バイオテクノロジー

NBRCニュース 第11号

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                   NBRCニュース No. 11(2011.10.3)
      画像付き http://www.nbrc.nite.go.jp/news/news_vol11.html
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 NBRCニュース第11号をお届けします。今号から短期集中連載(4回を予定)
として「カルタヘナ法-はじめての産業利用申請-」を開始しましたので、ご
期待ください。その他、2つの連載(微生物あれこれ、微生物の保存法)をお
届けします。最後までお読みいただければ幸いです。

(等幅フォントでご覧ください)

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 内容
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 1.第2回および第3回NBRC微生物実験講習会のご案内
 2.新たにご利用可能となった微生物株(2011年7月30日~9月30日)
 3.微生物あれこれ(8)
    放線菌とアクチノバクテリア
 4.微生物の保存法(6)
    糸状菌の流動パラフィン重層保存法
 5.カルタヘナ法-はじめての産業利用申請-(1)
    プロローグ:「組換え体を使って、いざ産業化!」と思ったら・・・
 6.BioJapan2011 セミナー開催のお知らせ
   ~生物多様性条約・名古屋議定書と海外生物資源~
 7.NITEバイオテクノロジーセンターの出展のお知らせ

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 1.第2回および第3回NBRC微生物実験講習会のご案内
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 微生物アンプルの復元・培養や微生物の保存方法等に関する講習会を開催し
ます。日本工業規格(JIS規格)や薬局方に用いられる細菌および糸状菌を用
いて、菌の取り扱いに関する実習を行います。皆様のご参加をお待ちしており
ます。

 日時:第2回 平成23年11月15日(火)10:30~17:30
    第3回 平成23年11月16日(水)10:30~17:30
    両日程とも、同じ内容です。
 場所:NITEバイオテクノロジーセンター
    千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
 講習内容:アンプルの開封や凍結保存法など
 受講資格:NBRC株のユーザーあるいはNBRC株を使用する予定があり、大学等
      で微生物の取り扱い経験がある方
 募集人数:20名(1日あたり10名。最低履行人数は5名)
      定員になり次第、締め切らせていただきます。
 参加費用:7,300円(税込み)
 申込先:下記URLよりダウンロードした申込書に必要事項をご記入のうえ、
     FAXあるいはe-mailでお申し込みください。
 e-mail:bio-seminar@nite.go.jp
 申し込み締め切り日:平成23年10月14日(金)

 【詳細】 http://www.nbrc.nite.go.jp/seminar.html

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 2.新たにご利用可能となった微生物株(2011年7月30日~9月30日)
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 酵母 2株、糸状菌 154株、細菌 36株、ファージ 1株、微生物ゲノムDNA 3種
類を新たに公開しました。
 
【新規公開株一覧】 http://www.nbrc.nite.go.jp/new_dna.html
【提供ゲノム一覧】 http://www.nbrc.nite.go.jp/gdna.html

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 3.微生物あれこれ(8)
    放線菌とアクチノバクテリア            (田村朋彦)
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 放線菌というとどんなイメージをお持ちでしょうか?
 放線菌(英語名 actinomycete)は正式な学名ではなく、グラム陽性でDNAの
G+C含量が高い細菌に含まれる1つのグループの一般名です。人によってその範
囲についてイメージが異なるかもしれません。放線菌は菌糸状に生長し、成熟
すると胞子を形成する、まるでカビの様な形態を示す原核生物とイメージされ
る方も多いと思います。これは伝統的な放線菌を意味し、抗生物質生産菌が多
く存在するストレプトマイセス属放線菌などが相当します。80~90年代に化学
分類学的手法や分子生物学的手法が導入されたことにより、これらの伝統的な
放線菌と、アクチノバクテリアと呼ばれていたコリネバクテリウム、ミクロコ
ッカスや抗酸菌などの細菌が非常に近縁の関係にあり、独立した分類群でない
ことが明らかになりました。現在では、放線菌とは上記の菌をすべて含む
Actinomycetales目を示す、というのが最も一般的と思われます。
 では、アクチノバクテリア(Actinobacteria)は何を指す言葉でしょうか?
 アクチノバクテリアは放線菌に近縁な細菌を示す一般名として使われてきま
したが、アクチノバクテリア綱が設立されてからグラム陽性でDNAのG+C含量が
高い細菌すべてを含む学名となりました。このため、乳酸菌であるビフィズス
菌もこのグループに含まれます。伝統的にはアクチノバクテリアと放線菌は別
の菌に対しての呼び方でしたが、現在ではアクチノバクテリア綱の中に放線菌
が含まれていることになっています。
 しかし、使い勝手の良さから、便宜的に昔ながらに菌糸と胞子を形成するグ
ループだけを放線菌、菌糸を形成しないActinomycetales目細菌をアクチノバ
クテリアとして使われているケースも散見されます。これは、あらかじめ定義
されている場合もありますが、ない場合は前後の文脈から想像するしかありま
せん。
 現在、毎年180種近くのアクチノバクテリア綱に属する細菌の新種が提案さ
れています。そのほとんどがActinomycetales目の菌種です。今後、たくさん
の菌の性状が知られていくことにより、放線菌のイメージも変化していくのか
もしれません。

