項目 | 情報 |
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CAS登録番号 | 4685-14-7 |
名称 | 1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウム(別名:パラコート) |
物質ID | R03-B-017-MHLW |
分類実施年度 | 令和3年度(2021年度) |
分類実施者 | 厚生労働省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 2006年度(平成18年度) |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。なお、可燃性との情報(HSDB in PubChem (Accessed Oct 2021))がある。 |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 175~180℃で分解(HSDB in PubChem (Accessed Jan 2022))との情報により、175℃まで分解しないと推定でき、常温で発火しないと考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。 |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、金属を腐食するとの情報(HSDB in PubChem (Accessed Oct 2021))がある。 |
17 | 鈍性化爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分3 |
危険 |
H301 | P301+P310 P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分3とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:100 mg/kg(ACGIH (2018)) (2)ラットのLD50(パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)):112~350 mg/kgの間(パラコートイオン換算:81.1~253 mg/kgの間)(JMPR (2003)) (3)ラットのLD50:100~300 mg/kgの間(JMPR (2003)) 【参考データ等】 (4)毒物及び劇物取締法において、1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムヒドロキシド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤として毒物に指定されている。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分3 |
危険 |
H311 | P302+P352 P361+P364 P280 P312 P321 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)より、区分3とした。なお、ガイダンスに基づき分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:240 mg/kg(ACGIH (2018)) 【参考データ等】 (2)ラットのLD50:80~660 mg/kgの間(JMPR (2003)) (3)ラット(雄)のLD50:80 mg/kg(ACGIH (2018)) (4)ラット(雌)のLD50:90 mg/kg(ACGIH (2018)) (5)毒物及び劇物取締法において、1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムヒドロキシド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤として毒物に指定されている。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)毒物及び劇物取締法において、1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムヒドロキシド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤として毒物に指定されている。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分1 |
危険 |
H330 | P304+P340 P403+P233 P260 P271 P284 P310 P320 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間):0.0006~0.0014 mg/Lの間(JMPR (2003)、ACGIH (2018)) 【参考データ等】 (2)毒物及び劇物取締法において、1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムヒドロキシド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤として毒物に指定されている。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 |
危険 |
