化学物質管理

(3)家庭用衣料品の加工等に使用する化学物質

1.染色

染色には染料及び顔料が用いられます。

また、世界的に用いられている大部分の染料は、Colour Index(カラーインデックス、略称:C.I.)に記載されており、統一の名称が付けられています。

染料名表現方法は、図-1の通りです。C.I.は省略される場合があります。

「6.家庭用衣料品」表紙画像

染料名表現方法

図-1 染料名表現方法

染料名表現方法
分類 染料部属名 分類 染料部属名
直接染料 Direct 建染染料、バット染料 Vat
酸性染料 Acid 分散染料 Disperse
塩基性染料、カチオン染料 Basic 反応染料 Reactive
媒染染料、酸性媒染染料 Mordant 蛍光増白剤 Fluorescent Brightener
硫化染料 Sulphur ピグメントレジンカラー(顔料) Pigments

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2.加工

2.1.樹脂加工

セルロース系繊維の樹脂加工(狭義の樹脂加工)

綿等のセルロース系繊維の樹脂加工においては、前処理として濃厚カセイソーダによる処理(シルケット加工)又は液体アンモニア処理(アンモニアシルケット加工)を行い、繊維の強度を向上させたり、形態安定性を整えています。

次に、縮合型又は繊維素反応架橋型の樹脂を使用して、防縮加工、防しわ加工、さらにはウオッシュ&ウェア加工(WW加工)、パーマネントプレス加工(PP加工)、デュラブルプレス加工(DP加工)、形態安定加工を行います。

これらの薬剤の多くは共通していますので、以下にまとめて記載します。

セルロース系繊維の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
縮合型樹脂 ジメチロール尿素(DMU) 140-95-4
トリメチロールメラミン(メチル化物)(TMM) 1017-56-7
繊維素反応型樹脂 ジメチロールエチレン尿素(DMEU) 136-84-5
ジメチルジヒドロキシエチレン尿素(DMeDHEU) 3923-79-3
ジメチロールプロピレン尿素(DMPU) 7226-23-5
ジメチロールトリアゾン(DMT) 950-37-8
ジメチロールウロン(DMUr) 330-54-1
ジメチロールエチルカーバメート(DMEC) 16484-77-8
ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU) 1854-26-8
触媒 塩化アンモニウム 12125-02-9
硫酸アンモニウム 7783-20-2
有機アミン塩
塩化マグネシウム 7786-30-3
塩化亜鉛 7646-85-7
柔軟剤 ポリエチエマルジョン
シリコン系柔軟剤

セルロース系繊維の樹脂加工は、尿素又はメラミンとホルムアルデヒドの反応で得られる樹脂を繊維に含浸させ、繊維内に充填することから始まりました。この加工により、繊維に光沢と腰のある風合いが得られましたが、耐久性に劣る上に、加工後の繊維製品からは比較的多くのホルムアルデヒドが発生することも問題でした。

その後、開発された樹脂は、耐久性のある防縮性、防しわ性が得られることがわかり、上記表に示した各種の樹脂が実用化されました。中でも、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)は、優れた防縮性、防しわ性を示す一方、加工後の製品から発生するホルムアルデヒドの量も少なく、その後WW加工、PP加工、形態安定加工へと発展する上において中心的な役割を果たしました。

さらに、全くホルムアルデヒドを発生しない樹脂として、ジメチルジヒドロキシエチレン尿素(DMeDHEU)が開発されました。現状では、ジメチルジヒドロキシエチレン尿素(DMeDHEU)は、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)よりも防縮性、防しわ性においてやや劣ることが課題となっています。

触媒としては、一般的に、縮合型樹脂にはアンモニウム塩、有機アミン塩が、繊維素反応型樹脂には金属塩が使用されます。これらの触媒は、樹脂と共に繊維に付与された後、高温処理の段階で触媒として作用します。

