項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 7440-28-0 |
名称 | タリウム及びその化合物 |
物質ID | m-nite-7440-28-0_v2 |
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項目 | 情報 |
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 不燃性(ICSC)である。ただし、粉状では粉じん爆発を起こすとの情報(ICSC)がある。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 自然発火性固体 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 水に不溶(GESTIS(Accessed Aug 2021))との観察結果があり、水と急激な反応をしないと考えられる。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 酸素、ハロゲンを含まない無機元素である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 無機元素である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
17 | 鈍性化爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分2 |
危険 |
H300 | P301+P310 P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(7)より、LD50値のタリウム元素換算値に基づき、区分2とした。新たな情報源を用いて分類した。なお、本CAS番号はタリウム元素であり、本分類についてはMOE初期評価 (2017) で評価対象とされた(8)の14種の物質(金属タリウム及びタリウム化合物)を対象とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50(硝酸タリウム): 26 mg/kg(タリウム換算:19.2 mg/kg)(厚労省 リスク評価書案 (2021)) (2)ラットのLD50(硫酸タリウム):16 mg/kg (タリウム換算:13 mg/kg)(厚労省 リスク評価書案 (2021)、MOE 初期評価 (2017)) (3)ラットのLD50(炭酸タリウム (Ⅰ)):21.8 mg/kg (タリウム換算:19 mg/kg)(MOE 初期評価 (2017)) (4)ラットのLD50(炭酸タリウム (Ⅰ)):15 mg/kg (タリウム換算:13.1 mg/kg)(MOE 初期評価 (2017)) (5)ラットのLD50(酸化タリウム(Ⅰ)):40.6 mg/kg (タリウム換算:39.1 mg/kg)(MOE 初期評価 (2017)) (6)ラットのLD50(酸化タリウム(Ⅲ)):44 mg/kg (タリウム換算:39.4 mg/kg)(MOE 初期評価 (2017)) (7)ラットのLD50(酢酸タリウム):41.3 mg/kg (タリウム換算:32 mg/kg)(MOE 初期評価 (2017)、EHC 182 (1996)) (8)厚労省 リスク評価書案 (2021)では、タリウム(CAS番号:7440-28-0)、硝酸タリウム(I)(CAS番号:10102-45-1)、硝酸タリウム(Ⅲ)(CAS番号:13746-98-0)、硫酸タリウム(CAS番号:7446-18-6)、炭酸タリウム(CAS番号:6533-73-9)、酢酸タリウム(CAS番号:563-68-8)、酸化タリウム(I)(CAS番号:1314-12-1)、酸化タリウム(Ⅲ)(CAS番号:1314-32-5)、塩化タリウム(I)(CAS番号:7791-12-0)、三塩化タリウム(Ⅲ)(CAS番号:13453-32-2)、フッ化タリウム(CAS番号:7789-27-7)、ヨウ化タリウム(CAS番号:7790-30-9)、臭化タリウム(CAS番号:7789-40-4)、マロン酸タリウム(CAS番号:2757-18-8)を対象に評価がされている。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分2 |
危険 |
H310 | P302+P352 P361+P364 P262 P264 P270 P280 P310 P321 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)、(2)より、LD50値のタリウム元素換算値に基づき、それぞれ区分2及び区分3に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分2とした。新たな情報源を用いて分類した。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50(炭酸タリウム (Ⅰ)):117 mg/kg (タリウム換算:102 mg/kg) (MOE 初期評価 (2017)、ACGIH (7th, 2010); EHC 182 (1996)) (2)ラットのLD50(硫酸タリウム):550 mg/kg (タリウム換算:445 mg/kg) (厚労省 リスク評価書 (2014)、MOE 初期評価 (2017)) |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 |
危険 |
