製品安全

平成13年度事故情報収集制度報告書

平成14年10月15日

 はじめに

本書は、経済産業大臣の指示を受けて独立行政法人製品評価技術基盤機構が運用している事故情報収集制度*1に基づき、平成13年度に収集した製品事故に係る情報をとりまとめたものである。
製品事故を収集、調査、分析して公表する事故情報収集制度は、昭和49年から経済産業省(平成12年末までは旧通商産業省)において運用されてきたが、平成13年4月からは、独立行政法人製品評価技術基盤機構の事業となっている。
平成13年度中に収集した事故情報の総件数は1,852件であったが、情報の重複や製品が関係する事故でないことが判明したものを除いた事故情報は、1,569件となっている(平成14年8月10日現在)。
収集した事故情報は、事故の発生状況、原因及び再発防止措置等を調査した上とりまとめ、四半期及び年度ごとに公表している。
その中で、特に製品に起因して発生したと判断される製品事故については、事故製品の銘柄、型式、製造事業者名等の情報も併せて公表している。これは同種事故の未然・再発防止を図るために行っているものである。
また、調査の結果、製品に起因しない誤使用や不注意による事故についてもその内容を公表しているが、これは消費者への注意喚起を行うとともに、製品の使用実態と事故の発生状況を製造・販売事業者に提供することにより、可能な限り誤使用や不注意とされる事故を技術的に防ぐ方法が開発されることを期待してのことである。
本書が、製品の安全な使用・保守に役立てられるとともに、設計、製造、供給又はアフターサービスの面での対応の促進に寄与することにより、製品事故の減少に役立てば幸いである。

*1【事故情報収集制度とは】
経済産業省所管の消費生活用製品を対象に、事故の未然防止・再発防止を図る目的から地方公共団体、消費生活センター、製造業界及び流通業界、消費者団体等の協力を得て、製品事故に関する情報を収集、調査、分析し、公表及び情報提供を行うために昭和49年10月から発足した制度。
本制度は、現在、経済産業省の指示により、独立行政法人製品評価技術基盤機構において運用されている。

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1.事故情報収集制度において収集する事故情報

事故情報収集制度によって収集する事故情報は、経済産業省が所管している消費生活用製品(家庭用電気製品、燃焼器具、乗物、レジャー用品、乳幼児用品等)が関係して発生した事故で、①人的被害が生じた事故、②人的被害が発生する可能性の高い物損事故及び③人的被害が発生する可能性の高い製品の欠陥を対象としている。

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2.事故情報の収集体制と事故情報収集件数

事故情報は、消費者をはじめ全国の消費生活センター、行政機関、製造事業者等から通知を受けるとともに、新聞、インターネットに掲載された事故情報について、全国から日々入手する体制(新聞情報収集モニターの配置)を確立し、積極的に収集している。
平成13年度、事故情報の総収集件数は1,852件で、通知者別の件数は表1のとおりである。この件数には、事故発生に製品が関係していないことが、その後の調査で判明したもの、経済産業省以外の省庁が所管する製品による事故で本制度の対象外のもの及び重複して収集されたものが含まれており、これらを除いた件数は1,569件(平成14年8月10日現在、調査中を含む。)である。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「機構」という。)が収集した事故情報を、製品区分別に集計した結果は表2に示すとおりで、家庭用電気製品の事故件数が最も多く、収集件数の約44%を占め、次に燃焼器具が約28%、乗物・乗物用品が約12%の順になっている。この割合の傾向は平成11年度、12年度と比べても、あまり変化がない。
表1 通知者別事故情報総件数
事故情報通知者 総収集件数
新聞情報収集モニター等 980件 52.9%
製造事業者等 479件 26.0%
消費生活センター等 144件 7.8%
自治体(消防機関含む) 99件 5.3%
当機構 93件 5.0%
消費者 32件 1.7%
経済産業省(消費者相談室等) 25件 1.3%
合計 1,852件 100.0%
表2 製品区分別事故情報収集件数
番号 製品区分 事故件数
1 家庭用電気製品 692件 44.1%
2 燃焼器具    443件 28.2%
3 乗物・乗物用品 187件 12.0%
4 身のまわり品  94件 6.0%
5 家具・住宅用品 62件 4.0%
6 保健衛生用品  33件 2.1%
7 レジャー用品  28件 1.8%
8 台所・食卓用品 17件 1.0%
9 乳幼児用品   8件 0.5%
10 繊維製品    5件 0.3%
11 その他     0件 0.0%
合計 1,569件 100.0%

