項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 10588-01-9 |
名称 | 重クロム酸ナトリウム |
物質ID | m-nite-10588-01-9_v1 |
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項目 | 情報 |
---|---|
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危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
2 | 可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
3 | エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
4 | 酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
5 | 高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
6 | 引火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
7 | 可燃性固体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 不燃性(Weiss(2nd,1985), ICSC(J)(2005))である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
8 | 自己反応性化学品 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 分子内に爆発性または自己反応性に関連する原子団を含まない。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
9 | 自然発火性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
10 | 自然発火性固体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 不燃性(Weiss(2nd,1985), ICSC(J)(2005))である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
11 | 自己発熱性化学品 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 不燃性(Weiss(2nd,1985), ICSC(J)(2005))である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 水によく溶ける(安全性 DB(1994))、水溶解度187g/100g H2O(25℃)(Lide(85th, 2004))および水とは反応しない(Weiss(2nd,1985))に基づき区分外とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
13 | 酸化性液体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
14 | 酸化性固体 | 区分に該当しない |
- |
- | - | 酸化性の性状を有しない(no oxidizing properties)(IUCLID(2000))という情報があり、区分3までには該当しないと判断されるため区分外とした。なお、強力な酸化剤であり、可燃性物質や還元性物質と反応する(ICSC(J)(2005))という情報もあり、また重クロム酸アンモニウムはUN1439のクラス5.1PGIIIである。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
15 | 有機過酸化物 | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | 無機化合物である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
16 | 金属腐食性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
17 | 鈍性化爆発物 | - |
- |
- | - | - | - | - |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分3 |
危険 |
H301 | P301+P310 P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
List 1のデータとして、4件のラットLD50値(59 mg/kg [雄]、46 mg/kg [雌](以上EU-RAR 53(2005))、221.9 mg/kg [雄:二水和物からの換算値]、159.1 mg/kg [雌:二水和物からの換算値](以上厚労省報告(access on Jun. 2009)))があり、3件が区分3、1件が区分2に該当するので、該当数の多い区分3とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分3 |
危険 |
H311 | P302+P352 P361+P364 P280 P312 P321 P405 P501 |
