC 132 (1992))、> 1.3 mg/L (ACGIH (7th, 2003))、
0.533-1.3 mg/L (PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010))、> 2.3 mg/L (The Pesticide Manual (Fifteenth Edition, 2009)、 との4件の報告がある。2件は区分を特定できなく、1件は複数データを取りまとめた値であるために、0.533 mg/Lに基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (1.08×10-4 mg/L) より高いため、ミスト・ダストの基準値を適用した。今回の調査で新たに入手した優先度の高いPATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010)、The Pesticide Manual (Fifteenth Edition, 2009)、EPA Pesticide (2006)、ACGIH (7th, 2003)、EHC 132 (1992) を追加し、区分を見直した。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質を正常皮膚及び損傷皮膚に24時間適用した結果刺激性はみられなかったとの報告や (EHC 132 (1992))、本物質を4時間適用した結果刺激性はみられなかったとの報告がある (EHC 132 (1992))。以上の結果から区分外と判断した。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質の適用24時間及び5分後に中等度の刺激性がみられたとの報告や、本物質は中等度の眼刺激性を持つとの報告があることから (EHC 132 (1992)、PATTY (6th, 2001)、ACGIH (7th, 2003))、区分2Aとした。旧分類の農薬登録申請資料は確認できなかった。公開資料から分類を行った結果、区分が変更になった。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
モルモットを用いた皮膚感作性試験2報 (マキシマイゼーション試験及びopen epicutaneous試験) において、感作性ありとの報告がある (EHC 132 (1992))。また本物質は中等度の感作性物質であるとの記載がある (ACGIH (7th, 2003)、EPA Pestiside (2006))。以上から、区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
5 生殖細胞変異原性 区分1B


危険
H340 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
In vivoでは、マウスの優性致死試験で陽性結果及び陰性結果 (EHC 132 (1992)、ACGIH (7th, 2003))、マウスの生殖細胞 (精巣細胞) の染色体異常試験で陽性結果及び陰性結果 (EHC 132 (1992))、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性 (EHC 132 (1992)、NTP DB (Access on July 2015))、マウス及びハムスター骨髄細胞の染色体異常試験で陽性結果及び陰性結果 (EHC 132 (1992)、ACGIH (7th, 2003)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010))、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性 (ACGIH (7th, 2003))、マウス肝臓のDNA損傷 (DNA付加体形成) 試験で陽性 (ACGIH (7th, 2003)) である。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、ヒトリンパ球及び哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、ヒト細胞 (上皮細胞、線維芽細胞) 及びラット肝細胞の不定期DNA合成試験で陽性結果が認められる (EHC 132 (1992)、EPA Pesticide (2001)、ACGIH (7th, 2003)、NTP DB (Access on July 2015)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010))。以上より、区分1Bとした。
なお、旧分類は農薬登録申請資料を使用し分類した。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
6 発がん性 分類できない
-
-
- - 本物質の既存分類では、IARCはグループ3に (IARC vol. 30 Suppl. 7 (1987))、ACGIHではA4に (ACGIH (7th, 2003)) 分類されている。試験データとしては、ラット又はマウスに2年間混餌投与した慢性毒性・発がん性併合試験において、ラット、マウスともに肺胞/細気管支の腺腫、又はがんの頻度増加、マウスには加えて肝細胞腺腫の頻度増加がみられた (EPA Pesticide (2001)、ACGIH (7th, 2003))。しかし、米国EPAのOPP (Office of Pesticide Program) のピアレビュー委員会で、統計的有意差がない、用量相関に一貫性を欠くなどにより、いずれの腫瘍も被験物質投与による影響ではないと判断された (EPA Pesticide (2001)、ACGIH (7th, 2003))。以上より、旧分類以降に改訂された分類ガイダンスに基づき、分類できないとした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
ヒトの生殖影響に関する情報はない。実験動物ではラットを用いた混餌投与による3世代生殖毒性試験、及び2世代生殖毒性試験結果が報告されており、3世代試験では1,000 ppm (約50 mg/kg/day) 以上の用量で、同腹児数の減少、児動物体重の低下、3,000 ppm (約150 mg/kg/day) では妊娠率の低下、矮小児、及び離乳までの全児死亡がみられた (ACGIH (7th, 2003)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2010))。また、2世代試験ではF0、及びF1世代の高用量 (1,750 ppm) 群の雌雄親動物の肺に慢性肺炎、腎臓に石灰化、水腎症 (F1世代のみ) などの一般毒性影響がみられる用量で、F1児動物に体重の低値、及び腎盂拡張がみられた (EPA Pesticide (2001)、ACGIH (7th, 2003))。
一方、発生毒性に関しては、ラット又はウサギの器官形成期に混餌、又は強制経口投与した試験で、ラットでは高用量 (500 ppm) 群でも胎児に骨化遅延、ウサギでは母動物が流産を生じる用量でさえ、胎児には体重低値と骨化遅延がみられたのみであった (EPA Pesticide (2001)、ACGIH (7th, 2003)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2010))。しかし、妊娠ラットの器官形成期に強制経口投与、又は妊娠ハムスター及び妊娠マウスへの器官形成期の経口投与では、300-600 mg/kg/dayの用量で、胎児死亡、奇形誘発 (奇形胎児の頻度増加、口蓋裂の頻度増加) を生じたとの記述があり、母動物毒性と発生毒性との用量の関連性については、妊娠ラットを用いた試験ではコリン作動性症状が発現する用量で催奇形性がみられたとの記述があるが、他の動物種の試験では母動物毒性については記述がない (ACGIH (7th, 2003))。さらに、妊娠ハムスターの妊娠42-44日に強制経口投与した試験では、100 mg/kg/day以上で母動物に臨床症状、児動物 (自然分娩直後の新生児、又はほぼ妊娠64日に摘出した胎児) に小脳重量の減少がみられ、妊娠42-44日には小脳形成に対し最も感受性の高い時期とされているため、WHO はこの所見が本物質の脳の発達阻害、低形成脳を示す知見として重視している (JECFA (2003))。
以上、主に親動物に一般毒性影響がみられる用量で、親動物に生殖能の低下、胎児又は新生児に胎児毒性、奇形誘発、小脳発達障害、生後の発達障害がみられ、特に奇形発生、中枢神経系発達障害など重大な生殖毒性影響を示す所見を考慮して、本項は区分1Bに分類するのが妥当と判断した。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
本物質の毒性影響は有機リン中毒の特徴であり、ヒト急性毒性はアセチルコリンエステラーゼ阻害による中枢神経系症状や末梢神経症状である (EHC 132 (1992)、PATTY (6th, 2012))。本物質は血漿、赤血球及び脳のコリンエステラーゼを阻害するが、遅発性神経毒性を示さないとの報告 (ACGIH (7th, 2003)) がある。本物質の経口摂取によるヒト中毒事例は複数報告されている。それらによれば、ヒトの特徴的な急性中毒症状は、頭痛、脱力感、悪心、嘔吐、めまい、腹痛、下痢、錯乱、過度の発汗、唾液分泌、縮瞳、意識喪失、さらに、肺うっ血及び呼吸筋低下による呼吸困難であり、軽度であれば回復性がある。重症の経口中毒例では、筋痙攣、意識喪失、後期には多発性神経症、呼吸不全により死亡に至る場合もあるとの記述 (EHC 132 (1992)、PATTY (6th, 2012)、EPA Pesticide (2006)) がある。なお、本物質はヒトのアルツハイマー病の治療に使用されたとの報告がある (EPA Pesticide (2001)、ACGIH (7th, 2003)、EHC 132 (1992))。
ラットの急性毒性症状は、筋細動、流涎、流涙、失禁、下痢、呼吸困難、衰弱、あえぎ、強直性・間代性痙攣、昏睡、死亡がみられている。本物質による中毒症状はすみやかに起こり、LD50用量でも5分以内に発症するとの報告 (EHC 132 (1992)) がある。ラットの100 mg/kg経口投与 (区分1に相当する用量) で、流涎、振戦、眼瞼下垂、下痢がみられている (ACGIH (7th, 2003))。
以上より、本物質は神経系への影響があることから、区分1 (神経系) とした。
なお、旧分類は農薬登録申請資料を使用し分類した。旧分類の区分を見直した。

