NITE統合版 政府によるGHS分類結果

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一般情報
 
項目 情報
CAS登録番号 74-83-9
名称 ブロモメタン(別名臭化メチル、メチルブロミド)
物質ID m-nite-74-83-9_v2
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関連情報
項目 情報
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 可燃性ガス 区分1


危険
H220 P210
P377
P381
P403
空気中では不燃性との情報(Merck (2013))もあるが、爆発範囲 が 8.6~20 vo% との情報(GESTIS (Accessed Nov. 2023))があるため、区分 1 とした。なお、UNRTDGにおいてクロロピクリン2%を超えないものが、UN 1062、クラス2.3に分類されており、引火性/可燃性ガスに該当せず、特別規定で、「限られた条件でのみ可燃性を示す」としている。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 酸化性ガス 区分に該当しない
-
-
- - 可燃性ガスに分類されている。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 高圧ガス 低圧液化ガス


警告
H280 P410+P403 臨界温度194℃(HSDB in PuChem (Accessed Nov. 2023))により、低圧液化ガスとした。 令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 可燃性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。なお、535 ℃ で自然発火するガスである(GESTIS (Accessed Nov. 2023))。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 自然発火性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 自己発熱性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、亜鉛およびマグネシウムを侵すとともに、水の存在下で多くの金属を侵すとの情報(ICSC (2009))がある。また、アルミニウムと接触すると、空気中で自己発熱や自然発火をする化合物(アルキルアルミニウム)が生成する(ホンメル (1996))。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義におけるガスである。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分3とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:104 mg/kg(EPAガイドライン、GLP)(EFSA (2011)、AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))
(2)ラットのLD50:104~214 mg/kg(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001))
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分3


危険
H331 P304+P340
P403+P233
P261
P271
P311
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分3とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(4時間):780 ppm(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001)、AICIS IMAP (2016))
(2)ラットのLC50(1時間):1,850 ppm(4時間換算:925 ppm)(NITE初期リスク評価書 (2008)、US AEGL (2012))
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義におけるガスであり、区分に該当しない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義におけるガスであり、区分に該当しない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)液化ブロモメタンは大部分の材質の衣服を浸透し、保護具を着用していた作業者の皮膚に水疱性の化学火傷が生じたとの報告がある(産衛学会許容濃度提案理由書 (2003)、SIAR (2001))。
(2)本物質は皮膚上で水疱を生じる作用、液化ガスに共通する皮膚への凍結作用、並びにタンパクと反応することができるアルキル化剤としての作用があると考えられ、これらの3つの作用、特に強い水疱誘発作用が本物質の皮膚での刺激作用に寄与するとみられるとの報告がある(SIAR (2001)、AICIS IMAP (2016))。
(3)本物質は皮膚と粘膜の発赤、腫脹と水疱を生じ、重症例では潰瘍と壊死に至る。皮膚との接触後最初は刺激症状はみられないが、1時間以上の潜伏期の後に傷害が顕著になる(DFG MAK (2005))。
(4)ラットを用いた皮膚腐食性/刺激性試験(液化ブロモメタン)において、ラットの皮膚に液化ブロモメタンを30秒ばく露させたところ浮腫と斑状出血がみられ、1分から5分ばく露させたところ表皮と真皮に壊死と出血がみられたとの報告がある(ATSDR (2020))。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。
(2)本物質は眼刺激性を有し、気中でばく露されたヒトでは結膜炎、紅斑、発疹、眼瞼浮腫、剥離、傷害、水疱を生じるおそれがあるとの報告がある(ATSDR (2020))。
(3)ウサギを用いた眼刺激性試験において、ウサギの眼に本物質のガスを 1 分30 秒間直接ばく露すると、直後に表面の光彩が消失し、数時間後に角膜上皮の欠損と結膜浮腫がみられた。翌日には角膜の青色化、腫脹、混濁がみられたが、5 日以内に混濁は消失したとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001))。