柔軟剤は、樹脂加工によって引き起こされる摩耗強力、引裂強力の低下を少なくし、さらに風合いを調整するために併用します。一般的には、ポリエチエマルジョンやシリコン系柔軟剤が使用されます。

羊毛の防縮加工
羊毛の防縮加工は、水で膨潤してもキューティクルが立ち上がらなくなるようにすることです。化学的方法としては、繊維表面のキューティクルを塩素化剤で軟化分解したり、合成樹脂でキューティクルを被覆する方法があります。また、物理的な方法としては、プラズマ処理により改質する方法が有ります。
羊毛の防縮加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
塩素化剤 ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 2893-78-9
ポリウレタン樹脂 ポリウレタン 9009-54-5
合成繊維の防縮加工
ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性合成繊維は、緊張下で高温処理(ヒートセット)することにより、形態安定性が得られます。従って、防縮性向上を目的とした化学物質による処理は行いません。

2.2.防水加工

防水加工では、ゴムや塩化ビニルといった防水剤を布の表面にラミネートまたはコーティングする方法が一般的です。

防水加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
ゴム シリコーンゴム 9016-00-6
塩化ビニル ポリ塩化ビニル 9002-86-2

2.3.はっ水加工(はっ水はつ油加工)

パラフィン、シリコン樹脂等のはっ水剤を付与する方法と、フッ素樹脂等のはっ水はつ油剤を付与する方法があります。またオルガノシロキサンと有機ポリイソシアネート、水系フッ素系エマルジョンと溶剤フッ素系はっ水はつ油剤による2段加工法等の耐久性はっ水加工法も種々提案されています。

はっ水加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
はっ水剤 固形パラフィン 8002-74-2
流動パラフィン 8012-95-1
直鎖(C5~20)パラフィン(石油) 64771-71-7
シリコン樹脂 8050-81-5
はっ水はつ油剤 フッ素樹脂
水系フッ素系エマルジョン
溶剤フッ素系はっ水はつ油剤
架橋剤 有機ポリイソシアネート

2.4.透湿防水加工

透湿防水加工には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質フィルムをラミネートする方法や、ポリウレタンやアクリル樹脂でコーティングする方法などがあり、コーティングは、上記樹脂をアルコールやジメチルホルムアミドなどの有機溶剤、水などに分散させて塗布した後、有機溶剤を気化又は溶出して行います。

ラミネート樹脂はPTFEの他、ポリウレタン製のものも開発されています。PTFEは、それ自体が撥水性があり、又、多孔質ポリウレタンは、撥水加工することで表面張力を得て水の浸入を防ぎます。

透湿防水加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
ラミネート剤 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 9002-84-0
コーティング剤 ポリウレタン 9009-54-5
アクリル樹脂 9003-32-1
分散溶剤 アルコール
ジメチルホルムアミド 68-12-2

2.5.防汚加工

防汚加工剤は、汚れがつきにくいポリフルオロアルキル基を含有するポリマーや、付着した汚れが落ちやすい親水性基(ポリアルキレンオキサイド付加型)を含有する親水性ポリマーが主なものです。その他、コロイド状のアルミナやシリカを付着させて繊維面を平滑化する方法や、帯電防止加工により汚れにくくする方法もあります。

防汚加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
はっ水はつ油剤 ポリフルオロアルキル基を含有するポリマー
親水防汚剤 ポリアルキレンオキサイド付加型のポリマー
表面平滑剤 アルミナ、酸化アルミニウム 1344-28-1
シリカ、二酸化ケイ素 7631-86-9

2.6.帯電防止加工、制電加工

帯電防止加工には、カーボンブラックやポリエチレングリコール(PEG)などの制電物質を混合または共重合する方法、後加工時に金属化合物やカチオン系高分子、ポリアミン系共重合体、PEG(ポリエチレングリコール)-PET(ポリエチレンテレフタレート)共重合体などを付着または反応させる方法や導電性繊維を入れる方法があります。