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3.事故情報の調査                

(1) 事故調査状況

当機構は、収集した事故情報の全てに対して、事故の状況等を確認するための事故調査を行っている。調査は、まず情報提供者又は関係者等に電話で事故の状況、事故品、被害状況の詳細を確認している。電話調査に協力が得られない場合には、文書依頼、訪問による調査を行い、事故に関する情報の収集に努めている。
また、死亡又は重傷の人的被害や火災等の重大な被害が発生した事故で、多発の可能性が危惧されるもの、法令等の規制対象製品によるもの等、社会的に原因究明が必要と考えられるもの等については、積極的に現場調査を実施し、事故原因究明に必要な事故品等の確認を行っている。
平成13年度は、北海道で発生したいわゆる「省エネ五徳」による一酸化炭素中毒死亡事故、山梨県で発生した圧力なべの蓋が突然飛び調理中の女性の頭に当たり死亡した事故など、77件の事故について現場調査を実施した。
また、火災原因と推定されるカラーテレビやエアコン、人身事故が発生した自転車など、186件の事故について消防等の協力を得て事故品の確認を行っている。
調査の結果、製品の製造事業者名、型式等が判明した場合は、事故発生の情報を当該製造事業者等に通知し、事故発生の原因、事故再発防止措置等について報告書の提出を求めている。
平成13年度の事故情報における当機構の事故調査及び事故品確認の状況、製造事業者名の判明状況を表3に示す。
表3 当機構における事故調査状況(現場調査、事故品確認、製造事業者名の特定)
現場調査及び事故品確認状況 現場調査を実施したもの 77件
事故品を確保したもの 186件
事故品の製造事業者等の特定状況
(平成14年8月10日現在)
製造事業者等からの通知により判明したもの 464件
当機構の事故調査により判明したもの 498件

(2) 重大事故等の調査状況

当機構では、死亡又は重傷の人的被害や火災など著しい拡大被害が発生した重大事故、同一型式製品で同種事故が多発した事故、法令改正の検討につながると考えられる事故等、注視する必要があると判断した事故は、第一報のみならず、その後の調査等で得た追加情報についても入手しだい直ちに経済産業省と情報を共有しながら調査をすることとしている。
平成13年度は、このような注視する事故情報が11件あり、例えば、熱帯魚鑑賞用水槽に使用されている電灯、ポンプ又はヒーターが発火・焼損した事故、除雪機の回転部に手指等が巻き込まれる重傷事故が挙げられる。(当該事故事例の内容を表4に示す。)
表4  重大・多発・注目事故例
製品名 当機構の調査概要 調査結果に基づく対応
水槽用製品 これまでに収集された事故情報を再調査したところ、水槽用製品による事故は、製品本体の不具合による発火・焼損はほとんどなかった。事故は、製品の電源プラグ部に水がかかり発火したもの、水槽用ヒーターが掃除のため水中より取り出された状態で誤って通電して発火したものなど、専ら使用上の問題や不注意で発生していることが判った。 当機構では、消費者への注意喚起が必要と判断し、「特記ニュース」を作成して各地の消費生活センター、水槽の製造・販売事業者及び関連業界等に配布するとともに機構のホームページにも掲載し、消費者に事故の再発防止の注意喚起を図った。
除雪機 事故の発生状況、製造事業者名、型式等を調査した結果、事故の多くは製造後15年以上経過した製品で発生しており、雪が詰まり停止した回転部分に手を入れて雪を取り除いたため、再び動き出した回転部に手指が触れ、重大事故となったものが大半であった。
また、事故を起こした除雪機は、使用者が運転位置を離れると、回転部が自動的に停止する装置を有していないものであった。
除雪機事故の再発を防止するため、経済産業省物資所管課から当製品製造事業者団体へ、安全対策の検討が指示された。
また、当機構では、「特記ニュース」を発行して各地の消費生活センター及び都道府県の関係者等に配布するとともに、機構のホームページにも掲載し、消費者に事故の再発防止の注意喚起を図った。

