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バシトラシン耐性

概要

バシトラシンとは、主としてグラム陽性細菌に有効な、細胞壁の生合成を阻害する抗生物質であり、主成分をバシトラシンAとする環状ポリペプチドの混合物である。 Bacillus licheniformis や一部のBacillus subtilis により、リボソームを経由せずに合成（非リボソーム合成）される。
バシトラシン耐性機構には、（1）脱リン酸化酵素の産生によるバシトラシンの標的の脱リン酸化、及び（2）バシトラシンの排出によるものが報告されている。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

バシトラシンは2価金属イオンの存在下で、キャリア脂質であるウンデカプレニルリン酸（undecaprenyl phosphate, C55-P）の前駆物質であるウンデカプレニル二リン酸（undecaprenyl diphosphate, C55-PP）に結合して、 その脱リン酸化を妨げることにより細胞壁合成を阻害し抗菌作用を示す。
これに対する耐性機構としては、上記（1）、（2）のしくみが報告されているが、 MiFuPでは脱リン酸化酵素によるバシトラシン標的の脱リン酸化について遺伝子の検出条件の設定を行った。
本耐性機構は、耐性菌が産生する脱リン酸化酵素 ウンデカプレニル二リン酸ジフォスファターゼ（undecaprenyl diphosphatase, EC 3.6.1.27）が、バシトラシンの標的である C55-PP を C55-P に迅速に脱リン酸化して、バシトラシンのC55-PPへの結合を阻止することにより、バシトラシン耐性をもたらす。

機能に関する遺伝子・酵素情報

脱リン酸化酵素 undecaprenyl diphosphatase として、bacitracin resistance protein（BacA）ファミリー（PF02673）と type II phosphatidic acid phosphatase（PAP2）スーパーファミリー（PF01569）に属する二種類の酵素が報告されている（表1参照）。
表1. Undecaprenyl diphosphatase で報告されている酵素
ファミリー（Pfamのaccession）タンパク質名
BacAファミリー（PF02673）undecaprenyl diphosphatase
PAP2ファミリー（PF01569）*1undecaprenyl diphosphatase
*1 MiFuPでは、PAP2ファミリーについては、遺伝子定義を作成していない。

参考文献

  • 大島泰郎. (2007). 生化学辞典. 東京化学同人. 第4版. p. 1017.
  • Bernard, R. et al. (2005). BcrC from Bacillus subtilis acts as an undecaprenyl pyrophosphate phosphatase in bacitracin resistance. J Biol Chem. 280 (32): 28852-7. PMID: 15946938
  • Chalker, A. F. et al. (2000). The bacA gene, which determines bacitracin susceptibility in Streptococcus pneumoniae and Staphylococcus aureus, is also required for virulence. Microbiology. 146: 1547-53. PMID: 10878119
  • Ghachi, M. E. et al. (2004). The bacA gene of Escherichia coli encodes an undecaprenyl pyrophosphate phosphatase activity. J Biol Chem. 279 (29): 30106-13. PMID: 15138271

MiFuPへのリンク

（更新日 2014/03/12）