ウサギLD50値 960 mg/kg(EU-RAR 53(2005))に基づき、区分3とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 区分に該当しない(分類対象外) |
- |
- | - | GHSの定義による固体である。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分2 |
危険 |
H330 | P304+P340 P403+P233 P260 P271 P284 P310 P320 P405 P501 |
ラットLC50値 0.2 mg/L/4h(EU-RAR 53(2005))に基づき、区分2とした。なお、試験方法にaerosolと記載されているため「粉塵・ミスト」の基準値を適用した。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 |
危険 |
H314 | P301+P330+P331 P303+P361+P353 P305+P351+P338 P304+P340 P260 P264 P280 P310 P321 P363 P405 P501 |
試験物質を溶液または湿らせた状態でウサギに4時間適用による紅斑と浮腫の程度はグレード3以下であったが、6日後も皮膚反応が残り(EU-RAR 53(2005))、また、ウサギに500 mgを24時間適用した試験では非常に強い刺激性と一部に腐食性が認められている(IUCLID(2000))。一方、ヒトでは皮膚接触により小水疱、丘疹、うっ血などを起こすが、特にクロム潰瘍と呼ばれる潰瘍形成が大きな問題であるとの記述(EHC 61(1988))があり、また、ヒトにおける経験では水溶性の高いクロム化合物との直接的接触が重度の熱傷を起こしている(EU-RAR 53(2005))。以上より、動物試験で腐食性、ヒトでは潰瘍形成や重度の熱傷の記載により、EU分類がC:R34である(EU-Annex I(2005))ことも踏まえ、区分1とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
危険 |
H318 | P305+P351+P338 P280 P310 |
ウサギに本物質50 mgを適用により、強い刺激性と角膜の腐食性が認められた(IUCLID(2000))こと、ヒトでは高い水溶解性を有するクロム酸化合物を誤って眼にはねかけて傷害を起こし、角膜と結膜の炎症、さらに重度の場合には角膜の糜爛と潰瘍が詳述されている症例報告が数多くある(EU-RAR 53(2005))ことから区分1とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
4 | 呼吸器感作性 | 区分1 |
危険 |
H334 | P304+P340 P342+P311 P261 P284 P501 |
六価クロムの吸入が喘息を起こす証拠として多くの症例報告があり、適切に実施されたいくつかの気管支誘発試験では陽性所見が得られている(EU-RAR 53(2005))。さらに、クロムとニッケルにばく露された喘息患者を用いた二重盲検試験において喘息の主な原因がクロムである(EHC 61(1988))ことが示され、クロムは喘息につながる感作を起こし得る(EHC 61(1988))と記述されているので、日本産業衛生学会でクロムおよびクロム化合物として気道感作性物質の第2群に分類されている(産衛学会勧告(2008))ことおよびEU分類がR42/43であること(EU-Annex I(2005))も考慮に入れ、区分1とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
クロム酸塩にばく露の結果として皮膚感作性が多くの職業で観察され、特にセメントを扱う建築業では多い(DFGMAK-Doc. 7(1996))と述べられている。また、クロムは重大な皮膚感作性物質であり、感作には6~9ヵ月を要するとの記述、クロムまたはクロム酸塩が皮膚感作性を有することを示す報告が他にも数多くある(EHC 61(1988)。さらに、重クロム酸カリウムについてモルモットのマキシマイゼーション試験では陽性率53%(8/15)と陽性を示した(KemI-Riskline(2000))こと、日本産業衛生学会でクロムおよびクロム化合物が皮膚感作性物質として第1群に分類されている(産衛学会勧告(2008))こと、EU分類がR42/43である(EU-Annex I(2005))ことも考慮に入れ、区分1とした。 |
平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分2 |
警告 |
H341 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
ラット(またはマウス)に腹腔内投与による骨髄細胞を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)において、陽性結果(EU-RAR 53(2005)、HSDB(2009))に基づき区分2とした。なお、ラットに腹腔内投与による肝臓、腎臓または末梢血を用いたDNA損傷試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)で陽性(IUCLID(2000))であり、in vitro試験おいては、エームス試験(厚労省報告(access on Jun. 2009))、チャイニーズハムスターの培養細胞(CHLおよびCHO)を用いた染色体異常試験(厚労省報告(access on Jun. 2009)、IARC 49(1999))、およびヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験(IARC 49(1999))ではいずれも陽性が報告されている。 |
