製品安全

Vol.436  9月12日号 「高齢者の電動車いす・介護ベッドの事故」

Vol.436 9月12日号 「高齢者の電動車いす・介護ベッドの事故」【PDF:1.58MB】

 高齢者の生活をサポートする製品として、電動車いすや介護ベッドがあります。身体活動を補助し、日々の生活を豊かにする製品ですが、不注意や誤った使い方で大きな事故につながるおそれがあります。実際に、これら2製品は高齢者における重大製品事故の発生件数が多く、重傷・死亡発生率も高くなっています。
来週9/18は敬老の日です。高齢者の事故を防ぐために共通していえることは、使用者本人のみが気を付けるだけでなく、家族や周りの方々が気を配ることも大切です。
高齢者はご自身の身を守るために、周りの方々は高齢者を見守るためにも気を付けるポイントを確認し、事故を未然に防ぎましょう。

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項目一覧

  • 1.高齢者における電動車いす・介護ベッドの事故
  • 2.製品事故収集情報(8月6日~8月26日 受付 86件)
  • 3.リコール情報 6件
  • 4. その他の製品安全情報
 ・「明治大学リバティアカデミー2023年度秋期講座」のご案内
 ・2023年度NITE講座(認定センター)のお知らせ
 ・「SAFE-Lite」のご案内
 ・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
 ・Instagram アカウント開設のお知らせ

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1.高齢者における電動車いす・介護ベッドの事故

【事例①】電動車いすの事故(1)
 80歳代以上の男性が電動車いすで走行中、林道から転落して重傷を負いました。
 使用者が操作を誤ったことで、林道から転落したものと推定されます。
 
【事例②】電動車いすの事故(2)
 80歳代以上の女性が電動車いすで走行中、踏切内で停止し、電動車いすが列車と接触しました。
使用者が踏切を渡ろうとした際に踏切入口付近の段差で前輪を脱輪させて動けなくなり、緊急停止しきれなかった列車が接触したものと推定されます。なお、警報機が鳴り始めたため、電動車いすを残して使用者は退避していたので怪我はありませんでした。
 
【電動車いすの気を付けるポイント】
○事前に十分な練習を行い、利用する道路状況を介助者とともにあらかじめ確認する。
 運転操作の不慣れが事故につながるおそれがあるため、以下の点に気を付けてください。
・事前に広く安全な場所で練習を行い、操作や速度に十分に慣れる。
・取扱説明書をしっかり確認し、疑問点があれば事業者に質問する。
・事業者や警察、自治体などが開催する運転講習会があれば積極的に参加する。
・初めて道路に出るときは家族などに同行してもらい、利用する道路状況を確認する。
 特に、踏切や転落のおそれがある側溝、急な坂道などの危険な箇所を確認し、それらの箇所の通行をなるべく避ける。
 
○踏切の通行はできるだけ避ける。
 重大な事故につながるおそれがあるため、踏切の横断はできるだけ避けましょう。踏切を避けるための迂回路を探し、そちらを通行するようにしましょう。やむを得ず、踏切を渡る必要がある場合は以下の点に気を付けてください。
・介助者とともに通行し、踏切の手前では一時停止及び左右の確認をする。
・脱輪や線路の溝にタイヤが挟まることを避けるため、ハンドルをしっかりと握り、線路に対して直角に渡る。
・脱輪しないように、踏切の端を通行することは避ける。
(端を通行しないよう路面標示がある踏切もあります。)
・万が一踏切で立ち往生してしまったら、周囲の人に大声で助けを求め、電動車いすを放置してでも脱出することを最優先にする。
 
<ご通行中の方へのお願い>
 電動車いすで踏切を渡ろうとする人を見かけたら、できるだけ渡りきるまで見守ってくださるようお願いします。また、電動車いすの方が歩行者や自転車を避けてハンドルを切ってしまうと、線路の溝や踏切の端に落ちてしまうおそれがあります。電動車いすの使用者が安全に通行できるように道を譲ってくださいますようご協力をお願いします。
 もしも踏切内で動けなくなっている人がいたら、すぐに踏切の非常ボタンを押してください。




こちらの注意喚起動画(再現実験映像)もご覧ください。
◇電動車いす「10.踏切事故(ジョイスティック型)」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/2018122002.html



【事例③】介護ベッドの事故(1)
 介護ベッドと介護ベッド用手すりの間にけい部が挟まった状態の80歳代以上の女性が施設で発見され、病院に搬送後、死亡が確認されました。
 使用していた介護ベッドは、隙間に頭等を挟む事故の未然防止のために日本産業規格(JIS)が改正される前の製品で、対策部品の取付け等を行わないまま使われていました。事故は、使用者の頭部が当該製品の隙間に入った際、誤って手元スイッチで背ボトム(背上げ部)を上げたことで事故に至ったものと推定されます。
 
