NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 7440-48-4
名称 コバルト
物質ID m-nite-7440-48-4_v2
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、空気中に細かい粒子が分散したときには爆発性を有する (ICSC (2004)) との情報がある。また、コバルトに限定されていないが金属粉末 (可燃性のもの) (他に品名が明示されているものを除く) は、UNRTDGにおいて UN 3089 クラス4.1 PG II、IIIに分類されている。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点が760℃ (ATSDR (2004)) との情報より、常温で発火しないと考えられるため、区分に該当しない。なお粉状のものが空気に触れると自然発火することがあるという情報 (ICSC (2004)) がある。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 水に不溶 (GESTIS (ATSDR (2004)) というデータが得られており、水と急激な反応をしないと考えられるため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 酸素及びハロゲンを含まない単体金属であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 有機物ではないので、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
【分類根拠】
(1) は GLP試験であるため採用し、区分4とした。なお、(1) の被験物質は超微細粉体である。新たな情報源(1) の使用により、旧分類から区分を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 550 mg/kg (AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on June 2020))

【参考データ等】
(2) ラットのLD50: 6,171 mg/kg (MOE初期評価第11巻 (2013)、厚労省リスク評価書 (2010)、HSDB (Access on May 2020)、GESTIS (Access on May 2020))
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
【分類根拠】
(1) より、LC50値は0.05 mg/Lよりも小さいと考えられるため、区分1とした。新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットにおいて、本物質の粉じん0.05~5.08 mg/Lを4時間吸入ばく露した試験で、全ての濃度で全例が死亡した。なお、被験物質の空気力学的質量中央値の範囲は2.7~3.5 μmである。 (AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) OECD TG 439に準拠し、人工皮膚モデルを用いたin vitro皮膚刺激性試験において、細胞生存率は95.1%であり、区分に該当しないと判定されている (AICIS IMAP (2014))。
(2) 職業的経験から眼刺激性はあるが、皮膚刺激性はない (GESTIS (Access on April 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
-
警告
H320 P305+P351+P338
P337+P313
P264
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分2Bとした。新しいデータ (1)~(3) が得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) OECD TG 405に準拠した本物質の粉末のウサギを用いた眼刺激性試験において、中等度の結膜発赤、軽度から中等度の強膜発赤が観察され、72時間後まで持続したが、7日後には消失した (AICIS IMAP (2014))。
(2) OECD TG 437に準拠した本物質 (粉末、平均粒径 2.3 um) のウシ角膜を用いたin vitro眼損傷性試験 (BCOP) において、平均刺激性スコア(IVIS)は1.79であり、腐食性 (区分1) は否定された (AICIS IMAP (2014))。
(3) 職業的経験から眼刺激性はあるが、皮膚刺激性はない (GESTIS (Access on April 2020))。
(4) コバルトの粉じんやヒュームは眼に入ると発赤を生じる (MOE初期評価第11巻 (2013))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 呼吸器感作性 区分1A


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1) 本物質は産衛学会 感作性分類 皮膚及び気道 第1群に指定されている (産衛学会感作分類基準 (暫定) の提案理由書 (2010))。
(2) 金属加工等に従事し、喘息症状を呈する作業者に対する塩化コバルトによる皮内誘発試験で陽性の報告があり、一部はRASTで陽性を示した (MAK (DFG) vol.23 (2007))。
(3) 様々な形態のコバルト (金属コバルト粒子、コバルト塩等) にばく露された作業者において気管支喘息の報告がある (SIDS (2011))。
(4) 本物質に対する吸入或いは経皮的ばく露は人を感作する (ATSDR (2004))。
(5) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は気道・肺障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(6) EU-CLP分類でResp. Sens. 1 (H334) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 皮膚感作性 区分1A


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1) 本物質は産衛学会 感作性分類 皮膚及び気道 第1群に指定されている (産衛学会感作分類基準 (暫定) の提案理由書 (2010))。
(2) 職業ばく露による旋盤工等のコバルトアレルギーが報告されている (MAK (DFG) vol.23 (2007))。
(3) 本物質への吸入或いは経皮ばく露はヒトを感作する (ATSDR (2004))。
(4) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は気道・肺障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(5) 塩化コバルト (CAS番号 7646-79-9) のモルモットを用いた皮膚感作性試験で陽性の報告がある。また、同じく塩化コバルトのマウス局所リンパ節試験 (LLNA、変法) で陽性の報告がある (厚労省リスク評価書 (2010)、ACGIH (7th, 2019)、AICIS IMAP (2014))。

