NITE統合版 政府によるGHS分類結果


一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 100-42-5
名称 スチレン
物質ID m-nite-100-42-5_v2
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類ガイダンス等(外部リンク) ガイダンス一覧へ
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書へ
FAQ(よくある問い合わせ) よくある問い合わせへ
情報源のリスト(Excelファイル) 情報源のリストへ
用語のリスト(Excelファイル) 用語のリストへ
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortalへ

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 引火性液体 区分3


警告
H226 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点31℃ (closed cup) (HSDB (Access on August 2020)) に基づいて区分3とした。 なお、UNRTDGにおいて、安定剤入りのものがUN 2055、クラス 3、PGⅢに分類されている。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- - 分子内に自己反応性に関連する原子団として不飽和結合を含むが、安定剤入りのものは、UNRTDGにおいてUN 2055、クラス3、PG Ⅲに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しないと考えられるため、タイプGとした。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点が490℃ (HSDB (Access on August 2020)) との情報より、常温で発火しないと考えられるため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験法が確立していないため、分類できない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 酸素、塩素及びフッ素を含まない有機化合物であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。 令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(4) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 2,650 mg/kg (MOE初期評価第13巻 (2015)、GESTIS (Access on August 2020))
(2) ラットのLD50: 2,650~5,000 mg/kg (NTP CERHR (2006))
(3) ラットのLD50: 5,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2020)、JECFA FAS 19 (1984)、NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010)、EHC 26 (1983)、IPCS PIM 509 (1996)、US AEGL (2008)、HSDB (Access on August 2020)、Patty (6th, 2012))
(4) ラットのLD50: 5,500 mg/kg (JECFA FAS 19 (1984))
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(8) より、区分4とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (8,422 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 2,700 ppm (US AEGL (2008))
(2) ラットのLC50 (4時間): 2,761 ppm (US AEGL (2008))
(3) ラットのLC50 (4時間): 2,770 ppm (ACGIH (7th, 2020)、MOE初期評価第13巻 (2015)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1999)、NTP CERHR (2006))
(4) ラットのLC50 (4時間): 2,800 ppm (NITE初期リスク評価書 (2007))
(5) ラットのLC50 (4時間): 12 mg/L (2,817 ppm) (GESTIS (Access on August 2020))
(6) ラットのLC50 (4時間): 6,000 ppm (Patty (6th, 2012))
(7) ラットのLC50 (4時間): 雌: 6,310 ppm、雄: 6,480 ppm (US AEGL (2008))
(8) ラットのLC50 (4時間): 6,410 ppm (US AEGL (2008))
(9) 本物質の蒸気圧: 6.40 mmHg (25℃) (HSDB (Access on August 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 8,422 ppm)
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) ヒトにおいて本物質のばく露は眼及び皮膚に対する刺激性を示す (JECFA FAS 19 (1984))。
(2) 本物質は眼、皮膚、気道を刺激し、眼に入ったり、皮膚に付くと発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第13巻 (2015)、HSDB (Access on August 2020))。
(3) ウサギの皮膚に本物質を4週間 (20,000 mg/kg) 適用した結果、変性を伴う著しい刺激性がみられている (ATSDR (2010))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
【分類根拠】
(1~(6) より、区分2Aとした。

