政府によるGHS分類結果

English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 56-23-5
名称 四塩化炭素
物質ID R03-B-024-METI, MOE
分類実施年度 令和3年度(2021年度)
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2018年度(平成30年度)   2009年度(平成21年度)   2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性(ICSC(2000), Merck(2015), GESTIS (Access on Aug 2021))である。
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性(ICSC(2000), Merck(2015), GESTIS (Access on Aug 2021))である。
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性(ICSC(2000), Merck(2015), GESTIS (Access on Aug 2021))である。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、四塩化炭素は水と結合すると、金属に対し腐食性を持つようになるとの情報(Hommel(1996))がある。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(5)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:2,500 mg/kg(SIAP (2011)、REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))
(2)ラットのLD50:2,350 mg/kg(MOE 初期評価 (2017))
(3)マウスのLD50:7,749 mg/kg(MOE 初期評価 (2017))
(4)ラットのLD50:2,800~10,180 mg/kgの間(CERI 有害性評価書 (2008))
(5)ラットのLD50:2,800 mg/kg(ACGIH (2001)、Patty (2012))
1 急性毒性(経皮) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:> 20,000 mg/kg(MOE 初期評価 (2017))
(2)ウサギのLD50:15,000 mg/kg(EPA Risk Evaluation (2020))
(3)ラットのLD50:5,070 mg/kg(MOE 初期評価 (2017))

【参考データ等】
(4)モルモットのLD50:> 2,130 mg/kg(SIAP (2011)、REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))
(5)モルモットのLD50:15,000 mg/kg(CERI 有害性評価書 (2008)、ACGIH (2001)、 EPA Risk Evaluation (2020) )

1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分4とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度の90%(108,000 ppm)より低いため、蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(6時間):7,228 ppm(4時間換算:8,852ppm)(SIAP (2011)、REACH登録情報 (Accessed Aug. 2021))
(2)ラットのLC50(4時間):8,000 ppm(MOE 初期評価 (2017))
(3)ラットのLC50(6時間):7,300 ppm (4時間換算:8,900 ppm)(MOE初期評価 (2017))
(4)ラットのLC50(4~6時間):7,300 ppm (4時間換算:7,300~8,900 ppm)(ACGIH (2001))

1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)~(3)の知見からは区分を判断できず、分類結果を変更した。

【参考データ等】
(1)ボランティア3人の親指を本物質に30分間浸した試験で、中等度の紅斑が認められたが1~2 時間後には消失した。また、ボランティアは浸漬直後に親指の灼熱感を訴えたが、10 分以内に症状は緩和した(CERI 有害性評価書 (2008)、DFG MAK (2002))。
(2)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(24時間適用、72時間観察)において、適用開始24時間及び72時間後に判定を行ったところ、中等度の皮膚刺激性が認められたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、NITE 初期リスク評価書 (2005)、 EHC 208 (1999))。
(3)ウサギ、モルモットを用いた皮膚刺激性試験(24時間適用)において、中等度の皮膚刺激性が認められたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EHC 208 (1999)、 ATSDR (2005))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)、(2)の知見からは区分を判断できず、分類結果を変更した。

【参考データ等】
(1)ウサギ(n=3)を用いた眼刺激性試験において、適用1~24 時間後に結膜の充血及び浮腫がみられたが、適用48時間後には異常は認められなかったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
(2)ウサギを用いた眼刺激性試験(14日観察)において、適用24、48、72時間後に眼刺激反応が認められたが、適用14日後までに完全に回復したとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008)、EHC 208 (1999)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1B


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は1.51(25%)、2.39(50%)、6.10(100%)であり、EC3値は58%と算出されたとの報告がある(EU REACH CoRAP (2019)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、ラットの肝細胞を用いた染色体異常試験、染色分体交換試験、小核試験、及びマウスの骨髄細胞を用いた小核試験で、結果はすべて陰性であった(EU REACH CoRAP (2019)、ATSDR (2005))。さらに、ラットの肝細胞を用いた複数の不定期DNA合成(UDS)試験、マウスの様々な臓器(肝臓、胃、腎臓、膀胱、肺、脳、骨髄)を標的としたDNA損傷試験(コメットアッセイ)では陰性、ラットとハムスターの肝臓におけるDNA付加体形成(脂質過酸化)で陽性、ラット、ハムスター、マウスの肝臓とDNAへの共有結合で陽性の結果が報告されている(ATSDR (2005))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験の殆どで陰性(一部陽性)、ほ乳類培養細胞を用いた試験系では、陰性、陽性、不明瞭の結果があり(EU REACH CoRAP (2019)、安衛法変異原性試験結果 (Accessed August 2021))、陽性の試験の多くでは、影響は本物質の細胞毒性による二次的な酸化的DNA損傷によって説明が可能と考えられる(EU REACH CoRAP (2019))。

