政府によるGHS分類結果

English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 107-02-8
名称 アクロレイン
物質ID R03-B-004-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2014年度(平成26年度)   2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2


危険
H225 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点-26℃(closed cup)、沸点52℃(GESTIS(Accessed July 2021))に基づいて区分2とした。なお、UNRTDG分類は安定剤入りのものがUN.1092、クラス6.1、副次危険クラス3、PGⅠである。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- - 自己反応性に関連する原子団(エチレン基)を含むが、UNRTDG分類は安定剤入りのものがUN.1092、クラス・区分6.1 、副次危険クラス3でであることから、優先評価項目の自己反応性物質には該当しないため、タイプGとした。
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 発火点は215℃(GESTIS(Accessed July 2021))であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2


危険
H300 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(10)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:42~46 mg/kgの間(NITE 初期リスク評価書 (2007)、EU RAR (2001)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))
(2)マウスのLD50:13.9~28 mg/kgの間(NITE 初期リスク評価書 (2007)、EU RAR (2001)、REACH登録情報 (Accessed July 2021))
(3)ラットのLD50:11.2 mg/kg(NITE 初期リスク評価書 (2007))
(4)ラットのLD50:25 mg/kg(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CICAD 43 (2002))
(5)ラットのLD50:10.3~46 mg/kgの間(AICIS IMAP (2017))
(6)ラットのLD50:46 mg/kg(ACGIH (7th, 2001))
(7)ラット(雄)のLD50:10.3 mg/kg(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))
(8)ラット(雌)のLD50:11.8 mg/kg(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))
(9)ラットのLD50:11 mg/kg(EPA Pesticides (2005))
(10)ラットのLD50:26 mg/kg(MOE 初期評価 (2004))
1 急性毒性(経皮) 区分3


危険
H311 P302+P352
P361+P364
P280
P312
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(6)より、区分3とした。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:562 mg/kg(NITE 初期リスク評価書 (2007)、AICIS IMAP (2017)、EU RAR (2001)、REACH登録情報(Accessed July 2021))
(2)ウサギ(雄)のLD50:240 mg/kg(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))
(3)ウサギ(雌)のLD50:233 mg/kg(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))
(4)ウサギのLD50:200 mg/kg(MOE 初期評価 (2004))
(5)ウサギのLD50:231 mg/kg(EPA Pesticides (2005)、CLH Report (2011))
(6)ウサギのLD50):560 mg/kg(ACGIH (7th, 2001))
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(6)より、区分1とした。本物質の飽和蒸気圧濃度(361,626 ppm)の90%(325,463.2 ppm:746.3 mg/L)より、試験濃度はかなり低いため、ミストを殆ど含まない蒸気と考えられることから、ppmVの基準を適用した。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(4時間): 18~21 mg/m3の間 (7.9~9.2 ppmの間) (NITE 初期リスク評価書 (2007))
(2)ラットのLC50(4時間): 150 mg/m3 (65.4 ppm) (NITE 初期リスク評価書 (2007))
(3)ラットのLC50(4時間): 16~150 mg/m3の間 (7.0~65.4 ppmの間) (AICIS IMAP (2017))
(4)ラットのLC50(4時間): 8.3 ppm(US AEGL (2010))
(5)ラットのLC50(4時間): 18 mg/m3 (7.9 ppm) (MOE 初期評価 (2004))
(6)ラットのLC50(4時間): 18~150 mg/m3の間 (7.9~65.4 ppm) (EU RAR (2001)、REACH登録情報(Accessed July 2021))
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)本物質0.01~10%溶液をボランティアの皮膚に適用したパッチテストにおいて、0.01%溶液を適用した8名及び0.1%溶液を適用した10名では陽性反応はみられなかった。1%溶液を適用した48名では12.5%(6/48名)が陽性反応を示し、うち4名で水疱形成を伴う重度の浮腫、2名で紅斑と重度浮腫がみられた。10%溶液では全例(20/20名)の皮膚に水疱、壊死、炎症細胞の浸潤、乳頭状の水腫がみられたとの報告がある(NITE 初期 リスク評価書 (2007)、ECHA RAC Opinion (2012)、CLH Report (2011)、EU RAR (2001)、ATSDR (2007)、AICIS IMAP (2017)、CICAD (2002)、CEPA PSAR (2000)、REACH登録情報(Accessed July 2021))。
(2)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(14日観察)において、試験期間中に死亡(原因不明)した2例を除いた4例の24/72h後の紅斑スコアの平均は1、浮腫スコアの平均は3であり、3例でみられた影響は14日以内に回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2012)、CLH Reoort (2011)、AICIS IMAP (2017))。