(3) 製品の調査

当機構では、収集した事故情報を調査した結果、事故原因が不明の重大事故や多発の可能性のある事故、事業者等の事故調査結果に疑問がある事故など、当機構において原因究明が必要と判断した製品事故について、事故品等を用いて製品安全テスト(事故原因究明テスト、市場モニタリングテスト)を実施している。
また、事故原因を究明する手法が未整備のためや必要な基礎データが不足しているため、原因究明ができなかったり、テスト結果を評価することができない場合には、原因究明手法開発調査を実施し、事故原因究明に必要な手法の整備や必要なデータの取得・蓄積をして事故の原因究明を迅速に行う環境を構築することに努めている。
テストの結果は事故通知者、関係行政機関、関係業界等に提供し、また開発調査の結果は当機構の事故原因究明に活用するとともに、関係試験機関等へ提供を行っている。
平成13年度の製品安全テスト事例を表5に、原因究明手法開発調査を表6に示す。
表5   平成13年度の製品安全テスト事例
件名 事故内容とテスト目的 テスト結果の概要と措置
電動介護リフトの発煙 約3年間使用されていた電動介護リフトが、使用中に駆動部から発煙した。
特に身体が不自由な方が使用される製品であったことから、原因を究明した。
介護リフトを移動させ、レール端のストッパーに当たる拘束状態になっても、移動スイッチを押した場合、駆動モーターに過電流が流れ続け、発熱することが確認された。
事故品を調査すると、モーター巻線が炭化して絶縁が破壊され、また過電流でトランジスタ端子のはんだが溶融し、短絡していた。
以上のように、製品設計の問題により発生した事故と判断されることから、事業者は緊急停止スイッチ等を追加して安全対策を行った。
カーステレオの発煙 カーステレオ用スピーカーから発煙・発火する事故が平成8年頃から発生しており、多発、拡大被害の可能性があることから、原因を究明した。 スピーカの発煙・発火は、スピーカーに過大な直流電流が加わると発生することから、カーステレオ本体が直流電流を発生する原因を中心に調査した。
その結果、車の振動やはんだ不良で電子部品に異状が起こると、直流電流が発生することが確認された。このため、スピーカー端子間に過大な直流電位を発生させない回路設計、万一発生した場合には電流を遮断する保護回路の組み込みを事業者、業界に要望した。
ガスこんろ用
省エネ器具
平成9年に省エネ効果をうたった五徳を使用し、一酸化炭素中毒による死亡事故が発生したことから、類似製品による同様の事故の未然防止の観点から実施した。 テストは、省エネ効果をうたったガスこんろ用器具2製品について実施した。
テストを実施した2製品は、使用条件によって燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度が「こんろ」のJIS規格で許容されている濃度以上になり、中毒症状が発生する可能性があることが判った。
この結果に基づき、製造、販売事業者に販売中止等を要請するとともに、「特記ニュース」を作成して全国の消費者センター等に配布し、また当機構のホームページに掲載して消費者に注意喚起を行った。
なお、「特記ニュース」には、平成12年度にテストを実施した省エネ器具についても併せて記載し、消費者に注意喚起した。
表6  平成13年度の原因究明手法開発調査
テーマ 調査の目的 調査の内容と結果
プラグ刃溶融痕のDAS*2による一・二次痕*3識別手法の確立 家庭用電気製品の事故には、プラグやコンセント、電源コードや配線に関係する焼損、火災事故が多い。
このような事故の中で、本体の焼損が著しくてもプラグ、コンセントやコード等には電気的な溶融痕が残っていることがあり、発火源を究明する上で有用な証拠とされている。
しかし、技術的な判断資料がないため、経験に頼った観察、調査が主体で、容易には発火源が特定できないのが現状である。
このため、プラグやコンセントにできた溶融痕の金属組織をミクロ的に調査し、発火源に現れやすい金属組織(一次痕)、外部からの炎で現れやすい金属組織(二次痕)データを体系化、整理して発火源の特定を容易にすることを目的に調査した。
雰囲気温度(冷却速度)とDAS変化関係データを取得して関係曲線を実験的に求め、一次痕、二次痕を識別するデータを取得し、原因究明手法の確立を行った。
一方、火災現場から回収されたプラグ刃溶融痕のDASから溶融痕生成時の雰囲気温度を推定し、一次痕、二次痕の識別を実験的に行った。
自転車フレーム接合部の溶接施工不良による破壊データ収集及び解析 自転車は、完成車、フレーム等の重要部品の輸入も増加する状況にあるが、輸入車を中心にフレームの溶接施工不良、フレームの強度不足に起因する折損事故が発生している。
しかし、溶接不良に関するデータが不足しているため、フレームの折損が溶接不良のためか、フレームの強度不足で発生したのかが判断できない。
このため、フレーム折損事故の原因究明の向上、迅速化を目的に、溶接不良の種類に対応した各種データを体系的に取得、整備した。
材料、溶接方法別に作製した溶接不良フレームを使用し、フレームに作用する力の既取得データを活用して負荷を与え、破壊させ、溶接不良の種類と強度の低下の程度、破面の状態等のデータを収集、解析、整理した。
フレームの溶接部破損観察から破損原因推定手法のマニュアル化を図った。