H314 | P301+P330+P331 P303+P361+P353 P305+P351+P338 P304+P340 P260 P264 P280 P310 P321 P363 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)本物質を噴霧した作業者について、皮膚の刺激と潰瘍が3日以内に生じ、腎臓、肝臓、呼吸器の顕著な症状が5日までに発現した(ACGIH (2018))。 (2)本物質製剤(カチオンを33%含有)について、ウサギ(n= 3)を用いた皮膚刺激性試験(4時間適用、34日間観察)において、極めて軽微な紅斑(スコア:0.7~1.0(フルスコア:4))が3例全例に、極めて軽微な浮腫(スコア:1.0(フルスコア:4))が1例に、剥離・肥厚・痂皮が1例に認められた。72時間後の皮膚一次刺激スコアは0.5であった。回復までの日数は、紅斑では2例が2~3日、残りの1例が27日間を要した。また、浮腫は7日間、その他の所見は34日間を要したとの報告がある(EPA Pesticides (1997))。 (3)本物質製剤(カチオンを33%含有)について、ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験において、2例では4日後に回復する軽度の紅斑を生じたが、残りの1例でみられた影響は23日以上持続した(ACGIH (2018))。 【参考データ等】 (4)本物質を噴霧した作業者134人に対する調査において、過去24ヵ月間に皮膚の発疹と火傷(53%)、しぶきによる結膜炎を伴う眼の傷害(42%)、爪の損傷(58%)の報告があった(ACGIH (2018))。 (5)0.5~2%の本物質溶液について、マウスとラットを用いた単回及び21日間反復経皮毒性試験の結果、用量相関的な中毒性皮膚炎(紅斑、浮腫、剥離、壊死)がみられた(EHC 39 (1984))。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
危険 |
H318 | P305+P351+P338 P280 P310 |
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。 (2)本物質の6.25~100%の5濃度の溶液をウサギの眼に点眼した結果、6.25及び12.5%溶液では重度の結膜反応を生じ、25及び50%では虹彩炎とパンヌスも生じた。50%では角膜混濁、虹彩炎及び結膜炎が認められた。100%原液を片眼に0.2 mL又は50%希釈液を両眼に0.2 mL投与されたウサギは全例とも6時間以内に死亡したとの報告がある(EHC 39 (1984))。 (3)本物質製剤(カチオンを33%含有)について、ウサギ(n= 3)を用いた眼刺激性試験(28日間観察)において、角膜影響(角膜の1/4~1/2の領域に軽微ないし軽度の混濁)及び結膜影響(軽微から重度の発赤及び分泌物、軽微ないし軽度の浮腫)が認められ、角膜影響は17日目までに回復した。結膜影響は浮腫が14日目、発赤が28日目までに回復したが、分泌物は2/3例で観察期間内に回復しなかったとの報告がある(EPA Pesticides (1997))。 【参考データ等】 (4)本物質を噴霧した作業者134人に対する調査において、過去24ヵ月間に皮膚の発疹と火傷(53%)、しぶきによる結膜炎を伴う眼の傷害(42%)、爪の損傷(58%)の報告があった(ACGIH (2018))。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)モルモットを用いたMaximisation試験において、皮膚感作性はみられなかった(JMPR (2003))。 (2)モルモットを用いた皮膚感作性試験において、皮膚感作性はみられなかった(EHC 39 (1984)、ACGIH (2018))。 【参考データ等】 (3)本物質製剤(カチオンを33%含有)について、モルモットを用いたMaximisation試験において、皮膚感作性はみられなかった(EPA Pesticides (1997))。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)In vivoでは、パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)を被験物質とした試験として、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験(単回強制経口投与、パラコートカチオン:15~150 mg/kg)、マウスを用いた優性致死試験(5日間強制経口投与後無処置雌と交配、パラコートカチオン:0.04~4.0 mg/kg/day)、ラットを用いた不定期DNA合成試験(単回強制経口投与、パラコートカチオン:45~120 mg/kg)では、いずれも陰性であった(EPA Pesticides (1996))。 (2)In vitroでは、パラコートジクロリドを被験物質とした試験として、細菌を用いた復帰突然変異試験で陰性、マウスリンパ腫細胞L5178Yを用いたマウスリンフォーマ試験で弱陽性(S9+)、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験で弱陽性の結果と報告された(EPA Pesticides (1996))。 【参考データ等】 (3)パラコートは広範囲のin vitro及びin vivo遺伝毒性試験で陽性、陰性の混在した結果が示されてきた。DNA傷害や染色体異常をエンドポイントとする試験では共通して陽性の結果が得られた。パラコートは活性酸素分子種を産生することが知られており、その性質が遺伝毒性の原因となっている可能性があると利用可能なデータからは示唆される。したがって、正常な抗活性酸素防御機構の機能が損なわれていないならば、遺伝毒性活性が明瞭に現れない閾値が存在する。JMPRはパラコートがヒトに対し遺伝毒性のリスクを有するとは考えられないと結論した(JMPR (2003))。 |
6 | 発がん性 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)~(4)より区分に該当しない。なお、新たな情報源に基づき分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)国内外の評価機関による既存分類結果として、パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)について、EPAの初期評価でグループC (IRIS (1988))、のちに農薬としての再評価でグループEに (EPA OPP Annual Cancer Report (2020))、パラコート陽イオン(CAS番号 4685-14-7)とジクロリドを含む塩について、ACGIHではA4に (ACGIH (2018)) 分類されている。 (2)ラッを用いた2年間混餌投与による発がん性試験(25~150 ppm)において、初期のEPA評価では高用量(150 ppm)群の雌雄で頭部腫瘍の発生頻度に有意な増加が認められたと報告された(IRIS (1988))。