	             バクテリアの主な4つの門

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 4.微生物の保存法(6)
    糸状菌の流動パラフィン重層保存法         (岡根 泉)
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 今回は、糸状菌(カビやキノコ)の流動パラフィン重層保存法(流パラ法)
についてご紹介いたします。現在NBRCからは約8400株の糸状菌保存株が提供可
能となっておりますが、胞子形成が不十分で凍結乾燥法やL-乾燥法が適用でき
ず、さらに凍結感受性の菌株が含まれる担子菌類については、液体窒素保存と
ともに流パラ法によって保存維持しています。本法は継代培養法の一種に位置
づけられますが、培地の乾燥による保存株の死滅を防ぐとともに、酸素供給を
制限することで代謝活性を低下させ、移植間隔の大幅な延長を可能にします。
担子菌類に限らず多くの糸状菌に適用できる簡便な長期保存法であり、ディー
プフリーザーや真空凍結乾燥機などの設備がない場合でも低コストでの保存が
可能となります。

◆ 滅菌流動パラフィンの準備(500 ml瓶の場合)
 市販の流動パラフィン試薬瓶のネジ蓋をゆるめた状態にし(もしくは適当な
サイズのシリコ栓と交換し)、水分の混入と汚染を防ぐため試薬瓶の上部をア
ルミホイルで覆い、121℃で30分のオートクレーブ滅菌を行います。オートク
レーブ滅菌後、パラフィンが白濁するなど水分の混入が認められた場合には、
乾熱処理(150℃、1~2時間)を行うなどして水分を除去します。

◆ 保存処理の手順
 寒天培地(斜面、水平)上に生育させた培養株に、寒天上端(菌糸が寒天上
端から上方に伸長している場合は菌糸上端)より上方約1 cmの深さに滅菌した
流動パラフィンを滅菌ピペット等を用いて重層します。保存環境としては通気
が良好な15~20℃の恒温保存室が望ましいです。
 
◆ 留意点
(1) 流動パラフィンを数cm以上の深さで重層すると通気性が低下し保存成績が
  悪くなります。
(2) 寒天斜面の上端や菌糸先端が流動パラフィン重層部より露出していると水
  分蒸発の通り道となり培地乾燥の原因となります。
(3) 流動パラフィン重層時に菌糸体に気泡が多く付着している場合、時間の経
  過とともに気泡が抜けることでパラフィン液面が低下するため、適宜パラ
  フィンを追加します。
(4) 流パラ法で保存した株を移植する際には、接種源は大きめに取ってくださ
  い。パラフィンの被覆により移植後の初期生育が遅い場合は、接種源を滅
  菌蒸留水で洗浄してから新しい培地に移植します。
(5) 移植作業後の白金耳など流動パラフィンが付着した器具類を火炎滅菌する
  とパラフィンが激しく燃えるとともに、菌の飛散がおこり汚染の原因とな
  りますので、注意してください。
(6) 低いながらも代謝活性を維持した状態での保存のため、菌株の性質の変化
  が起こりやすいことが知られています。
(7) 糸状菌類で20年以上、酵母では10年以上保存された例がある一方で、菌種
  によっては短期間で死滅するものもあり、半年から2年程度で新たに移植
  することが望ましいです。

	         流動パラフィンを重層した培養菌株

 流パラ法は低コストかつ簡易な長期保存法として凍結乾燥法やL-乾燥法また
は凍結保存法による菌株コレクションの保存とは別に、危険分散のための二次
コレクションとして採用している保存機関もあります。NBRCでは液体窒素保存
していた担子菌保存株が死滅した際、流パラ法で維持していた菌株から復元に
成功した事例もあります。ぜひお試し頂ければと思います。なお、流動パラフ
ィンの代わりに滅菌蒸留水でシールする方法(水保存法)も知られています。