*2【DASとは】デンドライト・アーム・スペーシングの略称で、溶融痕断面組織にみられる金属結晶 の二次枝間隔をいう。
*3【一・二次痕とは】一次痕は火災原因となった溶融痕、二次痕は火災によって生じた溶融痕をいう。

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4.事故情報調査結果の分析と事故動向

(1) 事故情報調査結果の分析

事故情報の調査結果は、「事故原因技術解析ワーキンググループ」で技術的観点からの解析、評価が行われる。その結果は当機構の調査結果とともに「事故動向等解析専門委員会」において検討され、最終調査結果としている。

①事故原因技術解析ワーキンググループ

電気、機械、化学、生体障害の技術分野ごとに学識経験者や有識者等の第三者から構成される事故原因技術解析ワーキンググループを設置し、それぞれの技術分野に該当する製品事故について技術的な解析、評価を行っている。
また、誤使用によって発生した事故についても事故原因技術解析ワーキンググループを設置して、使用方法や製品のあり方を解析、評価している。
設置のワーキンググループ名とその作業内容を表7に示す。
表7  事故原因技術解析ワーキンググループ
グループ名 ワーキンググループの作業内容等
電気技術解析
ワーキング
カラーテレビ、エアコン、冷蔵庫、配線器具等の電気製品による発煙・発火事故等の解析、製造事業者の調査結果や再発防止措置の評価を行っている。
また、当機構が行うテストへの助言、テスト結果の評価等を行っている。
機械技術解析
ワーキング
自転車等の破損による事故、石油ストーブ、ふろがま等による火災事故等の解析、製造事業者の調査結果や再発防止措置の評価を行っている。
また、当機構が行うテストへの助言、テスト結果の評価等を行っている。
化学・生体障害
技術解析ワーキング
簡易ガスライター等の身の回り品による事故、ゴム手袋、ブラウス等に含まれる化学物質による皮膚障害(アレルギー)等の解析、製造事業者の調査結果や再発防止措置の評価を行っている。
また、当機構が行うテストへの助言、テスト結果の評価等を行っている。
製品誤使用
技術解析ワーキング
調査の結果、「誤使用や不注意による事故」について、事故に至った使用方法の解析、製品の現状とあり方を検討している。
また、当機構が行っている調査への助言等を行っている。

② 事故動向等解析専門委員会

当機構では、事故調査の結果を公正、中立な立場で検討を行うために学識経験者、消費者代表等で構成される「事故動向等解析専門委員会」を設置している。
当専門委員会では、事故原因や再発防止措置等の調査結果、事故原因技術解析ワーキンググループの技術的な解析、評価結果等に基づき、その妥当性等について総合的検討や事故の動向解析を行っている。

(2) 平成13年度の事故調査結果

①事故情報収集件数及び事故原因

平成13年度事故調査結果は表8のとおりである。
収集した事故情報のうち、重複情報や収集対象外の情報を除外したもは1,569件で、その中で調査が終了した事故は1,119件である。調査が終了したもののうち、事故原因が判明したものは850件であり、「製品に起因する事故」と判断されたものが422件、「製品に起因しない事故」と判断されるものが428件であった。
「製品に起因する事故」で、製品の設計、製造又は表示に問題があると判断される事故が391件発生しており、これらが「製品に起因する事故」の約93%を占め、残りは製品の長期使用による劣化によって発生したと考えられるものである。
「製品に起因しない事故」では、消費者の「誤使用や不注意による事故」が、355件発生しており、これらが「製品に起因しない事故」の約83%を占め、残りの約17%は、設置事業者や修理事業者の工事、修理に問題があったことから発生したものや落雷、突風などの自然現象の影響により発生したもの等である。
表8   事故原因別の事故件数  (平成14年8月10日現在)
事故原因区分 件数(件)
製品に起因する事故                                       422
A: 専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの   391
B: 製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられるもの    13
C: 製造後、長期間経過したり、長期間の使用により性能が劣化したと考えられるもの    18
製品に起因しない事故                                     428
D: 業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの    31
E: 専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの   355
F: その他製品に起因しないと考えられるもの    42
事故原因が判明しないもの                                   719
G: 原因不明のもの   269
H: 調査中のもの   450
合計 1,569

