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ヒトミルクオリゴ糖代謝

概要

ヒトミルクオリゴ糖(HMO)とは人乳に少量含まれている乳糖を除く三糖以上のオリゴ糖の総称である。
哺乳動物の乳は主要糖質としてのラクトース以外に、通常糖質の20%以下の割合でミルクオリゴ糖といわれるラクトース単位を還元末端側に有する多種類のオリゴ糖群を含んでいる。
HMOはラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-ヘキサオース(LNH)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)などの12系列のコア骨格をもつ。 これらの骨格にルイスa,b,xやα2-3/2-6N-アセチルノイラミン酸が付加されることにより、糖鎖には100種類ものバリエーションが存在する。
HMOの大部分は消化吸収されないが、大腸上皮において病原性細菌やウィルスが付着するのを阻止する感染防御因子として機能することが示唆されている

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

ラクト-N-ビオースI(Galβ1→3GlcNAc, LNB)はヒト特有のオリゴ糖組成であり、HMOの主要成分にはLNB構造が含まれている。
例(太文字部分がLNB構造を表す)
ラクト-N-テトラオース(Galβ1→3GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc)
ラクト-N-フコペンタオースI(Fucα1,2Galβ1→3GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc)
ラクト-N-ジフコヘキサオースI(Fucα1→2Galβ1→3[Fucα1→4]GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc)
一部のビフィズス菌はLNB代謝経路を持つことが知られている。
ビフィズス菌のHMO代謝経路
ビフィズス菌のHMO代謝経路 http://www.naro.affrc.go.jp/nfri/introduction/chart/0902/
乳児腸管内に存在する B. longum, B. longum subsp. infantis, B. bifidum, B. breveではよく資化されるのに対し、成人や動物の腸管に存在する B.adolescentis, B. catenulatum などでは資化されない。
ビフィズス菌のLNB代謝酵素遺伝子は下図のようなクラスターを形成している。
LNB代謝酵素遺伝子群
LNB代謝酵素遺伝子群 --Kitaoka M. (2012) Fig.1A
GeneProteinNRULE
GltAABC transporter GNB/LNB binding proteinルール化できなかった
GltBABC transporter permease proteinルール化できなかった
GltBABC transporter permease proteinルール化できなかった
GltCABC transporter permease proteinルール化できなかった
LnpA1,3-beta-galactosyl-N-acetylhexosamine phosphorylaseNRULE_0112
LnpBN-acetylhexosamine 1-kinaseNRULE_0256
LnpCUDP-glucose--hexose-1-phosphate uridylyltransferaseNRULE_0110
LnpDUDP-glucose 4-epimeraseNRULE_0111
また、ビフィズス菌は種によって異なる戦略を取っているという。
(1)B. longum infantis
HMO分解に関わる遺伝子クラスターが存在する。 オリゴ糖を丸ごと菌体内に取り込み、内部で分解していると考えられる。
(2)B. bifidum
菌体膜に局在する酵素は、触媒ドメインを菌体外に配向させていると予測されている。 菌体外で切り出されたLNBとガラクトNビオースを菌体内に取り込み、代謝している。
(3)B. breve
LNBを取り込むトランスポーターと菌体内のホスホリラーゼは有しているが、LNBとガラクトNビオースを遊離させる菌体外グリコシダーゼは持たない。 他の腸内細菌が分解したオリゴ糖のおこぼれを利用して増殖しているとみられる。

実用化例

LNB代謝系の遺伝子を利用し、LNBを大量生産する方法が開発されている。詳しくはヒトミルクオリゴ糖生産を参照のこと。

参考文献

  • Kitaoka, M. (2012). Bifidobacterial enzymes involved in the metabolism of human milk oligosaccharides. Adv Nutr. 3(3):422S-429S. PMID: 22585921

関連外部リンク

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(更新日 2014/03/07)