【参考データ等】
(3)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「アクロレイン」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害)が、業務上の疾病として定められている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。
(2)ヒトのばく露研究の結果、0.1~0.3 ppmで軽度の眼刺激を生じた。1 ppm(2.3 mg/m3)の蒸気に5分間ばく露されると、流涙と眼、鼻及び喉の顕著な刺激を生じた。3 ppm(7 mg/m3)のばく露濃度では本物質は重度の肺刺激物質であり、強力な催涙作用を発揮し、結膜及び上気道粘膜に強い影響を及ぼすとの報告がある(ACGIH (7th, 2001)、AICIS IMAP (2017)、HSDB (Accessed July 2021))。
(3)ウサギを用いた眼刺激性試験において、強度の眼刺激性がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007))。
(4)ウサギ(n=9)を用いた眼刺激性試験(7日観察)において、重度の眼刺激性がみられ、影響は7日以内に回復しなかった(24/48/72h後の角膜混濁スコアの平均:4、虹彩炎スコアの平均:2、結膜発赤スコアの平均:4、結膜浮腫スコアの平均:2)との報告がある(ECHA RAC(Background Doc(2012) 、CLH Report (2011)、AICIS IMAP (2017))。

【参考データ等】
(5)本物質は、平成8年労働省告示第33号(平成25年厚生労働省告示第316号により改正)において、労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)に「アクロレイン」として指定されており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害)が、業務上の疾病として定められている。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスを用いた2つの優性致死試験で陰性、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験(腹腔内投与、吸入ばく露)で陰性の報告がある(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012)、AICIS IMAP (2017)、NITE 初期リスク評価書 (2007)、MOE (2004)、CICAD (2002)、CEPA PSAR (2000))。特に、腹腔内投与による染色体異常試験は良質(OECD TG475、GLP)の試験で、致死量まで投与されており、腹腔内投与のため肝臓での初回通過効果を受けず、骨髄まで本物質未変化体として十分量到達している可能性が高いと言及されている(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))。
(2)In vitroでは、多数の細菌復帰突然変異試験において、主に代謝活性化系非存在下(-S9)で陽性(+S9でも一部陽性)であったが、ほ乳類培養細胞(CHO等)を用いた複数の遺伝子突然変異試験で陰性(一部陽性)、同ほ乳類培養細胞(CHO、ヒトリンパ球)を用いた染色体異常試験は全て陰性であった(CLH Report (2011)、NITE 初期リスク評価書 (2007)、MOE 初期評価 (2004)、CEPA PSAR (2000))。
(3)細菌復帰突然変異試験での陽性は、内在性のグルタチオン解毒経路の欠如と関連している可能性がある(CLH Report (2011))。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1Bとした。最新の既存分類結果としてIARCがグループ3からグループ2Aに変更していることから分類を見直し、分類結果を変更した。


【根拠データ】
(1)国内外の評価機関による発がん性分類として、IARCは最近、従来のグループ3(IARC 63 (1995))からグループ2Aに変更した(IARC 128)。その他、ACGIHでA4(ACGIH (7th, 2001))、EPAでI(Inadequate for an assessment of human carcinogenic potential)(IRIS (2003):1999年分類)、DFGでCategory 3B(DFG MAK (2014):1997年分類)に分類されている。
(2)ラットを用いた2年間吸入ばく露(蒸気、6時間/日、5日/週)による発がん性試験において、2 ppm群では鼻腔の扁平上皮がん(試験機関における背景データでは発生のみられない稀な腫瘍)が雄1/50例、雌2/50例に認められ、同群の雌には鼻腔に横紋筋腫の発生(HCDでは発生のみられない稀な腫瘍)が4/50例に認められた。これらの腫瘍の発生は雌雄ラットに対するがん原性を示す証拠と考えられた(厚労省 委託がん原性試験(2016))。
(3)マウスを用いた93週間(雄)/99週間(雌)の吸入ばく露による発がん性試験において、雄では最高濃度の1.6 ppmまで腫瘍の発生増加は認められなかったが、雌では1.6 ppm群で鼻腔に腺腫の発生増加が認められた。この腫瘍は雌マウスに対するがん原性の証拠と考えられた(厚労省 委託がん原性試験(2016))。
(4)本物質は健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質である。