【参考データ等】
(6) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、金属コバルトの局所影響が懸念されるが、関連する適切なin vivoデータがなく、分類できないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、金属コバルトのデータとして、3ヵ月間吸入ばく露によるマウスの末梢血赤血球を用いた小核試験で陰性である (NTP TR 581 (2014)、SIAR (2011)、CEBS (Access on April 2020)、EU CLP CLH (2017))。
(2) in vitroでは、金属コバルトのデータとして、細菌の復帰突然変異試験で陽性の報告 (NTP TR581 (2014)、CEBS (Access on April 2020))もあるが、最近3つの異なる研究所で実施された試験 (Kirkland et al.,2015) では陰性の報告がある (EU CLP CLH (2017))。マウス胚細胞 (BALB/3T3)、ヒトリンパ球、ヒト単核球でDNA切断が陽性、ヒト単核球でDNA傷害が陽性、ヒトリンパ球の小核試験で陽性、マウス胚細胞 (C3H10T1/2)、ヒト骨肉腫細胞で細胞形質転換試験は陰性の報告がある (IARC 86 (2006)、MOE初期評価第11巻 (2013))。

【参考データ等】
(3) EUは、ヒトに妥当な暴露経路による染色体異常/小核試験での陰性は、in vivoでの全身的な遺伝毒性影響が軽微であることを示すとしている(EU CLP CLH (2017))。しかし、腹腔内投与では陽性で局所的な影響は排除できないとし、EU-CLP分類でMuta. 2 に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでタングステンカーバイドを含む金属コバルトに対してグループ2A、タングステンカーバイドを含まない金属コバルトに対してグループ2B (IARC 86 (2006))、産衛学会でコバルト金属 (タングステンカーバイドを含む) に対して第2群A (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2016年提案))、コバルト及びコバルト化合物 (タングステンカーバイドを除く) に対して第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2016年再検討))、ACGIHでコバルト及び無機化合物に対してA3 (ACGIH (7th, 2019))、NTPでin vivoでコバルトイオンを放出するコバルト及びコバルト化合物に対してR (Reasonably anticipated to be human carcinogens) (NTP RoC (14th, 2016))、EU CLPで1B (EU CLP分類 (Access on May 2020))、MAK (DFG) で2 (MAK (DFG) vol.3 (2007)) に分類されている。
(2) フランスの硬金属製造工場に従事する作業者を対象とした疫学研究において、本物質 (コバルト) とタングステンカーバイドを含む硬金属粉じんにばく露された集団では肺がん死亡のリスクが増加したとの複数の報告がある一方で、タングステンカーバイドを含まないコバルトのみにばく露された集団でも肺がんの過剰リスクがあるとした報告はばく露量-反応関係の記述がなく、他の発がん物質への共ばく露、喫煙など交絡因子による補正がなされていないなど問題があり、またコバルト製造工場で肺がん死亡のリスク増加はみられないとする他の報告もある (IARC 86 (2006))。
(3) 雌雄のラット及びマウスに本物質 (metal particulate aerosol) を105週間吸入ばく露した発がん性試験では、ラット雌雄で肺における肺胞/細気管支 (Alveolar/bronchiolar) 腺腫及びがんの発生率の有意な増加、副腎髄質の良性及び悪性褐色細胞腫の発生率の有意な増加が認められた。マウスの雌雄でも、肺の肺胞/細気管支腫瘍 (主にがん) の有意な発生率の増加が認められた。これらより雌雄ラット及び雌雄マウスともに本物質の発がん性に関して明らかな証拠 (clear evidence) があると結論された (NTP TR581 (2014))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、本物質は人工胃液及び人工リソソーム液中で溶解することが示されたことから、可溶性コバルト化合物のデータに基づく分類が可能と考えた。また、(6) に本物質のデータがあるが、強制経口投与ではバイオアベイラビリティが低いとされていることから分類には用いなかった。(3)~(5) の水溶性コバルトのデータより、雄性生殖器毒性による生殖影響、母動物毒性がみられない用量での奇形を含む発生影響がみられた。したがって、区分1Bとした。なお、水溶性コバルトのデータを用いたことから旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 水溶性コバルトと難水溶性コバルトは、コバルトイオンが細胞に入るメカニズムは異なるが 、水溶性コバルトはイオンチャンネルにより細胞内にイオンとして取り込まれる。一方、難溶性の粒子状コバルト化合物は、エンドサイトーシスにより、細胞内のリソソームに取り込まれ、リソソーム内の酸性環境で可溶化され、細胞内にイオンとして放出される。すなわち、難溶性の本物質も生体内に入りコバルトイオンを放出すること、コバルトイオンが毒性と発がん性の主な原因であることが示されている (NTP RoC (14th, 2016)。
(2) 本物質の水溶解度は低い(0.00029 g/100 cc)が人工胃液及び人工リソソーム液中での溶解度は100%であることが示されている (NTP RoC (14th, 2016))。
(3) 雄マウスに塩化コバルト (CAS番号 7646-79-9) を12週間飲水投与後に無処置雌と交配した試験において、雄性生殖器毒性 (精巣・精嚢の重量減少、精巣の精子数及び精子形成能低下、ライディッヒ細胞の肥大、精原細胞の変性、精細管及び間質組織の壊死等) がみられ、吸収胚数及び吸収胚を認めた雌の増加、生存胎仔数減少、雄の受胎能低下 (妊娠動物数の減少) が認められている (MOE初期評価第11巻 (2013))。
(4) 雌ラットの妊娠1~21日に硫酸コバルト (CAS番号 10124-43-3) を強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で胎児に低体重、骨格の発育遅延、奇形発生率増加(頭蓋、脊柱、腎盂、尿細管、卵巣、精巣)がみられている (MOE初期評価第11巻 (2013))。
(5) 雌マウスの妊娠6~15日に硫酸コバルト (CAS番号 10124-43-3) を強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で胎児に低体重、骨格の発育遅延、奇形発生率増加(眼瞼、腎臓、頭蓋、脊椎)がみられている (MOE初期評価第11巻 (2013))。