②製品区分別の事故収集件数と事故原因

平成13年度に収集した事故情報について、製品区分ごとに事故原因を示したものが表9で、収集件数が最も多かった「①家庭用電気製品」の事故原因をみると、「製品に起因する事故」は331件であり、一方、「誤使用や不注意による事故」と考えられるものは67件で「製品に起因する事故」に比べると1/5程度である。
収集件数が次に多い「②燃焼器具」は、「製品に起因する事故」が8件で、これに比べ「誤使用や不注意による事故」は216件と27倍となっている。
その他の製品区分(③~⑩)を一括して見ると「誤使用や不注意による事故」(73件)と「製品に起因する事故」(83件)の事故件数は、ほぼ同数である。
したがって、消費生活用製品に係る事故を未然に防止するためには、製品の安全性を高める改良に加え、使用上の注意喚起や消費者教育も重要かつ有効であるといえる。
表9     製品区分別事故原因   (平成14年8月10日現在)
  事故原因区分
製品区分
製品に起因する事故 製品に起因しない事故 事故原因が判明しないもの 合計
小計 小計
①家庭用電気製品 311 15 331 67 12 88 122 151 692
②燃焼器具    13 216 231 52 152 443
③乗物・乗物用品 22 23 32 44 59 61 187
④身のまわり品  29 31 15 12 27 21 15 94
⑤家具・住宅用品 13 15 35 62
⑥保健衛生用品  11 11 12 33
⑦レジャー用品  28
⑧台所・食卓用品 14 17
⑨乳幼児用品  
⑩繊維製品   
合計 391 13 18 422 31 355 42 428 269 450 1,569
(事故原因区分)
  • A:専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの。
  • B:製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられもの。
  • C:製造後長期間経過したり、長期間の使用により製品が劣化したもの。
  • D:業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの。
  • E:専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの。
  • F:その他製品に起因しないと考えられるもの。
  • G:原因不明のもの。
  • H:調査中のもの。

③被害状況

事故原因別被害状況を整理したものが表10である。
「製品に起因する事故」で、人的被害が発生したもの(死亡、重傷及び軽傷)は78件、物的被害のみのもの(拡大被害)249件であった。
同様に「製品に起因しない事故」で、人的被害が発生したものは165件、物的被害のみのものは210件となっている。
「製品に起因する事故」のうち、死亡事故1件は、いわゆる「省エネ五徳」*4を使用中の一酸化炭素中毒による事故である。

*4【省エネ五徳について】
こんろに付属の五徳を取り除き、いわゆる「省エネ五徳」を使用したため、こんろから一酸化炭素が発生して使用者が死亡する事故が、平成9年6月と平成9年12月に各1件、合計2件発生したことから、経済産業省は緊急に販売事業者に回収の指導を行った。また、当機構では、平成10年3月に特記ニュースを作成して消費者に注意喚起を行った。平成13年度に発生した本事故は、当時回収対象製品のものが、回収されずに収納されていたものと考えられたため、消費者に対して、再度、注意喚起を行った。

また、重傷事故5件は、「自転車」で走行中にブレーキが効かなかったために転倒して手首に重傷を負ったもの、「乳母車」のリクライニングのパイプと背もたれとに指が挟まれ重傷を負ったもの、バイクが転倒した際に被っていた「乗車用ヘルメット」のバイザーで顔に重傷を負ったもの、電子レンジで加熱して使用する「ゆたんぽ」の本体接合部の強度が足りず加熱した「ゆたんぽ」をレンジから取り出す際に接合部が破損して顔等に重度の火傷を負ったもの、「ふろがま」の腐食で燃焼ガスが浴室に漏れ一酸化炭素中毒になったものである。
「製品に起因しない事故」のうち「誤使用や不注意による事故」の死亡事故(33件)、重傷事故(20件)の例をみると、電気ストーブをつけたまま就寝して寝返り等により布団が電気ストーブに触れたために発生した火災での焼死、使用中のガスこんろの横にカセットこんろを置いていたためにカセットこんろの燃料ボンベが過熱して爆発し、けが(重傷)を負った等がある。
表10  事故原因別被害状況(調査が終了し、事故原因が確定したもの。)
  事故原因区分
被害状況
製品に起因する事故 製品に起因しない事故  原因不明のもの 合計
小計 小計
死亡 33 35 24 60
重傷 20 23 14 42
軽傷 66 72 78 23 107 35 214
拡大被害 237 249 10 190 10 210 120 579
製品破損 82 93 13 31 49 76 218
被害無し
合計 391 13  18  422  31  355  42  428  269 1,119
(事故原因区分)
  • A:専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの。
  • B:製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられもの。
  • C:製造後長期間経過したり、長期間の使用により製品が劣化したもの。
  • D:業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの。
  • E:専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの。
  • F:その他製品に起因しないと考えられるもの。
  • G:原因不明のもの。