【参考データ等】
(3)信頼性の高い試験の大部分(細菌復帰突然変異試験、in vivo小核試験/染色体異常試験、遺伝子改変動物を用いた試験)は陰性の結果と結論された。陽性の結果は遺伝子損傷試験で得られた(EU REACH CoRAP (2019))。
(4)本物質の遺伝毒性影響は一貫性して細胞毒性、脂質過酸化、及び/又は酸化的DNA損傷と密接に関連しているとEPAは結論した。変異原性作用が生じるとしても、酸化的ストレスや脂質過酸化産物による遺伝毒性機序を介して生じるとみられる。細胞毒性が高度に生じる条件下では、本物質の生体活性化物が遺伝毒性作用を発揮する可能性がある。これらの可能性の程度は大きくないが、主にDNA切断とそれに関連した結果で示された。異数性を導く染色体損失も限られた程度では生じる可能性がある(EPA Risk Evaluation (2020))。

6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1Bとした。本物質の肝臓腫瘍(良性及び悪性腫瘍)誘発性が実験動物2種、かつ2つのばく露経路で認められている。

【根拠データ】
(1)国内外の評価機関による既存分類結果として、IARCでグループ2Bに(IARC 71 (1999))、ACGIHでA2に(ACGIH (7th, 2001))、EPAでLに(IRIS (2010))、NTPでRに(NTP RoC (14th, 2016))、日本産業衛生学会では第2群Bに(産衛学会 許容濃度等の勧告(1986提案))、EUでCarc. 2に(CLP分類結果 (Accessed August 2021))、それぞれ分類されている。
(2)ラット又はマウスに78週間強制経口投与(5日/週)後にラットで32週間、マウスで12週間観察後に剖検した発がん性試験において、ラットでは肝臓の腫瘍性結節及び肝がん、マウスでは肝細胞がんと副腎腫瘍が認められた(EU REACH CoRAP (2019)、IRIS (2010)、CERI 有害性評価書 (2008))。また、マウスに120日間強制経口投与した試験でも、20 mg/kg/day以上で肝がん(ヘパトーマ)の用量依存的な発生頻度の増加がみられた(EU REACH CoRAP (2019))。
(3)ラット又はマウスに104週間吸入ばく露(6時間/日、5日/週)したがん原性試験において、ラットでは高用量群(125 ppm)の雌雄で肝細胞腺腫、肝細胞がん、肝細胞腺腫+がんの発生率の有意な増加が認められ、マウスでは低用量(5 ppm)から肝細胞腺腫(雌のみ)、中用量(25 ppm)以上で肝細胞がん、肝細胞腺腫+がんの発生率の有意な増加が認められ、さらに中用量以上の雄及び高用量(125 ppm)の雌雄には副腎褐色細胞腫の発生率増加も認められた(MOE 初期評価 (2017)、厚生労働省 委託がん原性試験 (1987)、EU REACH CoRAP (2019)、IRIS (2010))。
(4)本物質は「労働安全衛生法第28 条第3 項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針に関する公示」の対象物質に指定されている。

【参考データ等】
(5)5つの職業集団について、本物質の発がんリスクの調査が実施された。非ホジキンリンパ腫の情報を収集した4つの疫学研究のうち3つ(2つのコホート研究と1つのコホート内症例対照研究)で、本物質ばく露との相関が示唆された。しかし、これらの研究のすべてが四塩化炭素へのばく露を特に区別していなかったため、相関は統計的に有意ではなかった。4つ目の研究(別のコホート研究)では、四塩化炭素にばく露された男性が少なく、非ホジキン病のリスクは報告されていない(IARC 71 (1999)、EU REACH CoRAP (2019))。
(6)四塩化炭素ばく露と脳腫瘍(星細胞腫、神経膠腫、膠芽腫)との相関を示した疫学研究報告があるが、これらの腫瘍誘発を裏付ける有力な作用機序(MoA)の証拠となるデータは得られていない(EPA Risk Evaluation (2020))。
(7)EU REACH CoRAP (2019) では、本物質の発がん性分類をCarc. 2からCarc.1Bに変更すよう提案されている。

