政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 606-20-2
名称 2,6-ジニトロトルエン
物質ID R02-B-014-MHLW, MOE
分類実施年度 令和2年度(2020年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2016年度(平成28年度)   2006年度(平成18年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含むが、UNRTDGにおいてUN 3454、クラス6.1に分類されていることから、優先評価項目の爆発物には該当しないため、区分に該当しない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。なお、可燃性 (ICSC (2005)) という情報がある。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含むが、UNRTDGにおいてUN 3454、クラス6.1に分類されていることから、優先評価項目である自己反応性化学品には該当しないと考えられるため、タイプGとした。
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 2,4-DNT (CAS番号 121-14-2) との混合物の発火点が約400℃ (Hommel (1991)) との情報より、常温で発火しないと考えられるため、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (N) と結合しているが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない
-
-
- - 爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含むが、純品が爆発物の区分に該当しないので、鈍性化爆発物も区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【本物質の健康有害性について、分類結果が「分類できない」の場合、ジニトロトルエン (異性体混合物) (CAS番号 25321-14-6) も参照のこと。ジニトロトルエン (異性体混合物) は、健康有害性への影響を及ぼす異性体の全てを特定できていないが、情報が参考になると考えられる。】


【分類根拠】
(1)~(5) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 177 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994)、MOE初期評価第9巻 (2011)、GESTIS (Access on April 2020)、HSDB (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 180 mg/kg (ATSDR (2016))
(3) ラットのLD50: 雄: 180 mg/kg、雌: 795 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))
(4) ラットのLD50: 180~795 mg/kg (AICIS IMAP (Access on April 2020))
(5) ラットのLD50: 雄: 535 mg/kg、雌: 795 mg/kg (ATSDR (2016)、MAK (DFG) vol.6 (1994))
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分2


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分2とした。ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.0056 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
旧分類の根拠データは表記ミスであり、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 360 mg/m3 (0.36 mg/L) (CERIハザードデータ集 98-15② (1998))
(2) ラットのLC50 (6時間): 雄: 240 mg/m3 (4時間換算値: 0.36 mg/L)、雌: 660 mg/m3 (4時間換算値: 0.99 mg/L) (NITE初期リスク評価書 (2005))
(3) ラットのLC50 (6時間): 240 mg/m3 (4時間換算値: 0.36 mg/L) (MOE初期評価第9巻 (2011))
(4) ラットのLC50 (6時間): 430 mg/m3 (4時間換算値: 0.645 mg/L) (NITE初期リスク評価書 (2005))
(5) 本物質の蒸気圧: 0.000567 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.0056 mg/L)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験 (ドレイズ法) で刺激性を示さない (厚労省リスク評価書 (2009)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) 本物質 (用量不明) をウサギに 適用した皮膚刺激性試験で、軽度の刺激性を示す (NITE初期リスク評価書 (2005) 、ATSDR (2016))。
(3) 本物質は皮膚刺激物である (HSDB (Access on April 2020))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ法) で本物質を含むジニトロトルエンの6 つの異性体は全てウサギの眼に対する刺激性を示さなかった (厚労省リスク評価書 (2009)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) ウサギの眼に 2,4-又は本物質 (濃度不明) を適用した眼刺激性試験で、刺激性はみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2005))。
(3) 本物質はウサギの皮膚及び眼に対して刺激性を示さない (GESTIS (Access on April 2020))。

4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) より、陽性率が30%未満のため、区分に該当しないとした。新たなデータが得られたことにより、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質のモルモット (10 匹、性別不明) を用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で陽性率は20%と報告されている (厚労省リスク評価書 (2009)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、GESTIS (Access on April 2020)、AICIS IMAP (Access on April 2020))。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット肝細胞の不定期DNA合成試験、ラット及びマウスのDNA結合試験 (複数の臓器)、ラットの肝細胞や末梢血を用いたコメットアッセイで陽性の報告が複数ある (ATSDR (2016)、IARC 9 (1975)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ラット末梢血及び骨髄細胞を用いた染色体異常試験と小核試験で陰性の報告がある (ATSDR (2016))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性の報告、ほ乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性の報告がある (同上)。また、ラットのセルトリ細胞を用いたコメットアッセイで陽性の報告がある (ATSDR (2016))。

