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コエンザイムQ生産

概要

コエンザイムQ(CoQ)は肉類や魚介類などの食品に含まれている脂溶性のビタミン様物質で、ヒトの体内でも合成されている。
俗に「活性酸素の増加を抑制する」などといわれる。
生物界に広汎に (=ユビキタス;ubiquitous) 分布するキノン構造を有する物質であることから、ユビキノン (ubiquinone) と呼ばれる。また、ビタミンQと呼ばれることもある。
電子伝達系における補酵素 (コエンザイム) として体内のエネルギー単位であるATPの産生に関与する。
イソプレン側鎖の数(n)は高等動物では10、下等動物では6~9である。n=10のユビキノンをコエンザイムQ10(CoQ10)と呼ぶ。
CoQ10は医薬品や健康食品に配合されている。 現時点ではテンサイやサトウキビを原料とし、酵母および微生物による発酵や化学合成により製造されている。
日本では1973年にうっ血性心不全治療の医療用医薬品として世界で初めて認可されており、2001年には食薬区分の変更により食品成分としての利用が認可されている。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

CoQ は生物種によってそのイソプレノイド鎖長が異なる(出芽酵母CoQ6、大腸菌CoQ8、ラット・イネCoQ9、分裂酵母・ヒトCoQ10)。
側鎖長を決定しているのはイソプレノイドを合成する酵素(ポリプレニル2リン酸合成酵素)である。

機能を持つことが知られている生物

イソプレノイド側鎖合成酵素にはモノマー型とヘテロマー型が存在する。IspB(大腸菌)Coq1(出芽酵母)はモノマー型、Dps1と Dlp1(分裂酵母やヒト)はヘテロマー型である。
Dps1 が DPP(デカプレニル2リン酸)を合成、それが Ppt1 により安息香酸と反応し、CoQ となる。
「コエンザイムQ10 生産微生物の開発」より抜粋・改
--「コエンザイムQ10 生産微生物の開発」より抜粋・改

Rule/Function 作成に関する特記事項

イソプレノイド側鎖合成酵素は遺伝子配列の近縁度が高く、モチーフや系統解析により見分けることはできない。 そのため、ルール化はできなかった。

実用化例

CoQ10 の合成法には、化学合成によるものと発酵によるものとが存在する。
合成法では、ソラネソール(タバコなど植物に多く含まれる)やイソプレニルアルコールにイソプレン単位を追加し、ヒドロキノン誘導体と縮合させる(特表2009-505969)。
発酵法では、テンサイやサトウキビを原料にした酵母および微生物による発酵が用いられる。カネカ(世界シェア60% 以上)、協和発酵などがこの方法を用いている。
CoQ10 を生産する菌(酢酸菌など)由来のデカプレニル2リン酸合成酵素(Dps1)を大腸菌や出芽酵母に発現させると、本来は合成しないはずの CoQ10 を合成できるようになる。

参考文献

  • 川向 誠. (2011). 「コエンザイムQ10 生産微生物の開発」 『生物工学』 89(6): 323-325.
  • 土佐 典照. (2010). 「黄麹菌によるコエンザイムQ10の生産」 『島根県産業技術センター研究報告』 第46号. 11-16.

関連外部リンク

(更新日 2014/01/10)