しかし、その後の農薬としての再評価において、頭部腫瘍が鼻腔、口腔、皮膚など形態学的にも生理学的にも異なる頭部の4部位を一纏めにした腫瘍発生頻度として評価されたもので、独立した各部位別に統計処理した場合には腫瘍発生頻度に有意差は認められず、本物質は頭部腫瘍の発生増加を生じないと結論された(EPA Pesticides (1996))。JMPRの評価では、上記試験において、雄の各投与群で肺腺がんが少数例にみられ、雌の高用量群では肺腺腫の発生頻度の増加が認められたが、その後に提出されたラットの発がん性試験では肺腫瘍の発生増加は確認されなかった。全体で3つの長期投与試験のうち1試験のみで肺腫瘍の発生増加がみられたことから証拠の重みづけに基づき本物質はラットに発がん性を示さないと結論した(JMPR (2003))。 (3)マウスを用いた35週間混餌投与(12.5~100 ppm)後、投与群には125 ppmを生涯投与した発がん性試験において、腫瘍の発生増加は認められなかった(IRIS (1988))。JMPRの評価でも本試験を含む2試験で本物質はマウスに腫瘍発生を誘発しないと考えられると結論した(JMPR (2003))。 (4)ACGIHは2年間混餌投与によるラットの1試験及びマウスの2試験中1試験で、高用量(ラット:150 ppm、マウス:100 ppm)群で肺腺腫と肺の腺腫様過形成が検出されたが、本物質摂取群の肺腺腫の発生頻度は対照群のそれを上回るものではなく、パラコートはラットとマウスの生涯混餌投与後に肺腫瘍の有意な増加を生じなかったと結論し、A4に分類した(ACGIH (2018))。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 (1)では児動物で肺障害による死亡率増加が認められるが、詳細が不明であること、また(2)~(7)のように親動物の一般毒性影響発現量においても懸念すべき生殖発生影響を認めない試験結果があることを考慮し、分類できない。新たな情報源も利用し分類結果を見直した。 【参考データ等】 (1)マウスを用いた強制経口及び腹腔内投与による発生毒性試験において、催奇形性の可能性は低いことを示す結果が得られた。パラコートは妊娠後期(妊娠21日)に投与した場合、ラット胎児の肺組織に結合するが、妊娠初期(妊娠8~16日)の投与では結合しない。ラットを用いた混餌投与(100~300 ppm)による生殖毒性試験では、受胎への有害影響も出生児に対する発生率、死亡率へ影響もみられなかった。マウスの生殖毒性試験では母動物に125 ppmを投与した結果、児動物に肺傷害に関連した死亡率の増加が認められた(ACGIH (2018))。 (2)ラットを用いた3つの生殖毒性試験報告(うち1つが(2))があり、全体として親動物及び児動物の毒性のNOAELは各々パラコートイオン換算で1.67 mg/kg/day及び5.0 mg/kg/dayとされた。いずれの試験においても受胎能の低下はみられなかった。一方、ラットとマウスを用いた各々2つの発生毒性試験((3)~(6))において、ラットでは母動物毒性、発生毒性とも最も低いNOAELは、母動物の全身症状及び体重増加抑制、胎児の体重低値及び骨化遅延に基づいた1 mg/kg/dayであった。マウスの試験では、母動物毒性・発生毒性ともNOAELはこれより高値であった。ラット及びマウスのいずれの試験においても催奇形性は認められなかった(JMPR (2003))。 (3)パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)を被験物質としたラットを用いた多世代生殖毒性試験(25~150 ppm:パラコートイオン換算:1.25~7.5 mg/kg/day)において、中用量(75 ppm)以上でF0~F2雌雄親動物に肺胞組織球増多症がみられ、高用量(150 ppm)群のF0~F2雌親動物には肺傷害(うっ血・浮腫・線維化・硝子膜形成・炎症性細胞浸潤・過形成)による死亡率の増加が認められた。しかし、高用量群まで生殖毒性影響は検出されなかった(EPA Pesticides (1997))。 (4)パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)を被験物質とした雌ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠7~16日、パラコートイオン換算:1~8 mg/kg/day)において、最高用量まで母動物毒性、発生毒性ともみられなかった(EPA Pesticides (1997))。 (5)パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)を被験物質とした雌ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日、1~10 mg/kg/day)において、母動物毒性として中用量以上で症状(立毛・削痩・円背姿勢)、体重増加抑制、高用量では死亡6例(29ないし30例中)、肺及び腎臓病変が認められたが、胎児には中用量以上で軽微な影響として骨化遅延(前肢と後肢の指骨)がみられたのみであった(EPA Pesticides (1997))。 (6)パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)を被験物質とした雌マウスを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日、パラコートイオン換算:7.5~25 mg/kg/day)において、顕著な母動物毒性(死亡、全身症状(立毛、努力呼吸、円背姿勢、低体温等)、体重減少/体重増加抑制など)がみられる高用量で妊娠率の低下傾向、胎児に体重低値、骨化遅延(後頭骨、尾中心骨)又は未骨化(後肢の距骨)及び骨格変異(第14過剰肋骨)からなる軽微な範囲の発生影響に限られた(EPA Pesticides (1997))。 (7)パラコートジクロリド(CAS番号 1910-42-5)を被験物質とした雌マウスを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日、1~10 mg/kg/day)において、母動物に体重増加抑制がみられる高用量で、胎児に軽微な発生影響(第4胸骨分節の部分骨化の増加)がみられた(EPA Pesticides (1997))。 (8)妊娠28週及び妊娠7ヵ月目にパラコートを摂取した妊婦2例の症例報告では母親、胎児ともに死亡したが、死亡胎児からはパラコート中毒に関連した兆候は認められなかった。一方、妊娠20週でパラコートを摂取した母親の症例では、摂取後も妊娠は維持され出産した。出生児は生後3歳まで追跡調査されたが、発育に異常は認められず、パラコートはヒトで催奇形性のリスクは低いことが示唆された(EHC 39 (1984))。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓、中枢神経系) |