【根拠データ】
(1) 本物質のばく露により、作業者 (35人) において急性の眼刺激性がみられ、流涙や視界のぼやけの症状があったことが報告されている (CLH Report (2011))。
(2) ヒトにおいて本物質のばく露は眼及び皮膚に対する刺激性を示す (JECFA FAS 19 (1984))。
(3) 本物質は眼、咽喉、鼻を刺激し眼に対する影響として粘膜刺激、結膜炎がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(4) 本物質は眼、皮膚、気道を刺激し、眼に入ったり、皮膚に付くと発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第13巻 (2015))。
(5) ウサギにおいて、中等度の結膜刺激性と一過性の角膜傷害がみられ、症状は適用7日後まで持続した (ATSDR (2010)、HSDB (Access on August 2020))。
(6) 本物質のガスが眼及び気道に対して刺激性を有することは多くの人ボランティアによる研究で確認されている (US AEGL (2008))。
ウサギ (4例) を用いた眼刺激性試験において、角膜及び虹彩で個体平均 1以上、結膜発赤及び浮腫で個体平均 2以上を示す個体はみられなかったが、1/4例では結膜発赤が7日後まで持続した (ECETOC TR48 (2) (1998))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陽性、陰性、ラット骨髄細胞及び末梢血リンパ球の小核試験、チャイニーズハムスター骨髄細胞の小核試験で陰性、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、ラット骨髄細胞の染色体異常試験で陽性、陰性、チャイニーズハムスター骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、マウス骨髄細胞及びラット末梢血リンパ球の姉妹染色分体交換試験で陽性、マウス (末梢血リンパ球、肝臓、腎臓、骨髄) を用いたコメットアッセイで陽性、ラット (末梢血リンパ球) を用いたコメットアッセイで陰性、マウス肝臓の不定期DNA合成試験で陰性の報告がある(NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010)、IARC 121 (2019)、IARC 60 (1994)、IARC 82 (2002))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性、陰性の報告がある(NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第13巻 (2015)、IARC 121 (2019)、IARC 60 (1994)、IARC 82 (2002)、ATSDR (2010))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(9) より、最新のIARCの分類に基づき、区分1Bとした。新たな情報源を用いて検討し、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 121 (2019))、産衛学会で第2群B (産業衛生学雑誌許容濃度等の勧告 (1999年提案))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2020))、NTPでR (NTP RoC (14th, 2016))、MAK (DFG) でカテゴリー5 (MAK (DFG) (2003)) に分類されている。
(2) ヒトでの発がんに関する多くの研究があり、スチレンばく露により白血病及びリンパ腫のリスク増加が認められ、特に急性骨髄性白血病 (AML) 及びT細胞リンパ腫のリスク増加がみられている。しかし、リスク増加を示す結果は概して過剰は小さく、精度が低い場合があった。全体として、疫学研究報告からスチレンへのばく露がヒトにリンパ造血系悪性腫瘍を引き起こすという幾つかの信頼できる証拠が得られるが、交絡因子、バイアス (偏り)、先入観を排除することができないことから、IARCはヒトでのスチレンばく露による発がん性の証拠は限られている (limited evidence) としている (IARC 121 (2019))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を78週間強制経口投与した発がん性試験において、雄で気管支肺胞腺腫又は肺がんの合計の発生率の有意な増加、雌で肝細胞腺腫の発生率の有意な増加傾向がみられた (IARC 121 (2019))。
(4) マウスに妊娠17日から本物質を強制経口投与し、その後雌雄の児に離乳後16週から120週間本物質を強制経口投与した2件の発がん性試験では、一方の試験で雌の児で肺がんの発生率の有意な増加、雌雄の児で肺腺腫又はがんの合計の発生率の有意な増加が認められた。もう一方の試験では発がん性はみられなかった (IARC 121 (2019))。
