NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 110-85-0
名称 ピペラジン
物質ID m-nite-110-85-0_v1
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - 可燃性という情報 (ICSC (2003)) があるが、データがなく分類できない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団及び自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点が320℃ (ICSC (2003)) であり、常温で発火しないと考えられる。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - UNRTDG クラス8に分類され、多くの金属を侵すとの情報 (ICSC (2003)) もあるが、 データがなく分類できない。なお本物質は、軽金属類、銅及び銅合金は腐食作用を受けるが、鋼、ステンレス鋼、ガラス、セラミック及び多くの合成物質は耐久性がある (Hommel (1997)) との情報がある。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
17 鈍性化爆発物 -
-
-
- - - - -

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - ラットのLD50値として、1,900 mg/kg (DFGOT vol. 9 (1998))、> 1,900 mg/kg (ACGIH (7th, 2014))、
2,600 mg/kg (EU-RAR (2005))、2,830 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))、2,830 mg/kg (DFGOT vol. 9 (1998))、2,050~3,000mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との6件の報告がある。1件が区分4に、1件が分類できなく、4件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当するので、最も多くのデータが該当する区分外 (国連分類基準の区分5) とした。優先度の高い新たな情報 (ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)) を追加し、区分を見直した。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(経皮) 区分4


警告
H312 P302+P352
P362+P364
P280
P312
P321
P501
ウサギのLD50値として、1,590 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))、1,590 (970~2590) mg/kg (DFGOT vol. 9 (1998))、4,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (2005)) との3件の報告がある。2件が区分4に、1件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当するので、最も多くのデータが該当する区分4とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体である。なお、ラットに飽和蒸気を8時間吸入 (4時間換算値:614 ppm) した結果、全例が生存したとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 9 (1998)) がある。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
マウスのLC50値 (2時間) として、5.4 mg/L (4時間換算値:2.7 mg/L) との報告 (DFGOT vol. 9 (1998)) に基づき、区分4とした。被験物質が固体であるため、粉じんの基準値を適用した。新たな情報を追加し、区分を見直した。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG404) において、本物質 (50%水溶液) を4時間、半閉塞適用した結果、重度の紅斑と壊死がみられたとの報告 (EU-RAR (2005)) がある。また、ラット又はウサギを用いた別の皮膚刺激性試験において本物質の4時間適用により適用部位に壊死がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 9 (1998))。以上から区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Corr. 1B H314」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質 (15%) の適用により 重度の角膜混濁、虹彩炎、 眼瞼の出血及び浮腫がみられたとの報告や (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 9 (1998))、本物質の1~5%水溶液の適用により角膜の壊死がみられ、刺激指数は9 (最大値10) で、壊死は角膜の60~90%におよんでいたとの報告がある (EU-RAR (2005))。以上より区分1とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
4 呼吸器感作性 区分1


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
本物質にばく露されたヒトにおいて、喘息が複数報告されており (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014)、DFGOT vol. 12 (1999))、日本産業衛生学会で気道感作性物質の第2群に指定されている。また、EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014) 及びDFGOT vol. 12 (1999) は本物質を気道感作性物質と結論している (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014)、DFGOT vol. 12 (1999))。以上より区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。