7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、区分1Bとした。親動物に一般毒性影響がみられる用量であるが、全胚吸収動物がみられており重篤な生殖毒性影響がみられていることを考慮して分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、親動物に軽微な影響として立毛、体重増加抑制がみられる用量(50、75 mg/kg/day)で、全胚吸収動物がみられた。妊娠6日から妊娠12日までの間で、いずれの日に単回経口投与(150 mg/kg)した場合に全胚吸収がみられるかを検討した結果、妊娠6日~10日までの投与では全胚吸収動物が認められたが、妊娠12日の投与ではこれは認められなかった。その結果、妊娠初期に投与した場合に胚致死作用に対する感受性が高いことが示唆された(EU REACH CoRAP (2019)、CERI 有害性評価書 (2008))。

【参考データ等】
(2)ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、親動物毒性(血清中GPT(ALT)活性上昇、体重増加抑制及び摂餌量減少)がみられる低用量群(334 ppm)から、児動物に発生影響(体重及び頭臀長の低値、皮下浮腫の発生率増加)がみられ、高用量群(1,004 ppm)では胸骨分節異常(二分、骨化遅延)の発生率増加がみられた(MOE 初期評価 (2017)、CERI 有害性評価書 (2008)、Patty (6th, 2012))。これらの発生影響に関して、EUでは生物学的意義がある変化とは考え難い(皮下浮腫は高用量群では統計的に有意ではなく、胸骨分節異常は対照群でもみられており、発生率の変動が大きい)との判断(EU REACH CoRAP (2019))、EPAではこれらは母動物毒性に関連した二次的影響の可能性が高いとの判断が示されている(EPA Risk Evaluation (2020))。
(3)化学物質による職業ばく露を受けた母親から生まれた子供を追跡調査した前向きコホート研究において、四塩化炭素ばく露と子供が妊娠可能年齢に到達した際の矮小児出産リスクとの間に相関はみられなかったが、統計的検出力が限られた研究報告である。これ以外に本物質のヒトの生殖発生影響に関する報告はない(EPA Risk Evaluation (2020))。
(4)本物質の繁殖能(受胎能)について評価に十分な信頼できる報告はない(REACH CoRAP (2019))。ラットを用いた吸入ばく露による三世代生殖毒性試験(50~400 ppm、8時間/日、10.5ヵ月間)において、親動物に死亡例がみられない用量で繁殖成績の低下がみられたとの報告(MOE 初期評価 (2017)、ATSDR (2005))があるが、原著は1936年と古く、比較が可能な同様の試験報告はない。Pattyによれば、本試験結果からは繁殖能の低下及び胚/胎児への発生異常の証拠はみられないとされている(Patty (6th, 2012))。EUやEPAでの最新の評価においても採用されていないことから分類根拠としない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、ヒトにおいて中枢神経系、消化管、肝臓及び腎臓に重大な影響がみられたことから、区分1(中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓)とした。

【根拠データ】
(1)ヒトにおいて、観察された主な影響は中枢神経系の抑制、肝不全に進行する肝臓障害、可逆性の腎尿細管障害に進行するおそれがある腎損傷であるとの報告がある(EU REACH CoRAP (2019))。
(2)高レベルの四塩化炭素蒸気へのヒトの職業的な急性ばく露又は長期ばく露の症例報告から、肝毒性及び腎毒性を示す情報がみられたとの報告がある。肝臓への影響は黄疸、血清酵素レベル増加、致死的な症例では肝臓壊死等があり、急性的な過剰ばく露症例では腎臓への遅延性影響も報告されている。その他には、消化管障害(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)、中枢神経系抑制(頭痛、めまい、無力感)の示唆的な神経学的影響がみられたとの報告がある(IRIS (2010))。
(3)本物質への急性吸入ばく露の症例報告の多くは、初期のめまい、吐き気に続き腹部不快感、肝臓及び腎臓影響と続発する腎不全及び死亡などが記述されている。ヒトの急性中毒の記述は共通しているが、信頼性のある定量的な報告はない(EPA Risk Evaluation (2020))。
(4)消火液に高濃度で含まれた本物質を火災時に約 2 時間吸入ばく露した労働者 6 人、別の火災で約 6 時間吸入ばく露した労働者 2 人の事例では、そのうち各 1 人に数時間後から食欲不振や頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、発熱がみられるようになり、重度の肝障害や腎不全を発症して 1 人は 4 日後、他の 1 人は 8 日後に入院した。2 人は血液透析治療などによって 3~4 週間後に回復したが、火災時に同じ条件下で同じ時間のばく露を受けた 5 人ではばく露時に気道や眼の刺激が軽度にみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2017))。

