化学物質管理

NEDO 1プロ内容(ワークショップ)

1月22日(月) ワークショップ

A会場1限目(9:30~11:00)

室内暴露

室内での暴露は、とくにVOC類のリスク評価においては重要なものである。なぜなら、多くのVOC類で室内の気中濃度は屋外よりも高く、また、一般に人々は大半の時間を室内で過ごすからである。しかしながら、室内環境は、発生源や家屋の構造の点で多様であることから、その評価は容易でなく、評価方法も十分に確立しているとは言い難い。本ワークショップでは、詳細リスク評価書で用いられた評価方法について解説するとともに、平行して行なってきた室内空気質に関する調査について述べる。

室内暴露の評価方法と課題(蒲生昌志*
室内暴露を評価する方法には、大きく分けて2通りある。一つは、モニタリングデータに依拠する方法である。実際、多くのVOC類では、室内空気中濃度や個人暴露濃度について、ある程度の規模のモニタリングデータが存在している。もう一つは、個々の発生源からの排出量を推定し、それらを積み上げる(合計する)ことによって室内濃度を推定することである。そのためには、発生源に関する情報や室内空気質を推定するモデルが必要となる。ここでは、詳細リスク評価書での適用事例を紹介しながら、それぞれのアプローチの得失や室内暴露の評価において留意すべき点を明らかにするとともに、それらへの対処や今後の課題について述べる。
室内濃度と換気の変動に関する調査(篠原直秀*
カルボニル類やVOC類を対象とした室内空気質の調査は、これまでにしばしば行われてきているが、それらのほとんどは調査日における単回の濃度計測を基本としている。リスク評価においては、中長期の暴露レベルの分布(個人差)が重要であるが、既往の調査結果を単純に用いて得られる暴露濃度分布は実際のものとは異なる。室内濃度や換気回数の日変動・季節変動・家庭間変動について調査した結果を用いて、物質毎の特徴や修正の必要性等について示す。
対象:
室内暴露に興味のある方。平易な解説に努めるが、「正規分布」「平均」「分散」といった統計用語や、「換気回数」といった室内空気質に関する基礎的な用語については、解説の中で多用すると思われるため、ある程度、事前の理解があるほうが望ましい。
  • * 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター

A会場2限目(11:10~12:40)

金属の詳細リスク評価で考慮すべき事項

有機化学物質のリスク評価と異なり、金属のリスク評価の際に考慮すべき事項が多くある。暴露評価では、多様な製品に使用され、ライフサイクル段階の使用・廃棄段階での排出が大きく、過去長期間にわたって鉱山や自然発生源からの環境中への排出も存在するため、環境中への排出量の把握が容易でない。また、環境中で多様な化合物形態をとるなど、環境中の動態も不明な点が多い。また有害性評価では、生物にとって必須な金属元素があり、化学種や価数によって有害性も大きく異なるため、リスク評価への適用が困難である。さらに、環境中のバックグラウンドの存在がリスク対策による効果の程度の把握を困難にしている。そのような状況の中で個々の金属の詳細リスク評価を進め、上記の事項に対応してきた。そこで本セッションでは、鉛、カドミウム、クロム、ニッケル、亜鉛の金属を対象に具体的な対応例を示す。

  • 発生源の同定と物質のライフサイクルを考慮した環境排出量推定(内藤航*
  • 環境中の様々な化学種および価数を考慮したリスク推定(恒見清孝*
  • バックグラウンドを考慮したリスク評価・リスク管理(小野恭子*
対象:
金属のリスク評価やリスク管理の分野に興味がある方
  • * 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター

A会場3限目(13:40~15:10)

詳細リスク評価における有害性評価

化学物質のリスク評価では、有害性を正しく評価し、さらにヒトへの外挿を合理的に行うことが必要とされている。これまでに詳細リスク評価書で取り上げた化学物質の有害性を概観すると、最も重要な有害性は発がん性であることが理解できる。このセッションでは、詳細リスク評価を行った化学物質を例として、動物試験データからの外挿方法や疫学データからの定量的な評価方法を紹介する。このほか、催奇形性は、発がん性に次いで重篤な有害性の一つであるが、実験動物とヒトの間で種差があるなど幾つかの重要な考慮すべき不確実性がある。このような催奇形性作用などの評価における不確実性についても議論する。

  • 詳細リスク評価書で扱った化学物質の有害性と用いたリスク評価手法の概観(川崎一*
  • 発がんリスクのヒトへの外挿~動物試験データと疫学データの評価から~(岩田光夫*
  • 催奇形性などのリスク評価における不確実性(納屋聖人*
対象:
化学物質の有害性評価に興味がある方
  • * 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター

A会場4限目(15:20~16:50)

