項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 1330-78-5 |
名称 | りん酸トリトリル |
物質ID | m-nite-1330-78-5_v2 |
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項目 | 情報 |
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 引火点は210℃(closed cup)(HSDB in PubChem (Accessed June 2021))であり区分に該当しない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | UNRTDGにおいて、3wt.%超のオルト異性体を含むものが UN 2574 Class 6.1 PG II に分類されており、優先評価項目である自然発火性液体には該当しないと考えられるため、区分に該当しない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 半金属(P)を含むが、水に不溶(CAMEO Chemicals in PubChem (Accessed June 2021))との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
13 | 酸化性液体 | 分類できない |
- |
- | - | フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素(P)と結合しているが、データがなく分類できない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
17 | 鈍性化爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(6)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:3,000 mg/kg(MOE 初期評価 (2005)) (2)ラットのLD50:> 4,640 mg/kg(EHC 110 (1990)、AICIS IMAP (2018)) (3)ラットのLD50:5,190 mg/kg(EHC 110 (1990)、NTP TR433 (1990)、AICIS IMAP (2018)) (4)ラットのLD50:> 15,750 mg/kg(REACH登録情報 (Accessed July 2021)) (5)ラットのLD50:> 15,800 mg/kg(EHC 110 (1990)、NTP TR433 (1990)、AICIS IMAP (2018)) (6)ラットのLD50:> 20,000 mg/kg(REACH登録情報 (Accessed July 2021)) |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(3)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:3,700 mg/kg(AICIS IMAP (2018)、REACH登録情報 (Accessed July 2021)) (2)ウサギのLD50:> 7,900 mg/kg(EHC 110 (1990)、NTP TR433 (1990)、AICIS IMAP (2018)) (3)ウサギのLD50:> 10,000 mg/kg(AICIS IMAP (2018)) |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)より区分に該当しない。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度(0.00007 mg/L)より高いため、ミストと判断した。旧分類から新たな情報を追加し、分類を変更した。 【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間):> 5.2 mg/L(OECD TG 403、GLP)(Government of Canada, Screening Assessment (2019)、REACH登録情報 (Accessed July 2021)) 【参考データ等】 (2)ラットのLC50(1時間):> 11.1 mg/L(4時間換算:> 2.78 mg/L)(AICIS IMAP (2018)、REACH登録情報 (Accessed July 2021)) |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(4)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、72時間観察)において、適用後72時間の皮膚一次刺激指数(PDII)は0.5で、パッチ除去4時間後にみられた刺激性変化は24時間以内に回復したとの報告がある(AICIS IMAP (2018)、REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))。 (2)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、72時間観察)において、適用後72時間の皮膚一次刺激指数(PDII)は0.04であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))。 (3)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(有傷皮膚、無傷皮膚に24時間適用、72時間観察)において、24時間後に1例の有傷皮膚で紅斑がみられたが、72時間以内に消失した。浮腫はいずれの動物の有傷皮膚、無傷皮膚にもみられなかったとの報告がある(Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 (4)モルモットを用いた皮膚刺激性試験において、o-、p-体はモルモットの皮膚を中程度に刺激し、m-体は軽度に刺激したが、異性体混合物で刺激性はなかったと報告されているとの報告がある(MOE 初期評価 (2005))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 9)を用いた眼刺激性試験(非洗眼群:6例、洗眼群:3例)において、24/48/72時間後の各時点における刺激指数の平均値は0.7/0.3/0.0であり、みられた刺激性影響は72時間以内に回復したとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))。 (2)ウサギ(n= 9)を用いた眼刺激性試験(非洗眼群:6例、洗眼群:3例)において、非洗眼群6例中2例で刺激性影響がみられたが、48時間以内に回復した。洗眼群3例では刺激性影響はみられなかったとの報告がある(Government of Canada, Screening Assessment (2019)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)本物質を成分に含む包帯に接触することで生じるアレルギー性接触皮膚炎に関する症例報告がある。また、男性被験者を対象としたMaximisation試験において、本物質は中程度の強さの感作性物質であるとされたとの報告がある(Government of Canada, Screening Assessement (2019))。 (2)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は3.7(25%)、3.4(50%)、5.4(100%)であったとの報告がある(Government of Canada, Screening Assessement (2019)、REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、区分を変更した。 【根拠データ】 (1)In vivoでは、本物質(TCP:組成不明)のラットの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性の報告がある(ACGIH (7th, 2016)、MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 (2)In vitroでは、本物質(TCP(NTPの発がん性試験と同一組成)及びKronitex TCP)の細菌復帰突然変異試験で陰性、ほ乳類培養細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、V79肺線維芽細胞、マウスリンパ腫細胞)を用いた染色体異常試験で陰性(一部不確か、又は陽性)の結果であった(NTP TR433 (1994)、MOE 初期評価 (2005)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (7th, 2016)、Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
