化学物質管理

(2)家庭用衣料品の加工等の種類

繊維製品は繊維を元に、以下のような段階を経て作られます。

「6.家庭用衣料品」表紙画像

繊維 天然繊維の場合は、それぞれの素材から繊維を取り出します。化学繊維の場合、熱で溶かしたり溶剤に溶かしたりしたポリマー(紡糸原液)を紡糸機のノズルから押し出して糸状にします(紡糸)。
糸 綿、麻、毛のような短い繊維の場合は繊維の方向を一定に揃え撚り合わせて糸にします(紡績)。
化学繊維の場合、何本かの繊維を撚り合わせて糸にします。天然繊維と合成繊維を撚り合わせることも行われます。
布地 織物、ニット、不織布にする
織物とは、たて糸とよこ糸を互いに直角に交錯させてできた布のことです。
ニット(編物)とは、連続された編目で構成された布のことです。不織布とは、織ったり編んだりしないで繊維をシート状にした布のことで、繊維を絡ませたり部分的に接着したり製紙のような方法を用いるなどして作られます。羊毛で作られたフェルトが代表的なものです。
繊維製品 布地のパーツを縫い合わせて(縫製)、製品にします。

繊維製品は、製品化されるまでに、さまざまな化学処理が施されますが、その代表的なものが染色と種々の樹脂加工、機能付与加工です。

1.染色

ほとんどの繊維製品は、何らかの色がついています。実用的な品質に加えて、消費者への感覚的な品質(魅力)として、染色は大きな意味を持っています。

染色は、繊維に付着している天然不純物や汚れなどを除いて清浄な状態にした(精練)後に行われます。天然繊維の多くは、一般的に薄く着色しているため、漂白を行います。

漂白剤は、次の工程で染色を行う場合、残留するとその妨げとなるため十分に洗浄されます。また、染色を行わず白色の製品となる場合、蛍光造白剤が用いられることがありますが、洗濯等で容易に洗い流される処理と繊維に結合する処理とがあります。

染色は、染料や顔料で繊維を着色することですが、以下のような分類があります。

  1. (1)染め方による分類
    浸染(しんぜん) :
    染料を溶かした水の中に浸して全体的に着色すること。
    捺染(なせん) :
    染料に糊を加えて、模様をプリントして染色すること。
    顔料捺染(顔料なせん):
    顔料に樹脂を加えて、模様をプリントして顔料を布に固着させること。
  2. (2)染める段階による分類
    ばら染め・わた染め:
    繊維の状態や糸にする途中工程で染色すること。
    糸染め :
    布地にする前の糸の状態で染色すること。
    反染め・生地染め :
    織物やニット等の布地の状態で染色すること。 製品染め :縫製後の家庭用衣料品の状態で染色すること。
    ※布地になる前に染めることを「先染め」、布地になってから染めることを「後染め」と呼ぶこともあります。

染色のほとんどが染料によるものですが、部分染めや独特の風合を出したい場合に、顔料が用いられます。顔料は水に溶けず、繊維に対して親和性がないため、繊維に付着させるには接着剤(樹脂、バインダー)が必要です。

主な染料の種類とその特性は以下のとおりです。

日本では日本工業規格に「染色物の染料部属判定方法(JIS L 1065)」があり、染料が部属ごとに分類されています。また、顔料は染料部属においてピグメントレジンカラーと分類されています。

このほかにも、染料の化学構造による分類(モノアゾ染料、フタロシアニン染料等)があります。

染料の分類とその用途、染色法
分類 用途、染色法
酸性染料(アニオン) 毛、絹、ナイロン染色用
アゾイック染料(ナフトール染料) 主に綿等セルロース系繊維染色用
カップリング成分を繊維に吸着させ、後からジアゾ成分を化学反応させて、繊維上で色素を合成し、染色する。
塩基性染料(カチオン) アクリル、アクリル系染色用
直接染料 主に綿等セルロース系繊維染色用
分散染料 アセテート、トリアセテート、ポリエステル、ナイロン染色用
蛍光増白剤 各種繊維の白色化、洗剤の添加剤
媒染染料、酸性媒染染料 主に綿、羊毛染色用、後から金属を加えて錯体として染色。草木染め。
ピグメントレジンカラー(顔料) ポリオレフィン系繊維の着色。顔料捺染用
反応染料 主に綿等セルロース系繊維や、毛・シルク等の動物繊維染色用。
油溶染料 合成樹脂着色用。一部、インクジェットプリント染色用
硫化染料 主に綿等セルロース系繊維染色用。染料を、硫化ナトリウムで還元して染色する。
バット染料(建染染料) 主に綿等セルロース系繊維染色用。還元・酸化染色。インジゴ染色、藍染め。