H314 | P301+P330+P331 P303+P361+P353 P305+P351+P338 P304+P340 P260 P264 P280 P310 P321 P363 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)イヌへのタリウムの皮膚塗布によって皮膚のすべての層に著しい障害が認められた。皮膚の変化は水腫と膠原線維束の破壊が特徴的であり、紅斑では広範な錯角化や時には顆粒層増生が認められた。毛嚢では錯角化性の角質の過剰を呈した外根鞘の増生が観察されたとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2014)、EHC 182 (1996))。 (2)鱗屑化と痂皮化に向かう紅斑性病変の進行には様々な程度の壊死と、タリウム中毒で特徴的な海綿状膿瘍が含まれ、後者はタリウムがメラニンに強く結合する毛包にも生じる(EHC 182 (1996))。 【参考データ等】 (3)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「タリウム及びその化合物」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は末梢神経障害)が、業務上の疾病として定められている。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 |
警告 |
H319 | P305+P351+P338 P337+P313 P264 P280 |
【分類根拠】 (1)より、区分2とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)タリウム及びその水溶性化合物について、厚生労働省化学物質のリスク評価検討会有害性評価小委員会で眼に対する重篤な損傷性/刺激性ありとしている(厚生労働省 令和3年度第1回化学物質のリスク評価検討会 有害性評価小委員会資料)。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)In vivoでは、炭酸タリウムのラットを用いた優性致死試験(雄、8ヵ月間経口投与後、未処置雌と交配)で陽性(詳細不明)、塩化タリウムのハムスターの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性の報告がある(厚労省 リスク評価書案 (2021)、MOE 初期評価 (2017))。なお、ラットの優性致死試験は信頼性が低いとしている(厚労省 リスク評価書案 (2021)、IRIS (2009))。 (2)硫酸タリウムを経口摂取した中毒患者の末梢血リンパ球で染色体異常、姉妹染色分体交換を誘発しなかったが、染色体消失型の小核の明らかな増加がみられた(厚労省 リスク評価書案 (2021)、MOE 初期評価 (2017))。また、タリウム中毒患者13人の末梢血リンパ球では染色体異常の平均頻度に有意な増加を認め、うち 8人の小核試験の結果は対照群のデータがないものの、ばく露から4-6週間後であるが1人の小核頻度は顕著に高かった(厚労省 リスク評価書案 (2021)、MOE 初期評価 (2017))。 (3)核医学検査のためにタリウム 201(201Tl)を静脈内投与した患者(24~25人)の末梢血リンパ球で遺伝子突然変異、染色体異常の誘発を認めなかったが、別の21人で実施した3、30、90日後の検査で3日後に染色体異常、姉妹染色分体交換の誘発を認めた報告もあった(MOE 初期評価 (2017))。 (4)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験で陰性(-S9))(塩化タリウム、酢酸タリウム)、陰性(-S9)(硝酸タリウム)、染色体異常及び遺伝子突然変異試験(炭酸タリウム、いずれも細胞等試験系不明)で陽性、ヒト末梢血リンパ球を用いた小核試験で陰性の報告がある(厚労省 リスク評価書案 (2021)、MOE 初期評価 (2017))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 発がん性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)EPAは本物質の発がん性を評価するに足る情報は不十分であるとして、タリウム (Ⅰ)水溶性化合物の発がん性をI(Inadequate information to assess carcinogenic potential)に分類した(IRIS (2009))。 (2)バッテリー工場でタリウムにばく露された作業者86人と年齢、雇用期間、シフト、作業タイプをマッチさせた非ばく露作業者79人の医療記録を比較調査した結果、良性腫瘍(部位不明)の発生頻度の増加はみられなかった。本研究は医療記録のみの調査であり、ばく露量の定量評価がない、コホートサイズが小さい、観察期間も不明であることから限定的である(IRIS (2009)、MOE 初期評価 (2017))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 生殖毒性 | 区分1B、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分 |
危険 |
H360 H362 |