【参考データ等】
(4)ウサギ、ラット、マウスを用いた眼刺激性試験において、ラットでは2,570 ppmの濃度で流涙がみられ、マウスでは823 ppmの濃度で刺激性がみられた。との報告がある(SIAR (2001)、AICIS IMAP (2016))。

令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、ラット及びマウスの骨髄細胞を用いた小核試験、マウスの赤血球を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた染色分体交換試験で陽性、ラットの優性致死試験、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性の報告がある(ATSDR (2020)、NITE初期リスク評価書 (2008))。この他、ラットの複数臓器(肝臓、肺、胃など)を用いた吸入ばく露又は経口投与によるDNA付加体試験及びDNA損傷性試験(DNAアルキル化)、ラットの精巣又はマウスの肝臓・脾臓細胞を用いた吸入又は腹腔内投与によるDNA損傷性試験(DNAアルキル化)で陽性の報告がある(ATSDR (2020)、NITE初期リスク評価書 (2008))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験で陽性、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験及びヒトリンパ球を用いた染色体異常試験の各1試験でも陽性の報告がある(ATSDR (2020)、NITE初期リスク評価書 (2008))。
(3)本物質の燻蒸作業者の末梢血リンパ球を用いた遺伝子突然変異試験(hprt遺伝子)及び小核誘発試験では陰性であったが、口腔咽頭細胞を用いた小核試験では小核頻度の増加(陽性)が認められた(ATSDR (2020))。

令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
6 発がん性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(4)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間の吸入ばく露による発がん性試験では、体重増加抑制と鼻腔の炎症(雄のみ)がみられた最高用量の100 ppmまで、ばく露に関連した腫瘍の発生増加は認められなかった(厚労省がん原性試験 (1989)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、US AEGL (2012))。同様に、ラットを用いた29ヵ月間吸入ばく露試験でも、最高用量の90 ppmまでばく露に関連した腫瘍の発生増加は認められなかった(NITE 初期リスク評価書 (2008)、IARC 71 (1999) 、US AEGL (2012))。
(2)マウスを用いた2年間の吸入ばく露による発がん性試験では、体重増加抑制及び小脳顆粒層の軽度萎縮がみられた最高用量(64 ppm)まで、ばく露に関連した腫瘍の発生増加は認められなかった(厚労省がん原性試験 (1989)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、US AEGL (2012))。同様に、マウスを用いた2年間吸入ばく露試験でも最高用量の100 ppmまで、ばく露に関連した腫瘍の発生増加は認められなかった(NITE 初期リスク評価書 (2008)、NTP TR385 (1992)、IARC 71 (1999)、US AEGL (2012))。
(3)経口経路では、ラットを用いた13~25週間強制経口投与(50 mg/kg/dayの1用量)で、25週間投与後に前胃の扁平上皮がんが1例にみられた(NITE 初期リスク評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、US AEGL (2012))。ラットを用いた2つの2年間混餌投与試験で、最大500 ppmまで腫瘍の発生増加は認められなかった(NITE 初期リスク評価書 (2008))。
(4)国内外の評価機関による既存分類結果では、IARCでグループ3(IARC 71 (1999))、EPAでD(IRIS (1992))、ACGIHでA4(ACGIH (2001))、DFGでカテゴリー3(List of MAK and BAT values (2022))に分類されている。

