項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 75-09-2 |
名称 | ジクロロメタン |
物質ID | m-nite-75-09-2_v1 |
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項目 | 情報 |
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品ではない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 引火点なし (NFPA (14th, 2010))。なお、少量の引火性物質の添加または空気中の酸素濃度の上昇により、可燃性が著しく増強され蒸気が爆発性を有するという情報 (ICSC (J) (2012)) がある。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 発火点は605℃ (ICSC (J) (2012)) であり常温で発火しないと考えられる。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
17 | 鈍性化爆発物 | - |
- |
- | - | - | - | - |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分に該当しない |
- |
- | - | ラットのLD50値として、2,280 mg/kg (雄)、1,410 mg/kg (雌)、2,120 mg/kg (雄)、1,530~2,524 mg/kg、1,710~2,250 mg/kg (EHC 164 (1996)、NITE初期リスク評価書 (2005)) の5件の報告があり、1件が区分4、2件が区分外 (国連分類基準の区分5)、2件が区分4~区分外 (国連分類基準の区分5) に該当する。件数の多い区分を採用し、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。旧分類が使用したCERIハザードデータ集のデータはList 3の情報源であり、環境省リスク評価第2巻 (2003) のデータは出典がList 3の情報源であるRTECSであるため不採用とした。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分4 |
警告 |
H332 | P304+P340 P261 P271 P312 |
ラットの6時間吸入ばく露試験のLC50値として15,000 ppm (雄) (4時間換算値: 18,371 ppm) (EHC 164 (1996)、NITE初期リスク評価書 (2005)) との報告に基づき、区分4とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (574,109 ppm (25℃)) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。旧分類から区分を変更した。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 |
警告 |
H315 | P302+P352 P332+P313 P362+P364 P264 P280 P321 |
ウサギを用いた皮膚刺激試験において、強度又は中等度の皮膚刺激性を示す複数の試験結果 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)、NITE初期リスク評価書 (2005)) から、区分2とした。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A |
警告 |
H319 | P305+P351+P338 P337+P313 P264 P280 |
ウサギを用いた眼刺激性試験で本物質を適用後1時間以内に軽度から中等度の炎症が生じ、流涙は1週間続き、結膜・瞬膜・瞼の縁の充血は適用2週間後まで続いたとの報告や、ウサギを用いた別の眼刺激性試験で中等度の刺激性を示し一次刺激性指数は33 (最大値: 110) との報告 (いずれもDFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)) から、区分2Aとした。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。なお、ヒトにおいて呼吸器感作性において陽性を示す知見はないとの記載 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)) や、本物質がヒトにおいて感作性物質であるとの指摘はないとの記載 (SIAP (2011)) があるが、詳細が不明である。よって、分類できないとした。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない |
- |
- | - | マウスを用いたLLNA試験で、アセトン/オリーブオイル (4:1) に本物質を5%、25%、100%含む溶液25μLをマウスの耳に適用したところ、刺激指数 (SI) はそれぞれ1.3、1.5、1.7であり、本物質は皮膚感作性を示さなかったとの報告 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)) がある。ヒトにおいて、本物質が皮膚感作性物質であることを示す知見はないとの記載 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017))、SIAP (2011)) があるが詳細が不明である。よって、分類できないとした。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - | ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスの赤血球を用いたPig-aアッセイ、トランスジェニックマウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、末梢血を用いた小核試験で弱い陽性、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、末梢血、肺細胞を用いた染色体異常試験で弱い陽性、ラットの骨髄を用いた染色体異常試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性、マウスの肺細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性、ラット、マウスの肝臓、肺を用いたDNA損傷試験で陽性、陰性の結果、ラット、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2000)、IARC 110 (2016)、ACGIH (7th, 2015)、IRIS Tox. Review (2011)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。In vivo小核試験、染色体異常試験での弱い陽性結果は、本物質のグルタチオントランスフェラーゼによる種特異的な高い代謝率によるものと考えられており、本物質には遺伝毒性がないと評価されている (SIAP (2011))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性、陰性の結果、小核試験で陰性、染色体異常試験で陽性、陰性の結果、姉妹染色分体交換試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、IARC 110 (2016)、IRIS Tox. Review (2011)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2015))。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