平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
6 | 発がん性 | 区分1A |
危険 |
H350 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
六価クロム化合物として、IARCの評価でグループ1(IARC 49(1990))、ACGIHの評価でA1(ACGIH(2001))、日本産業衛生学会勧告で第1群(産衛学会勧告(2008))にそれぞれ分類されていることに基づき区分1Aとした。なお、クロム化合物生産工場の労働者を対象とした疫学調査が日本、米国、英国を始め世界各国で実施され、クロム化合物ばく露による肺がん発生率の有意な増加が報告されている(IARC 49(1990))。動物試験ではラットに18ヵ月吸入ばく露後に12ヵ月経過後の観察で、対照群で見られなかった肺腫瘍(0/37)が高用量群で観察(3/19)されている(IARC 49(1990))。 |
平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
危険 |
H360 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
【分類根拠】 本物質(別名:二クロム酸ナトリウム)の生殖影響に関する情報は、ヒトはなく、実験動物も限られる。ただし、本物質は水溶性の無機六価クロム化合物であり、生体内では六価クロムとして機能すると考えられるため、重(二)クロム酸カリウム(CAS:7778-50-9)の動物試験データが利用可能と判断した。 実験動物では、水溶性六価クロム化合物 (重クロム酸カリウム) の交配試験成績として、(1)より雌に経口投与した後に無処置の雄と交配した結果、又は妊娠期に経口投与した結果、ラット、マウスともに着床前又は着床後の胚/胎児死亡・吸収が顕著に認められたが、生存胎児には低体重に加え、皮下出血、尾の奇形が認められた。また、(2)より雄の性機能(交尾・射精)への有害影響、(3)より雌の卵巣に機能的・器質的に有害影響を生じることで様々な生殖毒性影響の可能性が示された。また、(4)のように本物質を雄ラットに対して、あるいは重クロム酸カリウムを雄のマウス又はサルに対して反復経口(混餌・飲水)投与した場合に、雄性生殖器及び精子形成の障害が認められた。 以上、主にカリウム塩の経口投与試験に伴う生殖能への影響、発生影響が本物質にも当てはまると考えられるが、一方で、ヒトへの影響として、六価クロムの職業ばく露による知見は(5)に限られることから区分1Bとした。なお、本物質自体のデータに加え、カリウム塩等の情報も利用し、分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)雌ラット、又は雌マウスに重クロム酸カリウムを20日間飲水投与した後に無処置の雄と交配させた結果、着床前後の胚/胎児死亡による吸収が顕著であったが、生存胎児には低体重、骨格形成遅延に加えて、皮下出血斑、尾曲り、短尾等の外表異常が認められた。また、妊娠マウスに重クロム酸カリウムを飲水投与した試験でも、母動物毒性用量で胎児に皮下出血、尾の異常がみられている(CICAD(2013)、ATSDR(2012)、EU-RAR(2005))。 (2)雄ラットに重クロム酸カリウムを12週間飲水投与後に無処置の雌と交配させた結果、交尾行動の変化として、マウント回数の減少、射精した雄の割合の減少、射精に至るまでの時間の延長、射精の頻度の減少が認められた(CICAD(2013))。 (3)雌ラットに重クロム酸カリウムを20日間又は90日間飲水投与した後に無処置の雄と交配させた結果、交尾率、受胎率の低下、着床前又は着床後の胚損失の増加、さらに高用量では黄体数の減少や性周期の延長や乱れが認められた。また、雌マウスに二クロム酸カリウムを20日間飲水投与した結果、成熟ステージの異なる卵胞数の減少、1匹当たりの卵子数の減少、卵巣に組織変化(血管の増殖・拡張、卵胞細胞の核濃縮、閉鎖卵胞)が認められた(CICAD(2013)、ATSDR(2012))。 (4)雄ラットに本物質を90日間経口投与した結果、精巣毒性(組織学的・生化学的変化)、精子形成能の低下が、また雄マウスに重クロム酸カリウムを7週間混餌投与した結果、精細管の変性、精子数の減少、精子の形態異常がみられた(CICAD(2013))。さらに、雄サルに重クロム酸カリウムを最長6ヵ月間飲水投与した試験で、2ヵ月後に精子数及び精子の運動能の減少がみられ、6ヵ月後には精子形成障害、精巣・精巣上体に組織変化(管腔の閉塞、生殖細胞の著減、ライディッヒ細胞の過形成、セルトリ細胞の線維化)が認められた(ATSDR(2012))。 【参考データ等】 (5)六価クロムへの職業ばく露による精子の質に関する疫学調査では、形態的に異常な精子の割合の増加、精子数の減少及び精子の運動性低下がみられたとの報告がある(CICAD (2013)、ATSDR(2012))。また、重クロム酸製造施設の女性作業者の間で、中毒症や妊娠及び出産中の合併症の頻度が増加したと報告されたが、合併症及び中毒症の本質は明らかにされなかった(CICAD(2013))。 (6)雄ラットに本物質を90日間、又は6ヵ月間吸入ばく露させた試験では、精巣に異常は認められなかった。また、ラットを用いた本物質吸入ばく露による3世代試験では、生殖発生影響を検出できなかった。いずれの試験も1濃度(0.1又は0.2 mg Cr/m3)のみの試験であった(CICAD(2013))。 (7)本物質の二水和物 (CAS:7789-12-0)について、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性試験(OECD TG 422)では、雌親動物に摂餌量減少、血液・胃・腎臓への影響など一般毒性影響のみられる用量で妊娠期間の延長がみられたが、受胎能に影響はなく、分娩や児動物への影響もみられなかった (厚労省既存化学物質毒性データベース(Accessed Jan. 2019))。 (8)EU CLPではRepr. 1Bに分類されている。日本産業衛生学会はクロム及びクロム化合物を生殖毒性第3群に分類している(産衛学会生殖毒性分類の提案理由書(2014))。 |