6 | 発がん性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、区分を変更した。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた本物質(79%TCPエステル(m-異性体21%、p-異性体4%、o-異性体< 1%、未同定のトリクレシルリン酸エステル))2年間混餌投与による発がん性試験において、300 ppm(雄:13 mg/kg/day、雌:15 mg/kg/day)までの用量で投与に関連した腫瘍発生の増加は認められなかった(NTP TR433 (1994)、MOE 初期評価 (2005)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2013) 、Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 (2)マウスを用いた本物質の2年間混餌投与による発がん性試験において、300 ppm(雄:27 mg/kg/day、雌:37 mg/kg/day)までの用量で投与に関連した腫瘍発生の増加は認められなかった(NTP TR433 (1994)、MOE 初期評価 (2005)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2013) 、Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
危険 |
H360 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)、(2)より区分1Bとした。なお、(1)、(2)では親動物に一般毒性影響がみられない用量で、繁殖能への影響(精子及び雌雄生殖器への有害影響、受胎能の低下)がみられている。 【根拠データ】 (1)本物質(o-異性体< 9%含有)を被験物質としたラットを用いた強制経口投与による一世代繁殖毒性試験(交配前56日間(雄)、交配前14日間及び交配期間10日間(雌))において、雄では100 mg/kg/day以上で精子形態異常の有意な増加、200 mg/kg/dayで精子運動能及び精子濃度の減少、精巣(精細管の変性・壊死、精細管内未成熟精子の増加)、精巣上体(精液過少、精巣上体管内未成熟精子の増加)に異常所見がみられた。雌では200 mg/kg/day以上で妊娠率の低下(400 mg/kg/dayでは1/24例が3匹を出産したのみ)、用量に依存した卵巣間質細胞のび慢性空胞化、卵胞及び黄体の増加がみられた。出生児の生後の発達への有害影響の記載はない(MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (7th, 2016))。 (2)本物質(o-異性体< 9%含有)を被験物質としたマウスを用いた混餌投与した連続交配試験(交配前7日間及び交配期間98日間)において、親動物に一般毒性影響がみられない低用量から妊娠腹数の用量依存的な減少及び精子運動能の低下がみられ、高用量の親動物には精巣精細管萎縮と精巣・精巣上体重量減少もみられた。また、高用量投与の雌雄と対照群との交差交配群では受胎能の低下がみられ、雌に投与した場合の方が受胎能低下の影響が大きかった。児動物には高用量群で生存児比率の低下と低体重がみられただけであった(Government of Canada, Screening Assessment (2019)、MOE 初期評価 (2005)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (7th, 2016))。 【参考データ等】 (3)本物質(組成不明)を被験物質としたラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠0~19日)において、発生毒性影響はみられなかったとの報告がある(Government of Canada, Screening Assessment (2019)、AICIS IMAP (2013))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(神経系) |
危険 |
H370 | P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、本物質に含まれるo-異性体に神経毒性影響がみられることから、区分1(神経系)とした。 【根拠データ】 (1)潤滑油に含まれる本物質(TCP)を摂取した4歳男児の重篤な急性中毒例では、臨床症状として嘔吐、下痢、虚弱、眠気、遅延型コリン作動性障害、神経伝達速度抑制がみられたが、4週間以内に回復した(Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 (2)本物質のo-体には OPIDN(有機リンによる遅発性神経毒性)と呼ばれる強い神経毒性があり、代謝物のサリゲニン環状リン酸エステル(2-(o-cresyl)-4H-1-3-2-benzodioxaphoran-2-one)による毒性作用であることが知られているが 、m、p-体ではこのような環状リン酸エステルを生じず、OPIDNの発現もない。また、本物質の異性体の中では、o-トリル基が1つのもので最も毒性が強く、o-トリル基の増加に伴って毒性は低下する 。OPIDN はコリンエステラーゼ阻害による毒性でなく、神経毒エステラーゼ(NTE)を阻害するためと考えられている(MOE 初期評価 (2005))。 (3)市販のTCPはo-異性体であるTOCPを1%含む。近年はTOCPが0.3%以下のレベルに制御され、o-異性体が全く含まない製品もある。これら市販のTCPはヘテロな異性体混合物であり、遅延型神経毒性を有機リン系化合物に属する(ACGIH (2016))。 【参考データ等】 (4)本物質(TCP:m-異性体19.5%、p-異性体2.4%を含む)を被験物質とした、ラット(雌)を用いた単回経口投与試験において、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で血清・赤血球・脳コリンエステラーゼ活性の有意な阻害がみられたとの報告がある(Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(神経系)、区分2(副腎、卵巣) |
危険 警告 |
H372 H373 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