個体群レベルの生態リスク評価

これまでに開発した評価手法の概観と様々な毒性データの活用方法(林彬勒*
化学物質の影響から生態系を保全するには、少なくとも個体群レベルの観点からの評価が必要になる。本講演では、まず、これまでに開発してきた個体群レベルの生態リスク評価手法の全体を概観する。さらに、急性LC50値や慢性NOECなどの比較的報告例が多いものの情報量が少ない毒性値を組み合わせて行う個体群レベル評価と詳細な情報を含んでいるが実施例が少ないフルライフサイクル試験データに基づく個体群レベル評価とを比較し、より入手しやすい毒性情報から信頼性のある評価を行うための考え方を紹介し、今後の課題を示す。
様々な魚種に対する評価-パラメーターの推算方法-(宮本健一*
個体群レベルの生態リスク評価に用いられる指標の一つに内的自然増加率rがある。rの符号が正であれば個体数は増加し、負であれば個体数は減少し、r=0の時には個体数は安定していると判断できる。本講演では、様々な魚類地域個体群のrの評価において、必要なパラメーター(齢別生存率、繁殖率)を推算する方法およびそれらのパラメーターの濃度-反応関係を評価する方法を解説し、評価事例を紹介する。
個体群レベルの生態リスク管理方法の検討-亜鉛を事例にして-(加茂将史*
従来の生態リスク評価は個体への影響に基づいてなされているが、それは単純すぎるとの批判がなされている。生物の集団サイズは繁殖と死亡のバランスで決まるため、片方の影響だけをみていても評価はできない。本講演では亜鉛を例にして、両者における影響を推定して集団レベルでの評価(個体群レベルの感受性分布の評価)を試みた結果を発表する。従来の個体レベルの感受性分布の評価と新たに開発した個体群レベルの感受性分布の評価から得られる結果を基にして、新たな生態リスク管理方法の一例を提案する。
対象:
個体群レベル生態リスク評価に対して関心を持っている方。従来の生態リスク評価手法(ハザード比(PEC/PNEC比)での評価)に関する知識については、ある程度有している方を想定している。
  • * 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター

B会場1、3限目(9:30~11:00、13:40~15:10)

初期リスク評価 ~PRTRデータを活用した暴露評価~

PRTRデータと数理モデルを用いた環境中濃度推定方法(小谷憲雄**
初期リスク評価において、公表されているPRTRデータを活用し、どのように排出量分布を推定したかを紹介する。また、いくつかの物質を代表例として、大気拡散モデル(AIST-ADMER) による全国の環境濃度推定結果からみられた傾向を述べる。
初期リスク評価における暴露評価手法(松崎寿**
初期リスク評価(スクリーニングを目的)における暴露評価手法の開発にあたり、基本とした考え方、摂取量の算出方法を説明する。また、初期リスク評価を実施した150物質の内、暴露量が多い物質にみられる特徴等を解説する。
  • **独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター

B会場2限目(11:10~12:40)

発生源・排出量の推定と検証

詳細リスク評価書における排出量推定方法(梶原秀夫*
詳細リスク評価書における排出量の推定方法には多様なバリエーションがあるが、本セッションでは既存の報告データから排出量を推定する様々な方法を概観・比較することで、詳細リスク評価における排出量推定の現状と限界を整理する。特に、PRTRの排出量データを排出源単位へ「割り付ける」方法や、PRTRの対象でない発生源からの排出量の推定方法を取り上げる。
環境実測データを用いた発生源・排出量の検証方法(小倉勇*
一般に排出量の推定は、限られた測定結果や排出係数を基に推定されるため、大きな不確実性を伴う。また、認識されていない発生源・排出が存在する可能性もある。そのため、環境実測データから、発生源・排出量をいかに推定し検証していくかが重要となる。本セッションでは、詳細リスク評価書における発生源・排出量の検証方法やその結果の例を紹介する。ADMERやSHANELなどのモデル予測値と実測値との比較、環境濃度変動に基づいた発生源推定、複数の化学物質の情報を使った多変量解析的推定などについて述べる。
対象:
発生源や排出量の解析に興味がある方
  • * 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター

B会場4限目(15:20~16:50)

大気環境の曝露評価におけるモデルの活用

ADMER ver.2の開発 ~サブグリッド機能による高解像度化~(東野晴行*
まもなくリリースされる予定のADMERの次期バージョン(ver.2)では、サブグリッド解析機能の搭載により、解像度がこれまでの5kmから大幅にアップし、最大100mでの解析が可能となる。また高解像度化の他にも、GIS機能の導入による表示機能の向上など、様々な改良が同時になされる予定である。講演では、ADMER ver.2の開発コンセプトやパフォーマンスについて紹介する。
ADMERの運用手法と活用事例(篠崎裕哉*
詳細リスク評価におけるADMERの活用事例を中心に、データの入手・加工を含めた大気拡散モデルの具体的な運用手法について紹介する。また、ADMER ver.2を実際に使ったデモンストレーションを行い、主要機能の操作方法について、簡単な例題を用いて紹介する。
対象:
企業の環境担当者、国・自治体などの環境行政担当者、研究・教育関係者、コンサルタント、NGOの方々などで、業務において大気環境のシミュレーションモデルの活用を考えておられる方。PCの操作については、基礎的な知識を有していることが望ましい。
  • * 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター

C会場(9:30~12:40、13:40~16:50)

初期リスク評価における有害性評価

はじめに(今田中伸哉***
物理化学的性状、環境中運命(林浩次***、吉川治彦***
蒸気圧、水溶解度、分配係数などの物性値、及び光分解性、加水分解性、生分解性、生物濃縮性などの項目について、その特性を説明し、化学物質の環境中での挙動などとの関連性を、例を挙げて考察すると共に、抱えている問題点についても示す。さらに、有害性評価書記載データの活用として、GHS分類やMSDS作成などについて説明する。また、有害性評価書作成の際に利用したインターネットによる物性値等の具体的な調査方法についても説明する。
環境中生物への影響(野坂俊樹***、神園麻子***
1プロにおいて開発してきた生態影響評価手法についてまとめるとともに、難水溶性物質の評価等、個別の課題への対応例について紹介する。また、環境省環境リスク初期評価、EUリスク評価書、SIDSレポート等の他機関の生態影響評価結果との比較から、1プロの生態影響評価の特徴と今後の課題を明らかとする。
ヒトの健康への影響
生体内運命(浦谷善彦***
当該化学物質のヒトまたは動物体内での動態に関する情報を与える生体内運命は、有害性の発現機序と用量・反応関係の基礎的な知見を与える。本発表では、生体内運命とはなにか、また、有害性発現に関してデータからなにが読み取れるかを説明し、加えて、評価書の活用例として、同一の代謝中間体を生成する化学物質間の有害性と生体内運命を比較することで、毒性を発現する代謝経路の推定を試みた結果を紹介する。
疫学(山根重孝***
ヒトから得られる化学物質による健康情報は、高濃度で短期の影響は明瞭であるが、低濃度で長期にわたる健康影響は、単独の化学物質でないことが多く、その定量性に問題があることが多い。精緻なin vivo動物実験やin vitro実験の結果をヒトに外挿するいろいろな方法が今後開発されていくにしても、ヒトから得られる情報の重要性は変わらない。
1プロの有害性評価の対象となった145物質のうち、疫学が重要な役割を演ずるのは10物質に満たない。今回、疫学の概要とその疫学的手法の一例を、毒物の王様といわれ、バングラデシュをはじめ、井戸水汚染によって今日的な意味でも渦中にあるヒ素を取り上げ、紹介する。
刺激性、感作性(石井聡子***、石井かおり***
刺激性、感作性は、一般環境や消費者製品を通して、身近に起こりうる毒性影響として重要である。本発表では、既存の情報から評価を行う際の考え方や手法を解説するとともに、有害性評価対象物質における、動物とヒトとの相関や、化学物質の構造との関連性についても紹介する。
反復投与毒性(馬野高昭***
反復投与毒性に関する知見は、ヒトに対するリスク評価を行う上で最も重要な位置を占めている。本発表では、有害性評価書を作成した物質でみられた反復投与毒性について整理を行い、どのような臓器に毒性影響がみられやすいのかを調べた結果、ならびに、化学物質の構造や生体内運命と発現する毒性及び標的臓器等との関連性について検討を試みた結果を紹介する。
生殖・発生毒性(酒井綾子***、麻生直***
生殖・発生毒性とは、外部環境による生殖器官の変化、配偶子の生成及び移動、生殖周期の正常性、性的行動、受胎能や分娩などの成体の性機能及び生殖能やその子の発生・成長に対する毒性である。本発表では、評価対象物質について、有害性評価書の生殖・発生毒性試験の評価結果に基づき、生殖・発生毒性作用の有無、みられた生殖・発生毒性影響の特徴や反復投与毒性、遺伝毒性との関連性等を紹介する。
遺伝毒性(関沢舞***、星野歳三***
本評価で「遺伝毒性のある」発がん性物質と評価した場合、暴露情報に係らず、詳細リスク評価の候補物質となることから、遺伝毒性の有無に関する判断は、リスク評価に大きな影響を与えることになるが、その判断基準は明文化されていなかった。そこで、145物質の有害性評価書における遺伝毒性評価結果を整理、検討することにより、遺伝毒性判断基準の明文化を試みた。これらを基に、有害性評価における遺伝毒性評価の役割(意義)、問題点等について考察する。
  • *** 財団法人化学物質評価研究機構

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
TEL:03-3481-1977  FAX:03-3481-2900
住所:〒151-0066 東京都渋谷区西原2-49-10 地図
お問い合わせフォームへ