【事例④】介護ベッドの事故(2)
 80歳代以上の男性が介護ベッドのサイドレールとフットボードの間に腕を挟み、軽傷を負いました。
 使用者が腕を入り込ませた隙間は、JISの基準値(頭部及び体の閉じ込め回避)を満足する設計でした。原因の特定には至りませんでしたが、使用者がバランスを崩した際に、偶発的にサイドレールとフットボード間の隙間に前腕が入り込み、動けなくなったものと考えられます。
 
 【介護ベッドの気を付けるポイント】
○安全基準を満たした製品を使用する。
 介護ベッドにおけるサイドレールやベッド用手すりの隙間に頭や首、手足を挟み込むことによる窒息、骨折事故を防ぐために、「JIS T 9254 在宅用電動介護用ベッド」が2009年に改正・公示され、対応国際規格に合わせた隙間の規定の見直しが行われました。さらに対応国際規格の改定に合わせ、2015年にも規定の見直しが行われています。隙間や空間を狭くした2009年以降のJISが求める寸法を満たす製品では、挟み込みによる死亡事故は大きく減少しています。
しかし、2009年以前に製造され、最新の安全基準を満たしていない製品もまだ使用されている可能性があります。そのような製品に対しては、隙間への挟み込み防止措置を施すようにしてください。また、新たに介護ベッドを導入する際の目印としては、JISマーク付きの製品であれば安全基準を満たしています。
 
○クッションや保護カバー等で、挟まるおそれがある隙間をできるだけなくす。
 前述のような安全基準を満たしている場合でも、隙間からベッドの外にある物を取ろうとする、意図せず体勢を崩してしまうなどして、隙間に挟まってしまうおそれがあります。また、手足などが隙間に入った状態で、誤って介護ベッドのリクライニング操作をしてしまうことで挟まれてしまう可能性があります。使用者の身体能力や体格に応じて、あらかじめクッションや保護カバー、スペーサーで隙間をなくしておくことで、より安全に使用できます。
 
<介助者へのお願い>
 介護ベッドの事故は、主にベッド周りの隙間に頭や首、手足を挟み込むことで起こっています。使用者だけでなく、周りの家族や介護をされる方も介護ベッドの隙間に細心の注意を払い、必要に応じて保護カバーなどで隙間をなくすなどの対策を行ってください。また、取扱説明書を確認することで、危ない箇所や誤った使い方に気付くことができます。



(隙間をふさぐ例の画像出典:医療・介護ベッド安全普及協議会 パンフレット「介護ベッドここが危ない!!」 
 http://www.bed-anzen.org/use/
 
【注目!新作動画】
○介護ベッド「4.隙間に挟まる」
 https://youtu.be/PPerCZnGDB0



■NITEでは2023年8月31日に注意喚起として『見守って防ごう!高齢者の事故 ~電動車いす・介護ベッドによる事故の2人に1人が死亡~』をプレスリリースしました。
  https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2023fy/prs230831.html
 
 ■その他の情報も併せてご参照ください。
  (映像資料:リンク先で動画が視聴できますので是非ご覧ください)
   (1) 電動車いす「4.下り坂でニュートラル走行」
   https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/03100103.html
   (2) 電動車いす「6.路肩で脱輪」
   https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/03260102.html
   (3) 電動車いす「9.踏切事故(ハンドル型)」
   https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/2018122001.html
 
  (注意喚起ミニポスター)  
   (1)ベッドの”隙間(すきま)”に注意!
   https://www.nite.go.jp/data/000151070.pdf
 

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2.製品事故収集情報

消費生活用製品の事故情報収集状況
(8月6日~8月26日 受付 86件)
NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
========================================================
    製品名             (事故状況と件数)
 
   1.エアコン室外機                 ( 軽傷等            7件 )
   2.洗面化粧台                               ( 破損               6件 )
   3.電動アシスト自転車                   ( 重傷等            5件 )
   4.ノートパソコン                         ( 軽傷等            4件 )
   4.リチウム電池内蔵充電器             ( 軽傷等            4件 )
========================================================
 
◇最新事故情報(これまでの受付情報もご確認いただけます)
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
             
■事故情報の提供をお願いいたします。
 事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
   https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html

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3.リコール情報

◆Pirelli Tyre (Suisse)SA
「自転車用タイヤ」2023/08/10(HP)
【詳細】
https://www.pirelli.com/tyres/en-ww/bike/about/tyres-recall-jp
 
◆エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社
(法人番号:5011001056835)
「ブレスレット(ビーズ)」2023/08/17(HP)
【詳細】
https://www2.hm.com/ja_jp/customer-service/product-and-quality/recalled-items.html
 