【参考データ等】
(5)雌雄ラットに最大2.5 mg/kg/dayを2年間、又は雌雄マウスに最大4.5 mg/kg/dayを18か月間強制経口投与した発がん性試験では、投与に関連した腫瘍発生の増加はみられなかった(NITE初期リスク評価書 (2007)、AICIS IMAP (2017)、CLH Report (2011)、CICAD 43 (2002)、MOE 初期評価 (2004)、EU RAR (2001))。
(6)ラットに18.6 mg/m3 (8 ppm) で18ヵ月間吸入ばく露(1時間/日、5日/週)した結果、投与に関連した腫瘍の発生はみられなかった(NITE 初期リスク評価書 (2007)、AICIS IMAP (2017)、CICAD 43 (2002) 、EU RAR (2001))。しかし、供試動物数が十分でなく(n=20)、ばく露時間も短いため、発がん性評価には不適切な試験であると指摘されている(EU RAR (2001)、NITE 初期リスク評価書 (2007))。
(7)ヒトの発がん性に関する情報はない(EU RAR (2001)、CLH Report (2011))。化学工場の労働者を対象として実施された疫学研究で血液腫瘍が疑われたが、本物質ばく露との関連性はないと結論された(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CICAD 43 (2002)、MOE 初期評価(2001))。

7 生殖毒性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた経口投与による2つの二世代生殖毒性試験(GLP)において、生殖毒性はみられなかったとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、RAC(Background Doc(2012) 、MOE 初期評価 (2004)、CICAD 43 (2002)、EU RAR (2001)、CEPA PSAR (2000))。
(2)ラット又はウサギを用いた経口投与による発生毒性試験において、親動物に死亡(14/40例)がみられる用量では児動物に死亡や骨格異常がみられるが、親動物に体重低値がみられる程度の用量では児動物に発生影響はみられなかったとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007) 、RAC(Background Doc(2012) 、EU RAR (2001)、CICAD 43 (2002)、CEPA PSAR (2000))。

【参考データ等】
(3)ラットを用いた吸入ばく露による一世代生殖毒性試験(26 日間、ばく露4 日目に交配)において、生殖毒性はみられなかったとの報告がある。なお、本試験は1用量のみの試験結果であり、交配前のばく露期間が短く、また評価項目も限られていることから、生殖発生毒性の評価には不十分とされている(NITE 初期リスク評価書 (2007) 、EU RAR (2001)、CICAD 43 (2002)、CEPA PSAR (2000))。
(4)マウスを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、10 mg/kg/dayで親動物に軽度体重増加抑制、嗜眠、斜視、呼吸困難、円背姿勢、胎児に吸収胚増加、皮下浮腫発生率増加がみられた。試験報告書では皮下浮腫が軽度な局所性の影響か重度の全身浮腫かの情報が提供されていないが、追加の背景データにより皮下浮腫はわずかな影響であることが示唆されたため、発生毒性の分類は適切ではないとした(CLH Report (2011))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)、区分3(麻酔作用)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(3)より区分1(呼吸器)、(4)~(8)より区分3(麻酔作用)を採用した。消化管、眼、皮膚は局所刺激作用による影響として分類根拠としない。新たな情報源を追加し分類を見直し、分類結果を変更した。なお旧分類の標的臓器である中枢神経系については(3)より、肝臓については(8)より標的臓器から除外した。