令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
(4)のウサギの発生毒性試験で、母動物毒性がみられる用量で胆嚢欠損頻度増加がみられたが、(5)のより高用量をばく露したウサギの別の発生毒性試験及び他の吸入及び経口経路による発生毒性試験では催奇形性を疑う所見はみられなかった。以上、相反する結果がみられたことから、分類できない。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた吸入ばく露による2世代生殖毒性試験において、親動物には最高濃度の90 ppmでF0雄に体重の低値と脳重量減少、F1雌雄に脳重量減少がみられたが、生殖能への有害影響はみられなかった。児動物にはF2の30 ppm以上で体重低値以外に影響はみられなかったとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001)、US AEGL (2012)、ATSDR (2020))。
(2)雌雄ラットを用いた吸入ばく露(最大70 ppm、交配前3週間と妊娠1~19日、7時間/日、5日/週)した発生毒性試験において、母動物、胎児ともに異常はみられなかったとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001)、US AEGL (2012)、ATSDR (2020))。
(3)妊娠ウサギを用いた吸入ばく露(妊娠1~15日、7時間/日)による発生毒性試験において、高濃度(70 ppm)群では母動物に体重減少、痙攣、後肢麻痺がみられた後、24/25例が死亡した。低濃度(20 ppm)群では母動物、胎児ともに異常はみられなかったとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008)、US AEGL (2012)、ATSDR (2020))。
(4)妊娠ウサギを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠7~19日、7時間/日)において、母動物毒性(嗜眠、運動失調、斜頸、横臥位、体重低値)がみられた最高濃度(80 ppm)ばく露で、胎児に低体重、胆嚢の欠損、及び胸骨癒合(骨格変異)がみられたとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001)、US AEGL (2012)、ATSDR (2020))。
(5)別の妊娠ウサギを用いた吸入ばく露条件による発生毒性試験(妊娠7~19日、7時間/日)において、母動物毒性(嗜眠、運動失調、脳髄膜の多発性炎症、中脳の左右対称性壊死/海綿状変化等)がみられた最高濃度の140 ppmまで胚・胎児への発生影響はみられなかったとの報告がある(NITE初期リスク評価書(2008)、SIAR (2001))。
(6)妊娠ラット及び妊娠ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(ラット:妊娠6~15日、ウサギ:妊娠6~18日)において、ラットでは母動物毒性(前胃壁の糜爛と肥厚、胃の他臓器との癒着)がみられる高用量(30 mg/kg/day)で軽微な所見(骨格変異(第25仙椎))に限られ、ウサギでは母動物毒性(体重増加抑制、摂餌量減少)を生じた高用量(10 mg/kg/day)まで発生影響はみられなかったとの報告がある(ATSDR (2020))。

【参考データ等】
(7)雄ラット及び雄マウスに160~405 ppmで1~6週間吸入ばく露した結果、精巣への影響(精子形成遅延、軽微な精細管変性、萎縮)、雄マウスに120 ppmで13週間ばく露した結果、精子濃度の減少を認めたとの報告がある。一方、雄ラットに70 ppmで5日間ばく露した試験、200 ppmで5日間ばく露した試験でそれぞれ生殖機能及び受胎能には無影響、生殖器官に病理組織変化を認めなかったとの報告がある(ATSDR (2020))。

令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、ヒト及び動物において中枢・末梢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓影響がみられることから、区分1(神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)燻蒸作業者、燻蒸後にばく露された作業者、本物質に偶然ばく露された非作業者に神経系影響がみられれている。高レベルの本物質にばく露されたヒトで初期にみられた神経症状(頭痛、虚弱、悪心、嘔吐)はばく露数時間以内に生じる。ばく露レベルによって、症状は運動失調、振戦、麻痺及び強直性発作へと進展するおそれがあるとの報告がある(ATSDR (2020))。
(2)ヒトの高濃度ばく露症例では、神経系障害(悪心、嘔吐、頭痛、振戦、痙攣、意識喪失)に加え、急性の肺浮腫を生じ死に至る症例もある。他の急性影響には、尿毒症を引き起こすこともある腎臓傷害(尿細管壊死)の報告、肝機能障害及び出血を伴う血液凝固障害を生じることがあるとの報告がある(DFG MAK (2005, 1996))。
(3)過剰ばく露により、麻酔作用と呼吸不全により死亡が生じるおそれがある。高レベルの吸入ばく露では肺への直接傷害により化学性肺炎と浮腫を生じ死亡に至ることがある。肺の傷害が致命的ではない症例の死亡は中枢神経系影響(痙攣、昏睡)の結果生じる。死亡に至らない重度のばく露症例では、中枢神経系障害(器質性脳症候群)と末梢神経系傷害(末梢神経症(ニューロパチー))として障害が持続する。本物質への急性大量ばく露により、低頻度であるが腎臓及び肝臓の傷害が生じることがあるとの報告がある(SIAR (2001))。
(4)ラット及びマウスを用いた単回吸入ばく露試験において、区分1の濃度範囲で、呼吸器、中枢神経系(自発運動低下、振戦、痙攣)、呼吸器(呼吸異常、嗅上皮の壊死/化生、肺のうっ血)、肝臓(肝細胞変性、壊死)、腎臓(尿細管の壊死、再生性変化)への影響がみられており、この他全身状態悪化による二次的影響と推測される病理学的所見が心筋、胸腺・リンパ節、副腎等にみられた(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2001)、US AEGL (2012))。