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 5.カルタヘナ法-はじめての産業利用申請-(1)
    プロローグ:「組換え体を使って、いざ産業化!」と思ったら・・・
                             (深井理恵子)
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 みなさんが大学や企業で遺伝子組換え実験を行う際には、組織内で定められ
たルールに基づき、内部の安全委員会などで実験計画の承認を受けるというス
テップを踏んでいるかと思います。これらの決まりが「カルタヘナ法*」とい
う法律に基づくものであることはご存じでも、いざ遺伝子組換え体を用いて商
業生産をすることになったときに、「研究開発と取扱いに違いがあるのか」、
「どのような手続きが必要なのか分からない」と戸惑う方もおられるのではな
いでしょうか。
 NITEでは経済産業省が所管する事業分野(鉱工業:工業用酵素、試薬、医薬
品中間体など)における組換え体の産業利用において、経済産業大臣に提出す
る申請書の事前審査を行っています。申請前のご相談や、申請書の書き方につ
いてのお問い合わせにも随時お答えしておりますが、この連載では、みなさん
からよく寄せられる疑問を中心に、初めて産業利用申請をする場合に知ってお
きたいことについて、以下の予定でご紹介していきたいと思います。
 (1) 研究開発と産業利用の違い
 (2) 産業利用申請の手続き方法
 (3) 申請を必要としない場合(GILSPリスト)

 次回はまず、研究開発と産業利用で規制や事前の手続きがどのように異なる
かについてお話したいと思います。

*カルタヘナ法
 正式名称を「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保
に関する法律」といい、遺伝子組換え生物の使用にあたって守るべき決まりを
定めた国内法のことです。国際条約である『生物多様性条約』において、「遺
伝子組換え生物等の使用が環境に及ぼす影響を考慮した措置を検討すべきであ
る」という議論を受けて制定された『カルタヘナ議定書』に、日本政府が加入
したことを受けて立法された国内担保法です。遺伝子組換え生物の規制の目的
が「生物多様性の確保」であるのは、この法律の成立背景に由来します。
 法律に関する情報はバイオセーフティクリアリングハウスのホームページ
(http://www.bch.biodic.go.jp/)で確認できます。 

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 6.BioJapan2011 セミナー開催のお知らせ
   ~生物多様性条約・名古屋議定書と海外生物資源~
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 CBDでは他国の遺伝資源についてはその国に管轄権があり、その国のABS国内
法をよく理解してその国の生物遺伝資源を利用する必要があります。しかし、
生物遺伝資源を通じて提供国と利用者がよい信頼関係を築くチャンスでもあり
ます。新しい時代の幕開けに何が起こっているのかを紹介したいと思います。

 日時:2011年10月5日(水) 15:00~16:00 
 場所:パシフィコ横浜 アネックスホール内 Bトラック
    
 講演(1) 名古屋議定書の成立の背景と我が国への影響
     炭田精造 氏 バイオインダストリー協会
   (2) 醗酵創薬における熱帯微生物の活用について
     村松秀行 氏 アステラスリサーチテクノロジー株式会社
   (3) 生物多様性条約に対応したNITEの海外微生物探索
     安藤勝彦 製品評価技術基盤機構
   (4) 企業の海外における有用微生物取得活動の事例
     安田源太郎 氏 カルピス株式会社
 モデレーター:安藤勝彦
 申込先:BioJapan2011のホームページからお申し込みください。
     
【詳細】 http://www.bio.nite.go.jp/event111005.html

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 7.NITEバイオテクノロジーセンターの出展のお知らせ
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 以下の展示会に出展いたします。是非お立ち寄り下さい。

日本癌学会
 日程:2011年10月3日(月)~5日(水)
 場所:名古屋国際会議場
    http://www2.convention.co.jp/70jca/index.html

バイオジャパン2011
 日程:2011年10月5日(水)~7日(金)
 場所:パシフィコ横浜
    http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/2011/

日本食品微生物学会
 日程:2011年10月6日(木)~7日(金)
 場所:タワーホール船堀
    http://www.jsfm.jp/sub03.html

日本微生物生態学会
 日程:2011年10月8日(土)~10日(月)
 場所:京都大学北部キャンパス農学部総合館
    http://www.aeplan.co.jp/jsme27/
    
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 編集後記
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 微生物の最も効率的な利用とは、人間が直接それを食べることだそうです。
最近、北海道のヤギのチーズと、紐のような形をしたモンゴル産のヤギのチー
ズ、秋田の味噌と、韓国のメジュ(味噌玉)を食べました。それぞれ気候風土
を思い起こさせる独特の風味があり、多様な微生物群と人間の製法による妙に
思いを馳せます。あとは、お酒がいける口に生まれたかった・・・。(SB)

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編集・発行
 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター
 NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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