項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 140-88-5 |
名称 | アクリル酸エチル |
物質ID | R02-B-021-MHLW, MOE |
分類実施年度 | 令和2年度(2020年度) |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 2006年度(平成18年度) 2014年度(平成26年度) 2015年度(平成27年度) |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。 |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でないため、区分に該当しない。 |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
6 | 引火性液体 | 区分2 |
危険 |
H225 | P303+P361+P353 P370+P378 P403+P235 P210 P233 P240 P241 P242 P243 P280 P501 |
引火点8℃ (closed cup)、沸点100℃ (Hommel (1991)) に基づいて区分2とした。なお、UNRTDGにおいてUN 1917、クラス3、PG IIに分類されている。 |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
8 | 自己反応性化学品 | タイプG |
- |
- | - | 分子内に自己反応性に関連する原子団として不飽和結合を含むが、安定剤入りのものがUNRTDGにおいてUN 1917、クラス3に分類されていることから、優先評価項目である自己反応性化学品には該当しないと考えられるため、タイプGとした。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 発火点が372℃ (NFPA (14th, 2010)) との情報より、常温で発火しないと考えられるため、区分に該当しない。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 液体状の物質に適した試験法が確立していないため、分類できない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。 |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素及び水素以外の元素と結合していないため、区分に該当しない。 |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。 |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 |
17 | 鈍性化爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分4 |
警告 |
H302 | P301+P312 P264 P270 P330 P501 |
【分類根拠】 (1)~(11) より、区分4とした。 【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 461~731 mg/kg (CLH Report (2019)) (2) ラットのLD50: 500~5,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007)) (3) ラットのLD50: 500~2,000 mg/kg (厚労省リスク評価書 (2010)) (4) ラットのLD50: 554 mg/kg (SIAR (2008)、CLH Report (2019)) (5) ラットのLD50: 760~1,120 mg/kg (AICIS IMAP (2015)) (6) ラットのLD50: 0.83 mL/kg (767 mg/kg bw) (JECFA FAS 54 (2006)) (7) ラットのLD50: 800 mg/kg (MOE初期評価第11巻 (2013)、CLH Report (2019)) (8) ラットのLD50: > 900 mg/kg (CLH Report (2019)) (9) ラットのLD50: 1,020 mg/kg (JECFA FAS 54 (2006)、SIAR (2008)、CLH Report (2019)、ACGIH (7th, 2001)) (10) ラットのLD50: 1,120 mg/kg (SIAR (2008)、CLH Report (2019)) (11) ラットのLD50: 2,000 mg/kg (SIAR (2008)) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分4 |
警告 |
H312 | P302+P352 P362+P364 P280 P312 P321 P501 |
【分類根拠】 (1)~(4) より、ウサギの知見を用い、区分4とした。 【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 126~2,000 mg/kg (厚労省リスク評価書 (2010)) (2) ウサギのLD50: 1,790 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) (3) ウサギのLD50: 1,790~2,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007)) (4) ウサギのLD50: 1,800 mg/kg (CLH Report (2019)) 【参考データ等】 (5) ラットのLD50: 1,800~5,000 mg/kg (AICIS IMAP (2015)) (6) ラットのLD50: 2,000~5,000 mg/kg (厚労省リスク評価書 (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007)) (7) ラットのLD50: 3,049 mg/kg (MOE初期評価第11巻 (2013)、CLH Report (2019)、SIAR (2008)) (8) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (SIAR (2008)、CLH Report (2019)) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分3 |
危険 |
