水銀耐性
概要
水銀の内、毒性を示すのはメチル水銀 (CH3Hg+)やフェニル水銀 (C6H5Hg2+) などの有機水銀化合物やイオン化水銀 (Hg2+) 。 金属水銀は一般に毒性が低い。
機能に関する知見
機能を示すメカニズム
細菌の水銀耐性メカニズムは、水銀還元酵素、MerA (NRULE_0008) によるHg2+の還元が中心となっている (NFUNC_0005)。
トランスポーター (MerC or MerT) により取り込まれた有機水銀化合物を有機水銀分解酵素 (MerB) が分解。
これにより生じた Hg2+ を水銀還元酵素 MerA (NRULE_0008) が volatile mercury (Hg0) に変換し、Hg0 は細胞外へと揮発、放出される (volatilization)。
MerBは、有機水銀化合物の bioremediation においては鍵となる酵素だが、保存している種は限られ、mer operon においては付属的なコンポーネントとされている。
mer operon
mer operon は、グラム陰性、陽性問わず古細菌を含めた幅広い生物種で見つかっており、水銀感受性生物でも mer operon の痕跡が見つかることから、古くから存在すると推測される。
mer operon は mercury-responsive regulator MerR に制御されている。MerR は水銀存在下で水銀と結合し、mer 遺伝子の転写を活性化する。
Firmicutes 門では、後続の mer gene と同方向にコードされているが、放線菌、およびグラム陰性細菌では向きが逆なのが特徴。(Pseudomonas属で1菌例外あり)
merB の相同性は系統的な関連性が見出されないが、グラム陽性細菌で保存されている傾向あり。
gene | protein name | function |
---|---|---|
merA | mercuric reductase (NRULE_0008) | Hg2+ (inorganic) を volatile mercury (Hg0) に変換する。 EC 1.16.1.1Reaction: Hg + NADP+ + H+ = Hg2+ + NADPH |
merB | organomercury lyase | 有機水銀化合物の炭素-水銀結合を分解する。 EC 4.99.1.2Reaction: an alkylmercury + H+ = an alkane + Hg2+ |
merR | mer operon regulatory protein | 水銀イオンに応答する転写調節因子。 |
merD | repressor protein | MerR のアンタゴニストとして機能する。 |
merC | membrane bound protein | Hg2+ の取り込みに関与。 |
merT | mercuric transport protein | MerP から水銀イオンを受け取り、MerA に渡す。 |
merP | periplasmic protein | ペリプラズムで水銀イオンを捕捉し、MerT に渡す。 |
merG | periplasmic protein | 有機水銀耐性の merB deficient-strain に見出される。 MerA 存在下で還元、分解が可能。 |
参考文献
- Barkay, T. et al. (2003). Bacterial mercury resistance from atoms to ecosystems. FEMS Microbiol Rev. 27(2-3):355-384. PMID: 12829275
- Boyd, E. S. and Barkay, T. (2012). The mercury resistance operon: from an origin in a geothermal environment to an efficient detoxification machine. Front Microbiol. 3:349. PMID: 23087676
MiFuPへのリンク
- NFUNC_0005 Mercury resistance
NRULE_0008 Mercuric reductase
(更新日 2014/03/12)