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ピロロキノリンキノン生産

概要

ニコチンアミド(ピリジンヌクレオチド)とフラビンに次ぐ3番目の酸化還元補酵素として細菌から見つかった有機分子。
ピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone, PQQ)を含まない餌を与えたマウスは、成長が悪く、皮膚がもろくなり、また繁殖能力が減少するなどの異常を示す。
PQQ が栄養学的、薬理学的に有用であることは示されているが、ヒトが PQQ を生合成しているかは不明。しかし、ヒトの全ての組織に PQQ は存在している。
PQQ は植物性食品中に比較的多く含まれている。植物に PQQ 合成系が存在するとも考えられるが、共生する微生物に由来するとも考えられる。根粒菌の植物生長促進効果の本体が PQQ という報告もある。
ただし、PQQ の生理活性については不明な点も多く、ビタミンかどうかについては現在も議論されている。
三菱ガス化学や川崎化成工業が商用生産しており、サプリメントや化粧品の材料としてすでに利用されている。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

Chemical structure of PQQ.
Chemical structure of PQQ. --Kasahara (2003). Figure 1
PQQはチロシンとグルタミン酸から生合成されると考えられている(右図参照)。
生合成に関わる遺伝子は 6~7個のクラスターを形成しているが、遺伝子の種類は種によって異なっている(例、P. fluorescens B16 では pqqA-M が知られている)。
pqqA: アミノ酸残基 20~30 程度のペプチドをコードする。この配列中に保存されているチロシンとグルタミン酸から PQQ が生合成されると考えられている。
pqqB: 細胞外への輸送に関与?
pqqC: 中間体を PQQ に形成する。機能には必須と思われる。
pqqE: [4Fe-4S]クラスターを有する。S-アデノシルメチオニン(SAM)を基質とするラジカル反応を開始する酵素?
PqqA が PqqE,F, G の働きで PQQ の炭素骨格とキノン部を形成し、中間体を形成し、PqqC が中間体を閉環して酸化し、還元型 PQQ を経て PQQ を合成し、PqqB が関与してペリプラズムへ輸送していると考えられている。

機能を持つことが知られている生物

pqq遺伝子はメタノール資化性菌 Methylobacterium extorquens AM1 などのグラム陰性菌から見つかっているが、全てのグラム陰性菌に存在するものではない。 グラム陽性菌の Streptomyces rochei からも見つかっている。

実用化例

メタノール資性化菌による生産、あるいは化学合成(特開平06-145171)など。

参考文献

  • Kasahara, T. and Kato, T. (2003). Nutritional biochemistry: A new redox-cofactor vitamin for mammals. Nature. 422(6934):832. PMID: 12712191 PMID: 12712191
  • 野地なつ美 他 (2008). 「PQQビタミン説へのアプローチ」 『化学と生物』46(5), 339-345.
  • 外山 博英 (2004). 「補酵素ピロロキノリンキノン : 見えてきた生合成経路」 『バイオサイエンスとインダストリー』 62(5), 320-323.

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(更新日 2014/03/12)