(5) 雌雄のマウスに本物質を98~104週間吸入ばく露した発がん性試験において、雌雄で気管支肺胞腺腫及び気管支肺胞腺腫又はがんの合計の発生率の有意な増加、雌で肺胞/細気管支のがんの発生頻度の有意な増加が認められた (IARC 121 (2019))。さらに、雄のマウスに本物質を104週間吸入ばく露した発がん性試験では、気管支肺胞がんの発生率の有意な増加がみられた (IARC 121 (2019))。
(6) 雄のマウスに本物質を104週間吸入ばく露した3件の発がん性試験 (うち2件は遺伝子組み換えマウス) 及び雌マウスに本物質を腹腔内投与した発がん性試験では、発がん性は認められなかった (IARC 121 (2019))。
(7) 雌雄のラットに本物質を52週間又は104週間吸入ばく露した2件の発がん性試験では、52週間ばく露した雌で乳腺の悪性腫瘍及び良性又は悪性腫瘍の合計の発生率の有意な増加がみられた。一方、104週間ばく露した雌では乳腺腺がんの発生率の有意な減少がみられた (IARC 121 (2019))。
(8) 雌雄のラットに本物質を投与した複数の発がん性試験 (強制経口投与3件、飲水投与1件、腹腔内投与1件、皮下投与1件、妊娠ラット及びその後雌雄の児に本物質を強制経口投与した1件) では、腫瘍発生率の有意な増加は認められなかった (IARC 121 (2019))。
(9) IARCは、本物質をグループ2Aに分類することを支持するメカニズム情報として、本物質が以下の①~④を示す強力な証拠があるとしている。①動物及びヒトで求電子性のスチレン-7,8-オキシドに代謝活性化される、②遺伝毒性物質でありそのメカニズムがヒトでも機能する可能性がある、③細胞増殖を変化させる、④受容体介在性の作用に影響を及ぼし、これがヒトでも起こる (IARC 121 (2019))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(6) より、ヒトでの影響は証拠が十分ではなく、実験動物については、繁殖能に対する影響はみられていないが、 児への神経行動影響、奇形等の影響がみられていることから区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) スチレン、ビスコースレーヨン製造工場に勤務した女性作業者では自然流産の比率の上昇がみられたとの報告があるが、その後の研究では自然流産の増加は認められなかったとの報告もある (IARC 82 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。
(2) 職業的にスチレンにばく露された女性の集団では、月経周期の乱れ、続発性無月経、出産児の誕生時体重の低値 (4%、統計的有意差なし) などがみられたとする報告があるが、女性作業者はスチレン以外にも同時に多くの溶媒にばく露されていたことが判明している (IARC 82 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。
(3) ラットを用いた吸入ばく露による2世代生殖毒性試験及び発達神経毒性試験において、繁殖能に対する影響も次世代発達神経毒性も認められないと結論している (ただし、F2 世代の体重や脳の長径には有意な減少が生じており、F0 世代の雌で性周期に有意な短縮も生じている) (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2015)、MOE初期評価第13巻 (2015))。
(4) 雌ラットの妊娠7~21日に吸入ばく露した発生毒性試験において、出生時体重の減少が認められたほか、児への神経行動影響として、開眼、歯牙萌出、聴覚、驚愕反射、立ち直り反射など成長の遅れや、神経機能と平衡機能の発達の遅れが認められ、これらの行動毒性と5-hydroxytryptamine (5-HT) などの神経伝達物質の脳内濃度差が符合していたとの報告がある (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2015))。
(5) 雌マウスの妊娠6~16日に吸入ばく露した発生毒性試験において、250 ppmで吸収胎児、奇形、胎児死亡がみられたとの報告がある (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2015))。
(6) 産衛学会許容濃度の提案理由 (2015) では、「ヒトでは、不妊や妊娠出産異常のリスク増加と本物質ばく露について、ばく露濃度に対応したデータは得られておらず、またこれらの生殖への影響は交絡要因が非常に多く、ヒトでの影響は証拠が十分とはいえないが、動物実験においてはその次世代に対する影響が多くの実験により示されていることから、本物質を生殖毒性第2群に分類する」としている (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2015))。