6 | 発がん性 | 区分1A |
危険 |
H350 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトでは本物質へのばく露と胆道がん及び非ホジキンリンパ腫との間に正の相関がみられ、IARCは本物質の発がん性に関してヒトでは限定的な証拠があると結論した (IARC 110 (2016))。また、先に日本産業衛生学会は本邦で本物質と1,2-ジクロロプロパンとの混合ばく露により、胆管がん発症が強く疑われる症例報告があることを報告し、動物試験結果 (後述) を併せて本物質の発がん性分類を第2群Aに分類した (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2015))。実験動物では、マウスを用いた複数の発がん性試験において経口又は吸入経路により肝臓、吸入経路により肺などに腫瘍発生頻度の増加が認められ、ラットを用いた複数の発がん性試験において吸入経路により皮膚と乳腺などに腫瘍発生頻度の増加が認められており、IARCは実験動物では発がん性の十分な証拠があると結論した (IARC 100 (2016)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2015))。既存分類ではIARCがグループ2Aに (IARC 110 (2016))、NTPがRに (NTP RoC (14th, 2016))、EPAがL に (IRIS (2011))、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2015))、日本産業衛生学会が第2群Aに (許容濃度の勧告 (2017): 2015年提案) それぞれ分類している。さらに本物質に関して、厚生労働省は労働基準法施行規則に基づき、「本物質にさらされる業務による胆管がん」を平成25年 (2013) に労災補償の対象となる別表第1の2 (職業病リスト) に加えた (厚生労働省ホームページ (Access on November 2017))。以上より、本項は区分1Aとした。なお、旧分類 (区分2) 以降の追加情報により、分類区分を変更した。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
7 | 生殖毒性 | 区分2 |
警告 |
H361 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトでの生殖影響に関しては、以下の報告がある。すなわち、本物質のばく露を受け (ばく露濃度は不明であったが、本物質の入ったバケツに手を浸け、部品にかけて拭き取る作業に従事)、中枢神経機能障害で通院していた34人の労働者のうち8人 (年齢20~47歳、ばく露期間0.4~2.9年) が精巣、精巣上体、前立腺の痛みを訴え、不妊状態にあった。このうち、精液採取に協力した4人では明らかに精子数、運動精子数が少なく、精子奇形率も高かった (環境省リスク評価第3巻 (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、ATSDR (2000))。その後、NIOSHが環境測定を行って結果、本物質の平均ばく露濃度は68 ppm (3.3~154.4 ppm) で、労働者は許容濃度以下のスチレン (平均濃度: 7.2 ppm (1.5~10.4 ppm)) にもばく露されていた (ATSDR (2000)。一方、上記報告よりも2倍高い濃度の本物質に3ヵ月以上ばく露された労働者4人では、精子の減少はみられなかったとの報告があり、ATSDRは両報告結果の差異はばく露期間によるもの (ばく露期間が長くなると影響が出る) か、前者の報告が本物質以外に他の物質にも同時ばく露された結果によるのかは明らかでないとした (ATSDR (2000))。しかし、本物質は経皮吸収があるとされており (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、SIAP (2011))、本物質の入ったバケツに手を入れた労働者の事例では吸入経路に加えて経皮経路を介した吸収による影響の関与があり、気中濃度が半分でも十分な量が吸収され、生殖影響が生じた可能性も考えられる。 実験動物では、ラットを用いた吸入経路による2世代試験で、1,500 ppm (5,300 mg/m3) の高用量までばく露されたが、F0、F1親動物、F1、F2児動物のいずれにも有害影響はみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2005)、SIAP (2011)、DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017))。経口経路での生殖能に関しては、ラットに交配前13週間飲水投与 (125 mg/L) した結果、雌の受胎率、産児数への影響はなかったとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2005))、ラットに交配前10日間強制経口投与 (25~225 mg/kg/day) した結果、最高用量の225 mg/kg/day まで受胎率に影響はなかったとの報告がある (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017))。一方、妊娠ラット、又は妊娠マウスの器官形成期に1,250 ppm (4,400 mg/m3) を吸入ばく露した発生毒性試験では、ラット、マウスともばく露群で母動物に一酸化炭素ヘモグロビン (CO-Hb) の増加と肝臓重量の増加がみられたが、胎児には軽微な影響 (腎盂拡張、骨化遅延 (ラット)、過剰胸骨 (マウス)) がみられただけであった (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)、ACGIH (7th, 2015))。また、妊娠ラットの妊娠期間を通して、最大4.0%で混餌投与した試験では、4.0%で母動物に体重増加抑制、胎児に体重低値がみられたのみであった (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。 以上、ヒトでは本物質への職業ばく露による男性労働者を対象とした不妊の調査研究があり、8人が不妊状態で、うち4人で精子減少が示されたとする報告があるのに対し、より高濃度でばく露された4人の労働者では精子減少はみられなかったとの報告がある。ただし、本物質は経皮吸収されるため、バケツに手をいれた労働者では吸入経路だけでなく、経皮経路による吸収が加わり、気中濃度に関わらず生殖影響を生じた可能性が考えられる。一方、動物試験結果からは本物質は吸入、経口のいずれの経路でも生殖発生影響を示す証拠は得られなかった。以上より、本物質職業ばく露による男性生殖能への有害影響が報告されたが、ヒトの生殖影響は1報告のみで限定的と考えられること、動物試験からは生殖発生影響は検出されなかったことを踏まえ、本項は区分2とした。 |
