政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 610-39-9
名称 3,4-ジニトロトルエン
物質ID R02-B-015-MHLW, MOE
分類実施年度 令和2年度(2020年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含むが、UNRTDGにおいてUN 3454、クラス6.1に分類されていることから、優先評価項目の爆発物には該当しないため、区分に該当しない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、可燃性 (ICSC (2005)) という情報がある。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含むが、UNRTDGにおいてUN 3454、クラス6.1に分類されていることから、優先評価項目である自己反応性化学品には該当しないと考えられるため、タイプGとした。
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - UNRTDGにおいてUN 3454、クラス6.1に分類されていることから、優先評価項目である自然発火性物質には該当しないため、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいないため、区分に該当しない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (N) と結合しているが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない
-
-
- - 爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含むが、純品が爆発物の区分に該当しないので、鈍性化爆発物も区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
【本物質の健康有害性について、分類結果が「分類できない」の場合、ジニトロトルエン (異性体混合物) (CAS番号 25321-14-6) も参照のこと。ジニトロトルエン (異性体混合物) は、健康有害性への影響を及ぼす異性体の全てを特定できていないが、情報が参考になると考えられる。】


【分類根拠】
(1)~(3) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 807 mg/kg (MOE初期評価第5巻 (2006)、GESTIS (Access on April 2020)、HSDB (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 雄: 907 mg/kg、雌: 807 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994))
(3) ラットのLD50: 1,072 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994))
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。新たなデータが得られたことにより、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験 (ドレイズ法) で軽度の刺激性を示す (厚労省リスク評価書 (2009)、MAK(DFG) vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験 (改変ドレイズ法) で軽度の刺激性を示す (GESTIS (Access on April 2020))。
(3) 本物質は皮膚刺激物である (HSDB (Access on April 2020))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。新たなデータが得られたことにより、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ法) で本物質を含むジニトロトルエンの6つの異性体は全てウサギの眼に対する刺激性を示さなかった (厚労省リスク評価書 (2009)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) 本物質はウサギの眼に対して刺激性を示さない (GESTIS (Access on April 2020))。

4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。旧分類が2,6-DNTの結果を基に分類したものと考えられ、本物質の陰性データが確認されたため、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質のモルモット (10 匹、性別不明) を用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で陰性と報告されている (厚労省リスク評価書 (2009)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、GESTIS (Access on April 2020))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、in vivoのデータがなく分類できない。

【根拠データ】
(1) in vivoのデータはない。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性の報告がある (ATSDR (2016))。

【参考データ等】
(3) EU CLP分類でMuta. 2に分類されている
6 発がん性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) の既存分類結果があるが根拠が不明であり、これ以外の発がん性に関するデータがなく分類できない。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、EU CLPでCarc.1B (EU CLP分類 (Access on April 2020)) に分類されている。

7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1) 種々のDNT異性体 (2,3-DNT、2,4-DNT、2,5-DNT、2,6-DNT、本物質、3,5-DNT) について雄ラットを用いた14日間反復投与毒性試験が実施された。その結果、2,4-DNT、2,6-DNT及び3,5-DNTで雄性生殖器に影響 (精巣の矮小、精巣の重量減少、精細管の変性及び精巣における多核巨細胞形成等) がみられた。 一方、2,3-DNT、2,5-DNT及び本物質では、雄性生殖器に影響 (精巣及び精巣上体の重量及び病理組織学的影響等) はみられていない (ATSDR (2016))。
(2) EU CLP分類ではRepr. 2に分類されている (EU CLP分類 (Access on April 2020)) 。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2 (血液系)、区分3 (麻酔作用)



警告
H371
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
本物質ばく露によるヒトの報告はない。(2)、(3) より、ジニトロトルエンの急性毒性として血液毒性、中枢神経抑制が知られており、本物質の情報 (4) でも関連する所見がみられていることから、区分2 (血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。情報源の情報を見直し、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ジニトロトルエンの一般的な組成は、2,4-DNTが約75%、2,6-DNTが約20%である (NITE初期リスク評価書 (2005))。
(2) ジニトロトルエンの情報として、ヒトでの急性中毒はメトヘモグロビン形成によって生じ、チアノーゼ、頭痛、過敏症、めまい、虚弱、吐き気、嘔吐、呼吸困難、嗜眠、意識喪失を引き起こし、死に至る可能性もあるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。
(3) ジニトロトルエンの情報として、実験動物での急性毒性には、中枢神経抑制、呼吸抑制、筋肉協調運動障害、チアノーゼが含まれるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。
(4) 本物質の情報として、ラット及びマウスを用いた経口投与による急性毒性試験において、呼吸中枢の抑制を含む中枢神経抑制、協調運動障害、筋肉協調の喪失、皮膚の青変がみられた。ラットの経口LD50は810~1,070 mg/kg、マウスの経口LD50は750~1,410 mg/kgである (GESTIS (Access on May 2020)。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (血液系)、区分2 (神経系)


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分1 (血液系)、区分2 (神経系) とした。旧分類の分類根拠は詳細が不明であるため採用せず、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ジニトロトルエンの一般的な組成は、2,4-DNTが約75%、2,6-DNTが約20%である (NITE初期リスク評価書 (2005))。
(2) 職業ばく露研究及び動物試験の結果から、ジニトロトルエンにより引き起こされる最も敏感な標的毒性は血液毒性 (メトヘモグロビン血症、貧血、及び代償性造血) である (ATSDR (2016))。
(3) 本物質の情報として、ラットに本物質を14日間経口投与した試験で、57 mg/kg/day (90日換算: 9 mg/kg/day、区分1の範囲) の雄で脾臓の髄外造血、リンパ球の過形成、227 mg/kg/day (90日換算: 35 mg/kg/day、区分2の範囲) の雄で体重減少、顔の痙攣、活動低下、凝視、心筋の線維化・炎症・壊死、腎臓における近位尿細管の変性、尿細管の好塩基化、リンパ球浸潤がみられたとの報告がある (ATSDR (2016))。

【参考データ等】
(4) 入手可能なヒトの情報は、適切な対照群が含まれておらず、ばく露濃度も報告されていないため、限定的な証拠である (ATSDR (2016))。
10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(クロレラ属)96時間EC50 = 0.74 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.32 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)から、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、藻類(クロレラ属)の96時間EC50 = 0.74 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)から、区分1となる。
以上の結果を比較し、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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