④再発防止措置

「製品に起因する事故」422件のうち、約96%の406件の事故に対して製造事業者の再発防止措置が講じられている。
残りの約4%は、火災等で製品の製造事業者等が特定できず対応が不可能であったもの、経年劣化で発生した事故で、当該製品の残存も少なく同種事故の収集がないことから措置がとられていないもの等である。
再発防止措置が講じられた事故のうち299件は、延べ34社の製造事業者等により新聞、ホームページ等に社告等が掲載され、製品の回収・交換等が実施されている。
その他の事故は、単品不良と考えられる事故、表示や使用方法の問題で発生した事故等であるため、当該事業者はダイレクトメール、事業者ホームページ等で消費者に注意喚起を行ったり、製造工程の改善、品質管理の徹底・強化又は取扱説明書や表示の改善等の再発防止措置をとっている。

(3) 平成13年度の事故動向

①事故情報収集件数の推移

最近の3年間に当機構が収集した事故情報件数(重複情報や収集対象外の情報を除いたもの)の推移は、平成11年度が956件、平成12年度が1,448件、平成13年度が1,569件となっている。

②事故原因の推移(別表3参照)

当機構が収集し、調査が完了した事故情報の中で「製品に起因する事故」の占める割合は、平成11年度は約20%、平成12年度は約37%、平成13年度は約38%となっている。
同様に「製品に起因しない事故」が占める割合は、平成11年度は約51%、平成12年度は約39%、平成13年度は約38%となっており、更にこれらのうち「誤使用や不注意による事故」は、平成11年度92%、平成12年度81%、平成13年度83%である。