【参考データ等】
(6) ラットに本物質を強制経口投与した反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物毒性 (母動物死亡 (5/10例)、腸管の肉眼的所見等) がみられる用量で、着床数減少、出生率減少がみられている (RAC Background Document (2017))。なお、RAC Background Document (2017) には、本物質のバイオアベイラビリティは、一度に大量に与えられる強制経口投与では低く、混餌投与のような低濃度を長時間かけて摂取するのとは異なることが記載されていることから参考データとした。
(7) EU CLP分類ではRepr. 1Bに分類されている (EU CLP分類 (Access on April 2020))。
(8) 雌ウサギの妊娠6~20日に硫酸コバルト (CAS番号 10124-43-3) を強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡: 5/25匹) がみられる用量で、全胚吸収(6/25匹)、胎児の低体重、骨格の発育遅延がみられている (MOE初期評価第11巻 (2013))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4) より区分1 (呼吸器) とした。新たな情報 (1)、(3)、(4) の追加により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 超硬合金は本物質とタングステンカーバイドをマトリックスとする金属合金であるが、超硬合金を扱う作業者にみられる呼吸器症状の原因物質は本物質である可能性が高いとの報告がある (ATSDR (2004))。
(2) 健常ボランティアが本物質を平均0.038 mg/m3 (0.014~0.076 mg/m3) 含む超硬合金粉じんを6時間吸入したところ、刺激性に起因すると考えられる一過性の換気量減少が起きたとの報告がある。また、超硬合金粉じんにばく露されている作業者では、平均コバルト濃度0.126 mg/m3 (0.006~0.610 mg/m3) で気道の閉塞性障害、0.06mg/m3(0.01~0.15 mg/m3)で気道の閉塞と刺激症状が起きたとの報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1992))。
(3) 本物質のラットの単回吸入ばく露試験では0.05 mg/L/4時間 (粉じん、区分1相当) で11日目までに全例が死亡し、肺血管周囲の好中性顆粒球、リンパ球、組織球を伴う炎症性水腫と間質性肺炎がみられたとの報告がある (AICIS IMAP (2014))。
(4) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は気道・肺障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器、心臓、甲状腺、血液系、生殖器(男性))