用いる帯電防止加工剤には、高級アルコール、界面活性剤などの吸湿剤、第4級アンモニウム塩、オキシエチレン基をもつポリマーなどがあり、親水性モノマーをグラフト重合する方法では、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)が代表的ですが、メチルメタアクリレート(MMA)やメタアクリルアミド系の化合物も使用されます。

導電性繊維を混用する方法では、繊維内にカーボンブラックなどの導電性物質を含有させた繊維、ステンレス繊維、炭素繊維、銅繊維などが使われます。

帯電防止加工、制電加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
制電物質 カーボンブラック 1333-86-4
ポリエチレングリコール(PEG) 25322-68-3
後加工剤 金属化合物
ポリアミン系共重合体
PEG(ポリエチレングリコール)-PET(ポリエチレンテレフタレート)共重合体
親水性モノマー 2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA) 868-77-9
メチルメタクリレート(MMA) 80-62-6
アクリルアミド系の化合物
導電性繊維 7439-89-6
カーボンブラック 1333-86-4
7440-50-8

2.7.防虫加工

防虫加工に使用される防虫剤には、樟脳(しょうのう)、パラジクロロベンゼン、ナフタリンやピレトリンなどがあります。防ダニ加工として用いられる場合もあります。羊毛に結合するものとしては、ミッチン、オイランなどがありますが、現在ではほとんど用いられていません。法規制されている物質(第4章)があるので注意が必要です。

防虫加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
防虫剤 1、7、7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、樟脳 76-22-2
パラジクロロベンゼン 106-46-7
ナフタリン 91-20-3
ピレトリン 8003-34-7

2.8.衛生加工

2.8.1.抗菌防臭加工

抗菌防臭加工には、繊維に抗菌剤を化学結合させたもの、抗菌剤を樹脂とともに繊維上に固着させたもの、化学繊維に抗菌剤を練り込んだものが存在し、用いる抗菌剤には、以下のようなものがあります。

  • 無機系(銀、銅、亜鉛などをゼオライトに担持させたもの)
  • 有機系(フェノール系、エステル系、アニリド系、界面活性剤系など)
  • 天然系(キチン、キトサン、ヒノキチオール、ヨモギエキス、アロエエキス、孟宗竹抽出物など)

その他第四級アンモニウム塩なども使われます。

現在は、安全性の高い、無機系、天然系が多く用いられています。また、繊維に化学結合させ耐洗濯性を持たせた有機シリコン第四級アンモニウム塩系抗菌剤が多く使用されています。

抗菌防臭加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
無機系 ゼオライト 1318-02-1
7440-22-4
7440-50-8
8-ヒドロキシキノリン銅 10380-28-6
亜鉛 7440-66-6
有機系 フェノール系
ビグアナイド系
カーバニリド系
カルボン酸系
第四アンモニウム塩系
ピリジン系
エステル系
アニリド系
界面活性剤系(アルキル(C10~14 )(ベンジル)ジメチルアンモニウムクロライド)
天然系 キチン 1398-61-4
キトサン 9012-76-4
ヒノキチオール 499-44-5
ヨモギエキス
アロエエキス
孟宗竹抽出物
第四級アンモニウム塩 ベンジル(ドデシル)ジメチルアンモニウムクロライド 139-07-1

2.8.2.制菌加工

抗菌防臭加工と同じ無機系もしくは有機系抗菌剤が用いられています。

2.8.3.防かび加工

無機系、有機系その他の加工剤系に分けられています。

防かび加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
無機系 7440-22-4
7440-50-8
有機系 ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC) 7173-51-5
ピリジン系;ジンクピリチオン(ZPT) 13463-41-7
チアゾール系;チアベンダゾール(TBZ) 148-79-8
フェニルエーテル系

