化学物質管理

化学物質のリスク評価について-よりよく理解するために-3

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リスク評価の方法

リスク評価には、一般的にHQ(Hazard Quotient:ハザード比)またはMOE(Margin of Exposure:暴露マージン)などの指標が用いられます。

なお、両者とも基本的な考え方は同じものです。

HQ(Hazard Quotient:ハザード比)を用いた評価方法

HQ(ハザード比)は、EHE(ヒトへの推定暴露量)(※4)とTDI(耐容一日摂取量)(※5)の大小を比べたもので、以下の式で表されます。

※4 「EHE(ヒトへの推定暴露量)」 を御参照ください。

※5 「NOAEL(無毒性量)とTDI(耐容一日摂取量)」を御参照ください。

HQ(ハザード比)= EHE(ヒトへの推定暴露量)
TDI(耐容一日摂取量)

TDIとは、ヒトが一日当たりに摂取しても安全な量であり、動物試験などで求められたNOAEL(無毒性量)(※5)をUFs(不確実係数積)(※6)で割ってヒトへの無毒性量としたものです。

※5 「NOAEL(無毒性量)とTDI(耐容一日摂取量)」を御参照ください。

※6 「UF(不確実係数)」を御参照ください。

TDI(耐容一日摂取量)= NOAEL(無毒性量)
UFs(不確実係数積)

「TDI(耐容一日摂取量)=NOAEL(無毒性量)/UFs(不確実係数積)」を示したグラフ

HQが1と同等か大きい、すなわちEHEがTDIを超える場合は「リスクの懸念あり」と評価します。一方、HQが1より小さい、すなわちEHE がTDIを超えない場合は「リスクの懸念なし」と評価します。

HQ(ハザード比)を用いたリスク評価
ハザード比)≧ 1の場合 リスクの懸念あり
ハザード比)< 1の場合 リスクの懸念なし

MOE(Margin of Exposure:暴露マージン)を用いた評価方法

MOE(暴露マージン)は、NOAEL(無毒性量)とEHE(ヒトへの推定暴露量)の大小を比べたもので、以下の式で表されます。

MOE(暴露マージン)= NOAEL(無毒性量)
EHE(ヒトへの推定暴露量)

NOAELは動物試験などで求められたものであるため、MOEの値にはヒトに対する無毒性量(不確実性の考慮)が含まれていません。したがって、その値をUFs(不確実係数積)と比較し、それと同等か小さい場合は「リスクの懸念あり」、大きい場合は「リスクの懸念なし」と評価します。このとき、UFsが大きいほど、リスク評価結果の信頼性が低いといえます。

MOE(暴露マージン)を用いたリスク評価
MOE(暴露マージン)≦ UFs(不確実係数積)の場合 リスクの懸念あり
(MOE(暴露マージン)> UFs(不確実係数積)の場合 リスクの懸念なし

HQ(ハザード比)とMOE(暴露マージン)の手法の違い

HQは、その値がUFsを含んでいるため、1より大きいかどうかがリスクの判断基準となるのに対し、MOEは、UFsを含んでいないため、UFsより大きいかどうかがリスクの判断基準となります。

HQによる評価の利点は、単純にHQが1より大きいか小さいかということにより、リスクの有無が明確化できる点です。

一方、MOEによる評価は、UFsをMOEに含めていないため、UFsを比較値として用いることにより、そのリスク評価の不確実さが数値化されます。そのため、MOEは、もし有害性の可能性ありと判断された場合でも、情報が少ないためUFsが大きくなったことによるのか、ある程度信頼できる情報のある中で判断された結果なのか、その信頼性の違いが明確になるという利点があります。

上の説明は、ヒトの健康への影響についてのものです。環境中の生物への影響については、NOAEL(無毒性量)の代わりに NOEC(No Observed Effect Concentration:無影響濃度)、ヒトの暴露量をEHE(ヒトへの推定暴露量)の代わりに EEC(Estimated Environmental Concentration:推定環境濃度)が用いられています。

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