English site


ストレプトグラミン系抗生物質耐性

概要

ストレプトグラミン系抗生物質とは、細菌のタンパク質合成を阻害する抗生物質であり、多価不飽和環状マクロラクトンであるストレプトグラミンA と、 環状ヘキサデプシペプチドであるストレプトグラミンB の2つのグループに分けられる。
通常ストレプトグラミンA と B を同時に使うと相乗的抗菌作用を示す。 ストレプトグラミンA であるダルホプリスチン(dalfopristin)とストレプトグラミンB であるキヌプリスチン(quinupristin)の重量比3:7の配合剤であるキヌプリスチン/ダルホプリスチン(Quinupristin/Dalfopristin)は、 バンコマイシン耐性腸球菌Enterococcus faecium (VREF) の感染症への抗菌薬として使用されている。
ストレプトグラミンA への耐性は、主に(1)ストレプトグラミンA修飾酵素(アセチル基転移酵素)による薬剤の不活性化によるものが報告されており、 またストレプトグラミンB への耐性は、主に(2)ストレプトグラミンB分解酵素による薬剤の不活性化によるものと、 (3)ストレプトグラミンBの標的である23S rRNA修飾酵素によるものが報告されている。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

ストレプトグラミン系抗生物質である、ストレプトグラミンA とBは、いずれも細菌のリボソームの50S サブユニットの23S rRNAのそれぞれ異なる部位に結合してペプチド合成を阻害し抗菌作用を示す
これに対して、ストレプトグラミン系抗生物質耐性は、(1)アセチル基転移酵素(ストレプトグラミンAアセチルトランスフェラーゼ)がストレプトグラミンA をアセチル化して、 リボソームとの親和性を低下させることによるストレプトグラミンA の不活性化、(2)分解酵素(ストレプトグラミンBリアーゼ)がストレプトグラミンB のラクトン環を開裂することによるストレプトグラミンBの不活性化、 (3)メチル基転移酵素(rRNAアデニンN6-メチルトランスフェラーゼ)が23S rRNAのアデニン残基をジメチル化して、リボソームとの親和性を低下させることによるストレプトグラミンBの不活性化、によるものが知られている。

機能に関する遺伝子・酵素情報

ストレプトグラミン系抗生物質耐性に関与している酵素(タンパク質)として下記のものが知られている(表1参照)。
表1. ストレプトグラミン系抗生物質耐性に関与している酵素(タンパク質)
遺伝子名タンパク質名
satvatstreptogramin A acetyltransferase
vgbstreptogramin B lyase
ermrRNA adenine N-6-methyltransferase*1
*1 MiFuPでは、rRNA adenine N-6-methyltransferaseについては遺伝子定義を作成していない。

機能を持つことが知られている生物

Staphylococcus aureus では streptogramin-resistance plasmid にコードされている例が有名である (P17978)。

参考文献

  • Allignet, J. and Solh, N. E. (1999). Comparative analysis of staphylococcal plasmids carrying three streptogramin-resistance genes: vat-vgb-vga. Plasmid. 42 (2): 134-8. PMID: 10489330
  • Hershberger, E. et al. (2004). Quinupristin-dalfopristin resistance in gram-positive bacteria: mechanism of resistance and epidemiology. Clin Infect Dis. 38 (1): 92-8. PMID: 14679454

MiFuPへのリンク

(更新日 2014/03/12)