2.8.4.消臭加工

消臭の機構はいくつかあり、物理的吸着による消臭には、活性炭、木炭、ゼオライトなどが使用されます。分解による消臭には、酸化チタンなどの光触媒(緩和剤としてシリカなどで包接)や生体内の酸化酵素による作用を真似た金属フタロシアニンによる方法が検討されています。化学的な消臭は、中和反応によるもの(酸性臭に対してはアミノ酸などのアルカリ性基、アルカリ性臭に対しては、スルホン酸基やカルボキシル基など酸性基をもった化合物を用いる)とそれ以外(金属塩や金属錯体などを用いる)の方法があります。

消臭加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
物理吸着剤 活性炭 1333-86-4
木炭
ゼオライト 1318-02-1
分解消臭剤 酸化チタン 13463-67-7
シリカ、二酸化ケイ素 7631-86-9
生体模倣系 フタロシアニン銅 147-14-8
中和剤 アミノ酸などのアルカリ性基
スルホン酸基
カルボキシル基
その他 金属塩
金属錯体

2.9.難燃加工

難燃剤の代表的なものとして、臭素化合物、リン化合物、塩素化合物などの有機系難燃剤と、三酸化アンチモン、金属水酸化物などの無機系難燃剤(または難燃化助剤)がありますが、その加工対象は主にカーテンなどのインテリア製品であり、家庭用の衣料品には用いられることは稀です。

2.10.UVカット加工

UVカットには、紫外線を吸収する方法と反射する方法があります。紫外線吸収成分としては、パラアミノ安息香酸系、ベンゾフェノン系、トリアジン系などの有機系吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛、微粒子酸化鉄などの無機系吸収剤の微粒子を用います。ベンゾトリアゾール系が最も一般的に使われており安価ですが、アイロンなどの熱により繊維中の加工剤が表層に出て性能及び安全性が変化する可能性もあり、高級品にはより耐熱性の高いトリアジン系が用いられています。反射成分としては、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどがあります。また、カレンダー(ローラーに巻き込んで圧力をかける加工)による布の目詰めも効果があります。

UVカット加工の有効成分
総称名 代表的な物質(略称) CAS番号
有機系吸収剤 ベンゾトリアゾール系:
2-(2-Hydroxy-5-methylphenyl)benzotriazole

ベンゾトリアゾール系物質の構造式

2440-22-4
パラアミノ安息香酸系:
2-Ethylhexyl-4-(di-methylamino)benzoate(OD-PABA)

パラアミノ安息香酸系物質の構造式

21245-02-3
ベンゾフェノン系:
2-Hydroxy-4-octyloxybenzophenone

ベンゾフェノン系物質の構造式

1843-05-6
トリアジン系:
2-(4,6-Diphenyl-1,3,5-triazin-2-yl)-5-[(hexyl)oxy]-phenol

トリアジン系物質の構造式

147315-50-2
無機系吸収剤 酸化チタン 13463-67-7
酸化亜鉛 1314-13-2
酸化鉄(Ⅲ) 1309-37-1
反射成分 タルク 14807-96-6
カオリン 1332-58-7
炭酸カルシウム 471-34-1

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3.より詳しい情報の入手先

本冊子にはその物質の化学式やいろいろな特性(有害性や物理的な危険性など)は記載していませんが、現在インターネット上では名称やCAS No等より簡単にこれらを調べることができます。下記にウェブサイトで利用できる日本語の情報を記載しました。

しかし、これらのサイトから得られる情報はほとんど単一物質の情報です。

製品中に含まれる量やどれだけ体に取り込まれたかによって、影響は異なりますので、下記のサイト等で得られた情報はこの点をよく考慮してください。

(独)製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)の国際化学物質安全性カード(ICSC)日本語版

http://www.nihs.go.jp/ICSC/

環境省 化学物質の環境リスク評価書

http://www.env.go.jp/chemi/risk/index.html

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
TEL:03-3481-1977  FAX:03-3481-2900
住所:〒151-0066 東京都渋谷区西原2-49-10 地図
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