マロラクティック発酵
概要
マロラクティック発酵 (malolactic fermentation, MLF) とは、乳酸菌がワインのリンゴ酸 (Malate) を、乳酸 (Lactate) と炭酸ガスに分解する発酵のこと。
機能に関する知見
機能を示すメカニズム
マロラクティック発酵はマロラクティック酵素 (malolactic enzyme, MLE) と呼ばれる酵素によるもので、この酵素はリンゴ酸を直接 L-乳酸に変換することができる。
Reaction: (S)-malate + NAD+ = lactate + CO2 + NADH
マロラクティック酵素の酵素番号はまだない。MLE は malic enzyme (EC 1.1.1.38, -39, -40)、
および malate dehydrogenase (EC 1.1.1.37 1.1.1.37) と同じモチーフ構成を有し、それぞれと 30% 前後の相同性を示す。
MLE の内いくつかは KO がアサインされているが、いずれもEC 1.1.1.38 の K00027 である。
機能を持つことが知られている生物
Oenococcus属、Lactobacillus属、Lactococcus属、Pediococcus属などの乳酸菌で活性が報告されている。
実用化例
マロラクティック発酵は赤ワインの多くと白ワインの一部の製造過程において用いられる。
現在のマロラクティック発酵は、アルコール発酵が終わった後、培養した乳酸菌の凍結乾燥粉末 (「乳酸菌スターターカルチャー」) を添加することで誘導しており、
亜硫酸耐性、低pH耐性、などの特徴を持つ乳酸菌が市販されている。マロラクティック発酵により以下の効果が得られる。
- 酸度が下がる
リンゴ酸よりも乳酸のほうが酸度が低いため、MLFにより酸味がやわらぎまろやかな風味になる。 - 香味に複雑さを与える
乳酸菌が造る香味が加わることで、ワインの香味の複雑さが増す。 - 微生物学的に安定させる
MLFにより乳酸菌が栄養素を使うので他の雑菌が生えにくくなる。
参考文献
- Schumann, C. et al. (2013). Malolactic enzyme from Oenococcus oeni: heterologous expression in Escherichia coli and biochemical characterization. Bioengineered. 4(3):147-152. PMID: 23196745
MiFuPへのリンク
- NFUNC_0070 Malolactic fermentation
NRULE_0233 Malolactic enzyme
(更新日 2014/03/13)