【参考データ等】
(3) EU CLP分類でMuta. 2に分類されている (EU CLP分類(Access on April 2020))。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1) の既存分類では、IARCで2B、産衛学会で第2群Bに分類されている一方、EU CLPでは1Bに分類されている。(2)、(3) の実験動物の結果から本物質は非常に強い肝発がん物質であると示唆されており、IARCの古い分類結果に従えば区分2となるが、実験動物の結果及びEU CLPの分類結果を踏まえて、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCで2B (IARC 65 (1996))、EU CLPでCarc.1B (EU CLP分類 (Access on April 2020)) に分類されている。また、産衛学会では2, 4-(または 2, 6-)DNT (CAS番号 121-14-2) として第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (1998年提案))、EPAで2,4-/2,6-Dinitrotoluene mixtureとしてB2 (probable human carcinogen) (IRIS (1990)) に分類されている。
(2) 雄ラットに、2,4-DNT (CAS番号 121-14-2)、本物質、工業用ジニトロトルエン (2,4-DNT 76%、本物質18%) を52週間混餌投与した試験で、2,4-DNTは1/20に肝腫瘍性結節がみられただけであったが、本物質では肝細胞がん又は肝腫瘍性結節の用量依存的な発生率の増加に加え、肝腫瘍の肺への転移、胆管がんがみられた (IARC 65 (1996)、MOE初期評価第9巻 (2011))。一方、工業用ジニトロトルエンでは、肝腫瘍性結節、肝細胞がん、胆管がんがみられたが、本物質に比べて発生率は低く、肺への転移もなかった。この結果から、本物質には発がん性があり、工業用ジニトロトルエンの発がん作用のほとんどがそれに含まれる本物質で説明できることが示された (MOE初期評価第9巻 (2011)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2016))。
(3) 肝臓のγ-GTP陽性細胞巣を指標とし、ラットにジニトロトルエンの各異性体 (2,3-DNT、2,4-DNT、2,5-DNT、本物質、3,4-DNT、3,5-DNT) 及び工業用ジニトロトルエンを投与して実施したイニシエーション-プロモーション試験の結果、本物質及び工業用ジニトロトルエンで弱いイニシエーション活性を認めたが、その他の異性体でイニシエーション活性はみられなかった (MOE初期評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ジニトロトルエンのプロモーション活性の有無を検討するために、雄ラットにN-ニトロソジエチルアミンの単回腹腔内投与2週間後から2,4-DNT、本物質、工業用ジニトロトルエンを混餌投与し、肝臓のγ-GTP陽性細胞巣を指標とした試験系では、いずれの物質もプロモーション活性を認め (MOE初期評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))、本物質の活性は2,4-DNTよりも約10倍高かった。これらの結果から本物質は肝臓に対する完全発がん物質 (complete hepatocarcinogen) であると考えられた (MOE初期評価第9巻 (2011))。

【参考データ等】
(4) ヒトでは本物質と2,4-DNTの混合物にばく露された作業者の間に肝臓及び胆嚢の発がんリスクの増加が米国の作業者を対象としたコホート研究でみられたとする報告と、このような発がんリスクの増加は検出されなかったとの報告があり、結果に一貫性がなく、IARCでは本物質を含むジニトロトルエン類の発がん性に関するヒトでの証拠は不十分であると結論された (IARC 65 (1996))。
7 生殖毒性 区分2


警告
H361 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
標準的な生殖発生毒性試験データはないが、(1)、(2) より、ラット、マウス又はイヌに雄性生殖器毒性がみられ、(3) より、本物質の異性体である2,4-ジニトロトルエン (2,4-DNT、CAS番号 121-14-2) において、雄性生殖器毒性に関連すると考えられる生殖能に対する影響がみられたことから区分2に分類されている。したがって、本物質についても区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラット、マウス、イヌを用いた強制経口投与による13週間反復投与毒性試験において、精巣の変性、精子形成能の低下等がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005)、MOE初期評価第9巻 (2011))。
(2) 種々のDNT異性体 (2,3-DNT、2,4-DNT、2,5-DNT、本物質、3,4-DNT、3,5-DNT) について雄ラットを用いた14日間反復投与毒性試験が実施された。その結果、2,4-DNT、本物質及び3,5-DNTで雄性生殖器に影響 (精巣の矮小、精巣の重量減少、精細管の変性及び精巣における多核巨細胞形成等) がみられ、2,4-DNTでは142 mg/kg/day、本物質では68 mg/kg/day、3,5-DNTでは19 mg/kg/dayで同様な影響がみられた。一方、2,3-DNT、2,5-DNT及び3,4-DNTでは、雄性生殖器に影響 (精巣及び精巣上体の重量及び病理組織学的影響等) はみられていない (ATSDR (2016))。
(3) 2,4-DNTでは、雄性生殖器毒性に関連すると考えられる生殖能に対する影響が親動物毒性用量でみられていることから、本年度 (2020年度) 分類において区分2に分類している。