平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(中枢神経系、呼吸器)、区分3(麻酔作用) |
危険 警告 |
H370 H336 |
P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 |
ヒトでは本物質を主成分とするペンキ剥離剤の使用中の事故による急性吸入ばく露例として、換気不良の場所でペンキ剥離作業を行なった男性が、救急室搬入時、頭痛、胸部痛を訴え、見当識障害、進行性の警戒性の喪失を起こし、疲労感と無気力状態の亢進、記憶喪失、時間感覚の喪失を示したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。また、同様の事故によるばく露で、中枢神経の抑制、嗜眠、眼と呼吸器の炎症、肺の浮腫がみられ、死に到る場合もあるとの記述がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。さらに換気不十分な環境で作業をしていた植物成分抽出釜の作業員4名が、中枢神経抑制、麻酔、眼の刺激、気管と肺の浮腫を示して死亡したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。ボランティアによる急性吸入ばく露実験では、200 ppm、1.5~3 時間のばく露で神経行動学的影響 (警戒心の混乱、複合警戒追跡行動の障害) がみられたとの報告、300 ppm、95分のばく露で、視覚機能検査で検出された臨界融合頻度の低下がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。実験動物では、ラットの単回吸入ばく露試験で、中枢神経抑制、体温低下、血圧低下、痙攣、感覚麻痺、呼吸困難、体性感覚誘発の変化がみられたとの報告、マウスの単回吸入ばく露試験で、中枢神経の抑制による回復性の昏睡がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、EHC 164 (1996))。実験動物に対する影響は、区分2に相当するガイダンス値の範囲で認められた。以上より区分1 (中枢神経系、呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(中枢神経系、肝臓、生殖器(男性)) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトについては、幻聴・幻覚を伴う中枢神経の不可逆的損傷がみられたとの症例報告、側頭葉両側の変性がみられたとの症例報告、精神錯乱、てんかん発作の症例報告がある、胆嚢の病変や肝臓の腫大がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、EHC 164 (1996))。また、ばく露濃度は不明であったが、本物質の入ったバケツに手を浸け、部品にかけて拭き取る作業に従事していた労働者8人(年齢20~47才、ばく露期間0.4~2.9年)が精巣、精巣上体、前立腺の痛みを訴え、不妊状態にあった。このうち、精液採取に協力した4人では明らかに精子数、運動精子数が少なく、精子奇形率も高かったとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999))。 実験動物については、ラットを用いた2年間飲水投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である雄の52 mg/kg/day以上の群、雌の58 mg/kg/day以上の群で肝臓の変異細胞巣・脂肪変性がみられている (環境省リスク評価第3巻 (2004))。マウスを用いた1ヵ月間連続吸入毒性試験 (24時間/日、7日/週) で区分2のガイダンス値の範囲 (蒸気) の75 ppm (90日換算: 0.35 mg/L) 以上で肝臓に脂肪の蓄積、肝臓重量の増加、血中ブチリルコリンエステラーゼ量の上昇、マウス及びラットを用いた100日間連続吸入毒性試験 (24時間/日、7日/週) で区分2のガイダンス値の範囲 (蒸気) の25 ppm (ガイダンス値換算: 0.35 mg/L) 以上で肝細胞脂肪染色陽性、軽度肝細胞空胞化がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。 以上より区分1 (中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)) とした。 なお、ヒトの男性生殖器への影響を追加したため旧分類と分類が異なった。 |
平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on May 2017) に収載された数値データ (粘性率: 0.437 mPa・s (20℃)、密度 (比重): 1.3255) より、動粘性率は0.33 mm2/sec (20℃) と算出される。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分3 |
- |
H402 | P273 P501 |
甲殻類(オオミジンコ)48時間LC50 = 27 mg/L(Canada PSAR:1993、OECD SIDS:2011)であることから、区分3とした。 | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分3 |
- |
H412 | P273 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる平均分解度:13%(化審法DB:1986))、魚類(ファッドヘッドミノー)の32日間NOEC(体重)= 82.5 mg/L(NITE初期リスク評価書:2007)であることから、区分外となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる平均分解度:13%(化審法DB:1986))、甲殻類(オオミジンコ)48時間LC50 = 27 mg/L(Canada PSAR:1993、OECD SIDS:2011)であることから、区分3となる。 以上の結果から、区分3とした。 |
平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし | 平成29年度(2017年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
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