H331 | P304+P340 P403+P233 P261 P271 P311 P321 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(10) より、区分3とした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (50,793 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): 1,000~2,000 ppm (ACGIH (7th, 2001)) (2) ラットのLC50 (4時間): 1,000~2,180 ppm (厚労省リスク評価書 (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007)) (3) ラットのLC50 (4時間): 4.1~8.2 mg/L (1,002 ppm~2,004 ppm) (CLH Report (2019)) (4) ラットのLC50 (4時間): 1,414 ppm (MOE初期評価第11巻 (2013)) (5) ラットのLC50 (4時間): 1,500~2,180 ppm (AICIS IMAP (2015)) (6) ラットのLC50 (4時間): > 1,500 ppm (SIAR (2008)) (7) ラットのLC50 (4時間): 2,180 ppm (SIAR (2008)、CLH Report (2019)、MOE初期評価第11巻 (2013)) (8) ラットのLC50 (4時間): < 9.137 mg/L (2,233 ppm) (CLH Report (2019)) (9) ラットのLC50 (4時間): 25.8 mg/L (6,305 ppm) (CLH Report (2019)) (10) ラットのLC50 (4時間): < 165 mg/L (40,322 ppm) (CLH Report (2019)) (11) 本物質の蒸気圧: 38.6 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 50,793 ppm) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 |
警告 |
H315 | P302+P352 P332+P313 P362+P364 P264 P280 P321 |
【分類根拠】 (1)~(4) より、OECD TGに準拠した動物試験成績を優先し、区分2とした。 【根拠データ】 (1) 本物質はウサギの皮膚に4時間閉塞適用した皮膚刺激性試験において重度の紅斑と浮腫がみられている。また、ヒトの皮膚に対して刺激性を示す (厚労省リスク評価書 (2010)、SIDS Dossier (2008)、ECETOC JACC 28 (1994))。 (2) 本物質は皮膚及び眼粘膜に対して刺激性を有する (MAK (DFG) (2018)、MOE初期評価第11巻 (2013)、ATSDR (2001))。 (3) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において適用24時間後から72時間後の紅斑及び浮腫の平均スコアはそれぞれ2.2及び 0であり、反応は14日以内に回復した (SIDS Dossier (2008)、AICIS IMAP (2015))、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (4) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。 【参考データ等】 (5) 本物質をウサギの皮膚に4 時間閉塞適用した皮膚刺激性試験で、痂皮、壊死塊、瘢痕を伴う強度の紅斑と浮腫が2 週間後も継続して認められ、腐食性を示した (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (6) OECD TG 431に準拠し、人工皮膚モデルを用いたin vitro皮膚腐食性試験において3min、60minばく露後、生存率はそれぞれ88%、7%であり、腐食性 (区分1B/C) ありと判定されている (SIDS Dossier (2008)、AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (7) EU CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている(EU CLP分類 (Access on July 2020))。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A |
警告 |
H319 | P305+P351+P338 P337+P313 P264 P280 |
【分類根拠】 (1)~(6) より、区分2Aとした。 【根拠データ】 (1) 本物質 (0.1 mL) をウサギに投与した眼刺激性試験において中等度の刺激性を示す。また、ヒトの眼に対して刺激性を示す (厚労省リスク評価書 (2010))。 (2) 本物質は皮膚及び眼粘膜に対して刺激性を有する (MAK (DFG) (2018)、MOE初期評価第11巻 (2013)、ATSDR (2001))。 (3) 本物質 (0.1 mL) をウサギの眼に適用した眼刺激性試験において、24 時間後に壊死がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (4) 本物質 (0.1 mL) をウサギの眼に適用した眼刺激性試験 (ドレイズ法)において、24時間後に軽度~重度の結膜の炎症及び角膜混濁と虹彩炎がみられ、1例は重度の傷害のため屠殺されたが、その他の動物は72時間後までに回復した。適用24/48/72時間後の平均スコアは角膜混濁、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアはそれぞれ0.07、0.07、2、1であった (SIDS Dossier (2008)、AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (5) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。 (6) 本物質は皮膚、眼及び粘膜に対して強い刺激性を有する (Patty (6th, 2012))。 (7) EU CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため、分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1A |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