【参考データ等】
(4) EU CLP分類ではRepr. 2に分類されている (EU CLP分類 (Access on April 2020))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2 (血液系)、区分3 (麻酔作用)



警告
H371
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
異性体混合物であるジニトロトルエンのヒトへの影響について、本物質の関与は部分的と考えられ、本項分類に利用可能なヒトの報告はない。(1)、(2) より、区分2 (血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。情報源の情報を見直し、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットに本物質のエアロゾルを6時間吸入ばく露した試験で、0.196 mg/L (4時間換算値: 0.294 mg/L、区分1の範囲) 以上で呼吸異常、運動失調、嗜眠及び死亡例がみられ、死亡動物では肺のうっ血及び相対重量増加が認められた (ATSDR (2016)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
(2) 実験動物において本物質の急性毒性は2,4-DNTよりも高く、ネコを用いた試験ではメトヘモグロビン形成は2,4-DNTほど顕著でないが、呼吸中枢の抑制を含む中枢神経抑制は明らかであるとの記載がある (GESTIS (Access on May 2020))。

【参考データ等】
(3) ジニトロトルエンの一般的な組成は、2,4-DNTが約75%、本物質が約20%である (NITE初期リスク評価書 (2005))。
(4) ジニトロトルエンの情報として、ヒトでの急性中毒はメトヘモグロビン形成によって生じ、チアノーゼ、頭痛、過敏症、めまい、虚弱、吐き気、嘔吐、呼吸困難、嗜眠、意識喪失を引き起こし、死に至る可能性もあるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。
(5) ジニトロトルエンの情報として、実験動物での急性毒性には、中枢神経抑制、呼吸抑制、筋肉協調運動障害、チアノーゼが含まれるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。
(6) ラットに本物質を腹腔内投与した試験で、55 mg/kg以上で死亡、肝臓では広範囲の小葉中心性の出血性壊死がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。
(7) ネコに本物質を腹腔内投与した試験で、60 mg/kg 以上で嘔吐、伸展痙攣、後肢の硬直、瞳孔散大、糞・尿の失禁などの神経障害、メトヘモグロビン量、ハインツ小体形成の増加がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (血液系、肝臓)、区分2 (神経系、腎臓、生殖器 (男性))


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分1 (血液系、肝臓)、区分2 (神経系、腎臓、生殖器 (男性)) とした。

【根拠データ】
(1) マウスに本物質を13週間混餌投与した結果、51~55 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で摂餌量の減少、体重増加抑制、死亡、脾臓の髄外造血の亢進、精巣の萎縮、精子形成能の低下、胆管上皮の過形成がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016))。
(2) ラットに本物質を13週間混餌投与した結果、35~37 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で摂餌量の減少、体重増加抑制、ALTの上昇、メトヘモグロビン血症、血小板の増加、脾臓の髄外造血の亢進、精巣の萎縮がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016))。
(3) ラットに本物質を1年間混餌投与した結果、7 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で体重増加抑制、肝臓重量及びALTの増加、14 mg/kg/day (区分2の範囲) でγGTの増加を認め、胆管上皮過形成、肝細胞の変性及び空胞化は7 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上の群のほとんどでみられた (MOE初期評価第9巻 (2011))。
(4) イヌに本物質を13週間強制経口投与した結果、4 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で脾臓の髄外造血の亢進、20 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で食欲減退、体重減少、強直、痙攣、麻痺、貧血、メトヘモグロビン血症、血小板の増加、リンパ球の減少、ALPの増加、ALTと尿素窒素の増加、胆管の上皮の過形成、肝臓の変性・炎症、腎臓の変性・炎症、精巣の萎縮がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016))。

【参考データ等】
(5) ジニトロトルエンの一般的な組成は、2,4-DNTが約75%、本物質が約20%である (NITE初期リスク評価書 (2005))。
(6) 職業ばく露研究及び動物試験の結果から、ジニトロトルエンにより引き起こされる最も敏感な標的毒性は血液毒性 (メトヘモグロビン血症、貧血、及び代償性造血) 及び神経系への影響 (神経毒性を示す臨床所見、運動失調、振戦、脚の衰弱、痙攣) である。動物試験では、高用量では肝臓、気道、及び生殖器への影響も示されている (ATSDR (2016))。
(7) 入手可能なヒトの情報は、適切な対照群が含まれておらず、ばく露濃度も報告されていないため、限定的な証拠である (ATSDR (2016))。
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分2
-
-
H401 P273
P501
甲殻類(アミ科)96時間LC50 = 5 mg/L(MOE初期評価第9巻, 2010)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
急速分解性がなく(BIOWIN)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.06 mg/L(MOE初期評価第5巻, 2006、MOE初期評価第9巻, 2010)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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