危険 |
H370 | P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
【分類根拠】 (1)~(4)より、ヒトの知見において呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓、中枢神経系への影響がみられ、(5)、(6)より、動物の知見において呼吸器、腎臓への影響がみられたことから、区分1(呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓、中枢神経系)とした。 【根拠データ】 (1)ヒトにおいて、低用量(< 20 mg/kg)では口腔及び消化管粘膜への局所刺激を生じ、中用量(20 < 40 mg/kg)では僅かな腎臓、肝臓及び肺傷害に続いて肺の線維形成及び呼吸不全をきたし2~3週間以内に死亡する。40 mg/kg以上の高用量では急速に進行し1~7日後に死に至る複数の臓器傷害を生じるとの報告がある(ACGIH (2018))。 (2)81歳男性はパラコート溶液を大腿部にこぼしズボンを貫通する最小限の経皮ばく露(総体表面積の4%)の6日後に腎不全及び呼吸不全により死亡したとの報告がある。また、パラコートで濡れたズボンを12時間脱がなかったために皮膚の糜爛が進行し、呼吸器症状により患者は入院したとの報告がある(ACGIH (2018))。 (3)農薬を仕事で使用したことがない44歳男性がパラコート濃縮液をうっかり陰嚢と会陰部に適用した。26日後に腎不全、呼吸障害及び肝傷害と診断されたとの報告がある(ACGIH (2018))。 (4)ヒトにおいて、パラコート摂取後の中毒性心筋炎が報告されているほか、高用量のパラコート摂取により、不安、けいれん、運動失調、意識の混濁、及び中枢神経系全体に出血性白質脳症がみられたとの報告がある(EHC 39(1984))。 (5)ラットを用いた単回経口投与試験において、110 mg/kg(区分1の範囲)で下痢、喘鳴、不規則呼吸がみられた後に体重減少、肺の浮腫、うっ血及び出血が5~6日目に顕著に現れ、10日目までに肺線維症がみられたとの報告がある(ACGIH (2018))。 (6)ラットを用いた単回吸入ばく露試験(粉塵、6時間)において、0.0135 mg/L(パラコートイオンでの4時間換算:0.0147 mg/L、区分1の範囲)で腎臓の蒼白化と腫脹、及び肺の変化(うっ血、時折の点状出血、気管支及び血管周囲の多形核白血球及び組織球の数の増加)がみられたとの報告がある(EPA Pesticides (1997))。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(呼吸器、肝臓、腎臓、血液系) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
【分類根拠】 (1)より、ヒトの知見において呼吸器、肝臓、腎臓への影響が、(2)~(4)より、区分1及び2の範囲で呼吸器、血液系への影響がみられたことから、区分1(呼吸器、肝臓、腎臓、血液系)とした。なお、(5)より、中枢神経系は標的臓器として採用していない。 【根拠データ】 (1)本物質を含む製剤をこぼしたり、噴霧装置からの漏れや噴霧作業中に事故的にばく露され、その結果長期にわたり皮膚及び衣服に接触したため、大量ばく露を受けた中毒者から肺の浮腫と線維化、腎不全と肝不全の報告がある。気中パラコートのばく露による肺傷害の有害性は粒子のサイズに依存すると思われるとの報告がある(ACGIH (2018))。 (2)ラットを用いた混餌投与による90日間反復経口投与試験において、300 ppm(15 mg/kg/day、区分2の範囲)で肺への影響(肺胞内出血、び漫性線維化及び上皮の増殖)がみられた(ACGIH (2018))。 (3)マウスを用いた混餌投与による1年間がん原性性試験において、100 ppm(5 mg/kg/day、区分1の範囲)で死亡率増加、赤血球数・ヘモグロビン・血清タンパクの減少、ヘマトクリット・糖・赤血球コリンエステラーゼ活性の減少(雄)がみられ、眼の病変はみられなかったとの報告がある(EHC 39 (1984))。 (4)ラットを用いた飲水投与による2年慢性毒性/がん原性併合試験において、12.25 mg/kg/day(雄、区分2の範囲)、15.59 mg/kg/day(雌、区分2の範囲)で死亡率増加、赤血球数・ヘモグロビン・血清タンパクの減少、ヘマトクリット・糖・赤血球コリンエステラーゼ活性の減少(雄)がみられ、眼の病変はみられなかったとの報告がある(EHC 39 (1984))。 (5)中枢神経系への影響について、動物では致死量を投与した場合、ヒトでは極めて高用量の場合にみられるものであるとの記載がある(EHC (1984))。 |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性 短期(急性) | - |
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- | - | - |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | - |
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12 | オゾン層への有害性 | - |
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