③最近3年間における製品別の事故動向

平成11年度から平成13年度まで、最近の3年間について事故情報の収集件数が多かった上位10品目(以下「ワースト10」という。)を表11に示す。
平成13年度のワースト10をみると、「直流電源装置」(シェーバーに使われる充電器など)による事故情報の収集件数が最多であるが、これは特定の事業者の製品に発煙・発火の事故が200件以上多発したもので、前年度には当該事業者から約60件の事故通知があり、社告、回収中のものである。
「石油ストーブ」による事故情報の収集件数は、毎年1位又は2位であり、事故情報の収集件数が多い代表的な製品となっている。「石油ストーブ」は、火災のような重大事故となる場合が多く、当機構の調査では、石油ストーブで乾かしていた洗濯物がスートブ上に落下して火災になったもの又はカートリッジタンクのふたの締め付けが不十分で、灯油が漏れて火災になったと考えられるものが多く、事故原因のほとんどは使用者の誤使用、不注意に区分されている。
「四輪自動車」の事故情報も毎年多く収集される。その多くは車両火災であり、焼損が著しく原因不明となる場合が多いが、オイル漏れ、ガソリン漏れ、電気配線の短絡や修理作業後の可燃物の置き忘れ等、整備や修理不良によるものが散見される。
「カラーテレビ」の事故情報は、平成12年度に3事業者が「長期間使用すると発火することがある。」として社告したこともあり、平成13年度(65件)は平成12年度(90件)より減少している。
「簡易ガスライター」による事故情報の収集件数は、平成11年度から13年度においては、30~60件の範囲で変動しており、事故事例のほとんどは、点火時に大きな炎が出て額等に火傷を負ったもの、使用後にライターをポケットに入れたところ衣服が燃えだして火傷を負ったものである。
「電気ストーブ」の事故情報の多くは、「電気ストーブ」に布団等の可燃物が接触しても気づかず、火災に至っているが、これは外出時の消し忘れや就寝中に使用されていたためであり、「誤使用や不注意」な使い方と考えられるものである。
「石油ファンヒーター」と「ガスこんろ(LPガス用)」は、毎年ワースト10に入っている。「石油ファンヒーター」の事故情報は、カートリッジタンクのふたを十分に締めていなかったため、燃料が漏れたことによる火災やガソリン給油による火災など、石油ストーブと同じく、「誤使用や不注意による事故」の情報が多い。また、「ガスこんろ(LPガス用)」の事故も、火の付いたこんろに鍋をかけて外出する等、不注意による火災事故が多い。
「冷蔵庫」の事故情報は、平成12年度に146件発生しているが、平成13度は22件と減少している。これらは、特定の製造事業者が製造した製品に設計不良があり、それに関係した事故情報が収集されたものであるが、当該事業者の再発防止措置によって減少したと考えられる。
表11 年度別事故上位10品目
平成11年度
(事故情報件数956件)
平成12年度
(事故情報件数1448件)
平成13年度
(事故情報件数1569件)
順位 品名 件数 割合% 品名 件数 割合% 品名 件数 割合%
1 石油ストーブ 150 16 冷蔵庫 146 10 直流電源装置 218 14
2 四輪自動車 112 12 石油ストーブ 130 9 石油ストーブ 184 12
3 ガスこんろ(LP) 42 4 四輪自動車 116 8 四輪自動車 130 8
4 簡易ガスライター 34 4 カラーテレビ 90 6 カラーテレビ 65 4
5 電気ストーブ 32 3 直流電源装置 64 4 簡易ガスライター 62 4
小計 370 39 546 37 659 42
6 自転車 25 3 電気衣類乾燥機 57 4 電気ストーブ 48 3
7 石油ファンヒーター 24 3 簡易ガスライター 48 3 ガスこんろ(LP) 34 2
8 冷蔵庫 20 2 ガスこんろ(LP) 44 3 石油ファンヒーター 29 2
9 カセットこんろ 14 1 石油ファンヒーター 21 1 冷蔵庫 22 1
10 カラーテレビ 13 1 自転車 20 1 加湿器 21 1
小計 96 10   190 12 154 9
合計 466 49 736 49 813 51
 
最近3年間の「製品に起因する事故」が多かった上位5品目(以下「ワースト5」という。)を表12に、また「誤使用・不注意による事故」のワースト5を表13に示す。
「製品に起因する事故」のワースト5(表12)をみると、平成13年度は、電気シェーバー充電用の直流電源装置(設計不良による発煙・発火)の事故が多発したため、他の製品より目立った結果となっている。
表12  年度別「製品に起因する事故」上位5品目
平成11年度
(調査終了:948件)
平成12年度
(調査終了:1,395件)
平成13年度
(調査終了:1,119件)
順位 品名 件数 割合% 品名 件数 割合% 品名 件数 割合%
1 簡易ガスライター 16 1.7 冷蔵庫    142 10.2 直流電源装置 201 18.0
2 自転車    13 1.4 直流電源装置 64 4.6 簡易ガスライター 26 2.3
3 冷蔵庫    11 1.2 電気衣類乾燥機 52 3.7 加湿器    19 1.7
4 四輪自動車  10 1.1 カラーテレビ  50 3.6 カラーテレビ  18 1.6
5  カラーテレビ
室内灯
8
8
0.8
0.8
簡易ガスライター  23  1.6  掃除機     18  1.6 
合計 66 7.0 331 23.7 282 25.2
「誤使用や不注意による事故」のワースト5(表13)をみると、最近の3年間では石油ストーブ、ガスこんろ(LPガス用)がワースト5の1位、2位を占め、これらに続くワースト製品も燃焼器具となっており、これらの情報は当機構のホームページや事故情報収集結果報告書等で消費者や製造事業者等に情報提供して注意を促している。
石油ストーブやガスこんろの製造事業者等は、「誤使用や不注意による事故」を少なくするため、石油ストーブでは取扱説明書等で消費者に警告や注意を促しており、ガスこんろでは消し忘れや過熱による火災事故を防止する装置を取り付ける等安全性を向上させた製品を開発し、販売している。
しかし、「誤使用や不注意による事故」が依然と発生していることから、4.(2)②でも述べたように消費者に対してより一層の注意喚起や消費者教育が重要かつ有効といえる。
表13  年度別「誤使用や不注意による事故」の上位5品目
平成11年度
(調査終了:951件)
平成12年度
(調査終了:1,395件)
平成13年度
(調査終了:1,119件)
順位 品名 件数 割合% 品名 件数 割合% 品名 件数 割合%
1 石油ストーブ   123 13.0 石油ストーブ   109 7.8 石油ストーブ   103 9.2
2 ガスこんろ(LPガス) 38 4.0 ガスこんろ(LPガス) 40 2.9 ガスこんろ(LPガス) 27 2.4
3 四輪自動車   28 3.0 四輪自動車   32 2.3 電気ストーブ   21 1.9
4 電気ストーブ  27 2.8 電気ストーブ   15 1.1 ガスこんろ(都市ガス) 13 1.2
5 石油ファンヒーター 13 1.4 石油ファンヒーター 14 1.0 石油ファンヒーター 11 1.0
合計   229 24.2   210 15.1   175 15.6