【参考データ等】
(5)ラットを用いた単回吸入ばく露試験において、45.93 mg/L(区分に該当しない範囲)で中枢神経の麻痺を起こした後、昏睡に至り、死亡(全例)がみられたとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2008))。

9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、ヒトでは、消化管、肝臓、中枢神経系への影響がみられ、動物では、(4)、(5)より、肝臓及び腎臓に影響がみられた。以上のことから、区分1(中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓)とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)本物質の蒸気に6週間~3ヵ月間職業的にばく露(濃度不明)された結果、消化管障害(吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振)、肝臓影響(黄疸)、神経系影響(頭痛、めまい)を生じたとの報告がある(EU REACH CoRAP (2019))。
(2)本物質にばく露された3つの化学工場の作業者135人の肝機能の横断研究(対照群:非ばく露作業者276人)の結果、四塩化炭素の職業ばく露による肝由来血清中酵素への影響が示された。特に、ばく露レベルの中及び高ばく露群において、血清酵素の変化はばく露に関連した影響として認められ、低ばく露群ではヘマトクリットの有意な減少のみみられたとの報告がある(EU REACH CoRAP (2019)、DFG MAK (2002)、SCOEL (2009))。
(3)45~97 ppmの四塩化炭素蒸気にばく露された作業者17人に食欲不振、吐き気、嘔吐、上腹部不快感・膨満感、抑うつ、過敏、頭痛、めまいがみられた。症状は普通は作業週の後半に生じ、週末には回復した。2年間にわたりこれらの症状を訴えた作業者1名では血清ASTレベルの上昇もみられたとの報告がある(EU REACH CoRAP (2019)、DFG MAK (2002)、SCOEL (2009))。
(4)ラットとマウスを用いた12週間吸入ばく露試験(蒸気、6時間/日、5日/週)において、ラットでは0.63 mg/L(90日換算:0.42 mg/L、区分2の範囲)、マウスでは0.13 mg/L(90日換算:0.0867 mg/L、区分1の範囲)で血清GPT、SDHの有意な上昇と肝細胞壊死の有意な増加がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2017))。
(5)ラットを用いた104週間吸入ばく露試験(蒸気、6時間/日、5日/週)において、0.03 mg/L(0.0214 mg/L、区分1の範囲)で鼻腔の好酸性変化(雌)、尿中の硝酸イオン及びたんぱく質濃度変化が、0.16 mg/L(0.114 mg/L、区分1の範囲)で体重増加抑制、血清GOT(AST)、GPT(ALT)の上昇、肝臓の脂肪変性・線維形成、慢性進行性腎症の憎悪、尿検査異常、鼻腔の好酸性変化(雄)、変異細胞巣(雌)が、0.786 mg/L(0.561 mg/L、区分2の範囲)で慢性進行性腎症の憎悪と腫瘍の発生増加に伴う生存率の有意な低下、尿毒症性肺炎の発生率の増加、肝硬変、好塩基性細胞巣の発生率の増加(雄)がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2017)、CERI 有害性評価書 (2008)、厚労省 がん原性試験(1987)、IRIS (2010))。
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(ムレミカヅキモ)72時間ErC50 = 0.46 mg(AICIS IMAP, 2013、MOE初期評価, 2017)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(METI既存点検結果, 1979))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.49 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)から、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階(魚類)に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(メダカ)の96時間LC50 = 7.6 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)から、区分2となる。
以上の結果から、区分2とした。慢性毒性の分類方法の変更及び新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。
12 オゾン層への有害性 区分1


警告
H420 P502 モントリオール議定書の附属書に列記された物質であるため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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