P308+P313 P201 P202 P260 P263 P264 P270 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1Bとし、授乳影響を追加した。ヒトの生殖毒性に関する情報は限られており影響の有無は判断できないが、(1)、(2)より、実験動物では、本物質の化合物は極めて低濃度で精巣毒性及び精子への有害影響を示すと考えられる。また、(3)ではヒト及び実験動物で胎盤通過性を有することや、実験動物の皮膚を通じて吸収された本物質が授乳により児動物に移行し脱毛が生じることが報告されている。なお、改訂版のACGIH (7th, 2010)や他の評価書等ではヒトの経胎盤性の脱毛症の事例は確認できず、区分を変更した。 【根拠データ】 (1)硫酸タリウムを被験物質とした雄ラットを用いた経口投与による試験(0.001%(約0.7 mg Tl/kg/day)、60日間)において、精巣上体尾部での運動精子比率の減少、精巣上体での未成熟精子の出現、精巣タリウム濃度の高値、精細管上皮の乱れ、セルトリ細胞の空胞化、滑面小胞体の腫大、精巣β-グルクロニダーゼ活性の低値等、極めて低濃度で精巣毒性を生じることが示唆された(MOE 初期評価 (2017)、厚労省 リスク評価書 (2014)、ACGIH (7th, 2010))。 (2)炭酸タリウムを被験物質とした雄マウスを用いた経口投与による試験(0.001~10 ppm、6ヵ月間投与後に未処置雌と交配)において、0.001 ppm以上で精子運動能の低下、0.01 ppm以上で死亡精子数の増加、0.1 ppm以上で精子数の減少及び形態異常精子の増加がみられたが受胎率や吸収胚数に影響はみられなかった。児動物には死亡率の低下や生存胎児数の増加がみられた。極めて低濃度から精子への有害影響がみられたが、受胎能及び胎児には有害影響は示されなかった(MOE 初期評価 (2017))。 (3)タリウムはヒト及び実験動物の胎盤を通過することが示されている(厚労省 リスク評価書 (2014))。ラットの皮膚を通して吸収されたタリウムが授乳により児動物に移行し、新生児の脱毛を生じることも報告されている(ACGIH (7th, 2010))。 【参考データ等】 (4)旧西ドイツのセメント工場の周辺住民でタリウムにばく露された地域で産まれた子供297人について調査を行った結果、5人に先天性奇形がみられた。妊娠期を反映していないが、母親の尿中、毛髪中のタリウム濃度測定では、いずれの測定結果も一般集団と比較すると低い範囲にあった。また、先天性奇形の5人のうち、2人は遺伝的素因が疑われ、他の1人も母親が妊娠中に庭で収穫した野菜や果物を摂取していなかった。このため、タリウムのばく露と先天性奇形には関連がないように考えられた(MOE 初期評価 (2017)、ACGIH (7th, 2010))。 (5)中国で2012~2014年に産まれた低出生体重児204人と対照群612人を対象とした症例対照研究において、出産日の母親の尿中タリウム濃度から3群に分け、低濃度群に対するオッズ比を求めると高濃度群のオッズ比は1.52と有意に高く、妊娠年齢、世帯収入、母親のBMI、出産歴等の交絡因子で調整したオッズ比1.90も有意に高かった。また、出産年齢の中央値(28歳)、出生児の性、学歴、世帯収入、雇用の有無で層化して比較した場合に、調整後のオッズ比は28歳未満の高濃度群で2.46、年収50,000元未満の高濃度群で2.53と有意に高かった。これらの結果から、出生前の高濃度タリウムばく露が低出生体重児のリスク増加に関連することが示唆された(MOE 初期評価 (2017))。 (6)硫酸タリウムを0.0001%で雌ラットの妊娠期間及び授乳期間を通して飲水投与し、離乳後の児動物には生後60日齢まで母ラットと同様に飲水投与した結果、母体毒性も児動物の発生及び生後の成長にも影響はみられなかった。また、同様にして授乳期間のみ投与した後に生後60日齢まで投与した場合も、児動物の成長に影響はなかった。しかし、妊娠期間中にばく露された児動物では毛器官の発達が不完全であり、授乳期間のみにばく露された児動物では脱毛がみられたが、いずれも60日齢までに回復した(MOE 初期評価 (2017))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(神経系、消化管、皮膚) |
危険 |
H370 | P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(4)より、区分1(神経系、消化管、皮膚)とした。 【根拠データ】 (1)タリウムを経口摂取すると胃腸管、神経系に影響を与え、脱毛を生じることがあり、腹痛や吐き気、嘔吐、頭痛、脱力感、筋肉痛、かすみ眼、焦燥感、痙攣、心拍数増加を生じる(MOE 初期評価 (2017))。 (2)タリウムを含む殺鼠剤を自殺目的で経口摂取した男性では、嘔吐、下肢痛に続き1ヵ月後に頭髪の脱毛が生じた。入院時の検査で左右の手指と膝以下の知覚異常と表在知覚の低下、左右下肢の筋力低下と筋萎縮が認められ、正中神経の知覚神経伝導速度(SCV)の低下と伝導速度分布(DCV)の検査では伝導速度が早い神経線維の伝導速度(V70~V90)の低下がみられた(MOE 初期評価 (2017))。 (3)硝酸タリウムを大量経口摂取し、死亡した症例では中枢神経系及び末梢神経系の軸索の変性・腫大・超微細形態的変化(ミトコンドリア膨潤・空胞増加)が認められた(厚労省 リスク評価書 (2014))。 (4)実験動物でみられる急性毒性症状でも嘔吐や下痢などの消化管症状や神経症状、体開口部の炎症、皮膚の面疔、震戦、脱毛、壊死性腎乳頭炎、呼吸不全による死などが挙げられている(厚労省 リスク評価書 (2014)、EHC 182 (1996))。 【参考データ等】 (5)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「タリウム及びその化合物」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は末梢神経障害)が、業務上の疾病として定められている。