【参考データ等】
(7) EU CLP分類でRepr.2に分類されている (EU CLP分類 (Access on October. 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用)



危険
警告
H370
H335
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(10) より、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。肝臓への影響はマウスでの報告1件のみであり、ヒトを含めて他の動物種ではより高濃度のばく露でもみられていないこと、また、詳細が不明であることから、信頼性が乏しいと考えられたため採用しなかった。

【根拠データ】
(1) ボランティアに本物質350 ppmを30分間、380 ppmを1時間、50 ppmを1.5時間、150 ppmを1時間吸入ばく露した結果、単純反応時間の増加と協調運動の減少がみられた (ACGIH (7th, 2020))。
(2) ヒトへの急性ばく露で、脳萎縮、小脳の神経異常、神経炎、反射異常の症例が報告された (ACGIH (7th, 2020))。
(3) 本物質は眼、皮膚、気道を刺激し、液体を飲み込むと、肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある。中枢神経に影響を与えることがある。吸入すると眩暈、嗜眠、頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、意識喪失を生じ、経口摂取すると吐き気、嘔吐を生じる (MOE初期評価第13巻 (2015))。
(4) 男性ボランティア2人に本物質800 ppmを4時間ばく露した結果、ばく露直後に眼、喉の刺激、鼻汁分泌亢進がみられ、著明で持続性の金属味、気力低下、眠気、バランス感覚の不調を生じた。ばく露終了後は軽度の筋低下と不安定さ、無気力、抑うつがみられた (MOE初期評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010))。
(5) 本物質はめまい、頭痛、不眠、疲労感、錯乱、集中力の低下、平衡感覚障害、眼振、言語習得障害、論理記憶障害等の中枢神経障害、視覚、聴覚障害、眼及び咽喉並びに鼻への刺激性がみられ、鼻では鼻汁がみられる (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(6) 本物質100 mL/m3を7時間吸入ばく露されたボランティア6人のうち3人で眼と喉に刺激がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(7) 本物質376 ppmをばく露されたヒトでは、目と鼻の刺激がみられた (IPCS PIM 509 (1996))。
(8) 本物質による頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、視覚障害、気道障害又は末梢神経障害は、労働基準法施行規則別表第一の二に掲げる業務上の疾病として定められている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(9) ラット及びモルモットの吸入ばく露試験 (ばく露濃度不明) において、10,000 ppmで数分以内で昏睡状態となり、30~60分のばく露後に死亡した (ACGIH (7th, 2020))。
(10) ラットの4時間吸入ばく露試験において、2,983 ppm以上で眼や呼吸器に刺激性があり、閉眼、目や鼻の分泌、唾液、呼吸困難などの症状がみられた。中枢神経系の障害の徴候としては、よろめきやストーキング歩行 (stalking gait)、振戦、横臥、昏睡がみられた (US AEGL (2008))。