◆アンカー・ジャパン株式会社(法人番号:8010001151445)
「電気掃除機(自走式)」2023/08/22(HP)
【詳細】
https://www.ankerjapan.com/blogs/news/429
 
◆本田技研工業株式会社(法人番号:6010401027577)、
 デンヨー株式会社(法人番号:4010001105371)
「充電器」2023/09/01(HP)
【詳細】
https://www.honda.co.jp/recall/motor/info/230901_CVM5006Z.html
 
◆株式会社カインズ(法人番号:3070001006474)
「水筒」2023/09/01(HP)
【詳細】
https://www.cainz.co.jp/news/6102/?_gl=1*117px9h*_ga*MTEyMzY4MzEwOS4xNjkzNTQ3MDAx*_ga_1BNMCFPN3C*MTY5MzU0NzAwMC4xLjAuMTY5MzU0NzAwNy41My4wLjA.&_ga=2.144186108.851058763.1693547001-1123683109.1693547001

◆株式会社くもん出版(法人番号:3120001054947)
「玩具(パズル)」2023/09/04(HP)
【詳細】
https://www.kumonshuppan.com/information/recall-puzzle/

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4.その他の製品安全情報

「明治大学リバティアカデミー2023年度秋期講座」のご案内
                        明治大学 
 
「安全学各論 ~製品安全、システム安全、労働安全、ヒューマンファクター~」
 
本講座では、製品安全、機械安全、労働安全等を話題にして、主にリスクを評価するリスクアセスメント、そしてリスクを低減するリスク低減方策などについて講義を行います。
モノを安全に作り、安全に使う場合のリスクアセスメントを通して、安全に関する基礎と素養を得ることを目的としています。
 
【開催日】 2023年9月30日(土) ~ 2023年11月25日(土)
      隔週土曜日 13:30~17:00 (途中休憩有)
           全10回(5日間)
【会 場】  オンライン開催(Zoomによるリアルタイム配信型(見逃し配信サービス付き))
【参加費】 10,000 円(税込)
【詳 細】 https://academy.meiji.jp/course/detail/6670/
 
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2023年度NITE講座(認定センター)のお知らせ
NITEでは、毎年一般の方や事業者向けに「NITE講座(無料セミナー)」を開催しています。
本年度のNITE講座初回は、認定センターが開催します。
「認定」の基礎的な内容やISO/IEC17025に関する講義に加え、「認定」を含む適合性評価の概要やその社会実装の事例(海洋プラスチック問題の解決に向けた取組)についてもご説明します。
 
以下より申込可能ですので、ぜひご参加ください。
https://www.nite.go.jp/iajapan/information/iajapan-kouza_2023.html
 
【概要】
・日時:2023/10/04(水)13:15-15:30
・開催方法:オンライン(WEBEXウェビナー)
・受講料:無料
・対象者:企業の新入社員の方や新たに品質管理を担当される方、認定をはじめとした適合性評価制度について興味のある方
 
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◆◆◇      「SAFE-Lite」のご案内        ◇◆◆
 
 NITEは、より安心・安全な社会になることを目指して、製品安全に関する情報を発信してまいりました。NITEのウェブサイトでは、事故情報データベース、リコール情報や誤使用に関する注意喚起などを発信しています。その中で、製品事故情報をどなたでも簡単にウェブ検索できるシステムとして、「SAFE-Lite」というサービスをご提供しております。
 
 「SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
 
 「SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
 
 【SAFE-Lite】
 https://safe-lite.nite.go.jp/
 
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       ◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
 
                                  消費者庁
 
  消費者庁は、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告
  のあった重大製品事故について、以下のとおり公表しています。
 
8/25      11件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_230825_01.pdf
8/29       7件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_230829_01.pdf
9/1       16件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_230901_01.pdf
9/12        13件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_230912_01.pdf
 
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       ◆◆◇ Instagram アカウント開設のお知らせ ◇◆◆
 
 NITEでは、公式アカウントを開設しております。
 インスタグラムでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
 
 Instagramアカウント→@nite_japan

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編集後記

 電動車いすは歩行者扱いってご存知でしたか?(なので、原則として右側通行が正しいです。)恥ずかしながら、私は知らず、自転車と同じように軽車両かと思っていました...
そんな電動車いすに今回初めて乗ったのですが、想像していたよりも速く感じました(最高時速6km/h)。そして、思っていたより段差乗り越えるの大変です・・・。いや~、やっぱり実際に体験するのって大事だなとしみじみ思いました。
電動車いすは歩行者に比べて臨機応変に動くことが難しいですので、電動車いす使用者が安全に通行できるよう道を譲ってもらえればと思います。ちょっとした気遣いでお互いが安全に気持ちよく過ごせるようにしましょう!(ひ)

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図