【根拠データ】
(1)アクロレインは眼及び上部気道に対して刺激性を示し、眼への刺激性は 0.13 mg/m3、鼻への刺激性は 0.34 mg/m3でみられ、 0.6 mg/m3 においては咳、胸痛や息苦しさなどの呼吸器系への影響、さらに 0.69 mg/m3 では呼吸数の減少が認められる。経口摂取あるいは吸入ばく露による有害影響は主にばく露 (接触) 部位である胃あるいは気道に限局して生じ、大量摂取あるいはばく露時には衰弱、悪心、嘔吐、下痢、浅速呼吸、気管支炎、肺水腫、意識消失がみられる(NITE 初期リスク評価書 (2007))。
(2)本物質の吸入ばく露による影響は鼻、喉及び肺の刺激と肺水腫、肺出血及び死亡である。鼻腔組織は吸入ばく露に対する最も高感受性の組織で、0.3 ppmで数秒以内に知覚可能な刺激に始まり、2~5 ppmの高濃度では次第に気道全体に及ぶ重篤な刺激の徴候を生じる(ATSDR (2007))。
(3)動物試験結果では、吸入ばく露では呼吸器系が本物質の主な標的器官である。経口摂取では消化器の不快感、嘔吐、胃の潰瘍及び/又は出血のおそれがある。中枢神経抑制症状は経口摂取後の動物にみられるが致死量投与後のみの所見である。他経路では神経行動学的変化はみられず、病理組織学的にも神経毒性を疑う所見はなく、中枢神経系は本物質の主要標的臓器ではないと考えられる(EPA Pesticides RED(2005)、ATSDR (2007))。
(4)ラットを用いた単回経口投与試験において、15 mg/kg(区分1の範囲)以上で嗜眠と低体温が、25 mg/kg(区分1の範囲)以上で呼吸数の変化(詳細不明)がとの報告がある(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))。
(5)マウスを用いた単回経口投与試験において、11.0~19.0 mg/kgの投与群(区分1の範囲)の全例に嗜眠、斜視・被毛粗剛・円背姿勢・立毛(雌)が、15.8 mg/kg(区分1の範囲)以上では呼吸障害がみられたとの報告がある(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))。
(6)ウサギを用いた単回経皮投与試験において、200~288 mg/kg(区分1の範囲)で重度の疼痛及び過活動が最初にみられ、続いて嗜眠、呼吸障害及びチアノーゼがみられたとの報告がある(CLH Report (2011)、RAC (Background Doc) (2012))。
(7)ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレイン(本物質)のネコにおける吸入ばく露影響の検討の結果、本物質が最も影響が強かった。約10 ppmの3.5時間ばく露により、気道刺激、流涎、流涙及び軽度の麻酔作用を生じた(ACGIH (7th, 2001))。
(8)ラット(雄)を用いた単回経口投与試験において、25 mg/kg(区分1の範囲)で死亡例増加、肝臓(微小胞性脂肪変性を伴う好酸性変性)、前胃及び腺胃(重度の炎症、出血性胃炎、多巣性潰瘍、フィブリン沈着、巣状出血、水腫、多形核白血球浸潤)の変性様変化がみられたとの報告がある(CICAD 43 (2002)、CEPA PSAR (2000) )。しかしながら、ATSDRではこの報告については胃(前胃・腺胃)の所見のみ記載されており、肝臓の所見は採用されていない(ATSDR (2007))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1(呼吸器)とした。(6)~(10)より、経口経路では胃(前胃・腺胃)、(11)より、経皮経路では皮膚が標的臓器であるが、刺激性による局所影響によるものであるため、標的臓器として採用しなかった。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた3週間~90日間の多数の吸入ばく露試験において、0.51~0.9 mg/m3(0.2~0.4 ppm、区分1の範囲)で、呼吸器(鼻腔、気管、肺等)に炎症性変化がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007))。
(2)イヌを用いた6週間吸入ばく露試験(8時間/日、5日/週)において、1.6 mg/m3(90日換算:0.3 ppm、区分1範囲)で慢性肺炎、肺気腫が、8.5 mg/m3(90日換算:1.6 ppm、区分1範囲)で気管の扁平上皮化生、基底細胞過形成がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011) p. 36/66)。
(3)イヌを用いた90日間吸入ばく露試験(24時間/日、7日/週)において、0.5 mg/m3(0.2 ppm、区分1範囲)で肺気腫、肺のうっ血、細気管支の狭窄、細気管支上皮の分泌亢進を伴う空胞化、肝臓、肺、腎臓及び心臓での非特異的な炎症が、2.3 mg/m3(1.0 ppm、区分1範囲)で流涙、鼻汁、気管支肺炎、細気管支炎、肝臓、肺及び腎臓での非特異的な炎症が、4.1 mg/m3(1.8 ppm、区分1範囲)で流涙、流涎、気管支肺炎、肝臓、肺、腎臓、心臓及び脳での非特異的な炎症がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011) 、MOE 初期評価 (2004))。
(4)サルを用いた6週間吸入ばく露試験(8時間/日、5日/週)において、1.6 mg/m3(90日換算:0.7 ppm、区分1範囲)で慢性肺炎、肺気腫が、8.5 mg/m3(90日換算:1.6 ppm、区分1範囲)で眼刺激性、流涎、呼吸困難、肺、肝臓及び腎臓の炎症、気管の扁平上皮化生、基底細胞過形成、気管支の壊死、扁平上皮化生がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011))。
(5)サルを用いた90日間吸入ばく露試験(24時間/日、7日/週)において、0.5 mg/m3(0.2 ppm、区分1範囲)以上で肝臓、肺、腎臓及び心臓での非特異的な炎症が、2.3 mg/m3(1.0 ppm、区分1範囲)以上で閉眼が、4.1 mg/m3(1.8 ppm、区分1範囲)で流涙、流涎、気管の扁平上皮化生、基底細胞過形成、肝臓、肺、腎臓、心臓及び脳での非特異的な炎症がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011) 、MOE 初期評価 (2004))。