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5.事故情報収集結果の公表

(1) 事故情報収集結果報告書

当機構が収集した事故情報は、必要な調査及び分析等を行い、事故動向等解析専門委員会の審議を経た後に、四半期ごとにとりまとめ、「事故情報の収集結果について」を発行し、更に年度報告書として「事故情報収集制度報告書」を発行し、消費者等に対して情報提供を行っている。
また、当機構のホームページ(http://www.jiko.nite.go.jp)にも収集した事故情報、個別事故原因及び再発防止措置などの情報を掲載してインターネットを通じて広く情報提供している。

(2) 特記ニュース

事故情報の調査の結果、事故の未然・再発防止のため消費者や関係機関等に対して情報提供を速やかに行う必要があると判断した案件については、「特記ニュース」を発行して情報提供を行っている。
「特記ニュース」は、当機構のホームページに掲載してインターネットを通じて消費者等に情報を提供するとともに、消費生活センター、地方自治体、消防・警察機関、関係業界団体等の約800機関に配布している。
今年度は、一酸化炭素中毒による死亡事故の発生した「省エネリング」、ステンレス製二重構造のなべの内なべが調理中に大きな音とともに変形して飛び出した「ほっとく鍋(二重なべ)」、充電用アダプターの設計不良により発煙・発火が多発している「電気シェーバー」、水槽用ヒーターの過熱や電源コードの破損による火災事故が多発した「水槽用製品」、除雪作業中に回転部に巻き込まれ大けがをする事故が多発した「除雪機」等14件について「特記ニュース」を作成して情報提供を行った。
なお、平成13年度に発行した主な特記ニュースの概要は次のとおりである。
事故情報「特記ニュース」トピックス
№37&42 いわゆるガスこんろ用「省エネリング」について
ガスこんろに設置するだけでガス代を節約できるとして販売されているいわゆる「省エネリング」を使用した際に、その使用条件によっては、室内の一酸化炭素濃度が上昇し、頭痛、吐き気、失神、さらには死亡にまで至るレベルに達するおそれがあることがテストにより判明したことから、消費者に対して、これらの製品を使用しないよう注意喚起を行った。 
№43&48 「ほっとく鍋」に関する事故について
ステンレス製の内なべと外なべからなる二重構造のなべを使って調理中に突然、大きな音とともに内なべが変形して飛び出し、なべに入っていた油が飛散して火傷を負う等の事故が発生したことから、事故発生の情報提供をして注意を呼びかけるとともに、事業者が製品を交換していることを掲載した。その後、改良品による同様の事故が発生したことから、改めて注意を呼びかけた。 
№44 水槽用製品使用にあたっての注意事項
水槽用の照明器具、ポンプ、ヒーターを使用中に接続しているコンセント部分でのトラッキング現象やコードの断線、ヒーターの過熱が原因と考えられる発火・火災事故が多発していることから、これらの製品を使用する場合は、コンセント部分に水のかからないように注意し、ほこり等は取り除くようにするとともに、電源コードが家具などの下敷きにならないようすること、ヒーターが水中から露出したままで使用しないように注意喚起を行った。 
(別添:平成13年度社告回収等一覧表

別表1 事故件数の年度別推移

(参考図:別表1 事故件数の年度別推移)

別表2 製品区分別被害状況

別表3 製品区分別事故原因

別表4 事故原因別被害状況

別表5 製品区分別再発防止措置等の実施状況

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図