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3)、(6) より、ヒトにおいて呼吸器、心臓、甲状腺、血液系への影響がみられるとの情報があり、(4)、(5) より、実験動物において区分1の用量で呼吸器、生殖器 (男性) への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (呼吸器、心臓、甲状腺、血液系、生殖器 (男性)) とした。新たな情報 (1)、(3)~(6) を加えて検討を行い、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) コバルト精錬所の労働者 (ばく露期間: 0.3~39.4年 (平均8.0 年)、加重平均ばく露濃度の幾何平均値: 約125 μg/m3) を対象とした調査では、呼吸困難、喘鳴、白血球数の増加、甲状腺ホルモンT3、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の減少がみられ、甲状腺ホルモン (T3 取込み、サイロキシン、甲状腺刺激ホルモン)、心筋型クレアチンキナーゼ (CPK) 活性、 白血球数、赤血球数の異常値発生率の増加も報告されている (MOE初期評価第11巻 (2013)、ATSDR (2004)、CICAD 69 (2009)、AICIS IMAP (2014))。
(2) コバルト精錬所や超硬合金産業の労働者、コバルト砥石を用いるダイヤモンド研磨工、コバルトブルー染料を用いる塗装工を対象とした複数の調査で、鼻や喉の刺激感、咳、喘鳴、喘息、努力肺活量、1秒量、最大中間呼気量の減少、間質性肺炎、肺線維症など呼吸器系への影響が報告されている (MOE初期評価第11巻 (2013)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1992)、ATSDR (2004)、CICAD 69 (2009)、AICIS IMAP (2014))。
(3) 超硬合金産業労働者等で、本物質へのばく露に関連すると考えられる心筋症が報告されている。これらの心筋症では、心室への機能的影響や心肥大、肝臓や腎臓のうっ血がみられたとの報告もある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1992)、ATSDR (2004))。
(4) 本物質のラットの14週間吸入ばく露試験 (粉じん、6時間/日、5日/週ばく露) において、0.000625 mg/L (90日換算値0.0005 mg/L、区分1の範囲) 以上で肺重量の減少、肺炎、肺胞蛋白症、0.00125 mg/L (90日換算値0.001 mg/L、区分1の範囲) 以上で細気管支過形成と嗅上皮変性、0.0025 mg/L (90日換算値0.0019 mg/L、区分1の範囲) 以上で嗅上皮及び呼吸器上皮の過形成、鼻甲骨の萎縮がみられた。雄ラットではさらに、0.000625 mg/L以上で精子運動量の減少がみられた (NTP TR581 (2014))。
(5) 本物質のマウスの14週間吸入ばく露試験 (粉じん、6時間/日、5日/週ばく露) において、0.000625 mg/L (90日換算値0.0005 mg/L、区分1の範囲) 以上で肺浸潤、細気管支の空胞変性、喉頭の扁平上皮化生、0.00125 mg/L (90日換算値0.001 mg/L、区分1の範囲) 以上で嗅上皮及び呼吸上皮の変性、0.0025 mg/L (90日換算値0.0019 mg/L、区分1の範囲) 以上で細気管支及び呼吸上皮の過形成、呼吸上皮の扁平上皮化生、0.005 mg/L (90日換算値0.0039 mg/L、区分1の範囲) 以上で褐色肺、肺胞蛋白症、肺巨核球、鼻甲骨の萎縮、肺出血、肺炎及び鼻炎がみられた。雄ではさらに、0.0025 mg/L以上で精子運動低下、0.005 mg/L以上で精巣重量の減少、精子活性低下、0.01 mg/L (粉じん、区分1の範囲) 以上で精巣変性、精巣上体の細胞質空胞変性、精子減少、生殖細胞の剥離がみられた (NTP TR581 (2014))。
(6) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は気道・肺障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(ムレミカヅキモ)72時間EC50 = 0.144 mg/L(REACH登録情報, 2020)であることから、区分1とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
無機化合物につき環境中動態が不明であるが、甲殻類(ヨコエビ)28日間NOEC = 0.00683 mg/L(REACH登録情報, 2020)であることから、区分1とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)


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