【参考データ等】
(11) マウスの6時間吸入ばく露試験において、500 ppm (4時間換算値: 612 ppm、区分1の範囲) で肝臓の重度の小葉中心性凝固壊死を生じた (ACGIH (7th, 2020))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (中枢神経系、末梢神経系、聴覚器、視覚器、呼吸器、肝臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、ヒトにおいて神経系、聴力、色覚、肝臓への影響が報告されており、(4)~(8) より、実験動物においても区分1の範囲で呼吸器、区分2の範囲で聴覚、肝臓への影響がみられていることから、区分1 (中枢及び末梢神経系、感覚器 (視覚・聴覚)、呼吸器、肝臓) とした。旧分類で標的臓器とされた血液系については、最新の評価書 (ACGIH (7th, 2020)) において根拠を確認できる情報が収載されていないことから、標的臓器から除外し、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 長期間のスチレンばく露を受けると、皮膚及び粘膜、中枢・末梢神経系及び肝への影響が特に重要である。スチレンに職業的にばく露された場合の主な人への影響は色覚障害の他、末梢及び自律神経系障害、神経行動学的な影響、脳波異常、短期記憶障害などが報告されている (産衛学会生物学的許容値提案理由書 (2007))。
(2) スチレンばく露により潜在的な肝障害があることが示唆される。50 ppm以下のスチレンばく露は、肝臓のトランスアミナーゼ濃度の緩やかな上昇と関連し、また、抱合型ビリルビンの肝臓でのクリアランス低下と関連する。この変化は穏やかな胆汁うっ帯にも関連していると思われる。これらの知見は低濃度スチレンばく露によって、サブクリニカルな損傷と関係していることを示している (産衛学会生物学的許容値提案理由書 (2007))。
(3) ヒトにおいて、色覚異常や高周波難聴を含む中枢神経系に対する影響がみられたとの複数の報告がある (ACGIH (7th, 2020)、MOE初期評価第13巻 (2015))。
(4) ラットに4週間 (12時間/日、5日/週) 吸入ばく露した結果、600 ppm (2.6 mg/L (ガイダンス値換算: 0.6 mg/L、区分2の範囲)) で聴力閾値の上昇、内耳のコルチ器官で重度の外有毛細胞の消失がみられた (MOE初期評価第13巻 (2015))。
(5) ラットに8週間 (4時間/日、7日/週) 吸入ばく露した結果、30 ppm (0.13 mg/L (ガイダンス値換算: 0.05 mg/L、区分1の範囲) 以上で鼻粘膜で軽度の分泌亢進と高電子密度物質の増加が、800 ppm (3.4 mg/L (ガイダンス値換算: 1.4 mg/L、区分2超)) で鼻腔及び気管で上皮細胞の空胞化、核濃縮、剥離がみられた (MOE初期評価第13巻 (2015))。
(6) マウスに13週間 (6時間/日、5日/週) 吸入ばく露した結果、50 ppm (0.2 mg/L (ガイダンス値換算: 0.1 mg/L、区分1の範囲)) 以上の雌雄で細気管支上皮細胞の好酸性減少、嗅上皮の萎縮、上皮内の嚢胞、嗅神経線維の萎縮、ボーマン腺の拡張や肥厚、過形成、呼吸上皮及び移行上皮の好酸性封入が、100 ppm (0.4 mg/L (ガイダンス値換算: 0.3 mg/L、区分2の範囲)) 以上の雌雄で細気管支で非線毛細胞の巣状叢生、嗅上皮の呼吸上皮化生、ボーマン腺内腔の炎症細胞浸潤等、雌で細気管支に限局性の上皮増生が、150 ppm (0.6 mg/L (ガイダンス値換算: 0.4 mg/L、区分2の範囲)) 以上の雌で肝臓における炎症や線維化を伴った小葉中心性の鉄貪食細胞の凝集が、200 ppm (0.9 mg/L (ガイダンス値換算: 0.7 mg/L、区分2の範囲)) の雌雄で鉄貪食細胞を伴った巣状の肝細胞の消失、雄で肝臓における炎症や線維化を伴った小葉中心性の鉄貪食細胞の凝集、雌で第1週目に体温低下、嗜眠、呼吸数減少がみられ、2 匹が死亡し、死亡例で小葉中心性の肝細胞壊死と類洞毛細血管のうっ血がみられた (MOE初期評価第13巻 (2015))。
(7) ラットに104週間吸入ばく露した結果、50 ppm (0.2 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌雄で鼻腔粘膜上皮の萎縮や変性性変化、ボーマン腺の顕在化、雄でボーマン腺の萎縮や拡張、肥厚、過形成等が、200 ppm (0.9 mg/L、区分2の範囲) 以上の雌でボーマン腺の萎縮や拡張、肥厚、過形成等がみられた (ACGIH (7th, 2020)、MOE初期評価第13巻 (2015))。
(8) 雄マウスに104週間、雌マウスに98週間吸入ばく露した結果、20 ppm (0.09 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌雄で鼻腔の嗅上皮と、その下のボーマン腺で呼吸上皮化生、拡張、上皮過形成、好酸性物質、コレステロール結晶、肺における細気管支上皮過形成、終末細気管支のクララ細胞で好酸性の減少、肺胞管に及ぶ細気管支で上皮過形成、細気管支/肺胞過形成が、40 ppm (0.17 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌雄: 嗅神経線維の萎縮がみられた (ACGIH (7th, 2020)、MOE初期評価第13巻 (2015))。

【参考データ等】
(9) スチレンによる頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、視覚障害、気道障害又は末梢神経障害は、労働基準法施行規則別表第一の二に掲げる業務上の疾病として定められている (労働省告示第三十三号 (1996))。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 誤えん有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)炭化水素である。
(2)本物質を飲み込むと、肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある (MOE初期評価第13巻 (2015))。
(2)動粘性率が25℃で0.772 mm2/s(25℃での粘性率0.696 mPa・s(HSDB (Access on August 2020)) と密度0.9016 g/cm3 (HSDB (Access on August 2020)) から算出)であることから、40℃の動粘性率が14 mm2/s以下である。
令和2年度(2020年度) ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)96時間EC50 = 0.72 mg/L(CEPA, 2003、環境省リスク評価第13巻, 2015)であることから、区分1とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(14日間でのBOD分解度=100%、GC分解度=100%(通産省公報, 1979))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の96時間NOEC = 0.063 mg/L(環境省リスク評価第13巻, 2015)であることから、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(ニジマス)の96時間LC50 = 2.5 mg/L(CEPA, 2003)であるが、急速分解性があり、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 2.95(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外となる。
以上の結果を比較し、区分2とした。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - データなし 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

GHS関連情報トップページに戻る