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2.加工処理

繊維の加工は、大きく、外観や風合を良くする加工と機能を付与する加工に分けられます。

またその処理には、物理的又は化学的なものがあり、以下の3つの方法があります。

  1. (1)繊維の形態を変化させる
    天然繊維である綿繊維は、断面が中空、まゆ状ですが、その形態を変化させる加工で、物理的なものとしては、繊維表面にプラズマ等により、微細な穴を開け、光を乱反射させることにより、礼服等の非常に深い黒色を得る加工があります。この方法は、羊毛繊維やポリエステル繊維にも活用されています。
    化学的な処理には、綿繊維の断面をアルカリ処理により円形にし、光沢や染色性の改善や耐洗濯性等を安定化させる加工(マーセライズ加工)や、ブラウス用生地等のポリエステル繊維をアルカリ処理により細く加工し、手触り感やドレープ性を向上させる加工(減量加工)などがあります。繊維の形態が変化した後は、処理剤として使われた化学物質は除去され、製品には残りません。
  2. (2)繊維に新たな化学結合(官能基)を導入する
    例えば、染色性を改善する加工として、酸性基をポリエステル繊維に導入することで、塩基性染料で染色できるようにするポリマー改質加工があります。
    また、機能性を付与する加工として、疎水性の合成繊維の繊維表面に親水性基を導入することで、汗等の水分を吸水、拡散をしやすくする加工(吸汗加工、吸湿加工、吸水加工、吸水速乾加工)などがあります。
  3. (3)繊維表面等に新たな化学物質を付着または混入させる(樹脂加工)
    機能を繊維に付与させる加工のほとんどが樹脂加工(合成樹脂、初期縮重合物などを用いて行うすべての加工の総称)です。
    代表的な樹脂加工に、防水加工、はっ水加工、抗菌防臭加工があります。セルロース系繊維を対象とした防しわ加工、形態安定加工も樹脂加工の一種です。

本書では、物理的な加工がほとんどである外観や風合を良くする加工を除き、機能を付与する加工で化学的な加工の代表的なものについて説明します。

2.1.樹脂加工

樹脂加工とは、尿素やホルムアルデヒドなどを用いて繊維内に樹脂を充てんすることです。1920年ごろ、樹脂加工により、防縮・防しわの効果を得たことから始まり、これまでにパーマネントプレス加工(PP加工)、形態安定加工などの進歩を遂げてきました。

以下に樹脂加工に含まれる代表的な加工を説明します。

2.1.1.防縮加工

繊維を洗濯や熱処理などの取扱いで収縮しないようにする加工です。対象とする繊維の種類によって、様々な加工方法があります。綿やレーヨンの繊維製品に多く利用されています。また、羊毛のフェルト化※を防止し、水洗濯できるようにしたり、絹が水にぬれて縮まないようにするなど幅広く利用されています。

※羊毛繊維には水に濡れると膨潤し表面のキューティクルが立ち上がり洗濯などの機械的運動でキューティクル同士が絡み合ってフェルト状に収縮する性質があるため、羊毛の防縮加工は、水で膨潤してもキューティクルが立ち上がらなくなるようにします。

2.1.2.防しわ加工

繊維製品に、樹脂加工などでしわがつきにくくする加工です。

2.1.3.形態安定加工

綿や綿とポリエステル混紡のワイシャツなどの衣服に、繰り返しの着用や洗濯をしても縮んだり型崩れを起こさないように保持できるようにした加工で、水分に対する安定性、防しわ、形態安定性などを付与します。

2.1.4.パーマネントプレス加工(PP加工)、デュラブルプレス加工、P加工

セルロース繊維、毛又はその混紡織物に薬品や樹脂加工を応用してスカート等のプリーツ(折目)に耐久性、対洗濯性を与える加工です。加工方法によってポストキュア法(後加工)とプレキュア法(前加工)とに大別されます。

2.2.防水加工

繊維製品に、水がしみて濡れることを防止するため、水を通りにくくする加工です。レインコートなどはゴムや塩化ビニルなどの樹脂をコーティングしますが、水蒸気も通さなくなるため蒸れるという欠点があります。