平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、血液)、区分2 (消化管、肝臓、腎臓、精巣、卵巣)


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
ヒトにおいて、赤血球コリンエステラーゼ活性の抑制のほか、コリン作動性影響として胃腸障害、筋痙攣、腹部の不快、頭痛、筋力低下、脱力感、協調運動困難、脳波の異常がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2003)、PATTY (6th, 2012))。
実験動物では、サルを用いた10年間経口投与毒性試験において、区分1の範囲である5.0 mg/kg/dayで体重減少、貧血、コリン作動性影響として縮瞳、筋線維束性攣縮、下痢がみられている (ACGIH (7th, 2003)、EPA Pesticide (2001)、PATTY (6th, 2012)、EHC 132 (1992))。
ラットを用いた13週間反復経口投与毒性試験において、区分1の範囲である100 ppm (6.08-6.91 mg/kg/day) で血漿・赤血球のコリンエステラーゼ活性の抑制のほか、区分2を超える2,500 ppm (165-189 mg/kg/day) で空中正向反射の障害、着色尿、自発運動低下、脊髄神経根のミエリン変性がみられている (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2010)、PATTY (6th, 2012))。
イヌを用いた1年間反復経口投与毒性試験において、区分1の範囲である250 ppm (6.25 mg/kg/day) で血漿・赤血球のコリンエステラーゼ活性の抑制のほか、区分2の範囲である1,000 ppm (25 mg/kg/day) で脾臓の腫大、脾臓の白脾髄領域の萎縮を伴ったうっ血、肝臓の炎症性細胞巣がみられている (ACGIH (7th, 2003) 、PATTY (6th, 2012)、EPA Pesticide (2001))。
ラット、マウスを用いた経口経路による複数の慢性毒性試験 (17ヶ月-24ヶ月間) において、区分2の範囲で、血漿・赤血球・脳のコリンエステラーゼ活性の抑制のほか、ラットでは着色尿、貧血、十二指腸の肥厚、胃炎、肺の炎症、肝臓の肝細胞の空胞化・過形成、慢性腎症、精子形成欠如、卵巣の一次卵胞・原始卵胞の欠損がみられている (ACGIH (7th, 2003)、EPA Pesticide (2001)、PATTY (6th, 2012)、EHC 132 (1992))。
したがって、区分1 (神経系、血液)、区分2 (消化管、肝臓、腎臓、精巣、卵巣) とした。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
甲殻類(ミジンコ)EC50 = 0.18 μg/L(U.S. EPA: RED, 2001)であることから、区分1とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(BioWin)、急性毒性区分1であることから、区分1とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - データなし 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)


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