平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
職業ばく露されたヒトへのパッチテストにおいて、本物質に対する陽性反応が複数報告されている (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014))。また、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において陽性の報告 (ACGIH (7th, 2014)) や、マウスを用いたLLNA試験において弱い陽性の報告 (EU-RAR (2005)) がある。EU-RAR (2005) 及びACGIH (7th, 2014) は、ヒトに関する報告及び動物の報告に基づいて、本物質を皮膚感作性物質としている。以上から、区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - In vivoでは、ラット肝臓のDNA鎖切断試験で陰性、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性 (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 9 (1998)、EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on November 2015)、HSDB (Access on November 2015)) であるため、ガイダンスに従い分類できないとした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
6 発がん性 分類できない
-
-
- - スウェーデンの化学工場で本物質を含む多くの化学物質 (エチレンオキシド、エピクロロヒドリン、ウレタンなど) にばく露された作業者を対象とした後ろ向きコホート研究で、ばく露群では悪性リンパ腫によるがん罹病率の増加が示されたが、交絡因子が多く複雑で本物質とがん死亡率との関連性について結論を下せなかったとの記述、及びコホート内症例対象研究では特定の物質との相関は認められなかったとの記述がある (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014))。
実験動物では、MRC系ラットに本物質を250 ppmで75週間飲水投与した発がん性試験ではいずれの臓器にも腫瘍発生はみられなかった。また、ピペラジン250 ppmと亜硝酸ナトリウム500 ppmとの併用投与では雌に下垂体腺腫の増加傾向が窺われたが、有意差はなく背景データの範囲内であり、有意な腫瘍発生の増加はみられなかった (EU-RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th, 2012))。一方、マウスではSwiss系マウスに本物質を6,250 ppm (約938 mg/kg/day) で28週間混餌投与し、12週間放置後の40週後に屠殺した結果、肺の腺腫の頻度に有意な増加はみられなかったが、同時に1 g/Lの亜硝酸ナトリウムを飲水により併用投与した場合には、肺腺腫の有意な増加 (64% vs 14% 対照群) がみられた (EU-RAR (2005)、DFGOT vol. 9 (1998)、NITE初期リスク評価書 (2005))。A系マウスを用いた同様の発がん性試験においても、ピペラジン単独混餌投与群では肺腺腫の増加はみられなかったが、ピペラジンと亜硝酸ナトリウム飲水投与を併用した場合には肺の腺腫がみられた (EU-RAR (2005)、DFGOT vol. 9 (1998)、NITE初期リスク評価書 (2005))。マウスの試験ではいずれも肺以外の部位に腫瘍発生はなかった (EU-RAR (2005)、DFGOT vol. 9 (1998)、NITE初期リスク評価書 (2005))。国際分類としては、ACGIHがピペラジン及びその塩に対して「A4」に分類しているだけである (ACGIH (7th, 2014))。
以上、実験動物での知見より、本物質自体は腫瘍誘発性を欠くと考えられるが、亜硝酸塩との併用ではニトロソピペラジンが生成し、マウスで腫瘍発生を示唆する知見がある。しかしながら、モノニトロソピペラジンをMRC系ラットに飲水投与した試験では濃度依存的に鼻腔腫瘍の発生がみられた (EU-RAR (2005)) との報告に対し、同系統 (MRC) ラットを用いたピペラジン、亜硝酸ナトリウム併用投与 (上述のラットの試験) では鼻腔、肺いずれの部位にも腫瘍発生は認められていない。すなわち、本物質と亜硝酸塩との併用による腫瘍誘発性について、現時点で明瞭な結論は下せないと考えられる。したがって、本物質の単独影響として本項はACGIHの分類結果を根拠に分類できないとした。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
7 生殖毒性 区分2


警告
H361 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
本物質の生殖毒性影響は本物質の塩を用いたデータで評価されている。すなわち、ヒトではアジピン酸ピペラジンを約 38 mg/kg/dayの用量で7日間処方で2回 (推定妊娠41~47日及び同55~61日) 経口投与された妊婦 (以前に健常な子供を2回出産) から生まれた女児に両手及び片足の奇形がみられたとの記述があるが、この報告のみからピペラジン投与との関連性を評価するのは困難であるとされている (EU-RAR (2005))。
一方、実験動物ではピペラジン二塩酸塩をラットに経口経路 (混餌) で投与した2世代生殖毒性試験において、約300 mg/kg/day (ピペラジン換算用量: 以下同様) 以上でF0雄及びF1雌雄親動物に体重増加抑制、F1雌親動物に摂餌量低下、同625 mg/kg/dayでF0雌に体重増加抑制がみられた (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014))。児動物では300 mg/kg/day以上でF1及びF2児に生時平均同腹児数の減少、着床部位数の減少 (F1)、包皮分離の遅延 (F1雄)、625 mg/kg/dayでは加えて生時平均胎児重量の減少 (F1、F2)、膣開口日齢の遅延 (F1雌) がみられ (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014))、親動物に一般毒性影響 (体重増加抑制、摂餌量低下) がみられる用量で、児動物の発生・発達への有害影響が認められた。一方、発生毒性影響としては、リン酸ピペラジンを妊娠ラット又は妊娠ウサギに対し、それぞれの器官形成期 (ラット: 妊娠6~15日、ウサギ: 妊娠6~18日) に強制経口投与した発生毒性試験において、ラットの試験ではピペラジン換算で2,100 mg/kg/dayの高用量で母動物に体重増加抑制、摂餌量低下、流涎、嗜眠がみられ、胎児に胎児重量のごく軽度の低値がみられたのみであった (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012))。これに対し、ウサギの試験では母動物毒性 (瀕死状態での切迫屠殺2/16例、体重低下、摂餌量減少、食欲低下、流涎、神経質、糞量減少、胃・十二指腸潰瘍など) が明らかな500 mg/kg/day で胎児に着床後胚死亡の増加 (4腹で全胚吸収)、胎児重量の低値、及び奇形 (口蓋裂、臍ヘルニアなど) の発生頻度増加がみられた (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012))。既存分類としては、EU-CLP分類で 「Repr. 2」 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on November 2015))。
以上、本物質の塩を用いたラット2世代生殖毒性試験、並びに妊娠動物 (ラット、ウサギ) を用いた発生毒性試験において、いずれも親動物又は妊娠母動物に毒性が発現する用量で次世代への有害影響がみられており、ガイダンスに従い本項は区分2とした。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系)、区分3 (気道刺激性)