2.3.はっ水加工

繊維に水をはじき、中に浸み込まないようにする性質を付与する加工です。布には隙間が残されており、水も空気も通さないようにする防水加工とは異なります。一時的な加工と、繊維にフッ素やシリコン系の樹脂を化学結合させて長期間はっ水性を発揮する耐久はっ水加工があります。その他、繊維表面を特殊加工することで、表面張力を増大させたはっ水加工もあります。ブルゾン、スキーウェア、などに利用されています。

2.4.透湿防水加工

透湿性が必要な衣料に用いられる防水加工です。透湿性樹脂フィルムを生地に貼り付ける場合やはっ水加工をする場合があり、水滴(直径100~3000μm)は表面張力により透過できませんが、水蒸気(直径0.0004μm)は織り目や樹脂フィルム面の微細な穴から透過することができます。スポーツ衣料に利用されています。

2.5.防汚加工

繊維を汚れにくく、また付着した汚れを落ちやすくする加工です。水性及び油性汚れを防ぐはっ水及びはつ油加工、油性汚れが洗濯で落ちやすい親水加工、塵や埃の吸着を防ぐ帯電防止加工などが有効です。ワイシャツ、ブラウス、エプロンなどに利用されています。

2.6.帯電防止加工、制電加工

湿度が低い場合や吸湿性が低い繊維は、摩擦によって静電気が発生して、糸が絡んだり埃がついたりします。帯電防止加工、制電加工は、繊維に発生する静電気を抑制する加工です。帯電防止加工は耐久性に乏しいので、恒久的な効果を望む場合は、導電性繊維や金属繊維を使う必要があります。肌着、ランジェリー、ファンデーション、和装品などに利用されています。

2.7.防虫加工

衣類を食べる害虫のイメージイラスト

衣類を食べる害虫は、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、イガ、コイガの4種類の虫がいます。これらの虫は、幼虫の時期に衣類を食べ、ウールやシルク、特にカシミヤ等の柔らかい衣類を好んで食べます。防虫加工は、それらの虫害を防止するための加工です。虫が食べたり触れたりすると毒性を発する薬剤を繊維に付与したり、繊維を改質して虫が食べないようにします。防ダニ加工では、ダニが侵入しないように高密度の織物に薬剤加工をします。

2.8.衛生加工

衛生加工は、抗菌防臭加工、制菌加工、防腐・防かび加工がそのおもなもので、現在、靴下、肌着、タオル、ふきん、シーツ、布団カバー、靴の中敷、カーペット、カーテンなど身の 回りの様々な繊維製品に利用されています。

以下に衛生加工に含まれる代表的な加工を説明します。

2.8.1.抗菌防臭加工

繊維上に付着した汚れを栄養源にした細菌の増殖を抑制し、不快な臭いを防ぐ加工です。(細菌を選択的に死滅させたり、細菌の増殖を抑制する)選択毒性のある抗菌剤を繊維に付着させたり、糸に練りこんだりします。肌着、くつ下、シーツなどに利用されています。

2.8.2.制菌加工

繊維上の細菌の増殖を抑制する加工です。抗菌防臭加工と加工方法や機能は同一ですが、抗菌性能として、黄色ブドウ球菌、肺炎かん(桿)菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、大腸菌、緑のう(膿)菌などを対象とし、主に医療や介護分野で利用されています。

2.8.3.防かび加工

繊維上のかびの発育を抑制する加工です。

2.8.4.消臭加工

繊維が臭気成分に触れることによって不快臭を減少させる効果を示す加工です。不快臭とは、たとえば、汗臭、加齢臭、排泄臭、たばこ臭、生ゴミ臭などを指します。また、繊維に吸着したにおい成分を分解すること又は、におい成分が付着する着臭を防止することにより、製品が臭わないようにする加工もこれに含まれます。加齢臭防止加工が話題となりました。

2.9.難燃加工

生地に難燃加工剤を固着させることにより、着火又は延燃しにくくする加工ですが、引火の危険性のあるカーテンなどのインテリア製品や特殊な作業服等に施される場合がほとんどで、家庭用の衣料品に用いられることは稀です。

2.10.UVカット加工

UVカット加工のイメージイラスト

繊維製品に紫外線吸収剤や反射剤を含浸又は付着させ、紫外線を遮断して皮膚を守る加工です。天然繊維では、加工剤を付着させる場合が多いですが、合成繊維では原料のポリマーに混合して防止する方法が採られているため、耐久性が高いです。

お問い合わせ

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