バイオテクノロジー

世界初の地下水浄化技術を用いた浄化事業計画について経済産業大臣と環境大臣が確認

公表日

平成28年1月7日

本件の概要

報道発表資料

発表日:
平成28年1月7日(木)
タイトル:
塩素化エチレンの嫌気性脱塩素菌とその増殖促進菌を組み合わせた世界初の地下水浄化技術を用いた浄化事業計画について経済産業大臣と環境大臣が確認。実用化に向け大きく前進。
発表者名:
独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
資料の概要:

 NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構 理事長:辰巳敬)と大成建設株式会社(代表取締役社長:村田誉之)が共同で開発した微生物による地下水の浄化技術に基づく浄化事業計画について、「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」(以下「バイオレメディエーション指針」という。)に適合している旨の経済産業大臣と環境大臣の適合確認を得ました。
 この浄化技術は、トリクロロエチレンなどの塩素化エチレン類※1 を脱塩素化する嫌気性菌とその菌の増殖を促進する菌を組み合わせた世界初の画期的なものです。NITEと大成建設はこの嫌気性脱塩素菌を我が国で初めて単離に成功するとともに、その脱塩素菌の増殖を促進する菌を世界で初めて発見しました※2。今回、この浄化技術に基づく浄化事業計画についてバイオレメディエーション指針に適合していることが確認されたことにより、今後の実用化に向けて大きく前進することが期待されます。

  1. 1.背景
     トリクロロエチレンをはじめとする塩素化エチレン類は、金属部品の洗浄剤や溶剤として広く使用され、地下水の汚染物質として問題となっています。この物質は、地下水中で拡散し易く汚染が広範囲に及んでいる場合が多いことから、従来型の浄化方法では長期間が必要で高コストとなることが課題となっています。そこで、低コストで浄化が可能な微生物を用いたバイオレメディエーションに対する期待が高まっています。
     NITE と大成建設は、有害な塩素化エチレン類を無害なエチレンまで浄化できる嫌気性脱塩素菌、デハロコッコイデス属細菌※3 UCH007 株を我が国で初めて単離(純粋な1種類の菌として培養すること)に成功しました。この菌は増殖が遅いため浄化速度が遅いという課題がありましたが、NITE と大成建設はこの嫌気性脱塩素菌とその増殖を促進する菌としてスルフロスピリラム属細菌 UCH001 株の混合培養(2つの菌を一緒に培養すること)により、嫌気性脱塩素菌が従来の2 倍以上の増殖 速度で安定に培養でき、浄化速度が向上することを世界で初めて発見しました。
  2. 2.「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」に基づく安全性確認
     この嫌気性脱塩素菌と増殖促進菌の2 種類の菌を組み合わせた浄化技術に基づく浄化事業計画が、平成27年11月25日付けでバイオレメディエーション指針に適合している旨、経済産業大臣及び環境大臣の確認を得ました。
     この指針は、汚染現場に人為的に脱塩素菌を導入して浄化する際に安全性の確保に万全を期すために、生態系への影響及び人への健康影響に配慮した適正な安全性評価手法及び管理手法のための基本的要件等が規定されています。平成17年に経済産業大臣及び環境大臣により、微生物を用いた浄化事業の一層の健全な発展及び利用の拡大を通じた環境保全に資することを目的として策定されています。
  3. 3.今後の展開
     NITE と大成建設が開発したこの浄化技術は、従来法に比べ低コストで浄化期間の短縮が見込まれます。今回、浄化事業計画がバイオレメディエーション指針に適合していることが確認されたことにより、微生物を用いた塩素化エチレン類浄化の実用化に向けて大きく前進することが期待されます。今後とも NITE と大成建設は、微生物の単離や培養技術の改良を通じて、微生物を用いた環境浄化の実現に貢献してまいります。

注)
  1. (※1) 塩素化エチレン類
    エチレンに塩素を付加して合成した液体化合物。かつて、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンが金属部品の洗浄剤や溶剤として広く使用されてきたが、有害性が確認されたため、現在では環境規制物質に指定されている。
  2. (※2) 本事業は、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)および経済産業省からの受託事業「VOC の微生物等を利用した環境汚染物質浄化技術開発(次世代型バイオレメディエーション普及のためのセーフバイオシステムの研究開発)」(平成22年度~平成26年度)の成果として得られたものです。
  3. (※3) デハロコッコイデス属細菌
    塩素化エチレン類を無害なエチレンまで脱塩素化(浄化)できることが知られている唯一の微生物。トリクロロエチレンからエチレンまで段階的に塩素を一つずつ置換する。

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発表資料

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