【分類根拠】 区分1、区分1Aまたは区分1Bを指示するデータが混在するが、(1) より産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されていることから、ガイダンスに従い区分1Aとした。 【根拠データ】 (1) 本物質は産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されている (日本産業衛生学会学会誌 (2017))。 (2) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法及びFCA test) において感作性が認められているが、マキシマイゼーション法及非閉塞パッチテストで陰性と報告されている。なお、陽性と判定されたビューラー法での適用濃度は0.4%で陽性率は60%であった (MAK (DFG) vol.16 (2001)、SIDS Dossier (2008)、ECETOC JACC 28 (1994))。 (3) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において感作性が認められている。また、種々のアクリル酸エステルと交差感作性を示す (厚労省リスク評価書 (2010))。 (4) 本物質を1%含有するメタノールで194人中39人に、5%含有する溶液の48時間パッチテストで約半数に、4%含有するワセリンで24人中10人にそれぞれ感作性がみられたとの報告がある (厚労省リスク評価書 (2010))。 (5) 本物質は複数のヒトパッチテストで陽性と報告されている (MAK (DFG) (2018))。 (6) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法及びマキシマイゼーション法) で、陽性の結果が得られた。なお、マウス局所リンパ節増殖試験では5%溶液は陰性を示した (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (7) TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において陽性と判定され、EC3は36.8%と報告されている (REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (8) EU CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2) より、 区分に該当しないとした。 【根拠データ】 (1) in vivoにおいて、マウス骨髄細胞を用いた小核試験で陽性、陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、SIAR (2008) 、 IARC 122 (2019))。なお、この陽性結果が得られた小核試験には方法的欠陥があるとされている (SIAR (2008))。 マウス脾臓細胞を用いた小核試験及び姉妹染色分体交換試験で陰性 (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価11巻 (2013)、SIAR (2008)、IARC 122 (2019))、 ラット前胃、マウス末梢血を用いたDNA切断試験、ラット前胃及び肝臓を用いたDNA付加体形成試験でいずれも陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、IARC 122 (2019))。 (2) in vitroにおいて、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、Hgprt遺伝子突然変異試験で陰性、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、SIAR (2008)、IARC 122 (2019))。 【参考データ等】 (3) IARCは本物質の実験動物での発がん性機序として、遺伝毒性機序を否定していないものの、本物質が細胞増殖や細胞死を促進させる強い証拠があると報告している (IARC 122 (2019))。 |
6 | 発がん性 | 区分2 |
警告 |
H351 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(3) より最新のIARC及び産業衛生学会の既存分類結果に基づき区分2とした。 【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 122 (2019))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (1991年提案、2019年再検討)) に分類されている。 (2) 雌雄のラット及びマウスに本物質を103週間強制経口投与した試験で、前胃の扁平上皮がん、又は乳頭腫発生率の用量相関的な増加が両種、両性のいずれにも認められ (IARC 122 (2019)、ACGIH (7th,2001))、雄ラットに本物質を12ヵ月間強制経口投与し、その後12ヵ月間回復後に屠殺剖検した追加試験でも、前胃扁平上皮の腫瘍発生率の増加が確認された (IARC 122 (2019))、ACGIH (7th,2001))。 (3) 雌雄のラット及びマウスに本物質の蒸気を27ヵ月間吸入ばく露した発がん性試験では、雄マウスで甲状腺濾胞腺腫の増加、雄ラットで甲状腺の濾胞細胞腺腫又はがんの合計の発生率に有意な増加がみられた (IARC 122 (2019))。 【参考データ等】 (4) ACGIHは吸入ばく露では雄マウスで甲状腺濾胞腺腫の増加が示された以外に、いずれの試験でも呼吸器を含む諸臓器に腫瘍発生率の増加はみられておらず、甲状腺腫瘍については原著者らが本物質ばく露に関連した変化ではないと主張していることを記載した上で、吸入経路では本物質は発がん性を示さないとしている (ACGIH (7th,2001))。 (5) NTPは当初は本物質をR (reasonably anticipated to be a human carcinogen) に分類していたが、経口経路で認められた前胃の腫瘍発生は高濃度の本物質を強制経口投与したことによる粘膜への局所刺激性、及び反復刺激による細胞増殖作用により誘発されたもので、ヒトでは生じないと考えられるとして、2001年のReport on Carcinogens.第9版で発がん性物質リストから削除し (SIAR (2008)、NTP (2001))、最新の改訂版でも「リストからの除外物質」として付属資料に掲載している (NTP RoC 14th (2016))。 (6) MAKも本物質は発がん性のカテゴリーには該当しないと結論した (MAK (DFG) (2018))。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(3) より、発生影響はみられていない。しかし、性機能・生殖能に関するデータがないことからデータ不足のため分類できないとした。 【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~15日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少等) がみられる用量で、胎児に統計学的有意差のないわずかな奇形の増加がみられている (ACGIH (7th, 2001)、MOE初期評価第11巻 (2013)、MAK (DFG) (2018)、NTP TR259 (1986))。なお、この試験での胎児の影響について、NITE初期リスク評価書 (2007) では胎児に影響なしとし、MOE初期評価第11巻 (2013) では胎児の影響についてNOAELの根拠としていない。また、NTP TR259 (1986) では催奇形性はないとしている。 (2) 雌ラットの妊娠6~20日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる用量で、胎児重量の低値のみがみられ奇形はみられていない (MOE初期評価第11巻 (2013)、MAK (DFG) (2018)、SIAR (2008))。 (3) 雌ラットの妊娠0~19日に強制経口投与し、帝王切開あるいは自然分娩させた発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、前胃の肥厚、胃と他器官との癒着) がみられる用量で、胎児死亡率の増加傾向がみられたが、胎児の外形、骨格、内部器官の異常発現頻度の増加はない。また、生後21日目までの新生児の発育に影響はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2007))。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3(麻酔作用、気道刺激性) |
警告 |
H336 H335 |
P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 P405 P501 |
【分類根拠】 ヒトでは(1)~(3) 及び (6) より麻酔作用と気道刺激性、実験動物においても (4)、(5) より麻酔作用と気道刺激性がみられたため、区分3(麻酔作用、気道刺激性) とした。 【根拠データ】 (1) ヒトでは、本物質50~75 ppm (mL/m3) のばく露で眠気、頭痛、吐き気がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (2) 男性9名、女性10名 (それぞれ平均年齢25.2歳、22.4歳) を対象に、本物質を0、2.5、5 mL/m3の一定濃度、または0~5 mL/m3 (時間加重平均濃度 (CTWA) 2.5 mL/m3)、0~10 mL/m3 (CTWA 5 mL/m3) の可変濃度でそれぞれ4時間ばく露したところ、全てのばく露条件で臭気の強さや不快感の訴えがあり、一定濃度条件と可変濃度条件の両CTWA 5 mL/m3条件で、鼻腔の神経性炎症や行動影響のパラメータへの影響がみられたとの報告がある (MAK (DFG) (2018))。 (3) 本物質はヒトで皮膚、眼の粘膜及び気道に刺激性を示す(MAK (DFG) (2018))。 (4) ラットの単回経口投与試験では、最小ばく露濃度である710 mg/kg (区分2の範囲、致死量) 以上で中枢神経抑制 (元気喪失、運動失調) や呼吸抑制 (チアノーゼ、腹式呼吸) がみられた (SIDS Dossier (2008))。 (5) ラットの単回吸入ばく露試験では、最小ばく露濃度である1,538 ppm (6.30 mg/L相当、区分1の範囲、致死量) 以上で眼と呼吸器の刺激症状がみられたとの報告がある (SIDS Dossier (2008))。 (6) 本物質は労規則35条において、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (神経系、呼吸器) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
【分類根拠】 (1)、(3) より、ヒトにおいて神経系への影響がみられるとの情報があり、実験動物においては (2) より、区分1の用量で呼吸器への影響がみられるとの情報があったことから、区分1 (神経系、呼吸器) とした。 【根拠データ】 (1) 本物質0.98~14.21 ppm及びアクリル酸ブチル9.54 ppmに平均5年間ばく露された労働者33人中14人が自律神経失調を訴えた (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (2) ラットの12ヵ月間吸入ばく露試験では25 ppm (0.104 mg/L、区分1の範囲) で鼻腔粘膜の炎症や嗅上皮変性がみられたとの報告がある。また、ラットの27ヵ月間吸入ばく露試験においても同濃度で鼻腔粘膜基底細胞の増生、嗅上皮の呼吸上皮化生がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。 (3) 本物質は労規則35条において、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。 |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分2 |
- |
H401 | P273 P501 |
魚類(ヒメダカ)96時間LC50 = 1.16 mg/L(MOE初期評価第11巻, 2013、NITE初期リスク評価書, 2007)であることから、区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分2 |
- |
H411 | P273 P391 P501 |
急速分解性がなく(難分解性、OECD TG301Dにおける28日間分解度:57.3%(SIAR, 2008))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.19 mg/L(MOE初期評価第11巻, 2013、NITE初期リスク評価書, 2007)から、区分2とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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