平成30年度(2018年度) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(呼吸器系、腎臓、肝臓) |
危険 |
H370 | P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
当該物質の経口ばく露による死亡の症例報告は多数あり、生存例における顕著な影響として、肝臓の壊死、腎尿細管の壊死の記載(EU-RAR 53(2005)、EHC 61(1988))があり、また、六価クロム化合物の経皮吸収によっても腎臓障害が起きる(EU-RAR 53(2005))と述べられている。これらの知見により区分1(肝臓、腎臓)とした。また、ヒトの症例報告において、水溶液のミストの吸入ばく露が鼻腔と胸部の疼痛を伴う気道の刺激と炎症、咳、呼吸困難、チアノーゼの症状(EU-RAR 53(2005))を起こすと述べられ、本物質摂取18.5時間後に死亡した22ヵ月男子の剖検所見として、肺水腫、重度の気管支炎、急性気管支肺炎が報告されている(HSDB(2000))。以上より区分1(呼吸器系)とした。したがって、本項における分類は区分1(呼吸器系、腎臓、肝臓)となる。なお、ヒトにおける経口ばく露の所見として、消化管の出血およびそれに伴った造血器官の毒性が記載されている(EHC 61(1988))が、腐食性物質を経口投与した場合の局所影響とみなされ、本項では分類対象としなかった。 |
平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(呼吸器系、血液系) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
クロムの生産やメッキ工場の労働者を対象とした疫学調査において、クロム化合物の継続的接触が鼻中隔の潰瘍と穿孔をもたらしたとする数多くの報告(EHC 61(1998)、EU-RAR 53(2005)、IRIS(1998))に加え、職業ばく露により気管支炎、気管支肺炎、気腫、肺線維症、肺機能の低下などの報告もある(EHC 61(1998)、EU-RAR 53(2005))ことから、区分1(呼吸器系)とした。一方、クロム化合物のばく露を受けた94人の被験者に軽度の正色素性貧血が見られたとの報告(EHC 61(1998))、また、クロム合金工場の近隣で井戸水汚染による影響として、白血球増加症や未熟な好中球の存在が報告され(IRIS(1998))ていること、さらに、動物試験ではラットに30 mg/kg/dayを約45日間経口投与(区分2相当)により、平均血色素量および平均血色素濃度の低値、ヘモグロビン濃度の低値(厚労省報告(access on Jun. 2009))、ラットに0.05~0.4 mg Cr(VI)/m3を30日間吸入ばく露(区分1相当)により、用量依存的な白血球増加症(IRIS(1998))の発生が報告されていることから、区分1(血液系)とした。なお、かつて六価クロム化合物のばく露により腎臓障害を起こすと言われてきた(ACGIH(2001))との記載があるが、報告年は古く、厚労省報告(access on Jun. 2009)の試験では腎臓障害は1例のみであり、IRIS(1998)では疫学調査等の報告から不確実な情報であるとしていることから、腎臓は分類に採用しなかった。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
10 | 誤えん有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | 分類実施年度 | 分類ガイダンス等 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分1 |
警告 |
H400 | P273 P391 P501 |
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=0.112mg/L(EU-RAR、2005)から、区分1とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
11 | 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分1 |
警告 |
H410 | P273 P391 P501 |
急性毒性区分1であり、金属化合物であり水中での挙動が不明であるため、区分1とした。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 | 平成22年度(2010年度) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) |
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