化学物質管理

NITE-化学物質管理分野 第14回 環境化学論文賞

表彰論文:
「化学物質の初期リスク評価手法の開発(1),(2),(3)」
受 賞 者 :
平井祐介、小谷憲雄、佐渡友秀夫、常見知広、村田麻里子、松崎寿、高久正昭、横山泰一、etal

要約

(1)PRTRデータを活用した暴露評価手法の開発(環境化学 Vol.16 №1 pp.1-17 2006)

化学物質のヒト健康影響及び生態影響に関する初期リスク評価(より詳細なリスク評価が必要かどうかのスクリーニング)に用いる暴露評価手法を開発した。この手法の大きな特徴は、暴露評価に採用する濃度として、PRTRデータを用いた排出状況をもとに数理モデルによって環境濃度の推定値を求め、これと調査における測定値との比較を行う点である。この手法はすべてのPRTR対象物質に対して一律に適用でき、しかもリスクを見逃すことの少ない方法である。この手法を用いて91物質の暴露評価を実施した。この中には従来では評価不可能であった測定値のない物質も多く含まれている。

(2)PRTRデータを活用した化学物質の初期リスク評価(環境化学 Vol.16 №1 pp.19-41 2006)

化学物質のヒト健康影響および生態影響に対するリスクを選別するために、初期リスク評価手法を開発した。この評価手法は、有害性評価、暴露評価、暴露マージンの算出、不確実係数の算出、リスク判定の5つの統一的な評価手順で構成されている。本研究で開発した初期リスク評価手法の特徴の1つは、暴露評価にPRTRデータを活用していることである。また、もう1つの大きな特徴は、有害性影響に関わる不確実係数を独立させ、暴露マージンと比較する評価手法を適用した点にある。

開発した本手法を用いて、PRTR制度に基づく第一種指定化学物質91物質を評価した結果、22物質が詳細なリスク評価が必要な候補物質と判断された。

(3)プレ・スクリーニング手法の開発と初期リスク評価結果による検証(環境化学 Vol.16 №4 pp.585-603 2006)

本研究では、PRTR制度対象物質の初期リスク評価を効果的に実施するために、評価の優先順位付けを行う方法を提案し、その有効性を確認した。この方法では、有害性の強さとPRTR排出量を暴露の程度としてそれぞれ評点化して表し、その積で優先順位を付けている。そして、有害性評点と暴露量評点を軸とする簡易リスクマップを作成し、物質間の関係を俯瞰的にレビューすることで、初期リスク評価の優先順位づけが効果的に実施できていることを確認した。

また、本方法の特徴は、ヒト健康影響と生態影響を分離して扱い、PRTR排出量データを媒体別に考慮したことである。そして、本方法をPRTR対象100物質の初期リスク評価結果により検証した結果、優先度評点の高さと評価結果との対応関係が極めて良好であった。

したがって、本方法が優先順位付けだけでなく、プレ・スクリーニングの方法として有効であることが確認された。さらに、本方法が単純な原理に基づき透明性の高いやり方で的確に評価結果を予測できることから、簡易リスク評価手法として一般的に適用できるものと考える。

日本環境化学会ホームページ(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jec/)

化学物質管理センター関連業務(化学物質のリスク評価・管理に関する業務)
(http://www.safe.nite.go.jp/risk/risk_index.html)

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