【分類根拠】 (1)~(7)より、ヒト知見において神経系影響が示唆され、複数の動物試験においても区分1の用量範囲で神経系影響がみられることから、区分1(神経系)とした。また(4)~(7)より、動物実験において区分2の用量範囲で副腎、卵巣の影響がみられることから区分2(副腎、卵巣)とした。よって、区分1(神経系)、区分2(副腎、卵巣)とした。旧分類から新たな情報を追加し、分類を変更した。 【根拠データ】 (1)食用油の汚染で生じたスイスの集団中毒事例では、本物質のo-体0.15 gの摂取で毒性症状が現れ、0.5~0.7 gの摂取で重度の神経障害の発現がみられたが、1.5~2 gの摂取でも中毒症状の現れなかった人もおり、感受性に大きな差があった(MOE 初期評価 (2005))。 (2)本物質(o-体1%未満)の製造工場で下肢の永久麻痺となった労働者の発生例が報告されており、製造過程では 6~10%のo-体にばく露されていた(MOE 初期評価 (2005))。 (3)本物質のo-体製造に従事していた労働者で多発性神経炎が3例報告されており、気中濃度の測定で本物質は 0.55~2.5 mg/m3であったとされている。また、イタリアの合成皮革靴工場でみられた多発性神経炎の集団発生では、原因と疑われた資材から本物質は検出されず、ChE阻害作用もなかったが、本物質の o-体中毒に似た臨床所見の他に、赤血球ChEの有意な低下、上位運動ニューロン障害を高い頻度で認めたことから、過去にも合成皮革靴工場で報告されているように、本物質の関与が強く示唆された。しかし、合成皮革靴工場での多発性神経炎については確たる証拠もなく、他の物質のばく露やそれらとの相互作用も考えられるとされている(MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019))。 (4)ラットを用いた本物質(79%TCPエステル(m-異性体21%、p-異性体4%、o-異性体< 1%、未同定のトリクレシルリン酸エステル))の混餌投与による13週間反復経口投与試験において、0.09%以上(55 mg/kg/day(雄)、 65 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で、血清コリンエステラーゼ(ChE)活性の低下、副腎皮質の空胞化、卵巣の間質細胞肥大及び炎症の発生率増加がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2018)、NTP TR433 (1994))。 (5)マウスを用いた本物質の混餌投与による13週間反復経口投与試験において、0.025%以上(45 mg/kg/day(雄)、 65 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で、血清ChE活性の低下、副腎皮質の空胞化(雌)、0.05%以上(110 mg/kg/day(雄)、 130 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で副腎皮質の空胞化(雄)、さらに高用量の0.21~0.42%では、坐骨神経及び脊髄の軸索変性の発生率増加。ミエリン鞘の消失や振戦がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2018)、NTP TR433 (1994))。 (6)ラットを用いた本物質の混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、0.0075%以上(3 mg/kg/day(雄)、 4 mg/kg/day(雌)、区分1の範囲)で血清ChE活性の低下(雌)、0.03%以上(13 mg/kg/day(雄)、 15 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で血清ChE活性の低下(雄)、副腎皮質の空胞化、卵巣間質細胞の過形成(雌)がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2018)、NTP TR433 (1994))。 (7)マウスを用いた本物質の混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、0.006%以上(7 mg/kg/day(雄)、 8 mg/kg/day(雌)、区分1の範囲)で血清ChE活性の低下、0.0125%及び0.025%(13~27 mg/kg/day(雄)、 18~37 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で副腎皮質のセロイド沈着、肝臓影響(明細胞巣、脂肪変性、セロイド沈着の増加)がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2005)、Government of Canada, Screening Assessment (2019)、ATSDR (2012)、AICIS IMAP (2018)、NTP TR433 (1994))。 (8)TCPの標的臓器はラットでは副腎と卵巣である。これらの影響が生じる機序は未解明であるが、貯蔵型コレステロールエステルを遊離型コレステロールへの変換を触媒する中性コレステリルエステルヒドラーゼ(nCEH)をTCPが阻害する結果として、副腎皮質と卵巣間質細胞にコレステロールエステルの蓄積を生じる機序、あるいはTCPが副腎のAコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)を阻害し、ステロイド生合成に必要なコレステロールを細胞内に過剰に蓄積保存するように作用し、細胞質内に脂質滴(コレステロールエステル)を過剰蓄積する機序が想定されている(Government of Canada, Screening Assessment (2019)、ATSDR (2012))。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分1 |
警告 |
H400 | P273 P391 P501 |
甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 0.25 mg(MOE既存点検結果, 2005、MOE初期評価, 2005)であることから、区分1とした。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分1 |
警告 |
H410 | P273 P391 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(本物質のo-体、p-体の生分解性試験は逆転法(TG302C、本質的生分解性試験)で実施されており(METI既存点検結果, 2005)急速分解性があることの判断には用いることができず、m-体の標準法の易分解性試験(TG301C、標準法)においてBOD分解度(30.8%, 43.1%, METI既存点検結果, 2005)がパスレベル(60%)に達していないこと及び易分解性なし(BIOWIN)の予測結果が得られていること)、藻類(ムレミカヅキモ)の72時間NOEC = 0.088 mg/L(MOE既存点検結果, 2005)から、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階(魚類)に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(ヒメダカ)の96時間LC50 = 0.84 mg/L(MOE既存点検結果, 2000、MOE初期評価, 2005)から、区分1となる。 以上の結果から、区分1とした。慢性毒性の分類方法の変更及び新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 |
令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
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- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 | 令和3年度(2021年度) | ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) |
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