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凝乳酵素

概要

レンネットとは、チーズの製造過程において、カゼインを凝固させるために添加する酵素のこと。 原乳を乳酸発酵した後に添加される。
チーズの製造工程
チーズの製造工程
現在産業利用されている凝乳酵素 (milk-clotting protease, milk-clotting enzyme, MCP) には、抽出によって得られる動物由来のレンネットと、発酵によって生産される微生物レンネット、遺伝子組み換えレンネットがある。 レンネットとは本来、哺乳期間にある偶蹄目 (主に仔牛) の第4胃袋に存在する、母乳を消化するための酵素混合物を指す。 主成分はタンパク質分解酵素キモシンで、飼料を食べ始める6カ月を過ぎるとキモシンは急激に減少し、ペプシンが主酵素となるため、レンネットの抽出には哺乳期間の仔牛を解体する必要がある。 そのため、供給量には限界があり、近年代替酵素の需要が増大している。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

牛乳に含まれるタンパク質の 80% を占めるカゼインは、セリン残基に多くのリン酸が結合したリンタンパク質で、αS1、αS2、β、および κ-casein で構成されるカゼインミセルとして存在する。 カゼインミセルは親水性の κ-casein が外側を囲むことでカルシウムによる沈殿を防いでいるが、乳酸発酵によりpHが低下し、さらにキモシンが作用して κ-casein の親水性ポリペプチド鎖 (グリコマクロペプチドと言われる) がミセルから切り離されるとリン酸カルシウムを架橋としたミセル同士の結合が起こり凝集する。 バクテリアの凝乳酵素もキモシン同様にペプチダーゼ構造を持ち、凝乳活性が確認されているものの、詳細な機構についてはまだ明らかになっていない。

機能を持つことが知られている生物

微生物由来の凝乳酵素の研究は新菌類が中心だが、Bacillus pumilusMyxococcus xanthus など、バクテリア由来の酵素も複数同定されている。 これらはキモシンに比べて分解活性が高いため、チーズに苦みが出るところが微生物の凝乳酵素の欠点とされている。

実用化例

チーズ消費量の上昇に対応しうるレンネットの安定供給、および動物愛護などの観点から近年微生物レンネット、遺伝子組み換えレンネットの重要が高まっている。 現在、日本国内流通量のおよそ 40% が微生物由来のレンネットである。
レンネットの種類と製造方法
レンネットの種類と製造方法 --厚生労働省 (2011). 図表-1

参考文献

  • Mesrob, B. K. et al. (1978). Purification of milk-clotting protease from Bacillus mesentericus strain 76. Int J Pept Protein Res. 11(5):340-344. PMID: 681078
  • Poza, M. et al. (2004). Cloning and expression of clt genes encoding milk-clotting proteases from Myxococcus xanthus 422. Appl Environ Microbiol. 70(10):6337-6341. PMID: 15466588

関連外部リンク

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(更新日 2014/03/13)