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(神経系、消化管、皮膚) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、消化器症状、神経系影響及び脱毛(皮膚)がヒトでの主な反復ばく露影響と判断した。(4)~(8)の経口経路による動物試験結果でもタリウム換算で区分1範囲の用量から、脱毛(毛嚢)、神経系症状及び神経組織の病理学的変化がみられた。(8)の肝機能及び腎機能所見は、病理組織学的な所見の報告がないため、肝臓及び腎臓は標的臓器から除外した。以上より、区分1(神経系、消化管、皮膚)とした。 【根拠データ】 (1)職業性ばく露例として、有機タリウム塩を使用していた男性 15 人の中で症状の程度が多様な 12 症例が報告された。作業環境の気中ではタリウムが検出されなかったので皮膚吸収が推測された。主な症状は腹痛、疲労感、過敏性、体重減少、四肢の痛みであった。脱毛は4人でみられた(厚労省 リスク評価書 (2014)、ACGIH (7th, 2010))。 (2)4年間にわたるガラス製造作業によりタリウム含有粉じんを顔面、頸部、腕にばく露した作業者が脱毛、頭痛、顔と頭の熱感・痛み、味覚低下、食欲不振、吐き気、体重減少、下痢、疲労感、じん麻疹、四肢の知覚低下、肩脚の筋肉痙攣を訴えた。神経学的検査により手袋-靴下型の多発性ニューロパシーと診断された(厚労省 リスク評価書 (2014))。 (3)1979 年にドイツのセメント工場からの放出による近隣汚染が発生し、工場近隣住民の調査において、尿や毛髪中タリウム濃度の増加に伴って、睡眠障害、頭痛、神経過敏、知覚異常、筋肉や関節の痛みなどの神経症状の発症率が増加した(厚労省 リスク評価書 (2014)、MOE 初期評価 (2017) 、ACGIH (7th, 2010))。 (4)酸化タリウム(Ⅲ)を被験物質としたラットを用いた混餌投与による15週間経口投与試験において、0.002%(タリウム換算:約1.8 mg/kg/day、区分1の範囲)及び0.0035%投与群で死亡例、著明な体重増加抑制、脱毛がみられた。皮膚の組織検査では、毛包や毛幹の減少、毛包の萎縮、脂腺の萎縮、表皮の角化亢進がみられた(MOE 初期評価 (2017) 、ACGIH (7th, 2010))。 (5)酢酸タリウムを被験物質としたラットを用いた混餌投与による15週間経口投与試験において、0.0015%(タリウム換算:約0.4 mg/kg/day、区分1の範囲)以上の群で脱毛がみられ、0.003%以上で死亡例がみられた(MOE 初期評価 (2017) 、ACGIH (7th, 2010))。 (6)硫酸タリウムを被験物質としたラットを用いた強制経口による90日間経口投与試験において、0.01 mg/kg/day(タリウム換算:約0.008 mg/kg/day、区分1の範囲)以上で脱毛、流涙、眼球突出の発生率の用量依存的な増加がみられ、0. 25 mg/kg/day(タリウム換算:約0.20 mg/kg/day、区分1の範囲)で毛嚢の萎縮が雌2/20例にみられた(厚労省 リスク評価書 (2014)、MOE 初期評価 (2017) 、ACGIH (7th, 2010))。 (7)硫酸タリウムを被験物質としたラットを用いた飲水投与による36週間経口投与試験において、0.001%(タリウム換算:0.99~1.2 mg/kg/day、区分1の範囲)で死亡(21%)、脱毛(20%)、運動活動電位及び感覚神経活動電位の低下、坐骨神経の形態学的変化(ウォーラー変性、ミエリン鞘の空胞化及び層状化等)がみられた(MOE 初期評価 (2017))。 (8)硫酸タリウムを被験物質としたラットを用いた3ヵ月間経口投与試験において、0.8 mg/kg/day(タリウム換算:0.65 mg/kg/day、区分1の範囲)で、投与開始後1ヵ月後から血清ビリルビン・尿素・クレアチニン・GPT(ALT)の増加がみられ、投与開始前に比べてビリルビンが6倍、他が2倍増加した(MOE 初期評価 (2017))。 【参考データ等】 (9)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「タリウム及びその化合物」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は末梢神経障害)が、業務上の疾病として定められている。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
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- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
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11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 分類できない |
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- | - | データがなく分類できない。慢性毒性の分類方法の変更により、旧分類から分類結果が変更となった。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
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- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
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