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クロラムフェニコール耐性

概要

クロラムフェニコールとは、1947年、Streptomyces venezuelae が産生する新しい抗生物質として発見された、細菌のタンパク質合成を阻害する抗生物質であり、現在は化学合成により生産されている。 抗菌スペクトルが広く、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌に関わらず抗菌活性を示すが、副作用も多く報告されているため、現在は致死的な感染症にのみ用いられる。
クロラムフェニコール耐性は、(1)クロラムフェニコール修飾酵素(アセチル基転移酵素、リン酸転移酵素)による薬剤の不活性化によるものが多く報告されているが、 それ以外に、(2)加水分解酵素による薬剤の分解、(3)ニトロ還元酵素による薬剤の不活性化、(4)薬剤の排出、(5)薬剤の標的である23S rRNAの変異、 (6)菌体内への薬剤透過性の低下によるものも報告されている。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

クロラムフェニコールは、細菌のリボソーム50Sサブユニットの23S rRNA に結合してペプチド鎖転移酵素(peptidyl transferase)の反応を阻害し、タンパク質合成を抑制する。
これに対する耐性機構としては、上記(1)~(6)のしくみが報告されているが、MiFuP Safetyでは、報告例の多いアセチル基転移酵素によるクロラムフェニコールの不活性化について、遺伝子の検出条件を設定した。
本耐性機構では、耐性菌が産生するアセチル基転移酵素である、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT、EC 2.3.1.28)が、アセチルCoAを基質としてクロラムフェニコールにアセチル基を転移する。 アセチル化されたクロラムフェニコールは、立体構造の変化により23S rRNAに結合できなくなり、その結果、クロラムフェニコールによるタンパク質合成阻害が解除されることにより耐性化する。

機能に関する遺伝子・酵素情報

CATには配列の異なる2つのファミリーが報告されている。 多くの細菌種で報告のあるファミリー(Type A CAT)と、一部の細菌種で報告されている、hexapeptide repeat と呼ばれる繰り返し配列を持つファミリー(Type B CAT、もしくは Xenobiotic acetyltransferase)である(表1参照)。
表1. CATのファミリーとタンパク質
ファミリータンパク質名
Type A CATChloramphenicol acetyltransferase
Type B CATChloramphenicol acetyltransferase

機能を持つことが知られている生物

R plasmid 由来のものと hexapeptide repeat タイプ(Pseudomonasなど)の配列の異なる2つのタイプが知られている。

実用化例

遺伝子クローニングの際の選択マーカーとして、E. coli R plasmid 由来 chloramphenicol acetyltransferase (P62577) 遺伝子は pACYC184 などのクローニングベクターで用いられている

参考文献

  • Dinos, G. P. (2016). Chloramphenicol derivatives as antibacterial and anticancer agents: historic problems and current solutions. Antibiotics (Basel). 5 (2): 20. PMID: 27271676
  • Murray, I. A. and Shaw, W. V. (1997). O-Acetyltransferases for chloramphenicol and other natural products. Antimicrob Agents Chemother. 41 (1): 1-6. PMID: 8980745
  • Schwarz, S. et al. (2004). Molecular basis of bacterial resistance to chloramphenicol and florfenicol. FEMS Microbiol. Rev. 28 (5): 519-42. PMID: 15539072

MiFuPへのリンク

(更新日 2014/03/12)