【参考データ等】
(6)マウスを用いた強制経口による13週間経口投与試験(5日/週)において、1.25 mg/kg/day(0.893 mg/kg/day、区分1の範囲)以上で腺胃及び前胃の出血、壊死、炎症、前胃の扁平上皮過形成が、2.5 mg/kg/day(1.79 mg/kg/day、区分1の範囲)以上で肝臓及び腎臓の重量増加がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、IRIS (2003) 、AICIS IMAP (2017))。
(7)マウスを用いた強制経口による18ヵ月間経口投与試験(OECD TG453、7日/週)において、45 mg/kg/day(区分2の範囲)で雄で体重増加抑制、死亡増加がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011)、IRIS (2003)、AICIS IMAP (2017)、MOE 初期評価 (2004))。
(8)ラットを用いた強制経口による13週間経口投与試験(5日/週)において、1.25 mg/kg/day(0.893 mg/kg/day、区分1の範囲)以上で腺胃及び前胃の出血、壊死、炎症、前胃の扁平上皮過形成が、2.5 mg/kg/day(1.79 mg/kg/day、区分1の範囲)以上で肝臓の重量増加がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、IRIS (2003)、AICIS IMAP (2017))。
(9)ラットを用いた強制経口による102週間経口投与試験(OECD TG453、7日/週)において、0.05 mg/kg/day(区分1の範囲)以上でCPK活性の減少 (毒性学的意義については不明) が、0.5 mg/kg/day(区分1の範囲)以上で死亡率の増加(死因不明)がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011、IRIS (2003)、AICIS IMAP (2017)、MOE 初期評価 (2004))。
(10)イヌを用いた強制経口による53週間経口投与試験(GLP、7日/週)において、0.5 mg/kg/day(区分1の範囲)以上で嘔吐が、1.5~2 mg/kg/day(区分1の範囲)以上で血清総タンパク質、カルシウム及びアルブミンの低値がみられたとの報告がある(NITE 初期リスク評価書 (2007)、CLH Report (2011) 、AICIS IMAP (2017)、MOE 初期評価 (2004))。
(11)ウサギを用いた3週間経皮投与試験(8時間/日、5日/週)において、7~63 mg/kg/day(90日換算:1.2~10.5 mg/kg/day:区分1)で局所影響(皮膚の紅斑、水腫、角化亢進、表皮肥厚、不全角化)の他、間質性腎炎、間質性肺炎がみられた(NITE 初期リスク評価書(2007)、AICIS IMAP (2017)、CLH Report (2011))。
10 誤えん有害性 分類できない
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)ラットを用いた2世代生殖毒性試験(強制経口投与)において、F0及びF1雌雄親動物では、最高用量の6 mg/kg/day群で死亡率の増加と呼吸器症状(ラ音、あえぎ等)の増加がみられた。この影響が投与液の誤えん(aspiration)による可能性が示唆されている(HSDB (Accessed July 2021))。
(2)妊娠ウサギを用いた発生毒性試験(強制経口投与)において、母動物に死亡例がみられたが、誤投与かアクロレインの誤えん(aspiration)のいずれかによるものであった(CLH Report (2011)、EU CLP CLH (2012))。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(珪藻)72時間ErC50 = 0.011 mg(EU CLP CLH, 2011)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
急速分解性に関する十分な情報が得られておらず、藻類(珪藻)の72時間NOErC = 0.0051 mg/L(EU CLP CLH, 2011)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


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