危険
警告
H370
H335
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
りん酸ピペラジンは古くからぎょう虫、回虫の駆虫薬として、ヒト及び動物に用いられており、その作用は虫体筋を収縮するアセチルコリンの作用を遮断し虫体の運動を麻痺させるものである (NITE初期リスク評価書 (2005))。ヒトが本物質あるいはその塩を駆虫薬として服用した例で、頭痛、下痢、じん麻疹、嘔吐、協調運動失調、歩行異常、振戦、筋萎縮、間代性けいれん、嗜眠、血小板減少、中毒性肝炎、筋力低下が認められた (NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on November 2015))。実験動物では、ラットの吸入ばく露で気道刺激性が報告されている (PATTY (6th, 2012))。
以上より、本物質は気道刺激性のほか、神経系への影響があり、区分1 (神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。
ヒト事例で認められた中毒性肝炎については詳細不明であり、また1情報源での記載のため採用しなかった。
旧分類の呼吸器影響は、気道刺激性以外の所見はなかったため、採用しなかった。また、神経系については、List 1の情報源でヒトへの影響が認められており、旧分類の区分2から区分1に変更した。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
ヒトでは4歳の男児がピペラジン6水和物を100 mg/kg (ピペラジン換算: 44 mg/kg) で3日間服用後に無力、歩行障害、不均衡、重度の筋肉虚弱、脳波の変化をきたしたとの報告の後、ピペラジンを投与した小児の症例を調べた結果、ピペラジン換算で 35 mg/kg/dayを5日間投与した11例中10例に脳波の異常 (持続性の双極性スパイク及び多発性スパイクなど) が検出された (EU-RAR (2005)、PATTY (6th, 2012)) との記述、一方、感染症治療にピペラジン投与を行った小児89例のうち、脳波の異常がみられた症例を除外し、神経症状の発症の有無を調査した結果、対象は1~3歳児が主体、投与量はピペラジン換算で凡そ110 mg/kg/dayであったが神経症状は肉眼的には検出されなかった (EU-RAR (2005)) との記述がある。健常人での短期間投与 (3~7日間) によるLOAELはピペラジン換算で30 mg/kg/dayと推定されている (EU-RAR (2005))。この他、ピペラジン慢性ばく露により、慢性気管支炎を誘発することが報告されており、ピペラジン製造加工工程に従事したスウェーデンの作業者における気管支炎の発症率は約16%で、明瞭な用量反応相関がみられたとの記述もある (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014)、NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th, 2012))。
一方、本物質は動物の駆虫薬として広く使用実績があり、推奨用量はブタ、ウシ、ウマでは110 mg/kg/day、イヌ、ネコでは45~65 mg/kg/dayとされ、過剰量投与による副作用として神経毒性が既知である。典型的な臨床症状はイヌでは抑うつ、運動失調、頭部と頸部の伸展、四肢の異常な筋硬直様動作、ネコでは嗜眠、強直性痙攣、筋協調運動失調などが報告されている (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014))。.なお、実験的にはピペラジン二塩酸塩をビーグル犬に13週間混餌投与した試験、ピペラジン又はピペラジン二塩酸塩をラットに90日間混餌投与した試験のいずれも、神経毒性を検出できなかった。なお、ラットの試験ではピペラジン投与群で区分2超の3,000 ppm (150 mg/kg/day) 以上で肝臓への影響 (変性、び漫性混濁腫張、巣状壊死)、腎臓への影響 (変性、線維化) がみられたが、ピペラジン二塩酸塩投与群では肝臓、腎臓への影響はみられていない (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2014))。
以上、ヒト及び動物での本物質の薬用における副作用から神経毒性発現は明らかで、ヒトの職業ばく露での呼吸器有害影響と併せて、本項は区分1 (神経系、呼吸器) とした。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分3
-
-
H402 P273
P501
甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 21 mg/L(EU-RAR, 2005)であることから、区分3とした。 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分に該当しない
-
-
- - 慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(14日間でのBOD分解度=1.4%、TOC分解度=1.0%、GC分解度=2.8%(通産省公報, 1979))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 12.5 mg/L(EU-RAR, 2005)であることから、区分外となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(メダカ)の96時間LC50 > 100 mg/L(環境省生態影響試験, 2001)であることから、区分外となる。
以上の結果から、区分外とした。
平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - データなし 平成27年度(2015年度) ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)


分類結果の利用に関する注意事項:
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  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

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