令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、呼吸器、心臓、血液系)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(4)より、区分1(神経系、呼吸器、心臓、血液系)とした。なお(5)で見られた精巣への影響は、(4)の長期試験ではみられていないことから標的臓器として採用していない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)ヒトと実験動物の利用可能なデータから、本物質の吸入ばく露後に呼吸器と神経系が最も感受性の高い標的臓器であるという強い証拠が得られたとの報告がある(ATSDR (2020))。
(2)慢性影響としては、倦怠感、無関心、運動失調、脳波異常、視覚異常(弱視、色弱)、知覚異常(指や踵の痺れ、刺痛)、認知能力の低下など中枢及び末梢神経系の障害がみられたとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008))。
(3)燻蒸作業者、燻蒸後にばく露された作業者、ブロモメタンに偶然ばく露された非作業者に神経影響がみられれている。頭痛、脱力感、また筋肉痛、疲労感及びめまいのような神経症状の発生頻度増加が反復ばく露を受けた作業者や作業場で長くばく露を受けた作業者にみられたとの報告がある(ATSDR (2020))。
(4)動物試験において、ラット及びマウスを用いた13週間及び2年間吸入ばく露試験等において、区分1の用量範囲以上で血液(平均赤血球ヘモグロビン量、平均赤血球容積の減少、赤血球数の増加)、呼吸器影響(鼻腔の炎症、嗅上皮の変性、壊死)、区分2の用量範囲以上で神経系(痙攣、振戦、四肢麻痺、小脳/大脳の変性)、心臓の変性、血栓増加等がみられたとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008))。
(5)2つのラットを用いた3週間の吸入試験において、区分1の用量範囲で、心臓への影響(心筋の壊死及び線維化、心筋の変性)、精巣の変性及び壊死、嗜眠、振戦、四肢の麻痺等がみられたとの報告がある(NITE初期リスク評価書 (2008))。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
10 誤えん有害性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義におけるガスであり、区分に該当しない。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点 分類実施年度 分類ガイダンス等
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分2
-
-
H401 P273
P501
魚類(ニジマス)96時間LC50 (EPA OPP 72-1, GLP) =3.9 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 (EPA OPP 72-2, GLP) =2.6 mg/L(以上、NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2004)、REACH登録情報 (2023))。以上の結果から区分2に該当するとした。
旧分類では、魚類(メダカ(ミナミメダカ))の96時間LC50 (ENEN TG 6501) =0.7 mg/Lを採用していたが、NITE初期リスク評価書 (2008)ではこのデータの信頼性を確認できないとしており、新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
3種の栄養段階の全てで、慢性水性毒性の十分なデータが得られていない。
急性毒性データより、魚類(ニジマス)の96時間LC50=3.9 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 =2.6 mg/Lであり、急速分解性がない(BODによる28日間分解度(OECD TG301D、GLP):15, 17%(METI既存点検結果 (1988))ため、区分2に該当するとした。
なお、魚類(グッピー)90日間NOEC=0.1 mg/L、魚類(メダカ(ミナミメダカ))91日間NOEC=0.32 mg/L(NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2004))というデータが存在するが、これら2件のデータは指標が適切ではなく有用ではないと判断されているので採用しなかった。
令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
12 オゾン層への有害性 区分1


警告
H420 P502 モントリオール議定書の附属書に列記された物質であるため。 令和5年度(2023年度) ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)


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